連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第262回
愛を失った男と愛を⾒限った⼥、そして愛を知らない少⼥が、それぞれの痛みと向き合いながら、彼らが夏の砂のように乾き切った⼼に、⼩さな希望の芽を⾒つけていく姿を描く『夏の砂の上』。
映画『夏の砂の上』は、2025年7月4日(金) 全国公開。
息⼦を亡くした喪失感から⼈⽣の時間が⽌まり、妻に⾒限られた主⼈公と、彼の妹が置いていった17歳の姪の2人で、戸惑いながらも始まる突然の共同⽣活。
主人公の浩にオダギリジョー、姪の優子は『ベイビーわるきゅーれ』で人気を博した髙⽯あかりが演じます。
松⽥正隆の同名戯曲を映画化したのは、『そばかす』(2022)を手がけた⽟⽥真也監督です。映画公開に先駆けて、本作をご紹介します。
映画『夏の砂の上』の作品情報

(C) 2025映画『夏の砂の上』製作委員会
【日本公開】
2025年(日本映画)
【原作】
松⽥正隆(戯曲「夏の砂の上」)
【監督・脚本】
⽟⽥真也
【⾳楽】
原摩利彦
【製作・プロデューサー】
甲斐真樹
【共同プロデューサー】
オダギリジョー
【出演】
オダギリジョー、髙⽯あかり、松たか⼦、森⼭直太朗、⾼橋⽂哉、篠原ゆき⼦、満島ひかり、光⽯研
【作品概要】
映画『美しい夏キリシマ』(2002)の脚本を担当した⻑崎出⾝の松⽥正隆による《読売⽂学賞 戯曲・シナリオ賞受賞》の傑作戯曲を基にした映画『夏の砂の上』。監督は、『そばかす』(2022)を手がけた気鋭の演出家・⽟⽥真也です。
主役の⼩浦治を演じるのは、俳優だけでなく監督・プロデューサーとしても⽇本の映画界を牽引するオダギリジョー。
浩の姪で、⽗親の愛を知らずに育った優⼦は、「ベイビーわるきゅーれ」シリーズで⼈気を博し、舞台『鬼滅の刃』の竈門禰豆子にも抜擢され、2025年度後期NHK連続テレビ⼩説のヒロイン役が決まって注⽬される髙⽯あかりが演じます。
松たか⼦、森⼭直太朗、⾼橋⽂哉、篠原ゆき⼦、満島ひかり、光⽯研なども脇を固めています。
映画『夏の砂の上』のあらすじ

(C) 2025映画『夏の砂の上』製作委員会
⾬が⼀滴も降らない、からからに乾いた夏。
⻑崎のある町に、幼い息⼦を亡くした喪失感から立ち直れず、妻・恵⼦と別居中の⼩浦治が住んでいました。
治は、働いていた造船所が潰れても、新しい職を探さず、毎日ふらふらしています。
ある日のこと、そんな治の家に、妹の阿佐⼦が娘の優⼦を連れて訪ねて来ました。
阿佐⼦は、博多で働くために(男の元へ⾏くと見え見えでしたが)、しばらく優⼦を預かってくれと言います。
そして阿佐子は、近くのコンビニで優子のアルバイトも決めて来たから食費の心配しなくていいからと、半ば強引に優子を浩の元へ置いて行きました。
こうして突然、治と姪の優⼦との同居⽣活が始まることになりました。
映画『夏の砂の上』の感想と評価

(C) 2025映画『夏の砂の上』製作委員会
夏の長崎の町が舞台です。そこで暮らす浩は、息子を亡くし、妻と別居中。おまけに失業中なのに仕事もろくに探せないさえない中年男性です。
そんな浩の元に姪の17歳の優子が共同生活をすることになります。未成年の優子の保護者として、徐々に目覚めていく浩。父親も知らない優子も次第に浩を慕うようになります。
不器用で無口な伯父と姪の心の交流がどのように表現されるのか。夏の長崎の風景とともに繊細な心理描写に注目します。
活躍の幅を広げている髙⽯あかりが、虚ろな視線やツンデレな態度で見事に‟愛を知らない少女・優子”を演じています。
また、浩役のオダギリジョーも、荒んだ男そのものを彷彿させる演技をみせています。
一念発起してやっと決めた浩の就職先は、中華料理店でした。浩は店のユニフォームを着て、厨房で鍋を洗い、包丁を片手に骨付き肉を切りスープの仕込みをします。コック服と三角巾に身を包んだオダギリジョー、その姿がとても似合っていました。
まとめ

(C) 2025映画『夏の砂の上』製作委員会
映画『夏の砂の上』は、雨が降らない乾ききった長崎の街を舞台に、息子を亡くして憔悴感から立ち上がれず、今は妻と別居中の男・浩と、彼に預けられた姪の優子のひと夏の物語です。
映画『夏の砂の上』は、2025年7月4日(金) 全国公開。
ギラギラ照り付ける太陽の元、坂道の多い長崎の町並みが美しく映し出されます。そんな街で、人生に疲れ切った人々のひび割れて乾いた心が次第に露わになってきます。
浩と優子の共同生活は、徐々に心の通うものに変わっていきます。それはまるで、乾いた砂に水が沁み込んでいく様子にも似て、ぎこちなく交わされる2人の笑顔に、安堵と一筋の希望を見出すことでしょう。
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。





































