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Entry 2017/10/10
Update

韓国映画『密偵』あらすじ感想と評価解説。キャスト一覧から見る俳優と見どころを考察

  • Writer :
  • 西川ちょり

韓国を代表する実力派俳優ソン・ガンホ主演のサスペンスアクション『密偵』

11月11日(土)より、シネマート新宿、シネマート心斎橋にて公開される韓国映画『密偵』をご紹介します。

疑うべきは敵か、味方か、密偵は誰なのか!?

日本統治時代の1920年代の京城と上海を舞台に、武装独立運動団体「義烈団」と彼らを追う日本警察との攻防を描いたスリル満点の究極のサスペンス・アクション巨編です。

映画『密偵』の作品情報


(C)2016 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

【公開】
2017年(韓国映画)

【原題】
The Age of Shadows

【監督】
キム・ジウン
【キャスト】
ソン・ガンホ、コン・ユ、ハン・ジミン、鶴見辰吾、シン・ソンロク、オム・テグ、ソ・ヨンジュ、チェ・ユファ、パク・ヒスン、イ・ビョンホン

【作品概要】
1920年代、日本統治下の朝鮮半島。武装独立運動団体「義烈団」監視の特命を受けたイ・ジョンチュルは、義烈団のリーダーであるキム・ウジンに接近する。

彼らは日本警察に正体を見破られたと判断するや、上海に逃亡し、爆弾づくりのプロと接触。義烈団は京城に爆弾を持ち込み、朝鮮総督府を爆破する計画を立てていた。

敵か味方か?密偵は誰か?京城行きの列車が動き出した。

ソン・ガンホ(イ・ジョンチュル役)のプロフィール


(C)2016 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

1967年、慶尚南道金海生まれ。1991年、『童僧』で演劇デビューし、舞台俳優として活躍。1996年、ホン・サンス監督の『豚が井戸に落ちた日』で映画デビューを果たします。

コミカルな演技を見せた『ナンバー・スリー No.3」(97・日本劇場未公開、ソン・ヌンハン監督)では、劇中の台詞を真似るのが大流行し、”ソン・ガンホシンドローム”を巻き起こしました。

さえない銀行マンが、夜は覆面プロレスラーとして奮闘する姿を描いた 主演作『反則王』(00、キム・ジウン監督)では多くのスタントを自らこなしてヒットに導きました。

日本でも大ヒットした『シュリ』(1999、カン・ジェギュ監督)、『JSA』(2000、パク・チャヌク監督)など話題作に次々出演し注目を集め、『殺人の追憶』(03)、『グエムル 漢江の怪物』(2006)、『スノーピアサー』(2013)でボン・ジュノ監督と組み、その地位を不動のものにします。

その他の主演映画に『大統領の理髪師』(2004、イム・チャンサン監督)、『優雅な世界』(2007ハン・ジェリム監督)、『グッド・バッド・ウィアード』(2008、キム・ジウン監督)、『渇き』(2009、パク・チャヌク監督)、『弁護人』(2013、ヤン・ウソク監督)など。

時にコミカルに、時にシリアスに、人情に厚い役柄を演じ、韓国を代表する実力派俳優として活躍中。

コン・ユ(キム・ウジン役)のプロフィール


(C)2016 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

1979年生まれ。韓国・釜山出身。慶熙大学校演劇映画科卒。大学時代にアルバイトで、韓国ケーブルチャンネルのエンタメ情報番組MnetのVJを務める傍ら、モデルとして活躍。

『同い年の家庭教師』(2002・日本劇場未公開、キム・ギョンヒョン監督)でスクリーンデビューを果たします。

テレビドラマ『乾パン先生とこんぺいとう』(2005)、『ある素敵な日』(2006)などに出演。2007年の『コーヒープリンス1号店』が大ヒットし、MBC演技大賞優秀賞を受賞。一躍人気スターとなります。

兵役を経て、2011年に自ら映画化し、主演した『トガニ 幼き瞳の告発』(ファン・ドンヒョク監督)が、韓国で社会現象を巻き起こします。光州市のある聴覚障がい者の学園で実際に起きた実話を基にしたこの作品は、社会に大きな衝撃を与え、障害者や、13歳未満への虐待に対する公訴時効の撤廃などを定めた”トガニ法”が制定されました。

その後、『サスペクト 哀しき容疑者』(2013)、『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)、『男と女』(2016)でも主演を務めています。

『新感染 ファイナル・エクスプレス』は、2016年に韓国で観客1000万人を記録し、ハリウッドでのリメイクも決定する大ヒットとなりました。

『密偵』のキム・ジウン監督は、コン・ユについて「快適な温度で皆の心をかき回し、動かし、そして震わせることのできる俳優が果たしてどれくらいいるのかと考えてみた時、コン・ユは確実に一歩抜きん出ている」と評しています。

イ・ビョンホン(チョン・チェサン役)のプロフィール


(C)2016 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

1970年ソウル生まれ。デビュー作はテレビドラマ『アスファルト、我が故郷』。

1995年のスクリーンデビュー作『誰が俺を狂わせるのか』(ク・イムソ監督)と同年の『ラン・アウェイーRUN AWAY―』(キム・ソンス監督)で各映画賞の新人賞を受賞。大ヒット作『JSA』(2000、パク・チャヌク監督)では韓国軍兵士を演じ、第1回釜山映画評論家協会賞・主演男優賞を受賞しています。

テレビドラマ『美しき日々』(2001)は日本でも放送され好評を博しました。日本のテレビドラマにも出演しています。

『バンジージャンプする』(2001、キム・デスン監督)、『純愛中毒』(2002、パク・ヨンフン監督)、『甘い人生』(2005、キム・ジウン監督)、『グッド・バッド・ウィアード』(2008、キム・ジウン監督)、トラン・アン・ユン監督と組んだ『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』(2009)など、次々と話題作に主演。『王になった男』(2012、チュ・チャンミン監督)は、韓国内で1,200万人以上を動員する大ヒットとなり、第49回大鐘賞主演男優賞と人気賞をダブル受賞しました。

『G.I.ジョー』(2009、スティーヴン・ソマーズ監督)でハリウッドデビューを果たし、以後も、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(2015、アラン・テイラー監督)、『マグニフィセント・セブン』(2016、アントワーン・フークア監督)などハリウッド映画に出演。国際的に活躍する韓国のトップスター俳優のひとりです。

映画『密偵』のキム・ジウン監督とは?

1964年生まれ。韓国ソウル出身。ピョン・チャンホ監督の助監督として映画界入りし、『幼い恋人』(1994)の助監督を担当。

その後、演劇界に活躍の場を移しますが、1998年、『クワイエット・ファミリー』で監督デビューを果たします。

続いて、ソン・ガンホを主演に迎え、プロレス・アクションに挑んだ『反則王』(2000)が大ヒット。2003年のホラー映画『箪笥 たんす』はハリウッドでリメイクされ、国際的にも大きな注目を集めました。

その後も、イ・ビョンホン主演の『甘い人生』(2005)、マカロニ・ウェスタンの名作『続・夕陽のガンマン』を下敷きにしたアクション映画『グッド・バッド・ウィアード』(2008)、『悪魔を見た』(2010)など多彩なジャンルを手がけています。

13年にはアーノルド・シュワルツェネッガーのカリフォルニア州知事退任後初の主演作『ラストスタンド』を監督し、ハリウッド進出を果たしました。

ソン・ガンホ、イ・ビョンホンと組むことが多く、「この二人は私の違う二つの気質を一番完璧に表現してくれる俳優たちだ」と述べています。

映画『密偵』のあらすじ

朝鮮半島が日本統治下に置かれていた1920年代。武装独立運動団体「義烈団」のメンバー、キム・ジャンオクは、日本の資産家に、仏像の骨董品を買うようもちかけていました。

活動の資金作りのためですが、資産家の男はそれをまがいものだと決めつけ、のらりくらりと時間をかせぎます。不信に思ったキム・ジャンオクがあたりを伺うと、屋敷は日本警察にとり囲まれていました。

そこに、総統府刑務局部長の東からキム・ジャンオクを生け捕りにせよと特命を受けたイ・ジョンチュルが到着します。

彼は上海在中時、通訳として得た情報を日本政府に売り、その功績で警務に任命されたという経歴を持つ男です。キム・ジャンオクとは旧知の仲でした。

彼の指揮を無視した日本警察のせいで、キム・ジャンオクは銃撃され負傷。立て籠もったところへイ・ジョンチュルが説得に現れますが、「大韓独立万歳!」と叫んで自殺してしまいます。

イ・ジョンチュルは、東警部からキム・ウジンという男に近づいて諜報活動をするよう、さらに、日本人の橋本と組み、情報を共有するようにという新たな命令を受けます。

橋本は義烈団の団長チョン・チェサンを追い続けているとのこと。彼は東に「中国から来たヨン・ゲスンを知っていますか?」と問いかけました。

チョン・チェサンの秘書役をつとめている女で、この女さえ捕まえればチョン・チェサンの首を盗ったも同然と彼はいいます。ただし、この女の顔を誰も知らないとも。

イ・ジョンチュルはキム・ウジンに近づきますが、キム・ウジンは既に彼の正体を知っていました。二人は互いに素知らぬふりをして、酒を酌み交わしました。

家に戻ったキム・ウジンは、日本の警察がかぎつけたらしいと無線でチョン・チェサンに報告します。

一方、イ・ジョンチュルは、義烈団が京城に入った時の動線を突き止めていました。ヨン・ゲスンは修道院に潜伏し、キム・ウジンが営むヨンセン写真館と人力車団員が、彼らの隠れ蓑となっていたことがわかりました。

やはり、キム・ウジンは義烈団の中心的人物だったことが判明しますが、橋本が情報を横取りし、イ・ジョンチュルを出し抜こうとします。

それに気づいたイ・ジョンチュルは橋本を妨害。その間に、キム・ウジンたちは上海へと逃亡します。

上海では、チョン・チェサンが爆弾の専門家である外国人を呼び寄せていました。彼らは爆弾を製造し、京城に持ち込む計画を立てていました。ターゲットは朝鮮総督府です。

しかし状況は厳しく、それを打破するため、チョン・チェサンは大胆な提案をします。敵の密偵であるイ・ジョンチュルを抱き込もうというのです。

「危険すぎます」と他のメンバーは反対しますが、チョン・チェサンは言うのでした。「密偵は敵にも味方にもなる。それを利用してやろう」。

果たして彼らは京城に乗り込むことが出来るのでしょうか? そしてイ・ジョンチュルにはどのような運命が待ち受けているのでしょうか!? そしてさらなる密偵が!?

映画『密偵』の感想と評価


(C)2016 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

本作は、キム・ウジン監督が『悪魔を見た』(2010)以来、久しぶりに韓国で撮った作品です。

時代を生き抜くために、日本政府に迎合している男が、祖国を取り戻すために命をかけて戦う同胞の姿を見て、心を揺さぶられる様をソン・ガンホが貫禄の演技で見せてくれます。

キム・ウジン監督は、『グッド・バッド・ウィアード』(2008)を撮った際、朝鮮半島が一つの国で大陸とつながっていた時の意味を考えていたと語っています。

そうした時代的背景への関心とスパイ映画を作ってみたいという欲求が結びつき、本作が生まれました。この時代背景だからこその魅力に溢れた傑作に仕上がっています。

今年日本でも公開され話題を読んだ『お嬢さん』も、同時代を背景にしていました。

『お嬢さん』では舞台となる当時の屋敷の豪著さが、作品の核となっていたように、本作も、朝鮮総督府の豪華な内装、当時の町並みの再現、絢爛豪華なパーティーシーンなど、美術面での充実が映画をより豊穣なものにしています。

冒頭、義烈団のメンバーを日本警察が屋根に上がって追う姿は、日本の観客にはチャンバラ映画で盗賊を岡っ引きが追うシーンを思い出させるのではないでしょうか。

塀を隔てて追う者と追われる者が一瞬並走するしびれるシーンもあります。

その一方、上海から京城へと向かう列車シーンでの限られたスペースを使ったスリルとサスペンスも目が離せません。

まとめ


(C)2016 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

ソン・ガンホ扮するイ・ジョンチュルとコン・ユ扮するキム・ウジンとの複雑な関係も見どころの一つです。

イ・ビョンホンはカメオ出演ですが、さすがの存在感! 義烈団を徹底的に追い込む総統府刑務局のナンバー2,東部長に扮した鶴見辰吾の冷徹ぶりにも注目です!


(C)2016 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

『グッド・バッド・ウィアード』では、グレン・ミラーの「ムーンライトセレナーデ」が効果的に使われていましたが、本作でも、ルイ・アームストロングの「When You’re Smiling」、ラヴェルの「ボレロ」をキム・ジウン監督は絶妙なセンスで使用しています。

どのシーンで流れるか、是非映画館で確かめてみてください。

映画『密偵』は、11月11日(土)より、シネマート新宿、シネマート心斎橋で公開されます!!

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