Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2025/05/29
Update

映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』あらすじ感想と評価レビュー。実話の体罰事件を元ネタに綾野剛が演じる“真実への疑惑”|映画という星空を知るひとよ260

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第260回

《バイオレンスの巨匠》とも謳われている三池崇史監督が、日本で初めて「教師による児童へのいじめ」が認定された体罰事件を題材にした福田ますみのルポタージュを映画化しました。

高い表現力で実力派として知られる綾野剛を主役の小学生教師に抜擢し、教師を訴える怖い母親が柴崎コウが演じた映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』は、2025年6月27日(金)全国公開です。

我が子が「担任から酷いイジメや体罰を受けた」と訴えた母親に対し、その小学生教師は「生徒の母親の話は全て、でっちあげです」と言いました。

児童の親と教師。2人の供述は全て食い違っています。いったいなぜこのようなことが起ったのでしょうか。真実を語っているのはどちらなのでしょうか。

実際にあった事件を基にした作品の怖ろしいまでにリアルな法廷論争に目を見張ることでしょう。映画公開に先駆けて、本作をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』の作品概要


(C)2007 福⽥ますみ/新潮社(C)2025「でっちあげ」製作委員会

【日本公開】
2025年(日本映画)

【原作】
福田ますみ『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮文庫刊)

【監督】
三池崇史

【脚本】
森ハヤシ

【音楽】
遠藤浩二  

【主題歌】
キタニタツヤ『なくしもの』(Sony Music Labels Inc.)

【企画】
和佐野健一

【キャスト】
綾野剛、柴咲コウ、亀梨和也、大倉孝二、小澤征悦、髙嶋政宏、迫田孝也、安藤玉恵、美村里江、峯村リエ、東野絢香、飯田基祐、三浦綺羅、木村文乃、光石研、北村一輝、小林薫

【作品情報】
本作の監督を務めたのは、『妖怪大戦争』(2005)や『悪の教典』(2012)『怪物の木こり』(2024)などの三池崇史。

ホムンクルス』(2021)『最後まで行く』(2023)の綾野剛を主演に迎え、日本で初めて「教師による児童へのいじめ」が認定された体罰事件を題材にした福田ますみのルポタージュ『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』を映画化しました。

綾野剛がいじめを告発された教師・薮下を、柴咲コウが告発した保護者・律子を、亀梨和也が事件を報道した記者・鳴海を演じています。さらに、木村文乃、光石研、北村一輝、小林薫、小澤征悦、髙嶋政宏といった豪華な顔ぶれも共演。

映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』のあらすじ


(C)2007 福⽥ますみ/新潮社(C)2025「でっちあげ」製作委員会

2003年、⼩学校教師・薮下誠⼀(綾野剛)は、保護者・氷室律⼦(柴咲コウ)から担任の児童・氷室拓翔への体罰で告発されました。

体罰とはものの⾔いようで、その内容は聞くに耐えない虐めでした。これを嗅ぎつけた週刊春報の記者・鳴海三千彦(⻲梨和也)が“実名報道”に踏み切ります。

過激な⾔葉で飾られた記事は、瞬く間に世の中を震撼させ、薮下はマスコミの標的となりました。

誹謗中傷、裏切り、停職、壊れていく⽇常。次から次へと底なしの絶望が薮下をすり潰していきます。

⼀⽅、律⼦を擁護する声は多く、“550⼈もの⼤弁護団”が結成され、前代未聞の⺠事訴訟へと発展。

誰もが律⼦側の勝利を切望し、確信していたのですが、法廷で薮下の⼝から語られたのは……、「すべて事実無根の“でっちあげ”だ」という、完全否認の内容でした。

映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』の感想と評価


(C)2007 福⽥ますみ/新潮社(C)2025「でっちあげ」製作委員会

本作は、実際に起った教師による児童へのいじめが認定された体罰事件を題材にした福田ますみのルポタージュ『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮文庫刊)を基にしています

冒頭は法廷での供述シーン。被害を受けた児童の母親と主人公の小学校教師・薮下が事件の詳細をそれぞれ述べるのですが「全く別の話では?」と思うほど、見事に食い違っています。

いったいどちらが、本当のことを語っていると言うのでしょうか。自分が知っている事実とは違う供述に驚きあきれる薮下。薮下は自分の主張を述べますが、公平に見なければいけないはずなのに、なぜか世間は児童側の味方をします。

児童の母親には“550⼈もの⼤弁護団”がつき、自殺をほのめかしたとされる殺人教師・薮下には誰一人として弁護人がつきません。

無実を訴える薮下の叫びに耳を貸す人など一人もいなかったのですが、やっと親身になって話を聞いてくれる弁護士・湯上谷と出会え、法廷での戦いが始まります。それは神経をすり減らす地獄のような裁判で、湯上谷の言葉を借りれば、裁判は「戦争」なのでした。

子ども好きな薮下は努力して先生という職業についた苦労人ですが、彼の持つ「優しさ」が、この戦争には不必要で命取りになると湯上谷から言われます。

「白」を「黒」と言い繕うばかりでなく、真実の出来事が捻じ曲げられて語られる異常な供述に薮下には不利な裁判が続き、次第に彼は追い込まれていきました

そんな薮下を演じるのは、「動」も「静」もどちらの演技も両方をできる実力者として知られている綾野剛。

ポスターなどでも印象深いのは、涙ぐんで何かを訴える綾野剛の顔です。理不尽な出来事をどう訴えればわかってもらえるのかという怒りにも似た切ない表情に胸を打たれます。

大多数が支持する話が正しくて、たった一人の話は誰も信じてくれないのかと、涙と慟哭で訴える彼の叫びは、どこまで社会に響くのでしょうか。

これはフィクションではなく、実際にあった事件なのです。決して他人事ではありません。自分の身に起ったらどうするかと、深く考えさせられます。

まとめ


(C)2007 福⽥ますみ/新潮社(C)2025「でっちあげ」製作委員会

綾野剛が主演をした三池崇史監督の『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』をご紹介しました。

実際にあった事件のルポルタージュを基にした映画です。本作では、薮下教師と被害者児童の母親の供述は、真向からすれ違います。

児童の母側の供述は「えん罪」であり「でっちあげ」なのですが、薮下教師には不利な状況が続きます。また彼の職場でも体面を重んじ保身に走る人がほとんどでした。彼はどうやってこの戦争とも言える境遇を耐え、反撃をするのでしょうか。

主人公・薮下の追い詰められた状況を見事に表現している綾野剛と、何が目的かわからないまでも冷徹冷酷に薮下を追い詰める母親を好演する柴咲コウ。対立する2人の演技に注目です。

『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』は、2025年6月27日(金)全国公開

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。



関連記事

連載コラム

映画『息子のままで、女子になる』感想評価とレビュー。サリー楓に密着したLGBTドキュメンタリーは“You decide.”の言葉が意味を解く|映画という星空を知るひとよ65

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第65回 新世代のトランスジェンダーのアイコンとして注目されるサリー楓。男性として生まれた楓が、“女性”として踏み出した瞬間を追ったドキュメンタリー映画『息子の …

連載コラム

【イット・カムズ・アット・ナイト】最近の怖い洋画とホラー映画の観点から比較解説|SF恐怖映画という名の観覧車23

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile023 「人間」は平和的な状況においては、言葉や行動によって社会生活を共にし、お互いを支えあって生きていく事が出来ます。 しかし、その逆にpro …

連載コラム

中国映画『陰陽師 二つの世界』ネタバレあらすじと感想評価。ラスト結末も【RPGゲームおすすめ実写化で新解釈された安倍晴明とは】|Netflix映画おすすめ24

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第24回 今回ご紹介する映画『陰陽師: 二つの世界』は、中国のオンラインゲーム会社が開発した、大ヒットモバイルゲーム「陰陽師本格幻想RPG」 …

連載コラム

実写『学校の怪談』ネタバレあらすじ感想と結末の解説評価。“ジュブナイル映画”として小学生のひと夏の成長を怪奇ファンタジックに描く|邦画特撮大全109

連載コラム「邦画特撮大全」第109章 今回の邦画特撮大全で紹介するのは『学校の怪談』(1995)です。 山崎貴監督の最新作『ゴーストブック おばけずかん』が2022年7月22日(金)に公開されることを …

連載コラム

『A LEGEND 伝説』あらすじ感想と評価レビュー。ジャッキー・チェンが過去と現在の“ダブル主演”で贈る50周年記念プロジェクト第2弾【すべての映画はアクションから始まる52】

連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第52回 日本公開を控える新作から、カルト的に評価された知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を時おり網羅してピックアップする連載コラム『すべての映画は …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学