アメリカ人戦争捕虜が語る闇に葬られた真実を描いた戦争アクション
シドニー・J・フューリーが監督を務めた、2006年製作のカナダ・アメリカの戦争アクション映画、『アメリカン・ソルジャーズ 闇に葬られた真実』。
ベトナムで戦ったアメリカ兵300万人、1835人の戦争捕虜は現在も消息不明の状態。
地獄のような緊迫状態にさらされた、米兵たちの終わりなき泥沼の戦場や、死の恐怖から狂わされていってしまうその姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
ベトナム戦争に参戦した米兵たちの、闇に葬られた真実を描いたリアルな戦争アクション映画、『アメリカン・ソルジャーズ 闇に葬られた真実』のネタバレあらすじや作品情報をご紹介いたします。
CONTENTS
映画『アメリカン・ソルジャーズ 闇に葬られた真実』の作品情報
【公開】
2006年(カナダ・アメリカ合作映画)
【脚本】
J・スティーヴン・モーンダー、ジョン・フロック
【監督】
シドニー・J・フューリー
【キャスト】
アリー・シーディ、ボビー・ホセア、マイケル・アイアンサイド、ショーン・バエク、ドナルド・バーダ、コリン・グレイザー、ジョセフ・グリフィン、ケニー・ジョンソン、ダニエル・カッシュ、マーティン・コーヴ
【作品概要】
『スーパーマンⅣ 最強の敵』(1987)のシドニー・j・フューリーが監督を務めた、カナダ・アメリカの戦争アクション作品です。
『ショート・サーキット』(1986)のアリー・シーディが主演を務め、『トップガン』(1986)や『ベイビー・キャッチャー』(2017)などに出演する、マイケル・アイアンサイドが共演しています。
映画『アメリカン・ソルジャーズ 闇に葬られた真実』のあらすじとネタバレ
1950年代、インドシナ戦争後に南北に分裂したベトナム国内で、北ベトナム側と南ベトナム側によるベトナム戦争が勃発。
北ベトナム側を支援する反サイゴン政権・反米・反帝国主義を標榜する統一戦線組織、「南ベトナム解放民族戦線(アメリカ合衆国民はベトコンと呼ばれている)」は、南ベトナムで武力を用いた反政府活動を続けました。
これを受け、アメリカ合衆国は南ベトナム側を支援するため、約300万人のアメリカ兵がベトナムへ派遣されました。
ベトナム戦争から30年以上経った今でも、1,835人のアメリカ人戦争捕虜が依然、行方不明のままでした。
ある日、次期大統領候補として挙げられている牧師兼上院議員のレイモンド・ワトソンは、アメリカ人戦争捕虜(PWO)や行方不明兵士(MIA)の調査を行っているベトナム帰還兵活動委員会の活動委員サラ・レイドから、ある手紙を受け取りました。
その手紙とは、匿名で送られた、ベトナム従軍時代の秘密を記したものでした。差出人は不明なものの、サラはこの手紙の主はPOWだと断定。
サラはレイモンドに、ベトナムで待つ手紙の差出人と会って欲しいと要請します。
レイモンドはちょうど、ベトナムである人物に会いたいと思っていたので、この要請を受諾しました。
30年前のベトナム従軍時代。アメリカ軍の第1偵察部隊に所属し、当時軍曹の階級についていたレイモンドは、仲間と一緒にバカ騒ぎした時にある女性と出会い、恋に落ちました。
その女性は、ベトナム人のメイリン。この時すでに、レジーナという妻がいたレイモンドにとって、メイリンと体の関係を持ったのは、彼曰く「ただの火遊び」でした。
メイリンは、しばらくしてレイモンドの子を身籠りました。しかし、レイモンドはベトナム戦争後、メイリンと生まれてきた息子を置き去りにして、そのまま仲間と一緒にアメリカへ帰国してしまったのです。
レイモンドは、30年ぶりにメイリンと再会し謝罪しましたが、当然メイリンと自身の息子に拒絶されてしまいます。
ホテルにチェックインし、部屋で寛ぐレイモンド。そこへ突如、謎の男が侵入し、彼を部屋に監禁します。
レイモンドを監禁し、銃を向ける男の正体は、手紙の差出人でした。そして男は、既婚者のレイモンドが、現地の女性と火遊びをしたこと、アメリカにいる家族が知らない隠し子がいることを知っていたのです。
同時刻、ベトナムに飛んだサラは、ベトナム帰還兵活動委員会同様、PWOやMIAの行方を捜索中の捜索司令部(JPAC)の職員デニスとマクドナルド、クーパーと合流。
レイモンドが泊まる部屋が見える、向かいの建物に張り込み、手紙の差出人の身元を特定しようとします。
サラたちに会話を盗聴されているとは知らない男は、レイモンドに、「俺はお前と同じ部隊にいた、当然同じ部隊にいたラムジー大尉のことを知っている」と告げました。
男曰く、レイモンドの上官であるラムジー大尉は、アメリカにいる彼の母親に、男の死亡を手紙で報告したのです。
実際には男は生きており、ベトナムでPWOとなっているとは知らない彼の母親は、ラムジー大尉の言葉を鵜呑みにしてしまいました。
そのため男は、アメリカに帰国して生きていることを伝えたくても、自分が死んだと信じて嘆き悲しんでたであろう彼女のことを思うと、今の今まで帰国できませんでした。
涙を流しながらそう嘆く男は、母親がよく歌ってくれたという子守歌を歌い始めます。
「君は僕の太陽だ、たった一つの太陽なんだ。僕を幸せにしてくれる、たとえ曇り空でも、希望を与えてくれた」
「ある夜のこと、夢を見たんだ。君を抱いていた、腕の中に。だけど…」その歌を聞いたレイモンドは、男が誰か思い出しました。
男の正体、それは当時第1偵察部隊にいたアメリカ海軍の衛星兵、マーク・ジョーダンでした。
しかし、サラたちが調べる限り、マークは遺体が発見されていないにも関わらず、レイモンドによる報告で戦死扱いされていたのです。
アメリカでは戦死者(KIA)として処理され、ベトナムではPWOとして酷い扱いを受けたであろうマーク。
彼は、自分の生存を喜ぶレイモンドに、激しい憎悪を抱いていました。それは30年前、ジャングル掃討戦で起きた、ある過ちが関係していました。
レイモンドたち第1偵察部隊は、民間人を装い南ベトナム軍の他、アメリカ軍・韓国軍などを攻撃するベトコンと、ジャングルの中で激しい銃撃戦を繰り広げていました。
その中で、レイモンドたちは、草むらから顔をのぞかせた少女たちに気づき、咄嗟に銃を向け射殺。彼女たちは武装していたものの、まだ子供でした。
そのことを話すマークと、レイモンドは口論しました。「俺たちは女を撃った、しかも子供だ」「でも彼女たちは、俺たちを殺そうとした」
「だから先に撃ったのか?俺たちは正しかったか?」「何故お前は、俺に銃を向けている?」
「なあレイ、俺を信じるか?」「俺は神を信じる」一触即発のレイモンドたち、そこへホテルの従業員が、マークが事前に頼んだルームサービスのベトナム料理を持ってきます。
そのおかげで、レイモンドたちの間に流れていた緊迫した空気は和み、2人は一緒にベトナム料理を食べることにしました。そのホテルの従業員が、実はデニスが事前に手配した協力者とは知らずに…。
ホテルの従業員の協力により、サラたちはレイモンドと今対峙している男が、マーク本人であるという確証を得ます。
同時刻、マークはベトナム料理を食べながら、レイモンドに自分がこの30年間、どうやって生きてきたかを話しました。
マークは6年4ヶ月と17日間、他の捕虜たちと一緒に敵地に捕らわれていました。ある日の朝、突然敵兵も警備も去ってしまったのです。
マークと他のPOWは、その隙に敵地を脱出。当時生きるのに必死だったマークは、他のPOWと一緒に帰国したくても出来ず、そのままベトナムで生活することになりました。
生き残った591人のPOWは、その後無事アメリカへ帰国。しかし、1,000人以上のPOWが帰国できておらず、マーク以外のPOWは未だ消息不明でした。
レイモンドはマークに歩み寄りたくても、彼に強く拒絶されてしまいます。そんなレイモンドの元に、サラから電話がかかってきました。
レイモンドは、マークに「妻からかかってきた」と嘘を言い、サラからの電話を受けました。
その電話で、レイモンドはサラから、他の生存者の話を聞きだして欲しいと指示を受けます。
サラはレイモンドの通話後、デニスと対立。マークの話を信じ、マークを含めた生存者を救いたいというサラの考えに対し、デニスは突如姿を現したマークの話など信じられず、彼には何か裏があるのではないかと疑っているのです。
サラはマークよりも、政府のことを疑っていました。POWやMIAの捜索に多額の予算を出した政府ですが、彼らが本当にPOWたちの居場所を知らないのか分からないからです。
その頃、レイモンドたちはベトナム従軍時代を思い出していました。防御線を死守するべく、レイモンドたち第1偵察部隊は船から陸に上がり、敵との激しい銃撃戦を繰り広げていました。
壁となる砂袋もなく、武器も弾も不足している最悪な状況。それでも誰かが、手榴弾をもって特攻し、救援に駆けつけるヘリの着地地点まで行き、ヘリに居場所を知らせなければなりません。
そこで名乗りを上げたのが、レイモンドたちに同行していた神父、ブラジンスキーでした。
ブラジンスキー神父の俊足と手榴弾の投下により、救援のヘリはレイモンドたちの居場所を特定し、彼らを全員救出することに成功。
安全な場所に避難できたレイモンドたちは、負傷兵を治療した後、ブラジンスキー神父と一緒に神に祈りを捧げ、死んでいった仲間を弔いました。
ブランジンスキー神父の功績を讃える第1偵察部隊でしたが、彼自身は「人を助けるために人(敵兵)を殺した」ことを悔やみ、素直に喜べませんでした。
一方デニスは、サラに消息不明のPOWやMIAに対して、2つの陰謀説が唱えられていることを話します。
1つ目は、MIAは無人島に送られた説。2つ目は、MIAやPOWには新しい身分が与えられているのではないかという説でした。
それを聞いてもサラは、戦死したと聞かされた自身の父親と、消息不明のアメリカ人戦争捕虜が、今もどこかで生きているのではないかと信じたい気持ちでいっぱいでした。
映画『アメリカン・ソルジャーズ 闇に葬られた真実』の感想と評価
ベトナム戦争後、1835人のアメリカ人戦争捕虜が消息不明となりました。その内の1人、マークがレイモンドと接触した話です。
マークの口から語られたのは、ベトナム戦争時にアメリカ軍が犯した過ちでした。
レイモンドたち第1偵察部隊はまず、ジャングル掃討戦の時、武装していたとはいえ、民間人の少女たちを殺してしまいました。
2つ目は、ベトコンによる度重なる襲撃により、常に猜疑心に駆られていたアメリカ軍が、ベトコンとの関与が疑われたベトナムの村落へ虐殺行為を行ったことです。
この2つは、レイモンドたち第1偵察部隊も、少なからず心を痛めた過ちでしょう。劇中に描かれたレイモンドたちの、苦悶の表情を見ると、観ているこちらが胸が痛くなります。
そして、マークが一番告白したかったこと。それはベトコンとの市街地戦の時、彼の告白を聞いてから態度を豹変させたレイモンドが、敵に捕まった彼を見捨てたことです。
その当時、マークがどんな思いをしたのか考えるだけで、胸が締めつけられます。しかし、マークの必死の告白もむなしく、非情なレイモンドとサラによって、その真実は闇に葬られてしまうのです。
レイモンドたち第1偵察部隊と、ベトコンとの激しい銃撃戦が繰り広げられた場面は、何が起こるか分からないハラハラドキドキしたスリルと、大迫力のアクション場面に興奮を味わえます。
まとめ
ベトナム戦争後、消息不明だったアメリカ人戦争捕虜マークが、闇に葬られてしまった真実を告白する、カナダとアメリカ合作するリアルな戦争アクション作品でした。
本作の見どころは、ベトナム戦争時のアメリカ軍とベトコンによる激しい銃撃戦と、マークの口から語られた当時の真実です。
そして物語の終盤では、レイモンドとサラが、ベトナムに来た本当の理由が明かされます。
彼ら2人は、アメリカ軍がベトコンとの関与が疑われた村落へ、虐殺行為を行った真実を知るマークを、口封じのために始末しに来たのです。
これまで、マークを救おうとしてくれる側の人間だと思っていたレイモンドたちが、真実を隠蔽しようとするアメリカ政府のために動く、冷徹な人間に変貌する瞬間。
デニスたち同様、観ているこちらも、本作で一番驚愕した場面です。そして、2人の手によって予想外な幕引きがされたことに、愕然とします。
ベトナム戦争後を生き抜いたアメリカ人戦争捕虜の告白と、ベトナム戦争時に起きた真実が闇に葬られてしまった瞬間を描いた、戦争アクション映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。