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Entry 2019/06/28
Update

『凪待ち』ロケ地リポ⑥。香取慎吾と白石和彌監督らが映画を通じて被災地に誓う“祈り”|凪待つ地をたずね6

  • Writer :
  • 河合のび

連載コラム『凪待つ地をたずね』第6回

映画『凪待ち』の背景、そして白石和彌監督と香取慎吾が映画を通して描こうとしたものを探るため、本作のロケ地である宮城県の各地を巡り、その地に生きる人々を取材

ロケ地に関する情報や実際に訪れたことで感じたもの、その地に生きる人々の声を連載コラム記事にてお届けしてゆきます。


©︎Cinemarche*2019年6月13日に塩釜水産物仲卸市場で開かれた『凪待ち』完成報告試写会での香取慎吾と白石和彌監督

短期間ながらも続けてきた本連載も、第6回にてついに最終回を迎えます。

その第6回記事で取材させていただいたのは、映画『凪待ち』の宮城県・石巻での撮影に協力し、これまでのロケ地取材でもその助けとなる人物や取材すべき人物をご紹介してくださった、せんだい・宮城フィルムコミッションの統括担当・武藤修さん。

“震災”を被災地で描こうとする近年の映画に対する思い武藤さんにとっての映画『凪待ち』観などを伺いました。

【連載コラム】『凪待つ地をたずね』記事一覧はこちら

現地リポ・その14:せんだい・宮城フィルムコミッション

せんだい・宮城フィルムコミッションの統括担当・武藤修さん


©︎Cinemarche

多くのエキストラが参加した撮影

当初は白石組が宮城県・石巻で撮影できるよう、仲介役としての手続きを行うのみだったものの、白石組からの依頼によりロケハン協力やエキストラの募集・稼働も手がけたという武藤さん。

特に、第2回にてご紹介したロケ地・ことぶき町通りで撮影した縁日の場面では、石巻で暮らす人々を含めた100人以上のエキストラが参加したため、石巻市内庁舎の駐車場を借り、バスによってエキストラをロケ地・庁舎間で運び続けたと、撮影時の苦労話を明かしました。

第2回第3回にて石巻市街地のロケ地を案内してくださった秦野さんが勤める石巻市観光課も協力し、実在する石巻の祭り「川開き祭り」の縁日を再現した映画『凪待ち』。

そして、街中にてそれほど大規模なロケ撮影を敢行したにも関わらず、地元で暮らす方々は非常に協力的だったと石巻の人々の人柄について触れました。

“震災”を被災地で撮る重み


©2018「凪待ち」FILM PARTNERS

「震災を取り上げた映画を撮りたい」という話は、震災発生後から5・6年経って以降いただくようになり、それは今後も増えてゆくだろうと武藤さんは言います。

しかしながら、“震災”という題材は、地元に暮らす人々に撮影協力をお願いする立場である自身としては、安易に話せるものではないとも語ります。

「被災された方々の想いを見て見ぬふりをすることはできない。映画の内容についてどのように話を切り出すかは、我々も非常に気を遣うようにしています。特に沿岸部に暮らしている、あるいは暮らしていた方々にはです。」

特に、「津波をどう描いているのか」が重要だと武藤さんは言います。

「津波による被害、あるいは津波そのものを再現するような作品は、沿岸部の方々にはお願いできません。ですから、そのような作品への撮影協力については、できうる限り内陸部の方々にお願いするようにしています。」

「人によっては「考えすぎ」と言われるかもしれないが、自分はそこに暮らす方々の想いを無下にすることはできません。」

その一方で、映画『凪待ち』は津波や避難所など、震災当時の出来事自体は直接的に描いていない作品であり、だからこそ地元で暮らす人々にも理解され、撮影にも協力してくださったのだろうと武藤さんは語られました。

メイキング画像:塩釜水産物仲卸市場での撮影


©2018「凪待ち」FILM PARTNERS

また武藤さんは、自身の被災体験、ひいては震災の記憶についても語ってくださいました。

震災時には出張のため新幹線に乗っていたというう武藤さん。北上川をまたぐ陸橋上で新幹線が止まってしまい、そのまま一晩を車内にで明かしたそうです。

その後、武藤さんはタクシーで自宅のある仙台へと戻りましたが、その時点では石巻など宮城県沿岸部で大変な被害が発生していることは噂程度でしか知らなかったと言います。

しかし震災発生から約2週間後、仕事のため気仙沼の観光協会を訪ねた際に、武藤さんはその悲惨な状況を目の当たりにしました。

「その光景をかつて見たからこそ、“震災の映画を撮りたいんです”というお話が来るとどうしても身構えてしまうんです。」

また、津波で亡くなった知人の遺族を訪問した時、その玄関には亡くなった知人の靴が未だに並べられていたこと。そして遺族は「いつまでも経っても忘れられないし、受け入れられない」と答えたという自身の体験に触れ、復興は確かに進んだものの、その復興に終わりはないのだと語りました。

映画を撮影したい“町つくり”へ


©︎Cinemarche

2003年に設立されたせんだい・宮城フィルムコミッション。そこで働き始めて今年で12年目になるという武藤さん。

かつては「撮影支援がメイン」というイメージのもとフィルムコミッションの仕事を続けてきました武藤さんでしたが、近年のアニメ作品における“聖地巡礼”をきっかけに生まれたアニメ・ツーリズムやフィルム・ツーリズムといった概念が自身の仕事に対する認識を変えていったと言います。

「ただ映画撮影に協力するだけでなく、その地で撮影された映画を生かして、多くの人々に宮城県の良さを知ってもらうことが自身の仕事だと現在は考えています。」

また、「直接的な描写はないものの、沿岸部の被災地・石巻を取り上げた数少ない映画」である『凪待ち』を、地元で暮らす方々に観てもらうためにプロモーションを配給・宣伝サイドと相談。その結果、「はじまりのロケ地・塩釜水産物仲卸市場での完成披露試写会」が実現しました。

2019年6月13日、塩釜水産物仲卸市場で開かれた『凪待ち』完成報告試写会


©︎Cinemarche

自身が暮らす仙台市をはじめ、宮城県には街並みや自然、そこに暮らす人々の人柄といった総合的な魅力を持つ土地であると武藤さんは語ります。

子どもの頃には山の側で育ち、大人になってからは東京の会社にも勤めていたこともあるという武藤さんは、自然と都市の絶妙な調和を保っている仙台市に惹かれ、「東北の空気感」が自身は好きなのだと気付かされたそうです。

そして、その「空気感」を多くの人々に伝えられるのが映画などの映像メディアであり、宮城県を“そこだからこそ撮りたい土地”へと認識してもらうため、どのような手段を取るべきかを武藤さんたちは模索し続けているのです。

映画『凪待ち』を含め、宮城が舞台である映画が今後続々と公開を迎えると語る武藤さん。

宮城県に訪れるきっかけとなりうる2019年の“宮城映画”。それらのプロモーション企画を精力的に進めていきたいとその意気込みを露わにしました。

被災地・石巻を想像するきっかけとなる作品


©2018「凪待ち」FILM PARTNERS

武藤さんは自身の『凪待ち』観について、「遺された人々はこれからも生きていくが、その根底には“深いもの”が残り続けること」を描いている映画だと言います。

白石和彌監督や主演・香取慎吾をはじめ、スタッフ・キャスト陣が遺された人々の心情を汲み取った上で作られたのだと感じられる、“寄り添う”映画。

白石監督とお会いした際、「“被災地とどう向き合えばいいのか”をずっと考えていた」と聞かされたという武藤さん。その被災地に対する強い想いが、映画『凪待ち』という作品に込められているのだと語られました。

また、これから映画『凪待ち』を鑑賞される方に対し、まずは劇中に映し出されている風景を見て、被災地の現状の一部を知ってもらいたいと武藤さんは言います。

メディアでの報道が年々減り続けていく中、『凪待ち』が切り取った宮城県・石巻の風景の一部から、被災地・石巻の現状を想像してほしい。そのように想像することが、石巻に訪れ、実際の現状を確かめようとするきっかけになると。

そして、決して石巻だけではない“被災地”という場所に対する自身の想いについて、考え続けてほしいと武藤さんは語りました。

せんだい・宮城フィルムコミッションの詳細情報


©︎Cinemarche

【公式ホームページ】
https://www.sendaimiyagi-fc.jp

【住所】
〒980-0811
宮城県仙台市青葉区一番町3丁目3-20
東日本不動産仙台一番町ビル6階(公益財団法人 仙台観光国際協会内)

【電話・FAX】
(電話)022-393-8416
(FAX)022-268-6252

【メールアドレス】
info(*)sendaimiyagi-fc.jp 
※メール送信の際には、「(*)」を「@」にしてお送りください。

『凪待つ地を訪ねて』を終えて


©2018「凪待ち」FILM PARTNERS

2019年6月28日、ついに劇場公開を迎えた映画『凪待ち』。

その同日。作品の背景、そして白石和彌監督と香取慎吾が映画を通して描こうとしたものを探るため、ロケ地である宮城県の各地を巡り、その地に生きる人々を取材。

その中で得た体験や人々の証言をまとめた連載コラム『凪待つ地をたずね』は最終回を迎えました。

「決して遠くはない地に凪が訪れることを祈りながら、今後の記事をお待ちください。」

連載中、各記事の末尾には必ずこの一文を記し続けてきました。

「祈る」という行為には、「“それ”が必ず訪れると確信し続ける」といった意味もあります。“それ”は人によって様々ですが、映画『凪待ち』にとっては“凪”という状態そのものでしょう。

石巻市・南浜地区の取材中、日和山公園から見えた日和大橋


©︎Cinemarche

しかしながら「祈る」という行為は、あくまであらゆる行為の“前提”を築く行為でしかありません。

「“それ”が必ず訪れる」という“前提”を原動力に、何をしてゆくのか。

その問いを継続し続けることこそが、「祈る」という言葉に込められた本当の意味であり、末尾の一文にて「祈る」という言葉を用いてきた理由です。

そして、「祈る」きっかけを鑑賞する人々にもたらしてくれるのが『凪待ち』という映画なのです。

本作を鑑賞した人々が、その後何をしてゆくのか。

その答えは当人にしか分かりませんが、石巻、宮城をはじめとする被災地に“凪”を引き寄せるものであることだけは確かでしょう。

最後に、今回の取材にご協力いただいた全ての人々、全ての土地に心から感謝の意を申し上げます。

【連載コラム】『凪待つ地をたずね』記事一覧はこちら

映画『凪待ち』のあらすじ

ギャンブル依存症を抱えながら、その人生をフラフラと過ごしていた木野本郁男(香取慎吾)。

彼は恋人の亜弓(西田尚美)が故郷である石巻に戻ることをきっかけに、ギャンブルから足を洗い、石巻で働き暮らすことを決心します。

郁男は亜弓やその娘・美波(恒松祐里)と共に石巻にある家へと向かいますが、そこには末期ガンを宣告されてからも漁師の仕事を続ける亜弓の父・勝美(吉澤健)が暮らしていました。

郁男は小野寺(リリー・フランキー)の紹介で印刷工の仕事を。亜弓は美容院を開業。美波は定時制の学校へ。それぞれが、石巻で新たな生活をスタートさせました。

けれども、郁男は仕事先の同僚に誘われたのがきっかけとなり、再びギャンブルに、それも違法なギャンブルに手を染めてしまいました。

やがて些細な揉め事から、美波は亜弓と衝突してしまい、家を出て行ってしまいます。

その後、夜になっても戻らない彼女を郁男と亜弓は探しに行くものの、二人はその車中で口論となってしまい、郁男は車から亜弓を降ろしてそのままどこかへと去ってしまいました。

そして、ある重大な事件が起こります…。

石巻市役所では映画『凪待ち』石巻市ロケ地マップを配布!


©︎石巻市観光課

映画『凪待ち』公開に併せて、石巻市役所・観光課では『凪待ち』のロケ地巡りマップを作成いたしました!

宮城ふるさとプラザ、石巻市役所本庁および各総合支所、イオンシネマ石巻などをはじめ、市内各所で随時配布中です!

また石巻市公式ホームページではデータ(PDF)のダウンロードも可能です!

映画『凪待ち』石巻市ロケ地マップ・ダウンロードページはコチラから→

石巻市公式ホームページはコチラから→




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