オリバー・ストーン監督が自らの体験を基にベトナム戦争を描いた衝撃作!
オリバー・ストーンが脚本・監督を務めた、1986年製作のアメリカのR15+指定の戦争ドラマ映画『プラトーン』。
1967年、ベトナム戦争下のベトナムを舞台に、最前線小隊「プラトーン」に配属された若い志願兵が戦争の狂気を体験していく姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
ベトナム戦争の緊迫感に満ちた戦場と、若い志願兵を待ち受けていた過酷な現実を、オリバー・ストーン監督の実体験に基づき描いた戦争ドラマ映画『プラトーン』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介いたします。
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CONTENTS
映画『プラトーン』の作品情報
PLATOON(C)1986 ORION PICTURES CORPORATION. All Rights Reserved
【日本公開】
1987年(アメリカ映画)
【脚本・監督】
オリバー・ストーン
【キャスト】
チャーリー・シーン、トム・ベレンジャー、ウィレム・デフォー、ケヴィン・ディロン、フォレスト・ウィテカー、フランチェスコ・クイン、ジョン・C・マッギンレー、キース・デヴィッド、デイル・ダイ、ジョニー・デップ、リチャード・エドソン、ポール・サンチェス、コーリー・グローヴァー、マーク・モーゼス、トニー・トッド、レジー・ジョンソン、ボブ・オーウィグ、デヴィッド・ニードルフ、ポール・サンチェス、クリス・ペダーソン、クリス・カスティリェホ、J・アダム・グローヴァー、コーキー・フォード、イワン・ケイン、テリー・マキルヴェイン、アンドリュー・B・クラーク、ケヴィン・エシェルマン、ピーター・ヒックス、ロバート・ガロッティ、マーク・エベンホック、クラリサ・オルタチオ、オリバー・ストーン
【作品概要】
『コナン・ザ・グレート』(1982)や『スカーフェイス』(1983)などの脚本を手がけ、『ウォール街』(1987)や『7月4日に生まれて』(1989)などを監督したことで知られるオリバー・ストーンが脚本・監督を務めたアメリカの戦争ドラマ作品です。
ベトナム帰還兵であるオリバー・ストーン監督が、アメリカ陸軍の偵察隊員であった頃の実体験を基に描いた作品でもあり、1987年第59回アカデミー賞で作品賞・監督賞など4部門に輝きました。
主演を務めるのは、「メジャーリーグ」シリーズや『キング・オブ・ハーレー』(1992)、『ナインイレヴン 運命を分けた日』(2017)などに出演するチャーリー・シーンです。
映画『プラトーン』のあらすじとネタバレ
PLATOON(C)1986 ORION PICTURES CORPORATION. All Rights Reserved
1967年、激戦のベトナムに若い志願兵クリス・テイラーが、他の新兵たちと一緒にやって来ました。
テイラーは名前も聞いたことのない街に住み、貧困層の黒人やその他少数民族が、白人に比べて劣悪な扱いを受けているアメリカのために戦っている姿を見ます。「彼らこそ、真のアメリカ人だ」と讃える一方で、貧困層の若者が戦場に駆り出されていくことに憤りを感じていました。
「名もない平凡人でいたい。でも兵士だった祖父や父のように、国のために尽くしたい」と思ったテイラーは、両親の反対を押し切って大学を中退し、アメリカ陸軍に志願しました。
1967年9月。テイラーは、カンボジア国境付近に駐屯するアメリカ陸軍第25歩兵師団の最前線小隊「プラトーン」に配属されました。
プラトーンは、戦鬼と化した鬼軍曹であるボブ・バーンズ2等軍曹と、まだ人間らしさを残したゴードン・エリアス3等軍曹の2人が取り仕切っており、若い小隊長は全く干渉できませんでした。そんなプラトーンに入隊早々配属されたテイラーに待ち受けていたのは、想像を超える過酷な戦争の現実でした。
朝から晩まで塹壕用の穴を掘り続け、充分な休息もとれずに、鬱蒼とした密林のジャングルの中を歩かされ続ける毎日。雨が降り注ぐ密林のジャングルに入り、地雷を仕掛け敵を待ち伏せ、銃撃戦を繰り広げた末に仲間が1人死んでしまった夜……。
思い描いていた理想とは程遠い、過酷な戦争の現実を思い知ったテイラーは、アメリカ陸軍に志願したことを後悔します。ですが、そんな極限状態の中で、テイラーはさまざまな出自の若い隊員たちと共に麻薬を嗜んだり、酒を飲んで大騒ぎしたりして、徐々にプラトーンの一員として隊に溶け込んでいきました。
1968年1月1日。カンボジアの国境付近で、敵対する北ベトナム軍が攻撃に出てきたことで、南ベトナム側のアメリカ軍との衝突が増加。プラトーンは爆撃や待ち伏せで侵攻する北ベトナム軍に対抗する中で、小隊はベトナム人の小さな集落を発見します。
プラトーンは2人1組になり、その集落を調査した結果、爆弾が仕掛けられていることが判明。また地図と重要書類が入った箱に、爆弾が仕掛けられていたとは気づかなかった、隊員のサンダーソン(サンディ)とサルが死亡します。
さらに川下の村に敵が出現したことを受け、バーンズは工兵隊が駆けつけるまでの間、集落に隊員4人と衛生兵を待機させ、残りの隊員で村の調査に向かうことにしました。ところが、調査に向かうプラトーンの隊員マニー・ワシントンが、突如隊から姿を消してしまいます。
バーンズ率いる調査隊は、マニーの捜索も兼ねて川下の村へ調査に向かいます。その途中で、喉を切られ絶命しているマニーの遺体を発見しました。
敵が出現した川下の村は古い村で、村人は敵に不意を突かれて呆然としていました。バーンズだけは落ち着きを払っており、そんな彼の冷静な態度は、テイラーたちを心服させました。
川下の村をくまなく調べた結果、チェコ製59型機銃が4丁隠されており、一個連隊を養えるだけの米もあったことが判明。
サンディ・サル・マニーを殺されて憤る隊員バニーは、仲間の制止の声も聞かず、彼らを殺した疑いがあるベトナム人の青年を銃で殴り殺害。またマニーの喉を切った疑いがあるとして、ベトナム人の青年と一緒に暮らしていた老婆も殺そうとします。
バーンズたちは村人全員を村の外に集め、村長による通訳を介して尋問しました。これに対し村長は、「武器は北ベトナム軍の部隊から預かった。だけど奴らは最近来ていない」と答えます。
その村長の言葉を信じられないバーンズは、村長から武器を隠していた本当の目的を吐かせようと、村長の妻を銃殺した上で娘を人質に取りました。するとそこへ、集落から村に来たエリアスが合流し、村人を銃殺したバーンズに怒り、彼に殴りかかります。
これまでも方針の違いから、たびたび対立することが多かった2人。隊員たちが止めに入る中、エリアスはバーンズに「お前は刑務所に送ってやる」と叫び、バーンズもまたエリアスに「殺してやる」と叫び、隊員たちの目の前で袂を分かちました。
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映画『プラトーン』の感想と評価
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エリアスによる「罰」とバーンズによる「報復」
正義感が強く、軍人として何があろうと民間人を殺してはならないと考えるエリアスと、命令に背く者は誰であろうとも許さない戦鬼と化したバーンズ。
対照的な2人は隊内で対立し続けた果てに、エリアスはバーンズを軍法会議にかけて罰しようとするのに対し、バーンズはエリアスを戦場の混乱に乗じて殺すことで報復をしました。
その結果、エリアスはバーンズの策略によって戦場へ置き去りにされただけでなく、大勢の敵に背後から撃たれ続けて、もう自分は助からないと絶望しながら死んでしまいました。
それをただ救助ヘリの中から見ていることしかできなかったテイラーの心情を考えると、観ているこちらも胸が痛くなるほど辛く、助けてあげられなかった歯がゆさを感じます。
過酷な戦場で麻痺し、摩耗してゆく理想と人間性
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理想を抱いてアメリカ陸軍に志願したテイラーを待ち受けていたのは、「理想」という「想像」を超えるベトナム戦争の過酷な現実でした。
休む暇もなく塹壕を作らされたり、密林のジャングルの中で夜通し敵を待ち伏せしたり、敵味方が混在する戦場で銃撃戦を繰り広げたりする日々。塹壕の場所や地雷を仕掛けた場所を知られてしまい、数百の大部隊で夜襲を仕掛けられる恐怖。
それはどんな屈強な兵士といえど、恐怖で足が竦んで動けなくなったり、戦場から逃げ出したくなったりするほど過酷で、心身ともに堪えるものばかりです。
その結果待ち受けるのは、酒や麻薬による苦痛や恐怖からの逃避。そして逃避し続け、戦場の感覚に麻痺したことで生じる、人間性の摩耗。そしてそれが、気高い理想を抱いていたはずのテイラーがバーンズに銃口を向け、引き金を引いてしまった原因の一つでもあるのです。
まとめ
PLATOON(C)1986 ORION PICTURES CORPORATION. All Rights Reserved
理想を抱いてアメリカ陸軍に志願した若い兵士が、ベトナム戦争を通じて想像を超える戦争の過酷な現実を知るという、アメリカの戦争ドラマ作品でした。
本作の見どころは、白人に比べて劣悪な扱いを受ける黒人の若い兵士たちとテイラーが、ベトナム人への虐殺や強姦など、戦争の狂気を体験していく点です。
テイラーたち若い兵士たちよりも、幾多の戦場を駆け抜け生き抜いてきたバーンズたち古参兵が、隊を2つに分裂するほどの派閥争いを繰り広げていきます。
もはや誰が敵か味方かも分からない、混沌としたベトナム戦争。何を善とし悪とするかで‟敵”が決まることが、テイラーが物語のラストで言っていた「敵は自分の中にいる」の本当の意味なのかもしれません。
緊迫感に満ちた戦場と隊内部の対立や戦争を生き抜こうとする兵士たちの日常、ベトナム戦争の恐ろしさを細部までリアルに描いた戦争ドラマ映画が観たい人にオススメな作品です。