連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第304回
映画『しびれ』は、内山拓也監督が、故郷の冬の新潟を舞台に、居場所とアイデンティティを模索する少年の物語を自伝的作品として世に放つ渾身の一作です。
映画『しびれ』は、2026年9月25日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国公開です。
父親の暴力のショックから言葉を失った主人公の大地は、貧困にあえぐ母親によって育てられますが、母親は仕事のために不在がちで寂しい日々を送っていました。やがて少年は青年となり、ある哀しい現実と向き合うことに……。
映画賞新人賞を席巻した『佐々木、イン、マイマイン』(2020)、続く『若き見知らぬ者たち』(2024)で、内山拓也監督は一貫して現実に抗い、何かを掴もうとする若者の青春を見つめ、映画界に鮮烈な印象を残してきました。
本作でも監督の想いは揺るぎません。ひとりの少年が「息をのむような愛」を知るまでの20年間を、強烈なインパクトで描き出した作品『しびれ』をご紹介します。
映画『しびれ』の作品情報

(c)2025「しびれ」製作委員会
【日本公開】
2026年(日本映画)
【監督・原案・脚本】
内山拓也
【企画・制作】
カラーバード
【製作幹事・制作プロダクション】
RIKIプロジェクト
【出演】
北村匠海、宮沢りえ、榎本司、加藤庵次、穐本陽月、赤間麻里子、永瀬正敏
【作品概要】
『しびれ』は、『佐々木、イン、マイマイン』(2020)『若き見知らぬ者たち』(2024)の内山拓也監督が、北村匠海を主演に迎えて撮りあげた自伝的作品。
自身の居場所とアイデンティティを模索する孤独な少年が、息をのむような大きな愛を知るまでの20年間を描いています。
主人公・大地の青年期を演じるのは、『悪い夏』(2025)や『愚か者の身分』(2025)の北村匠海。少年期は、榎本司、加藤庵次、穐本陽月の3人が演じています。また、大地の母・亜樹は『月』(2023)などの宮沢りえ、父・大原を永瀬正敏がそれぞれ担当しました。
本作は、2025年・第26回東京フィルメックスのコンペティション部門で審査員特別賞を受賞。また、第76回ベルリン国際映画祭パノラマ部門にも正式出品されました。
映画『しびれ』のあらすじ

(c)2025「しびれ」製作委員会
日本海沿いの町に母親と二人で暮らす少年・大地がいます。
大地は、幼少期に暴君のような父から暴力を受け、その影響から言葉を発しません。
今は母の亜樹と一緒に暮らしていますが、夜の仕事で生計を立てざるを得ない亜樹はほとんど家に帰らず、生活は困窮。大地はいつも独りぼっちでした。
やがて大地は、亜樹と共に叔母の家に身を寄せることになりました。
ですが、大地はどこにも居場所はなく、ひとりで過ごしては内気になっていきます。
やがて青年となった大地の運命は、さらに大きく揺らいでいきました。
映画『しびれ』の感想と評価

(c)2025「しびれ」製作委員会
本作『しびれ』は、これまでにも現実に抗う若者の青春を描き続けて来た内山拓也監督が自らの想いを込めた自叙伝的な作品です。
父の暴力から言葉を発することができなくなった少年・大地。母親によって育てられますが、生活は困窮を極め、いつも独りぼっちでした。
ですが、貧困生活の中でも、大地をかわいがる母親の姿が断片的に描かれています。
母は大地と自分が生きるために必死でしたが、幼い大地に甘えることもたびたびで、そんな母を大地は憎みたくても憎み切れないでいました。
こんな歪な関係の母と息子がひっそりと生きていたのです。
映画では、母の亜樹は宮沢りえ、青年期の大地は北村匠海がそれぞれ演じていました。
爆発的に自分の心情を吐露する亜樹を、母性溢れる迫真の演技力で宮沢りえが魅せます。
一方の大地を演じるのは、北村拓海。セリフがない役ですが、その時のその時の感情を、目の動きや表情で伝える圧巻の演技力で披露していました。
主人公が会話が出来ないせいか、全体を通してとても静かな作品です。
その静寂の中にこそ、生きることの絶望や苦しみ、計り知れない親子の愛などが、盛り込まれていると言えるでしょう。
静かに幕が開いた大地のドラマはどうなるのか。その幕引きにご期待ください。

(c)2025「しびれ」製作委員会
まとめ

(c)2025「しびれ」製作委員会
日本海の荒波のような厳しい生活の幼少期から始まる、一青年の半生が描かれた『しびれ』。
精神的なショックから言葉を発することができない主人公・大地を演じるのは、実力派の北村拓海です。
本作では、声が出せない主人公ですからセリフこそないものの、変幻自在なまなざしを武器に、大地の怒りや希望を見事に表しています。
そして、自堕落のようでも彼女なりに息子を愛した大地の母・亜樹。彼女を演じ切った宮沢りえの凄みのある演技にも注目です。
映画『しびれ』は、2026年9月25日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国公開!
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。




































