『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』のロイ・リーがプロデューサーを務めた、ポラロイドカメラが巻き起こす怪奇ホラー!
『ポラロイド』は、ノルウェー出身のラース・クレヴバーグが製作・監督・脚本を務めた同名のショートフィルム(2015)を基に製作されたホラー映画です。
『ザ・リング』やハリウッドのリメイク『呪怨/JUON』で製作総指揮を担当したロイ・リーに見出されたクレヴバーグは、本作が長編映画の監督デビューとなりました。
同日に日本公開される『チャイルド・プレイ』リブート版もクレヴバーグが監督しています。
映画『ポラロイド』の作品情報
【公開】
2019年7月19日(アメリカ映画)
【原題】
Polaroid
【監督】
ラース・クレヴバーグ
【キャスト】
キャサリン・プレスコット、タイラー・ヤング、サマンサ・ローガン、ミッチ・ピレッジ、グレイス・ザブリスキー
【作品概要】
脚本を書いたのは、コメディアンとして知られたブレア・バトラーで、テーマパークを舞台にしたスラッシャー映画『Hell Fest』の脚本を共同執筆して注目を集めました。
仲間からプレッシャーを受けやすいSNS世代の10代を主要登場人物に据えたクレヴバーグの短編同名映画を踏襲し、傷つきやすい女子高生の視点を盛り込んでいます。
映画『ポラロイド』のあらすじとネタバレ
カメラ好きの多感な女子高校生バード・フィッチャーは、バイト仲間のタイラーに代わりアンティークショップで店番をしていました。
店に戻ったタイラーは、ヤードセールで見つけた古いポラロイドカメラをバードにプレゼントします。
70年代に製造された珍しいSX-70だったため、バードは大喜びで早速タイラーを撮影します。
カメラの裏には過去の所有者のものであろう「R・J・S」の頭文字。
帰宅後、バードは、仲の良いケイシーから仮装パーティーへ誘われます。
バードは交通事故で負った怪我の痕を隠すスカーフを首に巻いているため、学校でからかわれ人付き合いが苦手でした。
最初は躊躇するものの、気になる男子生徒のコナーも来ると聞き、バードはパーティーへ行くことにします。
カップルのミナとデヴィンも一緒に4人はパーティーが開かれるエイヴリーの家へ向かいます。車中、バードはふとタイラーを撮影した写真に、黒い影が映り込んでいることに気が付きます。
ポラロイドに関心を寄せたコナーと2人きりで話をしていたバードは、ミナ、デヴィン、コナー、そしてケイシー4人の写真を撮ってあげました。
シャッターを押したバードは、フラッシュが光った瞬間背後に黒い影が浮かぶのを目撃します。
エイヴリーもポラロイドカメラに興味を持ち、続けて自撮りしました。そこへ警察官がバードを探してやって来ます。
ペンブローク保安官からタイラーが殺害されたと聞かされるバード。
ふと撮影した写真を見ると、タイラーの背後に写っていた影は消え、今度はエイヴリーが自撮りした写真に黒いものが写っています。
翌朝、ケイシーから連絡を受けたバードは、エイヴリーが階段から落ちて死亡したと聞かされます。
バードが直ぐに写真を見返すと、エイヴリーの自撮り写真からバードが撮ったケイシー達4人の写真へと再び黒い影が戻っていました。
学校のカフェテリアに集まったコナー、ミナ、デヴィンは1日で2人の生徒が死亡する突然の訃報にショックを受けています。
バードは、みんなに写真を見せ、エイヴリーの身に何か起きたのかもしれないと話します。
ポラロイドカメラで撮った写真に黒い影が写り、最初の被写体だったタイラーが死亡。最後に自撮りしたエイヴリーが亡くなった後、4人で撮った写真に黒い影が再び戻ったことを説明。
ポラロイドカメラで撮られた全員に危険が迫っているとバードは警告します。
以下、『ポラロイド』ネタバレ・結末の記載がございます。『ポラロイド』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
誰も真剣にバードの話を取り合いませんが、デヴィンは気味悪がりライターで写真に火を点けます。
写真のミナの腕辺りが燃え始めると、実際にミナの腕にも火が付きます。消火器でも消えず周囲は大騒ぎになります。
思わずバードが写真の火を消すと、ミナの腕から炎が消滅します。写真を掴むバードの手の中で、燃えた箇所が見る見るうちに修復されて行きました。
大火傷を負ったミナに付き添いバード、コナー、ケイシー、そしてデヴィンは病院へ来ます。
タイラーから貰ったポラロイドカメラに付属品のケースが有ったことを思い出したバードは、コナーと一緒に手掛かりを求めてアンティークショップへ向かいます。
カメラケースを見つけたバードは、店の奥から得体の知れない何かが動くのを見て慌てて逃げ出します。
写真の被写体ではない自分が狙われた理由が分からないバードに、コナーは、バードも写っていると告げます。
4人が写る後ろの窓ガラスに、ポラロイドカメラを構えるバードが反射して写りこんでいたのでした。
その頃、病院で手当てを受けたミナが死亡。駆けつけた警察は自殺だと言う見方を示します。
彼女を失い悲嘆に暮れるデヴィンは、アンティークショップから戻ってきたバードに、ポラロイドカメラでミナを撮ったバードのせいだと八つ当たりします。
12才の時交通事故で父親を亡くしたバードは、一緒に同乗していた自分を責め苦しんでいました。
心配して様子を見に来てくれたコナーに慰められたバードは、記者だった父親なら原因を追究するはずだと思い至ります。
店から持ち出したカメラケースを探ると、殺人事件の証拠品を示すタグが出てきます。
図書館に来たバードとコナーは、タグに記された日付に該当する地元新聞の記事から、40年前に地元で起きた凄惨な事件を知ります。
2人と同じ高校に通学していた3人の生徒が監禁され殺害。犯人は学校で写真を教えていたローランド・ジョセフ・セーブルで、警察に現場で射殺されていました。
カメラの裏のイニシャルと一致することに気づいたバードは、ケイシーとデヴィンにファミレスで落ち合いこの事を伝えます。
バードは、自分が襲われた時、現像室の外で熱い湯気に触れた謎の化け物が嫌がって灰色の手を引込めたことを思い出します。
更にバードは、ネガを現像する際光と熱が写真に不具合を起こすことに着目し、暗い所でしか完全な姿になれないのではないかと言う仮説を立てます。
ケイシーは自分が調べた心霊写真から、未練を残した魂が所有していた物に憑りつくと話します。
デヴィンは本当にポラロイドカメラが原因なのか試そうと言い出し、コナーと揉み合いになります。
弾みでシャッターが切られ、カメラはデヴィンが写った写真を排出。すると、エイヴリーの家で撮ったみんなの写真に写りこんだ影が目の前でデヴィンの写真に移動して行きます。
自分が次の犠牲者になるのは嫌だと言うデヴィンがカメラを掴んでバードに向けます。
止めようとしたケイシーがペンで写真に写るデヴィンの手を刺すと、デヴィンの手にも穴が開きます。
そこへ店の騒ぎに駆けつけた警官をデヴィンが殴り、デヴィンは逮捕されてしまいます。
バードとコナーは、保安官に必死に説明しますが相手にされません。
図書館で更に調べていたケイシーから、犯人の妻が名前を変えて今も同じ住所に住んでいると連絡が入り、バードとコナーはセーブル家へ向かいます。
同じ頃、留置場に拘留されていたデヴィンを灰色の化け物が襲い掛かります。
セーブル家を訪れたバードとコナーは、ローランドの妻・リナからポラロイドカメラは、娘レベッカの物だと聞かされます。
学校でいじめを受けていたレベッカが唯一好きだったのはカメラでした。
両親からプレゼントされたポラロイドカメラを持ち歩いていたレベッカは、更にからかわれる的になったとリナは話します。
ある晩、レベッカを呼び出した4人の生徒達は彼女を辱める写真を撮り、翌日その写真をばら撒きます。
耐えられなくなったレベッカは首つり自殺しました。怒りに駆られた父ローランドは、自分の職場だった学校の暗室に4人を監禁。
突入した警察官に射殺されたローランドの手には、レベッカのポラロイドカメラが握られていました。
リナは、夫が1人だけ取り逃がしたと悔しそうに呟き、アルバムを開いてその生徒の写真をバードに手渡します。
デヴィンの写真からエイヴリーの家で撮った写真に再び移動したことに気づいたコナーとバードは、デヴィンも死亡したことを察します。
解決する糸口が閃いたバードは、ケイシーに学校で落ち合おうと連絡を入れます。
学校の卒業アルバムを辿ったバードとコナーは、リナから渡された写真と突き合わせ、事件の生存者がペンブローク保安官だと突き止めました。
そこへ2人を探し学校を彷徨っていたケイシーを連れた保安官が現れます。バードとコナーを尾行した保安官は、警察の職務に関与し過ぎだと厳しい口調。
コナーは、リナが自分達に話したことを保安官が恐れていると挑み、新しく写真を撮れば狙われる順序が変更されると言い、保安官を撮影してしまいます。
保安官は、レベッカが虐められて自殺したというのは作り話だと告げます。
高校生だったペンブロークは、父親に性的虐待を受けていたレベッカを助けようとしていた過去の真実を明かします。
証拠の写真を手に入れ警察に告発しようとしましたが、ローランドに感ずかれ逆に拘束されたのです。
自分の犯した罪を隠そうとしたローランドは、ペンブロークを取り逃がしたことで警察に知られ死亡します。そして、罪の意識に苛まれたレベッカは自殺しました。
保安官は、レベッカが死んだのはローランドが3人の生徒を殺害した後であり、日付を確認しろと言います。
リナは、夫の罪を知りながら見て見ぬ振りをし、話をでっち上げ自分をずっと批判していると保安官は悔しそうに顔を歪めます。
みんなレベッカの友達だったと言うペンブローク。
その時、廊下の蛍光灯が点滅し始め、床に落ちていたペンブロークの写真を灰色の手が掴みます。
魔物化したローランドが現れ、写真を真中から破くのと同時に、保安官の体が切り裂かれます。
コナーはローランドをおびき寄せようと走り出しますが、魔物はバードとケイシーを追って行きます。
シャワールームへ駆け込み、バードが熱湯を出すと魔物は入って来られず、立ち込める湯気の向こうで姿を消します。
このまま留まるようケイシーに告げ、バードはコナーを探しに出て行きます。
コナーを見つけたのも束の間、目の前でコナーが引きずられ、バードはカメラを自分に向けてシャッターを切ります。
黒い影が自分の写真に現れるのを確認したバードは、走って地下の暗室へやって来ます。
ローランドの醜い化身が完全な姿を現し、バードの首を掴んで宙づりにします。カメラを持ち上げ、探りながら指でシャッターを押すバード。
焚かれたフラッシュでバランスを崩し、手を放した魔物に対し、バードは排出された写真を強く握りしめます。
バードの手に平でクチャクチャになる写真の様に、魔物の体がいびつに曲がって行きます。
写真にバードの指が数本写りこみ、彼女の指が骨折して行きます。それでもバードは握った手を緩めません。
しかし、魔物は曲がった体を引きずってバードに向かって来ます。
バードは、デヴィンが持っていたライターで写真に火を点けました。
魔物は炎に包まれ、バードの指にも火が付きます。
叫び声をあげ必死に唇を噛みしめるバードの目の前で、遂に魔物は消滅。バードの指を包んだ炎も消えてなくなります。
ケイシーを抱えたコナーと合流したバードは、全てが終わったことを伝えます。
明け方1人で岬を訪れたバードは、ポラロイドカメラを海に投げ込みました。
映画『ポラロイド』の感想と評価
暴力的な流血シーンがほぼ皆無のホラー作品である『ポラロイド』。亡くなった人の未練をテーマにした物語はとてもアジア的で、ジェームズ・ワンの『死霊館』を思わせます。
本作で監督を務めたラース・クレヴバーグは、カラヴァッジョやスピルバーグが好きだと公言しており、劇中にモチーフとして描写している箇所があります。
エイヴリーが魔物に襲われる場面で大きく揺れる照明シェードが光と闇を交互に生む所は、テンションを一気に上げる効果を生んでいます。
また、劇中に仮装パーティーへ行くバードのコスチュームに使われた赤いフード付きのコートは、『E.T.』(1982)を投影したものです。
参考映像:短編作品『ポラロイド』
クレヴバーグがインターネット上で公開している短編映画『ポラロイド』(2015)は、クレヴバーグが製作・監督・脚本を兼ねた作品です。
スペインのトレモリノスファンタスティック映画祭で上映され、最優秀ショートホラーフィルム賞を受賞しています。
母親を亡くした若い女性と女友達が写真を投稿してフォロワーを増やしたいと話しています。
家を引っ越すに当たり、母親の私物からポラロイドカメラを発見するという設定。
本作でも使われた独りでに転がって来るプラスチックのボールや上述した揺れる照明を用い、ポラロイドカメラで自撮りした2人の女性を襲う恐怖を15分の中で、1敵の血も映さず巧妙に描いています。
また、本作の冒頭に登場する2人の女性サラとリンダは、この短編映画『ポラロイド』(2015)で描かれた女性2人と同じ名前であり、同年代です。
本編の主人公であるバードや他のキャラクターとの関連性が語られないことから、短編作品を投影していると言えます。
『呪怨/JUON』のファンだと語るクレヴバーグは、似た方向性を目指しノルウェーの雰囲気を足したと本作を説明します。
確かに、犠牲者がどう襲われるかと言うより、そこへ到達するまでの過程が怖いです。寒く雪がちらつく町を舞台にした所は、短編映画でも描写されたノルウェーを思わせます。
まとめ
何気なく撮った写真で次々に学校の仲間が殺される戦慄を描いた『ポラロイド』。
怨念が宿るカメラは、身勝手な殺人犯が死亡する時に握りしめていた物でした。
主人公は、周囲に理解されずとも自分を見失わない強さを秘めた女の子。
父親亡き後休むことなく働く母親の姿を挟み、甘えられない環境で育ったバードが持つ鉄の闘志こそ40年恨み続けた魔物を倒す切り札だと締めくくります。
本作は、ラース・クレヴバーグのアナログな視覚効果が恐い映画です。
映画『ポラロイド』の日本公開は、2019年7月19日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国順次公開されます。