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Entry 2023/07/26
Update

【ネタバレ】ハンサン龍の出現|あらすじ結末評価と結末感想の解説。16世紀後半の日韓の戦争を描く歴史大作

  • Writer :
  • 秋國まゆ

戦国時代史上最大の海戦「閑山島海戦」を映画化!

キム・ハンミンが脚本・監督を務めた、2022年製作の韓国のR15+指定の歴史大作『ハンサン 龍の出現』。

戦国時代末期。天下統一を成し遂げた豊臣秀吉は、大陸の明(ミン)国を狙いに定め、侵攻の足掛かりとして朝鮮半島に出兵しました。

秀吉の下で「賤ヶ岳の七本槍」の1人として名を馳せた戦国武将・脇坂安治率いる大軍を迎え撃つのは、冷静沈着な朝鮮水軍のイ・スンシン将軍。

互いの実力を認める2人の武将が、時に自軍内の政治的な駆け引きに足を引っ張られながらも準備を重ね、決戦の時を迎えます。

映画『ハンサン 龍の出現』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。

映画『ハンサン 龍の出現』の作品情報


(C)2022 LOTTE ENTERTAINMENT & BIGSTONE PICTURES CO.,LTD.ALL RIGHTS RESERVED.

【日本公開】
2023年(韓国映画)

【脚本】
キム・ハンミン、ユン・ホンギ、イ・ナラ

【監督】
キム・ハンミン

【キャスト】
パク・ヘイル、ピョン・ヨハン、アン・ソンギ、ソン・ヒョンジュ、キム・ソンギュ、キム・ソンギュン、キム・ヒャンギ、オク・テギョン、コンミョン

【作品概要】
『神弓 KAMIYUMI』(2012)や『バトル・オーシャン 海上決戦』(2019)のキム・ハンミンが脚本・監督を務めた、韓国の歴史大作。

2023年3月17日(金)にシネマート新宿ほか全国に順次公開された本作は、韓国動員730万人を超える大ヒット作品となり、2022年第27回春史国際映画祭脚本賞と、第31回釜日映画祭美術・技術賞と最優秀監督賞を受賞した作品です。

別れる決心』(2022)のパク・ヘイルが本作の主演を務め、『太陽は動かない』(2021)のピョン・ヨハンや、『折れた矢』(2013)のアン・ソンギら豪華キャスト陣と共演しています。

映画『ハンサン 龍の出現』のあらすじとネタバレ


(C)2022 LOTTE ENTERTAINMENT & BIGSTONE PICTURES CO.,LTD.ALL RIGHTS RESERVED.

戦国時代末期。天下統一を成し遂げた日本の武将・豊臣秀吉は、大陸の明国を次の狙いに定め、侵攻の足がかりとして朝鮮半島に出兵しました。

1592年4月13日。秀吉の号令のもと、朝鮮に押し寄せた日本軍は釜山(プサン)城に進撃。同地を陥落させ、そのわずか20日後に朝鮮の首都・漢陽(ハニャン。現在のソウル)を占領しました。

朝鮮の王・宣祖(ソンジョ)は、戦禍を逃れ北方の平壌に避難しますが、日本軍は破竹の勢いで北上します。

一方、朝鮮勤王軍5万人が漢陽を奪還するべく、龍仁(ヨンイン)・光教山(クァンギョ)に集結しました。

しかし6月5日の早朝、「賤ヶ岳の七本槍」の1人である日本軍の将軍・脇坂安治率いる2000人弱の兵が、朝鮮勤王軍に奇襲を仕掛け壊滅させました。

「賤ヶ岳の七本槍」とは、近江国伊香郡の賤ヶ岳付近で起きた秀吉と柴田勝家の戦い「賤ヶ岳の戦い」にて、秀吉の下で活躍した七人の若き武将のことです。

脇坂たちの奇襲攻撃を機に、完全に守勢に回った朝鮮は、滅亡の危機に瀕していました。

同日、朝鮮の海を守る全羅左水使(チョルラチャスサ)である朝鮮水軍の将軍イ・スンシンは孤軍奮闘し、何度も海戦を仕掛けて日本水軍の戦力を削ることに成功。

一次海戦の朝鮮の玉浦(オクポ)・合浦(ハッポ)・赤珍浦(チョクチンポ)では42隻の船を撃沈させました。

しかし二次海戦、泗川(サチョン)・唐浦(タンポ)での海戦にて、卓越した攻撃能力と防御力を誇る朝鮮の装甲船「亀船」の前方にある竜頭が敵船に食い込んでしまいました。

挙げ句の果てに、指揮をとっていたイ・スンシンが1人の日本兵に銃撃され、負傷してしまったのです。

三次海戦まであと5日。イ・スンシンの本陣である全羅の左水営(チョルラチョスヨン)で行われた軍議にて、慶尚右道(キョンサンウド)水軍を率いる朝鮮の慶尚右水使(キョンサンウスサ)のウォン・ギュンは、今こそ防御を固めるべきだと主張。

敵が自軍の兵力を過信している今こそ、釜山を奪還する好機だとして、攻勢に転じようとするイ・スンシンの一派に「先に攻めうつ?気は確かか?」と愚弄します。

ウォン・ギュンとイ・スンシンの一派が対立するなか、イ・スンシンは攻めるとも守るとも明言せず、状況を見据えながら交戦の準備を進めていました。

イ・スンシンは自身の配下である遊撃将ナ・デヨンと突撃将イ・オルリャンから、竜頭がない新しい亀船を造るのはどうかと提案されます。

それは泗川での戦いの後、ナ・デヨンたちが考えに考え抜いた末に思いついた唯一の打開策でした。

というのも亀船の船型には大きな欠点がありました。火砲を撃つのは容易いものの、敵船に包囲されれば左右前方から一斉砲火されてしまいます。

また、竜頭があると亀船の速度は遅く、泗川での戦いにて亀船が突っ込んだ、天守閣が船に乗ったような日本の旗艦「安宅船」に、竜頭が食い込んでしまいました。

イ・スンシンはこの提案を受け入れ、ナ・デヨンに新しい亀船を造ることを命じます。

その後、イ・スンシンのもとへ、平壌から「王の一行は義州(ウィジュ)へ向かう」と記された書状が届きました。

イ・スンシンは、朝鮮最高の水先案内人である光陽県監のオ・ヨンダムを呼び出します。

王の一行が平壌城を敵に差し出し、義州に退避したのには何らかの理由があるからだと考えたからです。

その書状を読んで、イ・スンシンに呼び出された意図を瞬時に察したオ・ヨンダムは、義州に退避したのは明国への亡命のためではないかといいます。

もしそれが本当であれば、宣祖はさらに民からの信頼を失いかねません。それどころか、この地の命運も………。

一方、日本軍が本陣を置く釜山浦(プサンポ)では、脇坂が日本水軍の将となり、イ・スンシンの本陣である左水営を叩こうとしていました。

脇坂はイ・スンシンを一度で確実に仕留めるために、彼と亀船に関する情報を集めようと、朝鮮語を解する甥の脇坂左兵衛を間者として敵陣に送り込みます。

さらに脇坂は、第六軍の武将・小早川隆景に対し、自分が全羅道で得る報奨を全て差し出す代わりに、陸から左水営を攻めるよう依頼しました。

朝鮮軍の捕虜となった日本軍の武将・俊沙は、この小早川の不審な動きについて尋問されるも、イ・スンシンと朝鮮軍を嘲笑します。

イ・スンシンはその芝居がかった様子に彼の真意は別にあると感じ、密かに対面して問い質しました。

この戦いは何のためにあるかと俊沙が尋ねると、イ・スンシンは国と国との戦いではなく、「義と不義との戦いだ」と答えました。

俊沙は、泗川でイ・スンシンを撃ったのは自分だと明かし、彼に仕えたいといいました。

実は俊沙は泗川での戦いにて、命惜しさに自分たち家臣を盾にした主君に絶望しました。と同時に、手負いの部下を身を挺して守り戦った彼の姿に感銘を覚えていたのです。

三次会戦まであと3日。イ・スンシンは日本水軍を誘き寄せて一気に叩くべく、八陣の一つ「鶴翼の陣」を敷くことに決め、演習を重ねていきます。

「鶴翼の陣」とは、鶴が翼を広げたような陣形が特徴の陣形のことです。中央に位置する本陣が後ろに、左翼と右翼が最前線に立ち、敵軍を挟みこんで戦います。

しかし、高い操船技術が必要な「鶴翼の陣」は容易ではなく、海域に慣れていないウォン・ギュンとの不協和音が続いていました。

さらに、本陣の亀船造船所にある亀船の見取り図が左兵衛に盗まれてしまいます。

その報告を受けたイ・スンシンは、ナ・デヨンがいる順天(スンチョン)府に設置した秘密造船所を訪れ、次の戦いまでに完成は間に合いそうかと尋ねました。

この時、ナ・デヨンとその配下たちは2日間、不眠不休で作業に取り組んでいました。しかしそれでも、次の戦いまでに完成させるにはまだ少し時間が必要でした。

そう話すナ・デヨンに、イ・スンシンは「連中はそなたの作業場から亀船の見取図を盗んだのだ。脇坂は亀船の難点に気づくだろう」と言い、亀船を戦力から外すという苦渋の決断をします。


(C)2022 LOTTE ENTERTAINMENT & BIGSTONE PICTURES CO.,LTD.ALL RIGHTS RESERVED.

一方、左兵衛は亀船の見取図を持って本陣に帰還。彼と共に本陣に戻った俊沙は、脇坂の軍を攪乱させるために偽情報を報告します。

俊沙の報告を聞いて亀船の弱点に気づいた脇坂は、イ・スンシンからの先制攻撃はないと判断しました。

豊臣の命により、脇坂と同じ「賤ヶ岳の七本槍」のメンバーである加藤嘉明と九鬼嘉隆が、40隻の兵船を率いて日本から駆けつけます。

一方、朝鮮軍の間者イム・ジュニョンは左水営に帰還。イ・スンシンに日本軍に侵入して得た情報を報告しました。

「脇坂が率いる兵船は大船30隻、中船が約70隻と合計100隻余り」、「さらに加藤が率いてきた40隻を含めて、合計140隻余りの船が待機している。脇坂は満を持して出陣するはず」。

「加藤は、今まで見てきた船とは異なり船体が厚く、火砲をつるしている特異な船を率いてきた」、「そのうち大将船と見られる船は、全体が鉄板で覆われている」と。

それを聞いて軍議が紛糾するなか、イ・スンシンは脇坂の軍との決戦を決意。「明日の夜、子の刻に出陣する」と、オ・ヨンダムたちにいいます。

以下、『ハンサン 龍の出現』ネタバレ・結末の記載がございます。『ハンサン 龍の出現』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2022 LOTTE ENTERTAINMENT & BIGSTONE PICTURES CO.,LTD.ALL RIGHTS RESERVED.

7月5日の夜。イ・スンシン率いる朝鮮水軍が左水営を出発したとは知らない脇坂は、日本から到着したばかりの加藤たちとの宴の席を設け、彼らと情報を共有します。

その宴の席に小早川の伝令が到着し、小早川が左水営への陸路攻めを承諾したことを脇坂に伝えました。

いつ攻めるのか待っている小早川に、脇坂は「今宵、子の刻に進軍せよ」と伝えるよういいました。

それを聞いた加藤は、「お主、ともに戦うつもりはあるのか」と激昂し、脇坂の首に刃を突きつけます。実は、加藤と脇坂は何かにつけて意見が対立する犬猿の仲でした。

脇坂の近くで活動していた朝鮮軍の間者チョン・ボルムの計らいで、彼らの会話を盗み聞きしていたイム・ジュニョンは、イ・スンシンにこのことを伝えようと釜山城を立ち去ろうとします。

しかしそこへ、脇坂たちが襲来。実は、左兵衛は左水営へ向かう道中でイム・ジニョンの姿を目撃しており、彼が誰と繋がっているのか監視していたのです。

脇坂たちはイム・ジュニョンたちを挟み撃ちにして始末しようとするも、その前に特攻したチョン・ボルムによって、脇坂は左胸を刺されてしまいます。

イム・ジュニョンは命からがら釜山城から逃走するも、追いかけてきた左兵衛たちによって仲間を殺され、ここまで乗ってきた船に火矢を放たれてしまいました。

脇坂に首を掴まれたチョン・ボルムは、敵に死んでもつかんだ情報を話すまいと自害を図るも失敗。激怒した脇坂は、ほかに間者がいないか配下たちに調べさせます。

日本軍の捕虜は片っ端から捕えられ、尋問され、次々と首を刎ねられていきました。

さらに脇坂は、いっそのこと邪魔者は全て排除しようと考え、加藤たちを襲撃。自分に船を差し出せば命だけは助けてやろうと、加藤と九鬼を脅迫しました。

そして加藤たちから奪った船を含めた、140隻余りの大船団で闇夜にまぎれて出陣します。

俊沙によってチョン・ボルムが朝鮮水軍の陣営に逃げたこと、彼が日本水軍の動きを記した書信を彼女に託したことに気づかずに………。

その道中、朝鮮水軍が唐浦に到着したと知った脇坂は、敵陣営との間にある見之梁(キョンネリャン)にて待ち伏せすることにしました。

7月6日。日本水軍が見之梁にいるとの知らせを受けたイ・スンシンは、「援軍に頼れぬ敵を今すぐ強襲し追い詰めるべきだ」と主張するウォン・ギュンを制し、閑山(ハンサン)島の沖に城を築くごとく「鶴翼の陣」を張り、敵を誘き寄せようとします。

見之梁は道が狭く、朝鮮水軍の大船が力を発揮できません。しかも潮の流れが速いのです。

ウォン・ギュンとの話し合いの結果、オ・ヨンダムと、聡明で忠言を惜しまぬ彼の弟子、慶尚右道水軍の玉浦万戸イ・ウンニョンと、慶尚右道水軍の所非浦(ソビポ)万戸のイ・ヨンナムが率いる部隊が誘引役を担うこととなりました。

軍議の後、俊沙からの書信を受け取ったイ・スンシンは、陸からの左水営侵攻を防ぐべく、全羅道の熊峙(ウンチ)峠に兵を配置しました。

いち早くこの場所に辿り着いた俊沙でしたが、日本軍の鎧を着ていたことが仇となり、到着した朝鮮兵に捕えられてしまいます。

熊峙峠での足止めを任された義兵将ファン・バクは最初、降倭(朝鮮軍に投降し、共に戦う日本兵)となった俊沙を内心疑っていました。

ですが俊沙の言葉どおり、本当に敵軍が左水営に向けて進軍している姿を見て、彼を仲間として迎え入れます。

7月7日、三次海戦4日目。誘引役のオ・ヨンダムの艦隊を見送り、朝鮮水軍も出陣しました。

イ・スンシンが昨夜考えた「鶴翼の陣」では、大将船を基準とし、全羅右水使のイ・オッキを右翼の中央に、ウォン・ギュンを左翼の中央に配置。

ウォン・ギュンのそばに冷静沈着なオ・ヨンダムと彼と親しいイ・ウンニョンを置きました。

船を巧みに操り機敏に動ける蛇島僉使(サドチョムサ)のキム・ワンの船を左翼の先端に、白兵戦で機動力を生かし敵を制圧し得る順天府使(スンチョンプサ)のクォン・ジュンを右翼の先端に配置。

武人としての能力と突破力が朝鮮水軍一の鹿島万戸チョン・ウンを、左翼側に配置しました。

左右に分かれて待機していた脇坂の配下・渡辺七兵衛と、海賊出身の真鍋左馬允は、霧の中に敵がいることを確認。

脇坂の指示を仰ぎながら、その敵船目掛けて銃を撃つよう各自の部隊に命じます。

敵の一斉射撃の的となったオ・ヨンダムの艦隊3隻。敵船と一定の距離を保ちながら迎撃します。

その見之梁の外海に待ち構えるイ・スンシンは、彼らの身を案じて準備を終えたイ・ウンニョンの艦隊を応援に向かわせました。

その采配は功を奏しました。身を隠していた霧が晴れ、真鍋の艦隊に追いつかれてしまったオ・ヨンダムたちの窮地を救ったのです。

見之梁から離れていくオ・ヨンダムたちを追う真鍋の艦隊。脇坂は見之梁から出るなと追跡中止の合図を送るも、真鍋はそれを無視して追跡を続行します。

しかし敵船に追いつき乗り込むことしか考えていなかったことが仇となり、真鍋は速い潮流によって座礁したところを、オ・ヨンダムたちの反撃に遭い船を失いました。

イ・ウンニョンの兵船が出船しても、敵の大部分が見之梁から動かないとの知らせを受けたイ・スンシンは、見之梁の入り口まで全船を移動するよう命じます。

ついに姿を現した朝鮮水軍の本隊。小早川たちが熊峙峠に着いたことだろうと推測した脇坂も、渡辺の艦隊と本隊を前へと動かしました。

イ・スンシンの命によりあげられた合図の凧を見て、オ・ヨンダムたちは船を旋回させて本陣へと引き返そうとするも、漕ぎ手を増やし速度を上げた左兵衛の艦隊に追いつかれ窮地に陥ります。

「鶴翼の陣」を敷いた朝鮮水軍に対し、八陣の一つである「魚鱗の陣」で迎え撃つことにした日本水軍。

「魚鱗の陣」とは、少ない兵力で多くの敵と戦う際に用いられる、魚のうろこのように配置された陣形のことで、敵軍の中央突破に有効です。

脇坂は先鋒の渡辺の艦隊と共に、「鶴翼の陣」の左翼中央を前後で攻撃することにしました。

ウォン・ギュンの艦隊は敵を退かせるために火砲を撃つも、波があって敵に届かず失敗。敏捷で小回りがきく安宅船に潰されそうになってしまいます。


(C)2022 LOTTE ENTERTAINMENT & BIGSTONE PICTURES CO.,LTD.ALL RIGHTS RESERVED.

脇坂たちが捉えたと思った瞬間、ウォン・ギュンの艦隊の背後から2隻の亀船が登場。1隻に安宅船の船体が削られ、もう1隻が船体を真っ二つに引き裂かれてしまいました。

さらに3隻目の亀船が現れ、渡辺の艦隊を次々と粉砕していきます。ナ・デヨンが新しい亀船を完成させたのです。

脇坂と左兵衛の艦体はこの3隻の亀船攻略に挑みます。ですが脇坂たちの知る従来の亀船とは違い、新しい亀船は船体が低く竜頭が食い込むこともない、さらに全方位から砲撃可能です。

したがって間近で相対した左兵衛の艦隊は、新しい亀船の一斉砲撃によって撃沈しました。

この3隻の亀船の助けにより、オ・ヨンダムたちは本陣に無事帰還。さらに亀船が敵の背後についたことにより、日本水軍の本陣は自然とイ・スンシンたちのもとへ誘導されていきます。

そのことに気づいた脇坂は、魚鱗の陣を解き各自で動くよう全軍に命じました。50歩の距離まで敵船が迫った時、イ・スンシンは全船に旋回するよう命じました。

それによって「鶴翼の陣」が完成されたと同時に、ついにイ・スンシンは全船に砲撃を命じたのです。

イ・スンシンの命により共に装填されていた砲弾と鳥卵弾が、船に乗り込むために真っすぐに突っ込んできた脇坂の艦隊を悉く粉砕していきます。

損傷はしたものの、撃沈するまでにはいかなかった脇坂のいる安宅船が、イ・スンシンのいる大将船に迫ったその時、ナ・デヨンのいる亀船が横から突っ込んできたのです。

それでも脇坂は諦めず、イ・スンシンを射殺しようとしますが、海上の城と化した鶴翼の陣による朝鮮水軍の防御は固く、他の兵船の砲撃が安宅船に襲い掛かります。

そしてイ・スンシンは、こちらに背を向け海に逃げようとする脇坂を矢で射抜きました。

一方、熊峙峠では、俊沙たちが小早川の軍を相手に、命を賭した防衛戦を繰り広げていました。

しかし彼らが命懸けで戦っても、数で勝る小早川の軍に苦戦を強いられ、次々と防護柵を突破されていってしまいます。

ついにファン・バクまで瀕死状態に陥り、左水営の防衛は絶望的かと思われたその瞬間、朝鮮の義兵督戦将ファン・ジン率いる部隊が援軍に駆けつけてくれたのです。

その姿を見て、ファン・バクは「私が言っただろ。義のための戦いは皆を一つに結びつけるものだと」と言い、俊沙に感謝の言葉を告げて息を引き取りました。

追い詰められていた俊沙たちは援軍と共に、逃げていく敵を追い詰める側へと回りました。

三次海戦6日目。「閑山島海戦」で勝利を収めた朝鮮水軍は、鎮海(チネ)・安骨浦に停泊する日本艦隊を海上から襲撃しました。

三次海戦7日目、7月11日。イ・スンシンの三次海戦は、釜山の総大将・藤堂高虎がいる釜山浦への砲撃で終わりました。

秀吉は朝鮮水軍との戦いを諦め、明国への進撃は実現しませんでした。これ以降、戦況は大きく変わるのでした。

閑山島海戦から1年後。イ・スンシンは、イ・オッキを連れて閑山島を訪れ、「あの巨済島を見よ。ここがまさに敵の“口”の前だ」、「ここを確実に掌握するべきだ」といいました。

この時、日本軍は釜山浦に近い閑山島には簡単に手が出せなくなっていました。そう話し、イ・スンシンの言葉にイ・オッキが同意すると、イ・スンシンは閑山という、大きな山という意味を持つ島の名前を気に入ったといいました。

そしてイ・スンシンは、「今後見之梁は、我が兵の最前線となるであろう」、「ここ閑山が誠に大きな山となり、朝鮮の山河を守ることを望むばかりだ」といいました。

映画『ハンサン 龍の出現』の感想と評価


(C)2022 LOTTE ENTERTAINMENT & BIGSTONE PICTURES CO.,LTD.ALL RIGHTS RESERVED.

日本と朝鮮、両軍の大きな分岐点となった「閑山島海戦」。

伝説として語り継がれる朝鮮の装甲艦「亀船」と、天守閣が船に乗ったような日本の旗艦「安宅船」が激突する海上バトルは、物語のクライマックスにふさわしいほどの圧倒的なスケールで描かれており、歴史好きな人もそうでない人も目を奪われます。

特に日本水軍には数で劣ってしまう朝鮮水軍が繰り出す「鶴翼の陣」が、まさに作中でイ・スンシンらが言っていた「海上の城」と化し、これを突き破ろうとする日本水軍の船を次々と粉砕していく様は、とても格好良かったです。

また、数で勝る日本水軍の「魚鱗の陣」も、作中で脇坂が言っていたように、羽を伸ばそうとする鶴を食わんとする大きな魚のように見えて、ウォン・ギュンやオ・ヨンダムらの艦隊に迫りくる様は観ていてハラハラドキドキします。

このイ・スンシンと脇坂が用いた「鶴翼の陣」と「魚鱗の陣」は、1572年の「三方ヶ原の戦い」に用いられた陣形です。

朝鮮水軍と同じく、兵数が少なかった家康は「鶴翼の陣」を、対する武田信玄は脇坂と同じ「魚鱗の陣」を敷いて戦いました。

ですが、家康はこの戦いで信玄に惨敗し、作中での小早川の軍のように命からがら浜松城に逃げ帰ったといいます。

作中では脇坂がこの戦いのことを語っており、「閑山島海戦」と「三方ヶ原の戦い」を学ぶことができるので、歴史好きな人にはたまらない作品といえるでしょう。

まとめ


(C)2022 LOTTE ENTERTAINMENT & BIGSTONE PICTURES CO.,LTD.ALL RIGHTS RESERVED.

天下統一を成し遂げた豊臣秀吉の朝鮮出兵における、戦国時代史上最大の海上決戦「閑山島海戦」を描いた、韓国の歴史大作でした。

本作の見どころは、現代に蘇った「亀船」と「安宅船」、互いの実力を認める脇坂とイ・スンシンのぶつかり合う様が描かれた海上バトルです。

パク・ヘイルが演じるイ・スンシンといえば、朝鮮水軍の将軍として迫りくる日本の大軍から朝鮮を守り抜いた救国の英雄であり、韓国で知らぬ者はいません。

対するピョン・ヨハン演じる脇坂安治は、日本での知名度はあまり高くありませんが、加藤清正らと「賤ヶ岳の七本槍」に名を連ねた武勇の持ち主であり、韓国ではイ・スンシンの最大のライバルとして名を馳せている人物です。

そして冷静沈着なイ・スンシンと、猛々しく軍を鼓舞する脇坂という、静と動を体現する2人の武将のカリスマ対決と、彼らを演じるパク・ヘイルとピョン・ヨハンの気迫あふれる演技力に誰もが心奪われることでしょう。

韓国で知らぬ者はいないイ・スンシンと脇坂、2人の武将がぶつかり合う海上バトルを描いた歴史大作を観たい人に、とてもオススメな作品です。

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