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『市民捜査官ドッキ』あらすじ感想と評価レビュー。韓国で実際に起きた事件を基にラ・ミランが振り込め詐欺に立ち向かう主婦を熱演

  • Writer :
  • 桂伸也

2024年12月13日(金)より、韓国映画『市民捜査官ドッキ』全国順次公開!

生活に追い詰められた主婦が自ら振り込め詐欺の陰謀に立ち向かうアクション物語『市民捜査官ドッキ』

2016年に韓国で実際に起きたという事件をベースに、自身が遭遇した陰謀に果敢に立ち向かっていく一人の主婦の姿を描きます。

韓国の新鋭女性監督であるパク・ヨンジュが作品を手掛け、社会的な問題である犯罪の一つをテーマよりさまざまな社会的メッセージを含む物語を作り上げました。

映画『市民捜査官ドッキ』の作品情報


(C)2023 SHOWBOX, PAGE ONE FILM AND C-JES STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED.

【日本公開】
2024年(韓国映画)

【原題】
시민덕희

【英題】
Citizen of a Kind

【監督・脚本】
パク・ヨンジュ

【出演】
ラ・ミラン、ジェミンコンミョン、ヨム・ヘラン、パク・ビョンウン、チャン・ユンジュ、イ・ムセン、アン・ウンジンほか

【作品概要】
振り込め詐欺の被害に遭った女性が詐欺組織のメンバーの一人に助けを求められ、極悪詐欺集団に立ち向かう姿を描いたドラマ。

主演は『高速道路家族』『正直政治家 チュ・サンスク』などのラ・ミラン。他にも『エクストリーム・ジョブ』『ハンサン 龍の出現』のコンミョン、名脇役として人気を博しているヨム・ヘラン、パク・ビョンウンら多くの個性派俳優が名を連ねています。


映画『市民捜査官ドッキ』のあらすじ


(C)2023 SHOWBOX, PAGE ONE FILM AND C-JES STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED.

自身が経営するクリーニング店の火事でお金が必要なシングルマザーのドッキ。

彼女のもとに、ソン代理と名乗る男から融資商品を紹介する電話が来ます。お金が必要な彼女は藁にもすがる思いで彼が必要だという手数料を送金しますが、のちにそれが振り込め詐欺だったと知り愕然とします。

ところがそんな彼女のもとに、再びソン代理は電話。ドッキに助けを求めてきます。

お金を取り戻したい一心で彼から詐欺組織の情報提供を受けたドッキは、彼を助け奪われたお金を取り戻すべく、仲間たちとともに中国・青島へ向かいます……。

映画『市民捜査官ドッキ』の感想と評価


(C)2023 SHOWBOX, PAGE ONE FILM AND C-JES STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED.

一つの「振り込め詐欺」から目まぐるしく展開する事件を描いたこのドラマ。

主人公ドッキが詐欺被害に遭い、自らこの事件に立ち向かうという姿は、普通に考えれば「越権行為」と見られ、その危険性も相まって非難されるべき行為であったとも見られます。

しかし彼女の「是が非でも」という姿勢で向き合ったその行動には、現代の国や世界がする「危惧すべき問題」のようなものが見えてきます

ドッキは自身の被害を警察に訴えますが、警察にはたくさんの苦情が寄せられ窓口はその対応に追われて手一杯。問題が起きた際に対処する方法である「通例の手順、仕組み」というものの限界が、ここに現れてきているわけです。


(C)2023 SHOWBOX, PAGE ONE FILM AND C-JES STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED.

この不条理を打破すべく奮闘する、劇中のドッキの行動は見る人を強く共感に導くことでしょう。

それは今という時代が、ある意味満ち足りた社会として出来上がっている一方で、どこか誰もが釈然としない気持ちになる部分は残っており、体や思考がどこかそのモヤモヤしている部分を打破するようは動けなくなっていることにある、という傾向にあるようにも感じられます。

「通例で考えれば……」という仕組み、手順はあらゆるところで整備され、一般的な市民は犯す必要はない、犯してならない領域、つまり警察などの組織が直接動くような領域があるとされる傾向があります。

一方でこの仕組み、手順という存在のために、人々がそれに無条件で頼り過ぎてしまい、実はその裏に隠れた危機的状況を回避できないという人間というのもいる、そしてそういった人は意外に増えてきているのではないでしょうか。

ある意味、この作品はそんな現代の社会における問題を提起しているようでもあります。

まとめ


(C)2023 SHOWBOX, PAGE ONE FILM AND C-JES STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED.

作品の一番のポイントは、やはりラ・ミランの存在感。物語序盤は文字通り「普通のおばさん」といういで立ちで、果たしてこの人に共感する人はいるのだろうか?という感覚をおぼえさせる風貌ですが、主人公ドッキの性格、性質が物語の展開に従って露わになると、とたんに彼女は「英雄」へと変貌していきます

追い詰められた生活の中で、追い打ちをかけるように現れた危機。目の前の出来事になりふり構わず奮闘する彼女ではありますが、一方で些細なことが起きた際に優しさを見せたり、自身の落ち度を恥じたり、そしてここぞというときに毅然とした表情を見せる。

案外「英雄」と呼ばれるような人はどこにでもいるのではないか? そんな気付きを感じさせてくれるような存在感を見事に示し、見るものを物語の中へと強く引き込んできます。

また隠れた見どころとしては、ドッキが助けを求める刑事役を務めたパク・ビョンウンの演技にもあります。

ドラマなどではどちらかというとシリアスな主人公や冷徹な悪役を演じる、腹の内が読めないミステリアスな役柄を演じることの多いパクですが、本作はどこか抜けたところがありながらも、必要なところで情を出し人を思いやる、人間味のある役を演じており、物語に新鮮な空気を醸しています。

全般にユニークなキャスティングながら、うまくテーマにはまったバランスのいい展開が感じられ、社会的なテーマが垣間見えながらも高いエンタテインメント性をもった作品であるといえるでしょう。

映画『市民捜査官ドッキ』は2024年12月13日(金)より全国順次公開!




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