崩壊した世界で繰り広げられる攻防戦!「マッドマックス」シリーズの真骨頂!
家族を失ったマックスの復讐劇を描いた、1979年公開の『マッドマックス』。
それから数年後となる、崩壊した世界でのマックスの新たな戦いを描いた『マッドマックス2』(1981)。
文明が発達した未来とは、正反対の未来世界を描き、後にさまざまな作品に影響を与えた『マッドマックス2』。
2015年に大ヒットした『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の基盤となった作品とも言える、本作の魅力をご紹介します。
CONTENTS
映画『マッドマックス2』の作品情報
【公開】
1981年(オーストラリア映画)
【原題】
Mad Max II
【監督・脚本】
ジョージ・ミラー
【共同脚本】
テリー・ヘイズ、ブライアン・ハナント
【キャスト】
メル・ギブソン、ブルース・スペンス、バーノン・ウェルズ、エミル・ミンティ、マイク・プレストン、ケル・ニルソン、バージニア・ヘイ、シド・ヘイレン
【作品概要】
低予算ながら、世界中で異例の大ヒットを記録した『マッドマックス』の続編。前作と大きく変わった世界を舞台に、マックスとヒューマンガス率いる暴走族の、ガソリンを巡る戦いを描いたバイオレンスアクション。
主役のマックスを前作に引き続き、メル・ギブソンが演じています。演出は前作に続き、ジョージ・ミラー監督。
映画『マッドマックス2』のあらすじとネタバレ
2国間の戦争により、文明が崩壊した世界。
特に石油の精製機能が失われ、世界的に不足したことにより、ガソリンが貴重な資源になっていました。
荒野が広がる世界で、何もかもを失い、自暴自棄になっているマックスは、相棒の犬と共に荒野を走り、ガソリンを奪うだけの毎日を送っています。
ある時、マックスは偶然遭遇した暴走族と、激しいガソリンの奪い合いを展開します。
暴走族を蹴散らし、ガソリンを手に入れたマックスは、暴走族の一員、ウェズと睨み合いになりますが、ウェズは何もせずに立ち去ります。
荒野を走り続けるマックスは、放置されたジャイロコプターを見つけ近寄ります。そこには、ジャイロコプターの所有者である、ジャイロキャプテンが待ち構えていました。
マックスは一度ジャイロキャプテンに捕まりますが、ジャイロキャプテンが犬に噛みつかれた隙を狙い脱出します。
マックスに殺されそうになったジャイロキャプテンは「大量のガソリンがある場所を知っている」と、マックスを案内します。
そこは、ガソリンの精製工場を中心にした、小さな集落でした。集落を見張るマックスは、集落の周囲に暴走族がいることに気付きます。
暴走族もまた、集落にある大量のガソリンを狙っていました。
ジャイロキャプテンを手錠で繋ぎ、日夜集落を見張るマックスは、集落から出て来た男が、暴走族に襲撃されている場面に遭遇します。
男を助けたマックスは、男を連れて集落の内部に入ります。
男を助けた引き換えに、ガソリンを要求するマックスですが、不審に感じた集落の住人と、リーダーのパッパガーロに追い出されそうになります。
そこへ、ウェズと暴走族が現れ集落を包囲します。
暴走族のリーダー、ヒューマンガスは、集落で独占しているガソリンを渡すように要求します。そこへ、集落に住むフェラル・キッドが現れ、鉄製のブーメランで暴走族を攻撃します。
暴走族は、一時的に撤退しますが、ヒューマンガスは、集落のガソリンを全て奪うつもりです。
最初から、ヒューマンガスとの取引に応じるつもりはなかったパッパガーロは、集落のガソリンを全て、別の場所に移送することを計画していました。
その為にはトレーラーが必要でしたが、外に出れば暴走族の襲撃にあいます。
トレーラーに心当たりがあるマックスは、ガソリンと引き換えに「自分がトレーラーを持って来る」と約束します。
映画『マッドマックス2』感想と評価
1作目とは大きく変わった、文明が崩壊した世界で、暴走族との激しい攻防戦を描いた『マッドマックス2』。
映像作品で描かれる未来世界と言えば『ブレードランナー』(1982)のような、高いビルが立ち並び、乗り物が空を飛ぶような、文明が発展したからからこその「ディストピア」が多かったのですが「何も残っていない世界」を舞台にした『マッドマックス2』の未来像は、その斬新さから衝撃を与えました。
登場する暴走族も、1作目はまだ暴走族と分かる見た目だったのが『マッドマックス2』に登場する暴走族は、仮面を被った大男率いる集団が、改造バギーを乗り回すという、もはや暴走族とは違う荒くれ者集団になっています。
低予算で製作された『マッドマックス』の、10倍の予算が組まれた『マッドマックス2』ですが、予算のほとんどが車の改造や、セットの建設に使用されており、ジョージ・ミラー監督が絶望的な世界観の構築に、かなり力を入れたことが分かります。
独特の世界観が広がる『マッドマックス2』ですが、この絶望的な独特の世界観が、何故現在も根強いファンを持つ人気シリーズになったのでしょうか?
『マッドマックス2』は実は西部劇
実は『マッドマックス2』の基盤になっているのは西部劇で、分かりやすく、受け入れやすい設定になっています。
何も無い荒野は、西部開拓時代を連想させますし、暴走族はならず者たち、そして対するマックスは、ならず者と戦うカウボーイという構図です。
2017年に日本で開催された「マッドマックス・コンベンション2017」に登壇した、ジャイロキャプテン役のブルース・スペンスは、ジョージ・ミラーから「『シェーン』と黒澤明監督の『用心棒』を観ておくように」と言われたと語っているので、西部劇または時代劇の構造を強く意識していることが分かります。
ブルース・スペンスは「ウエスタン映画によくある“ヒーロー”と“コミカルなパートナー”で言うと、ジャイロは後者」と意識しながら、ジャイロキャプテンを演じました。
世界観のビジュアルは斬新でも、根底にあるのは親しみやすい、王道の設定だった訳ですね。
無法者から英雄へとなるマックス
「マッドマックス」シリーズの主人公、マックスのキャラクターも『マッドマックス2』から大きく変わります。
1作目では、警察官としての正義と家族への愛を持ち、それらが暴走族への憎悪へと変わるという、実に人間らしい感情を持っていたマックスですが、『マッドマックス2』では何もかもを失い「荒野を彷徨う亡霊」と化します。
荒野を走りガソリンを奪い続けるマックスは、暴走族と変わらない存在となってしまいました。
1作目でマックスは「俺も暴走族も変わらない、バッジがあるかどうかだけ」と言っていましたが、皮肉的にもその言葉通りになってしまっています。
ただ、マックスは集落の人間と出会い、助けられたことで「命を捨てるのではなく、人の為に命を使う」ことに目覚めます。
ここからマックスは、集落の人達の力になる為に戦う英雄となっていきます。
本作のラストで、マックスが命がけで運んだトレーラーには、ガソリンではなく砂が積まれていたことが分かります。
集落の民に騙されたことが分かったマックスが、ジャイロキャプテンと2人で笑うのですが、作品を通して、マックスが笑顔を見せるのはこの場面だけで、僅かながら「人間の心が戻った」ことを感じる、印象的な場面です。
『マッドマックス2』の物語は非常にシンプルで、マックスの台詞も少なく16行ぐらいしかないそうです。
それでも物語を通して、少ない台詞でマックスの心情の変化を描いているのは見事です。
無法者と英雄の攻防戦!
『マッドマックス2』最大の見せ場は、クライマックスのガソリンを巡る攻防戦です。
大量のガソリンを運ぶマックスと、それを狙う暴走族の激しいカーチェイスは、あちこちで爆発したバギーが宙を舞う凄まじい場面となっています。
マックスが運転するトレーラーに、次々と襲いかかって来る暴走族たちは「列車強盗」を連想させ、やはりここも西部劇を意識していますね。
ただ、銃弾もほとんど無い為、マックスの武器は運転技術のみとなります。
そして激しい攻防戦の末、暴走族のリーダー、ヒューマンガスは、最後に割とあっけなく倒されます。
ボスが結構あっけないのも「マッドマックス」シリーズの定番となっていますので、そこも楽しみましょう。
まとめ
独特の世界観が衝撃的で、いまも根強いファンを持つ『マッドマックス2』。
暴走族が捕まえた人質を、車の先端に括り付けたり、多くを語らない英雄マックスなど『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に引き継がれた要素も多いです。
多くの人を救っても、自身の根本的な問題は解決されず、マックスは孤独を抱えたまま救われないという部分は、シリーズを通しての特徴となっています。
この「孤独な英雄」というマックスのヒーロー像こそ、多くのファンの心を掴む、一番の魅力であり、それが確立されたのが『マッドマックス2』という作品です。