湊かなえの小説『未来』が映画化決定!
『告白』『母性』『白ゆき姫殺人事件』など、数多くの著作が映像化されている湊かなえ。
ネグレクト、ヤングケアラー、性暴力など、社会の片隅にある切実な現実を物語として描き上げた小説『未来』もまた映像化されることになりました。
映画『未来』は2026年5月8日(金)TOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開。

(C)2026 映画「未来」製作委員会 (C)湊かなえ/双葉社
主演に黒島結菜を招き、『ラーゲリより愛を込めて』(2022)『護られなかった者たちへ』(2021)の瀬々敬久監督がとりまとめます。
待ち遠しい映画公開に先駆けて、小説『未来』をネタバレありでご紹介します。
小説『未来』の主な登場人物
【佐伯章子】
父親が病死し、心の病を抱える母親と暮らす少女
【須山亜里沙】
章子のクラスメイト、暴力的な父と弟の3人家族
【後藤実里】
章子のクラスメイ、いじめの首謀者
【篠宮真唯子】
小学四年生の時の章子の担任
【樋口良太】
章子の父親。病死する
【佐伯文乃】
心の病と過去の秘密を持つ女性。章子の母
小説『未来』のあらすじとネタバレ

湊かなえ『未来』(双葉社刊)
東京ドリームランドと東京ドリームマウンテンは、ドリームワールドが運営する人気テーマパークです。
ある日、東京ドリームランドを目指し、中学三年生の佐伯章子と須山亜里沙が夜行バスに乗り込みました。亜里沙が眠ると、章子は一通の封書を取り出します。
それは彼女が10歳の時に届いた、20年後の自分からの手紙でした。
未来の章子の手紙では、父親を亡くして悲しむ10歳の自分を励ましています。章子の母親の名前が『文乃』だから、2人の名前を合わせると『文章』になるから文章で自分の気持ちを綴るようにとも書いてありました。
ドリームマウンテン三〇周年記念の栞も同封されていて、どう考えてもそれは未来の自分から送られてきたものとしか思えませんでした。
未来の自分を信じる章子は、手紙が届いてから今に至るまで、未来の自分に向けて日記のように手紙を書き続けています。
ドリームランドへ向かって走るバスの中で、章子はこれまでのことを思い出していました。
佐伯章子
章子は10歳の時に父親の良太をがんで亡くしました。それ以来、生きる気力を失い心の病を抱える母親の文乃と暮らしています。
四年生の時の担任の篠宮真唯子先生の退職に伴い、五年生では林優斗という大学を卒業したばかりの若い男の先生が担任になりました。
林先生は、章子の家庭のことを知り、文乃に病院を紹介してくれました。章子の努力もあり、母の文乃は少しずつ元気を取り戻し、章子は明るい未来が待っているような気がしていました。
ところが、同じクラスの後藤実里が、林先生と文乃が一緒に車に乗っているところを目撃し、付き合っているのかとクラスメイトがいる前で聞かれました。
この時、文乃は林から紹介された町外れの病院に通院するために林の車に乗っていたのですが、実里はどうも納得していない様子でした。
林と文乃のことで、校長やPTAの人たちから聞き取り調査されることになり、章子は実里と一緒に盗み聞きします。林が文乃のことをとても愛していると言いますが、対して文乃はそんな気持ちはないと拒絶します。
怒った林は文乃に対するストーカーとなり、三学期が始まる頃には体調不良を理由に休職となりました。
六年生になると、章子の前に絶縁状態となっていた良太の母親が現れ、彼の死を知らせなかった文乃を非難します。それから良太と瓜二つの章子に一緒に暮らさないかと言いました。
文乃は章子の将来を考え、祖母の家に行った方がいいかもしれないと言いますが、章子にそのつもりはありません。そこでこの話を断るつもりで、良太の実家に一人で行きました。
章子が父の故郷で自分の知らない父親に触れられて良かったと思う一方、祖母は文乃が自分の父親と兄が家で寝ているうちに放火した人殺しだと打ち明けます。
そして、文乃の兄と親友だった良太は、後に文乃と再会し、駆け落ち同然で結婚したのだと言いました。
文乃が人殺しだと知って愕然とする章子。章子がこの町に戻ると文乃が住む町でも人殺しとして見られてしまいます。章子は、もう祖母と会わないと宣言して祖母の家を後にしました。
やがて、文乃がホテルで働き始め、同じホテルで働く副料理長の早坂誠司と親しくなります。
籍を入れたわけではありませんが、章子が中学校に入学と同時に今のマンションは引っ越し、早坂の購入したかつてイタリアンレストランだった一戸建てに2人も移り住みます。
早坂はそこでフランス料理店をオープンし、フランスの名店『ガルニエ』で覚えた料理を披露。文乃が父親以外の人と一緒になるのが寂しいと思いつつも、章子は未来の自分へ嬉しい報告をしました。
ところが、章子は中学二年生になると、クラス替えで実里と再び同じクラスになり、それがもとで不登校になりました。
早坂のレストランに、お客として訪れた実里とその両親は、レストランでいさかいをおこし、後日、章子はそこに住んでいることを実里に知られてしまったのです。そこから実里による壮絶ないじめが始まりました。
章子の使用済みのナプキンが教卓の上に置かれていたり、章子の生理用ポーチがなくなって、教室に使用済みナプキンの匂いが充満して、男子生徒が嘔吐したり……。
実里は章子が犯人だと言い、章子の口臭や体臭がひどいと言いがかりをつけられました。たまらず章子は教室を飛び出しました。その後学校側の不誠実な態度にがっかりして、章子は自分が臭いのだと思い込み、以降不登校になったのです。
この頃、早坂のレストランの経営は悪化をたどり、文乃は早坂の友人で小学校の同級生だった須山亜里沙の父親から紹介してもらった訪問介護の仕事をしていました。
お店と自分の仕事がうまくいかなくなった早坂は章子に暴力をふるうようになりますが、ある日レストランが火事になり、それを機に文乃と章子は早坂と別れ、アパートに移り住みます。
その後、火事の原因は、文乃へのストーカー行為を行う林の放火ということで片付きました。
一方、不登校を続ける章子は、ある日郵便ポストに小学校のクラスメイトの亜里沙からの手紙が入っているのに気が付きました。亜里沙の指定したコンビニに行くと、彼女は待っていて、智恵理という先輩の家に章子を連れて行きます。
智恵理は不在でしたが、亜里沙は不登校になった事情を章子から聞き、口臭も体臭も気にならないと断言します。
さらに翌日、勇気を持って登校した章子を実里は懲りずに貶めようとしますが、そこに同じく不登校をしていた亜里沙が現れ、実里や他のクラスメイトを糾弾しました。
章子と亜里沙は、翌日から保健室登校を開始。亜里沙からは智恵理を紹介され、章子は智恵理の家にあるパソコンで、父親の遺品であるフロッピーディスクの中身を見ました。
そこには良太の書いた小説が保存されており、章子に充てられた衝撃的なメッセージも残されていました。
それからしばらくして、智恵理が自宅を放火し、両親に重傷を負わせます。悲劇は続き、今度は亜里沙が大切に思っていた弟の健斗が自殺。章子は亜里沙を慰め、一緒にドリームランドに行こうと約束します。
亜里沙は健斗を自殺に追いやった犯人が、父親の須山であることを突き止めました。彼は介護ヘルパーの派遣をする裏で売春の斡旋をしていて、早坂とも繋がっていました。
売春の客の一人は、美少年好きという変態でした。そこで早坂は健斗を差し出すよう須山に言い、彼はお金に負けて早坂の要求をのみます。また文乃もそういうことをさせられているようでした。
亜里沙は父親を殺害することを決意。章子も同じく、文乃を守るために早坂を殺害することを決意します。2人はタバコから毒を作り、それでターゲットを殺害することにしました。
また智恵理の起こした事件から、自分の家に火をつける精神状態であれば、ある法律が適用されることがわかっていましたので、毒を飲ませた後、家に火をつけることにしました。
章子は早坂の飲むウィスキーのボトルに毒を仕込むと、亜里沙と一緒に行くドリームランドの準備をします。早坂が帰ってくるのを押し入れで待ち、また会おうと未来の自分に向けて最後の手紙を綴りました。
須山亜里沙
亜里沙は、小学校低学年で母親を亡くし、父親である須山から暴力をふるわれていました。
林が担任になって亜里沙がDVを受けていることに気が付きそうになると、ストレスの捌け口は弟の健斗に変更されました。亜里沙と健斗はそれでも誰にも相談せず、支え合って生きていました。
亜里沙は不登校をしていますが、知り合いの二歳年上の智恵理から色々なことを教えてもらい、一度は諦めていた高校進学を目指すことにします。そして、このころ、亜里沙にも未来の自分から手紙が来ていたのです。
亜里沙は小学校の頃、林先生に気にかけてもらった章子のことが嫌いでした。ですが、須山と早坂の始めた会社に文乃が雇われていることから嫌な予感を覚えます。
章子も暴力をふるわれているのではと心配になって久しぶりに中学に登校し、そこで章子が不登校になっていることを知りました。亜里沙は智恵理たちから教えてもらったことを、章子にも教えてあげたいと彼女を呼び出したのです。
ある日、亜里沙は公園で智恵理を見かけますが、彼女はまるで中年男性のような態度と声で亜里沙にケンカをふっかけ、亜里沙はなんとかその場を逃げ出しました。
後日、智恵理の友人に会ってこのことを話すと、彼女は智恵理が二重人格であることを教えてくれました。亜里沙が会ったのは竜崎さんと呼ばれるもう一つの男性人格で、智恵理が自宅を放火したのはこの翌日でした。
それ以降、須山が暴力をふるわなくなったことで平和が訪れ、亜里沙は健斗に未来からの手紙に同封されていたドリームマウンテン三〇周年記念の栞を見せます。
亜里沙は健斗に笑ってほしいと、ドリームランドに連れて行くことを決めたのですが、翌日、健斗が飛び降り自殺をしました。遺書には亜里沙をドリームランドに連れていけなかったことへの謝罪の言葉が書かれていました。
未来からの手紙には、20年後も亜里沙と健斗は仲良くしていると書かれていたため、亜里沙はこの手紙は偽物だと思いました。
小説『未来』の感想と評価
小学四年生の章子は、大好きな父が病気で亡くなってからふさぎ込む母を励ましながら毎日を過ごしていました。
章子のクラスメイトの亜里沙は、章子と反対に母親を幼いころに亡くし、暴力的な父親と幼い弟と一緒に暮らしています。
家庭的に恵まれない2人の少女を気にかけていたのは、担任であった篠宮真唯子先生でした。
物語は、絶望的な暮らしをする章子に未来の自分からの手紙が届いて、生きる希望をもらうところから始まります。実はこの手紙は、章子の父親に頼まれて、篠宮先生が書いたものでした。
物語はそれぞれの視点から成り立つ章で描かれ、篠宮先生の章で初めて未来からの手紙の正体が明かされます。
未来からの手紙などありえないと思いながらも、それが当時の章子の心に希望の灯をともして、生き地獄から救ってくれていたのは事実です。
未来からの手紙は、章子の家庭の事情を知って何とかしてあげたいけれども、どうにもできないというじれったい思いを抱えた篠宮先生の優しさに溢れたものでした。
手紙が届いてからも、精神的に病んでいる母、章子に暴力を振るうようになる母の恋人、学校でのいじめなど、日常生活に潜むささいな悪魔が章子に襲い掛かります。
亜里沙にも同じようなことがおこり、2人の少女はやがて親を殺すしかないと思うようになりました。
少女たちの心をここまで捻じ曲げたものは、自分のことしか考えられず、彼女たちの心の叫びを無視する大人たちの理不尽な仕打ちだったのではないでしょうか。
少女たちは、助けを求める場所も方法も分からず、ただ自分の周囲を見て独自で判断して、負の連鎖を招いてしまいました。
肉親の殺害計画を実行し、希望のある未来を求めて心のユートピアであるドリームランドへ向かおうとする2人。
ですが、入場する前に、このようなことをした後で心の底から楽しめるのか、今日の思い出が生きる希望となるのかと、思えてきます。そして彼女たちは勇気ある決断をするのです。
つらい現実を嫌い、そこから逃げ出すのは簡単なことかもしれませんが、章子は後に残される母のことを考え、ただ逃げるだけでは幸せにはなれないと思いなおします。
現実逃避は明るい未来に繋がらない! 章子の決断は、生きる希望に満ちた未来への切符だったと思えます。
そして、章子の半生の悪夢のような出来事は、現実社会に起こり、いまだに解決されない問題が多いことに胸が痛みました。
映画『未来』の見どころ
小説では、章子と亜里沙、担任の篠宮真唯子と章子の父親樋口良太の4人からみた一連のストーリーが綴られています。映像化にあたり、社会問題を温かい目で深く描いてきた瀬々敬久監督は、篠宮真唯子先生を中心にストーリーを組み立てました。
自身も恵まれない少女時代を過ごした篠宮真唯子先生は、教え子の章子と亜里沙の家庭事情を知り、良太の依頼もあって未来からの手紙を書き、少女たちに希望を持たせます。
中心人物を‟未来からの手紙の筆者”である先生にすることで、小説よりも人間関係がわかりやすくなり、物語の経緯もわかりやすくなることでしょう。
瀬々敬久監督は、「『未来』は、未来に裏切られ続けた少女たちが、どうやって救われるのかを描いた映画です。湊かなえさんの精神を引き継いでこそできたと思っています。」と語りました。
映画では、壮絶ないじめをはじめ、児童虐待や近親相姦など、観るのがつらい出来事も用意されるでしょうが、それらをはねのけて、希望に満ちた未来を手繰り寄せようとする少女たちが描かれるのに違いありません。
物語のキーマンとなるのは佐伯良太と佐伯文乃の夫婦です。良太役の松坂桃李と文乃役の北川景子が、秘密を抱えた夫婦を演じるのも楽しみです。
映画『未来』の作品情報

(C)2026 映画「未来」製作委員会 (C)湊かなえ/双葉社
【日本公開】
2026年(日本映画)
【原作】
湊かなえ『未来』(双葉社)
【監督】
瀬々敬久
【脚本】
加藤良太
【キャスト】
黒島結菜、山﨑七海、坂東龍汰、細田佳央太、近藤華、松坂桃李、北川景子
まとめ
ネグレクト、ヤングケアラー、性暴力などの社会にはびこる問題を取り上げた、湊かなえの小説『未来』をご紹介しました。
幸せとは言えない家庭環境で育った章子と亜里沙。そんな2人を退職してからも気にかける篠宮真唯子先生もまた、恵まれない少女時代を過ごしていました。ですが、未来の自分自身から届いた手紙によって、少女たちは未来に希望を持ちます。
親を殺したくなるほどの家庭環境に置かれた彼女たちの未来にどんな幸せが待っていると言うのでしょうか。
切なくもありながら希望も持てるラストが用意された小説を、観客の感情を揺さぶる手腕にたけた瀬々敬久監督が映画にしました。
映画『未来』は、2026年5月8日(金)TOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開です。
篠宮真唯子先生を主人公にして、2人の少女たちの運命を描く映画『未来』。ラストは小説と違うのでしょうか。また、希望に満ちた20年後が待っているようにと願わずにいられません。


































