Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

アクション映画

Entry 2022/08/12
Update

【ネタバレ】マッドマックス(1979)|結末あらすじ感想と評価解説。ラスト16分の復讐リベンジは妻子を殺されたことでシリーズ伝説化へ!

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

凶悪な暴走族に妻子を奪われた、警官マックスの復讐劇

荒廃した近未来を舞台に、無法者たちとの激しい戦いを描いた「マッドマックス」シリーズ。

その1作目となる『マッドマックス』は、妻子を奪われ「処刑人」となったマックスと、暴力の限りを尽くす暴走族の激しい戦いを描いたバイオレンスアクションです

2015年には『マッドマックス 怒りのデス・ロード』も話題になり、今もなお根強い人気を誇る「マッドマックス」シリーズ。

その原点とも言える『マッドマックス』は、1979年に製作された作品で、当時ほとんど知られていなかったオーストラリア製の映画を、世界に知らしめた作品です。

低予算で製作され、世界中で大ヒットしたことにより、かつては「製作費と興行収入の差が最も大きい映画」として、ギネスブックにも掲載されていた『マッドマックス』。

何故、ここまでの大ヒットを記録し、今もなお語り継がれているのでしょうか?

本作が持つ魅力を、考察していきます。

映画『マッドマックス』の作品情報


(C)Crossroads International Finance Company, N.V.

【公開】
1979年公開(オーストラリア映画)

【原題】
Mad Max

【監督・脚本】
ジョージ・ミラー

【共同脚本】
ジェームズ・マッカウスランド

【キャスト】
メル・ギブソン、ジョアンヌ・サミュエル、ヒュー・キース=バーン、スティーブ・ビズレー、ティム・バーンズ、ロジャー・ウォード

【作品概要】『
荒廃した近未来を舞台に、警察官であるマックスの復讐劇を描いた、バイオレンスアクション。

主演のメル・ギブソンは『青春グラフィティ』(1977)で俳優デビュー後に『マッドマックス』で主人公のマックスを演じ、世界的スターとなりました。

監督は「マッドマックス」シリーズの他、『ハッピー フィート』(2006)の監督や『ベイブ』(1995)の製作と脚本を担当するなど、幅広い活躍を見せるジョージ・ミラー。

映画『マッドマックス』のあらすじとネタバレ


(C)Crossroads International Finance Company, N.V.
凶悪な犯罪が横行している、荒廃した近未来。

暴走族のナイトライダーは、暴走族追跡用のパトカー「インターセプター」を略奪し、逃走していました。

ナイトライダーを捕獲する為、警察官が追跡を開始し、カーチェイスが始まります。

ですが、ナイトライダーの危険な運転にかく乱され、追跡していたパトカーが次々に破壊されていきます。

そんな中、ナイトライダーの追跡を続ける一台のパトカーがありました。

ナイトライダーは、自分を追いかけている警察官の正体を知り、絶望します。

警察官はマックス。

所属する暴走族専門の特殊警察「M.F.P.迎撃担当官」の中でも優秀な警察官で、「M.F.P.」の隊長フィフィに一目置かれる存在でした。

ナイトライダーは、マックスから逃げ切ろうとしますが、追い詰められ事故死します。

とある寂れた街。

ここにトーカッター率いる暴走族の集団が現れます。

トーカッターは、仲間だったナイトライダーの死を悲しみ、敵を討つことを決意していました。

街中で暴れ回る暴走族を恐れ、カップルが車に乗って逃げ出します。

ですが、暴走族の標的は、逃げ出したカップルに定められます。

通報を受けたマックスは、相棒のグースと共に、現場に駆け付けます。

現場からは暴走族の姿は消えており、残っていたのは、暴走族に怯える女性と、薬でハイテンションになっていた暴走族のメンバー、ジョニーだけでした。

マックスとグースはジョニーを逮捕し、司法省内にある「M.F.P.」の本部に拘留します。

ですが、「M.F.P.」の本部に来た弁護士からジョニーを「無罪にして釈放する」ように要求されます。

突然の理不尽な要求に、グースの怒りが爆発します。

グースはジョニーに暴行を加えますが、ジョニーは「お前の顔は覚えた」と捨て台詞を残し、「M.F.P.」の本部から出て行きます。

その数日後、グースはトーカッターの罠にハマり、乗っていた車が大破します。

壊れた車の中から、降りることが出来ないグース。

トーカッターはジョニーに命じて、グースを車ごと爆破させます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『マッドマックス』ネタバレ・結末の記載がございます。『マッドマックス』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)Crossroads International Finance Company, N.V.
グースの死を受けたマックスは、ショックを受け、警察官を退職することを決意します。

ですが、フィフィに説得され、マックスは数週間の休暇を取得することになります。

マックスは妻のジェシーと、生まれたばかりの息子と共に、知人が営む北の牧場へ向かいます。

北の牧場へ向かう途中、息子のアイスを買いに行ったジェシーは、トーカッターと暴走族に遭遇します。

ジェシーは、トーカッターの股間を蹴り逃げ出しますが、トーカッターは執念深く追跡してきます。

北の牧場へ到着したマックスと家族ですが、ジェシーが暴走族の影を感じ、怯え始めます。

マックスが、暴走族を追跡し森の中へ行った隙に、暴走族がジェシーの前に現れます。

逃げ出したジェシーですが、暴走族に追いつかれ、バイクで跳ね飛ばされます。

マックスが追い付いた時には、アスファルトの上に無残な姿となった、ジェシーと息子の姿がありました。

ジェシーは一命を取り留めましたが、息子は死亡。

怒りに火が付いたマックスは、「M.F.P.」の本部にある改造車「V8インターセプター」に乗り込み、暴走族の処刑を開始します。

ですが、トーカッターの反撃にあったマックスは、片足を負傷します。

それでも、執念でトーカッターを追い詰めたマックスの目の前で、トーカッターはトラックに激突し死亡します。

逃げ出そうとしたジョニーを捕まえたマックスは、ジョニーの片足とガソリンが漏れている車を手錠で繋げます。

ジョニーの近くに点火したライターを置いたマックスは、その場を立ち去ります。

「V8インターセプター」を運転するマックスの背後で、ジョニーのいた場所で大爆発が起きるのでした。

映画『マッドマックス』感想と評価


(C)Crossroads International Finance Company, N.V.
1979年に製作された『マッドマックス』は、37万5000ドルという低予算ながら、1億ドル以上の興行成績を記録した作品です。

メル・ギブソンの出世作として知られる本作ですが、当時はまだ無名の俳優でした。

他の出演俳優も無名で「『マッドマックス』には本物の暴走族が出演している」という噂も出る程でした。

それどころか、監督のジョージ・ミラーも含め、当時の製作スタッフも全員無名で、オーストラリア製の映画は、ほとんど世界的に知られていないという状況でした。

その中で世界的に大ヒットを記録した『マッドマックス』は、かなり異例の作品だったと言えます。

それでは『マッドマックス』は、何故現在も語り継がれる程の、名作となったのでしょうか?

3つの項目に分けて考察していきます。

「荒廃した近未来」と言う絶望的な世界観


(C)Crossroads International Finance Company, N.V.
「マッドマックス」シリーズと言えば「荒廃した近未来」というイメージが強いですね。

特に『マッドマックス2』以降の「戦争により文明が滅んだ世界」が舞台の印象が強い作品ですが、実は1作目も「荒廃した近未来」という設定は同じなんです。

とは言え、前述したように低予算で製作され、現在のようにCG技術も発達していなった為、本作は、何も無い荒野に存在する、巨大なハイウェイを中心に物語を展開させることで「荒廃した世界」を表現しています。

近未来では、暴走族が恐怖により人々を支配していますが、これは1970年代当時、オーストラリアで実際に、暴走族が社会問題になっていたことを反映させた設定で、子供のような無邪気さで、破壊行為を続ける暴走族を通して、倫理や規則が崩壊した世界を印象付けています。

さらに、マックスが所属する「M.F.P.」の本部「司法省ビル」も、廃墟のようになっており「正義が存在しない世界」を強調していますね。

実際に撮影では、勝手に道路を封鎖したり、老朽化した昔の水道局のビルを「司法省ビル」として使用したり、低予算ながらも、さまざまな手段やアイデアを用いて「荒廃した近未来」という世界観を作り出しています

この悪夢のような「ディストピア」的な世界は、現在でも非常にインパクトがあり、この絶望的な世界観が間違いなく『マッドマックス』の魅力の1つになっています。

恐怖感を増大させる心理描写


(C)Crossroads International Finance Company, N.V.
『マッドマックス』は、マックスと暴走族の戦いを主軸として、物語が展開されます。

その為、バイオレンスアクションとしての印象が強いのですが、実は登場人物の心理描写も、魅力の1つとなっています。

まず、マックスが「M.F.P.」を退職する理由ですが、仲間を失っただけでなく、走ることに喜びを感じ、暴走族と変わらなくなっている自分に恐怖を感じた為で「このバッジが無ければ、俺も奴らも変わらない」という台詞が印象的です。

また暴走族側も、トーカッターのカリスマ性と恐怖で統率されていますが、それぞれが違う考え方を持っており、些細なことで全てが崩壊する、不安定な危うさを持っています。

特に、心理描写が効果的に使われているのが、マックスの妻ジェシーが、暴走族の影に覚える中盤の展開です。

トーカッターの股間を蹴り上げ、逃げ出したジェシーですが、遊びに行った森の中で、暴走族の存在を感じます。

ここで、暴走族は姿をハッキリ見せないのですが「確実に何かいる」という、嫌な予感を与える演出が続きます。

そして、森から無事に逃げ出し、マックスに暴走族の存在を伝え、小屋の中に避難し「ジェシーが助かった」と思わせた所で、暴走族は姿を現し、マックスとジェシーの子供を人質に取ります。

「暴走族が出て来そうで姿を見せない」という演出を続けた後に、一度「助かった」と安堵させたところで、絶望的な展開へと持っていっているのです。

バイオレンスアクションの要素だけでなく、心理描写を交えた巧みな演出も『マッドマックス』の素晴らしい部分です。

無法者同士の戦いが熱い!ラスト15分


(C)Crossroads International Finance Company, N.V.
「荒廃した近未来という世界観」「恐怖を煽る心理描写」と、これまで作品の持つ魅力を考察してきましたが、やっぱり『マッドマックス』最大の魅力は、迫力のあるアクションシーンです

冒頭のナイトライダーとのカーチェイスも凄いですが、復讐に燃えるマックスが「V8インターセプター」に乗り込み、暴走族に戦いを挑む後半15分の展開は、文句なしのカッコよさで、本作に登場する「V8インターセプター」は、現在もレプリカが作成される程の人気です。

マックスは「M.F.P.」の警察官ではなく、完全に家族を襲われた1人の人間として暴走族と対峙し、法を無視して次々に処刑を行います

無法者の暴走族に勝てるのは、同じ無法者と化した、マックスだけだったということです。

このラスト15分の展開で、これまで感じて来た「無秩序への不安」や「暴走族の恐怖」が一気にぶち壊される感覚を味わえて、かなり爽快です。

映画終了後は、爽快さとカッコ良さが癖になっている、これこそが『マッドマックス』最大の魅力ですね。

まとめ


(C)Crossroads International Finance Company, N.V.
異例の大ヒットを記録した『マッドマックス』は、実はいろいろな噂やエピソードも語り継がれている作品です

ここでは、その1部をご紹介します。

スタントマンが撮影中に亡くなっている?

マックスが橋の上で、暴走族を「V8インターセプター」に乗って追い詰める場面で、1人危険な倒れ方をしているスタントマンがいます

倒れた後に後頭部にバイクが直撃しており、この場面のインパクトが凄く『マッドマックス』を語る際には、必ず「死んだスタントマンがいるらしい」という話になります。

ですが、このスタントを担当したデイル・ベンチは生きており、2015年に日本で開催されたイベントにも姿を見せています

本人もその際に「死んだと思われてもおかしくない転び方をしてしまった」と振り返っていますね。

ただ、撮影現場は常に危険な状態で、ケガ人は続出していたようです。

メル・ギブソンが主役に選ばれた理由

本作で世界的なスターとなったメル・ギブソン。

それまで、端役しか経験していなかったメル・ギブソンが、何故主役に抜擢されたのでしょうか?

オーディションに来たメル・ギブソンは、何故か怪我だらけの状態で、作品のイメージに合ったことと、その時のインパクトが強かったことで、オーディションに合格したというエピソードがあります。

メル・ギブソンが怪我していた理由は、前日に酒場で喧嘩したとか、ラグビーの試合を観に行って暴動に巻き込まれたとか、諸説あります

ジョージ・ミラーは、自分の車を撮影で大破させた?

低予算で製作された『マッドマックス』ですが、最後は予算が尽きてしまったようです。

そこで、ジョージ・ミラーは撮影に自分の車を使用し、結果的に大破させてしまったというエピソードがあります。

これらの、エピソードの真意は不明ですが、間違いなく言えることは『マッドマックス』は、携わった俳優、スタントマン、製作スタッフの執念と情熱が込められた作品で、現在も映像を通して、その熱量は伝わってくるということです。

ジョージ・ミラーは、その後に『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を、構想20年を費やして完成させたことを語っています。

『マッドマックス』という作品への、想いの強さが伝わりますね。




関連記事

アクション映画

映画『キングダム』登場人物の楊端和役は長澤まさみ。演技力とプロフィール紹介

中国春秋戦国時代を舞台にした原泰久原作の大人気マンガ『キングダム』を実写化した映画が2019年4月19日に公開されます。 原作は第17回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞し、累計発行部数3600万部を超え …

アクション映画

映画『狂獣 欲望の海域』ネタバレ感想。結末まで嵐の海でマックス・チャンら大暴れ!

今、最も旬なアクションスターと呼ばれるマックス・チャン、ショーン・ユー、ウー・ユエの3人が共演を見せ大激突! 金塊を巡る男たちのバトルロワイヤルで生き残るのは誰だ⁈ 『ドラゴン×マッハ!』のスタッフが …

アクション映画

映画『シークレット・ウォー』ネタバレあらすじ感想とラスト結末の解説。 ナチス極秘計画にドイツ×ソ連×英米連合軍の三つ巴の対決!

ナチス・ドイツ×ソ連×米英連合軍が極寒の地で激闘を繰り広げる戦争アクション アンダシュ・バンケが監督を務めた、2020年製作のイギリスの戦争アクション映画『シークレット・ウォー ナチス極秘計画』。 万 …

アクション映画

映画レイダース 失われたアーク|ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。ラストで目を閉じる理由と箱の正体は?人気シリーズ第1作の魅力を探る

名作アクションアドベンチャー「インディー・ジョーンズ」シリーズ第1作! スティーヴン・スピルバーグが監督を務めた、1981年製作のアメリカの名作アクションアドベンチャー映画『レイダース 失われたアーク …

アクション映画

映画『ブルータル・ジャスティス』ネタバレ感想とラスト結末まであらすじ。メル・ギブソン演じる刑事の正義が炸裂す!

メル・ギブソンが主演のクライム・スリラー映画『ブルータル・ジャスティス』。 日本で2020年8月に公開された、映画『ブルータル・ジャスティス』は、強引な逮捕が原因で6週間の停職処分となった2人の刑事が …

U-NEXT
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学