トム・クランシーの小説『レッド・オクトーバーを追え』を映画化!
ジョン・マクティアナンが監督を務めた、1990年製作のアメリカのポリティカル・アクション映画『レッド・オクトーバーを追え!』。
冷戦時代のソ連。超静音航行システム「キャタピラー・ドライブ」を搭載した原子力潜水艦「レッド・オクトーバー」の艦長マルコ・ラミウスはソ連政府に不満を持ち、アメリカへの亡命を企てていました。
その頃、不審な行動をするレッド・オクトーバーを調査していたCIAのアナリストのジャック・ライアンは、ラミウスの意図を見抜くも相手は海の下。しかもレッド・オクトーバーを狙う者は多く………。
映画『レッド・オクトーバーを追え!』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
映画『レッド・オクトーバーを追え!』の作品情報
【公開】
1990年(アメリカ映画)
【原作】
トム・クランシー
【監督】
ジョン・マクティアナン
【キャスト】
ショーン・コネリー、アレック・ボールドウィン、スコット・グレン、サム・ニール、ジェームズ・アール・ジョーンズ、ピーター・ファース、ティム・カリー、コートニー・B・ヴァンス、ステラン・スカルスガルド、ジェフリー・ジョーンズ、リチャード・ジョーダン、ジョス・アックランド、ゲイツ・マクファーデン、トマス・アラナ、ティモシー・カーハート、ロナルド・ガットマン、ボリス・リー・クルトノグ、アナトリー・ダヴィドフ、イワン・グヴェラ、アルトゥール・ギブルスキー、アンソニー・ペック、ラリー・ファーガン、ネッド・ヴォーン、クリストファー・ヤンチャル、ピーター・ツィンナー、フレッド・トンプソン、ダニエル・デイヴィス
【作品概要】
『プレデター』(1987)や『ダイ・ハード』(1989)のジョン・マクティアナンが監督を務めた、アメリカのポリティカル・アクション作品。
軍事や諜報活動を行うテクノスリラー小説を数多く執筆したアメリカの小説家トム・クランシーの小説『レッド・オクトーバーを追え』を映画化した本作は、1991年第63回アカデミー賞音響効果編集賞を受賞しました。
「007」シリーズや『アンタッチャブル』(1987)のショーン・コネリーが本作の主演を務め、「ミッション:インポッシブル」シリーズのアレック・ボールドウィンと共演しています。
映画『レッド・オクトーバーを追え!』のあらすじとネタバレ
1984年11月。ソ連大統領ミハイル・ゴルバチョフの政権前夜、ソ連のタイフーン級原子力潜水艦がグランド・バンク南方に浮上。原子炉損傷の気配を見せ、再び深海に姿を没しました。
乗組員救出の未確認情報もありますが、米ソ両国の政府はともにこう発表しています。
「この映画が描こうとするような事件が、起こった事実は一切ない」と。
ソ連・ムルマンスクに近いソ連潜水艦基地の北方、ポリャルヌイ水路。過去10年間、艦長として最新級の潜水艦を次々に指揮したソ連海軍のマルコ・ラミウス大佐は、超静音航行システム「キャタピラー・ドライブ(磁気水力推進装置)」を搭載したタイフーン級原子力潜水艦「レッド・オクトーバー」の処女航海任務を任されました。
ラミウスはレッド・オクトーバーを指揮し、かつての教え子であるヴィクトル・ツポレフ中佐が指揮するソ連海軍のアルファ級攻撃型原子力潜水艦「コノヴァロフ」との合同模擬演習を行うため、ムルマンスク港を出航。
直後に政治士官のイワン・プーチン上級中尉を事故に見せかけて殺害し、アメリカ東海岸でミサイル演習を行いつつ常夏の港ハバナに向かうという、偽の命令を館内にいる乗組員たちに伝えます。
さらにラミウスは出航に先立ち、モスクワのソ連海軍艦隊政治部にいる亡き妻の伯父、ユーリ・イリイチ・パドーリン海軍政治部長宛てに手紙を送っていました。
同じ頃、出航時からレッド・オクトーバーの追尾を行っていたアメリカ海軍のロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦「ダラス」は、音響特徴分析システム(SAPS)を使ってレッド・オクトーバーを発見。
この情報を受けた中央情報局(CIA)情報担当副長官のジェームズ・グリーア海軍中将は、潜水艦に精通するCIAのアナリストである元アメリカ海兵隊員ジャック・ライアンに、レッド・オクトーバーについての調査を命じます。
ライアンはアメリカ海軍の技術開発顧問をしている元潜水艦艦長のスキップ・タイラーのもとを訪れ、レッド・オクトーバーの艦首と艦尾に見られるドアは、未だアメリカも開発できていないキャタピラー・ドライブであることを知りました。
しかし時すでに遅し、キャタピラー・ドライブを作動させたレッド・オクトーバーは後方にいるダラスの前から姿を消したのです。歌声と共に。
さらにポリャルヌイ上空を通過していた偵察衛星は、ソ連艦隊の主力である58隻の原子力潜水艦の出航を確認。大西洋を目指していることが判明。
グリーアはライアンを伴い、統合参謀本部の者たちも呼ばれているアメリカ大統領の国家安全保障補佐官ジェフリー・ペルトのもとへ向かい、ライアンにレッド・オクトーバーについての調査報告をさせます。
すると国家安全保障局から、内容は不明であるもののラミウスからの手紙を受け取ったパドーリンは直ちに首相のチェルネンコのところへ行き、その会談の直後に「レッド・オクトーバーを追い撃沈せよ」との命令が下ったという極秘事項が報告されたのです。
レッド・オクトーバーの目的が分からず混乱するアメリカ政府上層部に対し、ライアンはラミウスの目的がアメリカへの亡命にあると気づきます。
その理由は、今日11月23日がラミウスの妻の1周忌だから。実はライアンは一度、ソ連・レニングラードの領事館の夕食会で「潜水艦乗りの鑑」と言われる彼に会ったことがありました。
アメリカ海軍上層部はこのライアンの予想を否定しました。ですがペルトは、ライアンにその仮説を証明するための3日間の猶予を与えます。
ライアンは海兵隊時代、ヘリ事故に遭い重傷を負ったトラウマにより苦手な飛行機に乗せられ、北大西洋ノバスコシア沖にあるアメリカ空母「エンタープライズ」へと派遣されました。
一方ラミウスは、副長のヴァシリー・ボロディン中佐たち、信頼する子飼いの部下に、退路を断つためにパドーリンに亡命の意思を伝える手紙を出したことを伝えました。
ラミウスはレッド・オクトーバーの設計図を見た時、アメリカへの亡命を決意。しかし肝心の亡命する理由については、ヴァシリーたちに明かしませんでした。
ヴァシリーたちは、なぜモスクワに知らせ、アメリカへの亡命に政治的な関連づけを行ったのか疑問を抱きます。
ですがラミウスはモスクワのことやソ連海軍のことは問題視しておらず、むしろアメリカ側がどう対処してくるのかが問題だと考えていました。
ラミウスの指揮により、順調に進んでいるかに思えたレッド・オクトーバーでしたが、冷却装置の故障によりキャタピラー・ドライブの中の温度が危険レベルの50度を突破。原子炉が溶融する危機に陥ってしまいます。
キャタピラー・ドライブの修理のため、やむを得ずスクリューに切り替え通常航行することに。しかし航行音が出てしまったことで、アイスランド南方上空にいるソ連対潜航空機に見つかってしまい、魚雷攻撃を受けてしまいます。
魚雷攻撃を何とか避けるも、ラミウスの亡命の意図を知らない下士官や乗組員たちの不安が広がってしまいました。
また、冷却装置の故障理由は、回線が引き抜かれていたことから、誰かが故意にキャタピラー・ドライブを故障させたことが判明。つまり乗組員の誰かが破壊工作を行ったということです。
その頃、7時間も遅れて撃沈命令を知ったツポレフは、レッド・オクトーバーを猛追します。
同じく、ダラスのソナー員ロナルド・ジョーンズ二等兵曹は、歌声の背後に聞こえた音を探知・分析し、その軌跡からレッド・オクトーバーの航行ルートを予測。
海溝探知が進んでいるソ連海軍の潜水艦用の高速道路(ルート1)の出口に先回りすることを、ダラスの艦長バート・マンキューソ中佐に進言しました。
映画『レッド・オクトーバーを追え!』の感想と評価
地上ではペルトとアンドレイによる政治的駆け引きが、海中・海上ではラミウスとライアン・マンキューソーによる軍人同士の駆け引きが繰り広げられており、とてもハラハラドキドキさせられます。
ラミウスたちの亡命も、内部の裏切り者による破壊工作によって一時はどうなることかとハラハラさせられました。ですがラミウスの亡命を見抜いたライアンの介入により、ラミウスたちの亡命は無事成功、米ソの外交問題も発生せずすんだことは誰もが心の底から安堵することでしょう。
男たちの熱き人間ドラマはもちろん、物語の終盤で描かれる原子力潜水艦同士の手に汗握る戦いはミリタリー好きやそうでない人もワクワクドキドキしてとても胸アツです。
連絡を取り合っていないにもかかわらず、ダラスがコノヴァロフから放たれた魚雷の目標を攪乱させたり、それを見たマンキューソーがレッド・オクトーバーをコノヴァロフの正面へと旋回し、魚雷を誘導させたりしたあの連携の取れた行動は本当に格好良くて何度も見返したくなるほど惚れ惚れします。
終始手に汗握る場面が展開される中、ラミウスの「ライアン、やたらに撃つな。ここの装置はみな銃弾に弱い」という言葉に対し、ライアンがツッコミを入れたり「おれも銃弾に弱い」と愚痴をこぼす姿は一瞬緊張がほぐれてふっと笑ってしまいますね。
まとめ
とある理由からアメリカへの亡命を決意した艦長が指揮するソ連の新型原子力潜水艦をめぐる米ソの人々の思惑を描いたアメリカのポリティカル・アクション作品でした。
本作の見どころは、ソ連政府に嫌気がさしたラミウスと彼の信頼する子飼いの部下たちによるアメリカへの亡命、ラミウスの目的・考えを読んだライアンとアメリカ海軍がそれを手助けするところ、原子力潜水艦同士による手に汗握る海中戦です。
ラミウスたちだけでは、ライアンだけの手助けだけでは、彼らのアメリカへの亡命は成し遂げられなかっただろうと考えると、米ソ両国の外交問題に発展せず、またラミウスたちも先に避難した乗組員たちも皆無事で解決できたのは本当に凄いことだなと実感させられます。
そして何より、ラミウス役のショーン・コネリーやライアン役のアレック・ボールドウィンら実力派俳優による鬼気迫る演技に、ちょっとしたユーモアあふれる演技、「ダイ・ハード」シリーズ並みのド派手な爆発シーンが見られる本作はまさに傑作。この大ヒット作品をぜひ一度観て欲しいです。