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マッドマックスをブラッククロームエディションで観るべき3つの理由!

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

2017年1月14日から劇場公開中、モノクロ映画の集大成であり、映画史の総括といっても過言ではない、『マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>』エディションをご紹介。

「カラーで観たから」「色がないとリアルじゃない」「ただのモノクロ版でしょ」という方もいるかも知れませんが、ぜひ、「モノクロの見どころ」を一読してほしいと思います。

今、劇場で観ないときっと後悔する、ジョージ・ミラー監督自らが「モノクロームがベスト!」に注目!

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<ブラック&クローム>エディションがお薦めな3つ理由!

マッドマックス 怒りのデス・ロード
(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED (C)2016 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

2017年1月14日から劇場公開された最新バージョン<ブラック&クローム>エディションを、最初の日曜日に4 DXにて劇場にて体感視聴をしました。

神話マッドマックスの創始者”であるジョージ・ミラー監督自ら、この作品のモノクロ版が「最高のバージョン!」であると語った証言が真実そのものでした。

また、熱狂的なマッドマックス信徒のライムスター宇多丸や高橋ヨシキが、流石のシネマトークで、“誰も観たことがない映画”、“モノクロ映画の根源からの新しい形”と絶賛したのも的確だと思います。

お二人とは少し違った角度から、<ブラック&クローム>エディションを援護射撃する解釈を“棒高跳び部隊”として3つのポイントを紹介いたします。

1 シンプルなストーリー展開だからこそのモノクロイズム

マッドマックス怒りのデス・ロード
(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED (C)2016 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

すでに「カラー版」の鑑賞をした方も多いので、ご存知とは思いますが、今作はシンプルに「行って帰ってくる映画」です。

しかし、ストーリーは単純ではありますが、内容は非常に哲学的な奥深さや、それを構築するための芸術的に細部のこだわりの見せた美しさが際立った娯楽作品であることは明らかです。

物語がシンプルと言うことはどうして強いのか?それは昔話を例えに考えることにしましょう。

「桃太郎」「浦島太郎」「かぐや姫」などの昔話は、誰もが他人にそれらの物語を語ることができます。

そのようなことから長い年月の間、親から子へ、または孫へと口伝として言い伝え残されてきました。

だからこそ語り部の多様性な価値観を享受しながら、多くのバリエーションを生むことを可能にします。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は、そのような語り部たちと同じように、観客のそれぞれの価値観や哲学、美意識を発見することができる映画

ジョージ・ミラー監督は、「カラー版」で観るよりも<ブラック&クローム>のエディションで観ることで、抽象化や分かりにくいところが出ることを踏まえた上で魅力と語っています。

そこが観客という見手の鑑賞力の意識(観察)を増幅させていくのではないでしょうか。

トマソン芸術で有名な美術家の赤瀬川原平は、“見間違い、勘違いこそが芸術”だと述べ、103歳で現役美術家として活躍する篠田桃紅は“迷いこそ文化”と語りました。

今作の<ブラック&クローム>は、過去の『マッドマックス』シリーズが、それぞれに持っていた“神話性というモチーフ”を、より具体化させた作品

主人公マックスの神話性を強めるために、敵対するイーモタン・ジョーは、ウォー・ボーイズという熱狂的な信徒を操りながら、新興宗教的に人間を支配している存在として描かれています。

例えば、イーモタン・ジョーの「岩窟神殿での聖水の儀式」や、「バンドリーダーのドゥーフ・ウォリアーが演奏しながら乗ったドラム・ワゴン車」など、登場人物たちを宗教性なカタルシス(浄化)を取り込んだ要素として指摘ができます。

ミラー監督の語った「抽象化」は、観客が多様な持論を刺激して、益々生き生きと“宗教的神話”を伝説にするという、大きくギア・チェンジの加速に成功しているのではないでしょうか。

<ブラック&クローム>エディションは、色彩情報を排除することにより、ストーリーのシンプルさ同様に、感覚への混乱を避けることができます。

ミラー監督自身が伝えたいシーンの「主題」を観ている側にとても的確に伝わりやすくなっています。

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2 映画史を呼び覚ました総括としてのモノクロイズム

マッドマックス怒りのデス・ロード1
(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED (C)2016 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

次は、<ブラック&クローム>エディションで観ることで、“映画史をまるで総括をしている作品”として、観られるように生まれ変わった点を解説。

ジョージ・ミラー監督は、「アクションを愛してやまないのは、映画言語のもっともピュアな形」として、バスター・キートンやマック・セネット、ハロルド・ロイドが生み出したと述べています。

「カラー版」が公開された当時、映画ライターの高橋ヨシキは、ジョージ・ミラー監督はサイレント映画好きでバスター・キートンのファンであること紹介。

【バスター・キートン主演の『キートン将軍』(1926)】

また、シネマハスラーのライムスター宇多丸は「カラー版」を観て、エドウィン・S・ポーター監督の『大列車強盗』(1903)を思い起こしたと紹介。

【エジソン社制作『大列車強盗』(1903)】

今作が台詞が少ないことから、サイレント映画に近い雰囲気や、危険なアクションシーンは、バスター・キートンのような身体性を持たせ活劇であることを指摘したのでしょう。

懐古趣味のノスタルジーのモノクロ映像ではなく、もちろん、登場人物が過去を回想するためのモノクロ・シーンではないのです。

<ブラック&クローム>エディションは、「カラー版」よりも、さらにサイレント映画に近づき、過去のあらゆるモノクロ映画と応答関係を結んでいます

例えば、サイレント映画のドイツ表現主義の代表的な3作品にとても酷似しています。

【ロベルト・ヴィーネ監督の『カリガリ博士』(1920)】

『カリガリ博士』は、映像の背景が不思議な感覚で描かれた絵画。全てが描き割りという、ドイツ美術の中でストーリーが進行します。

その点は、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の細部にまで独特な世界観にこだわりをみせたビジュル感覚と似ています

また、カリガリ博士が催眠術で眠り男を操って殺人を犯すなどは、イーモータン・ジョーとウォー・ボーイズ(ニュークスなど)と類似も見られるのではないでしょうか。

【F・W・ムルナウ監督の『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922)】

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』では、主人公マックスがハイオクの血液袋や、モノ化した女性たちが搾乳している光景などがありました。

体内の血液と母乳という、体液を水代わりに人間同士で交換する場面は、吸血鬼的な一面を感じられた方もいたのではないでしょうか。

【フリッツ・ラング監督の『メトロポリス』(1926)】

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』と、 特に類似性を感じさせる、SF映画の黎明期の傑作『メトロポリス』です。

SF&ホラー関連の編集者として有名なフォレスト・J・アッカーマンは、『メトロポリス』について、SF映画に必要なモチーフが全て散りばめられた「SF映画の原点にして頂点」と評価。

ミラー監督がシネフィル的に参考にしたと断言はできなくとも、実際にストーリー構成の設定や登場するモチーフに近い点が見受けられます。

まずはストーリー構成の類似には、「ディストピア」の未来を舞台にしていることや、「知識指導者階級と過酷労働に耐える労働者階級の“二極分化した階級社会”を挙げられます。

モチーフとしては、メトロポリスの電力を維持する心臓部的な「ヘルツ・マシーネ(Hertz-Maschine)」とイーモータンの岩窟の砦のデザイン性の類似に始まり。

女性のリーダーの存在として、マリアとフィリオサという共通性や、水というアイテムも逆説的に上手に使用しています。

つまり、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を<ブラック&モノクローム>エディションで鑑賞することで、過去のあらゆるサイレント映画を同時に想起させてくれる作品なのです。

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“3 グラフィック感覚に秀でたモノクロイズム

マッドマックス怒りのデス・ロード
(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED (C)2016 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

モノクロ写真は見た際に、被写体の人物描写がカラー写真に比べてモノクロ写真の方が表情や生活感が伝わりやすいと言われ、しかも、その被写体にスムーズに感情移入し易いとされています。

例えば、ドイツ表現主義の画家カール・シュミット=ロットルフは、油彩という派手で大胆な色彩を持った作品も多いのですが、木版画(モノクロ)の作品も多数残しています。

油彩と木版画ではコスト面の差によることも大きいですが、彼の印象主義の作風へのこだわりが、モノクロ(木版画)が表現として有効だと知っていたのではないでしょうか。

また、水墨画などの墨絵の世界(モノクロ)を引き合いに出しても同様なことが言えます。

画家である雪舟、雪村などの描いた水墨画が、時間的な重みを差し引いても現代美術の彩りのある作品に劣っているとは考え難いはずです。

モノクロという黒と白の世界観が、色彩が多くないことでカラーに劣るという表現、あるいは、不完全なものではないのです。

写真、木版画、水墨画、のモノクロなグラフィックの有効性と同様に、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の<ブラック&クローム>エディションも有効性が高い作品のなのです。

初めてこの作品を目にする方には、断然こちらのエディションをお薦めします。また、マッドマックスのファンであれば、必見するべきバージョンです。

必ず新たな発見をもたらしてくれると間違いなしです!

まとめ

マッドマックス怒りのデスロード
(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED (C)2016 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

今すぐ、劇場に走ってチケット購入、『マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>エディション』を MAX祭りを体感しよう!

モノクロになって、ストーリーの本質的な哲学がより見えて、“神話らしさもMAX”に高まりました!

また、この作品は、“新章マッドマックス三部作”の先ずは第4章。次なる第5章『マッドマックス ザ・ウエイストランド( Mad Max:The Wasteland)』への準備(ホップ)だということを忘れずにいましょう!

『マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>エディション』は、2017年1月14日(土)より新宿ピカデリー他全国公開。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>エディション Blu-ray(2枚組)』は、2017年2月8日(水)より発売

ぜひ、お見逃しなく!

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