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『ベルナデット 最強のファーストレディー』あらすじ感想評価。 フランス映画を代表する俳優カトリーヌ・ドヌーヴよる“スラップスティック・コメディ”

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『ベルナデット 最強のファーストレディ』は2024年11月8日(金)より全国順次公開!

実在のフランスの大統領およびその夫人をモチーフに構成されたフィクション・コメディ『ベルナデット 最強のファーストレディ』

家族第一で生きてきた夫人が夫の大統領選当選をきっかけに先進的なファーストレディとして台頭、家族から見下された自分を変えていくさまを描きます。

フランスの人気テレビドラマを手がけてきたレア・ドムナック監督が本作で長編映画初挑戦を果たしました。またキャストとしてフランスの名優カトリーヌ・ドヌーヴが好演を見せています。

映画『ベルナデット 最強のファーストレディ』の作品情報

(C)2023 Kare Productions – France 3 Cinema – Marvelous Productions – Umedia

【日本公開】
2024年(フランス映画)

【原題】
Bernadette

【監督・共同脚本】
レア・ドムナック

【出演】
カトリーヌ・ドヌーブ、ドゥニ・ポダリデス、ミシェル・ビュイエルモーズ、サラ・ジロドー、ロラン・ストケル、リオネル・アベランスキほか

【作品概要】
第6・10代フランス首相、第22代フランス大統領を務めたシラク大統領の夫人として親しまれたベルナデット・シラクの、ファーストレディとしての奮闘をフィクションで描いたコメディドラマ。

作品を手がけたのは、本作が長編劇映画デビューとなるレア・ドムナック監督。監督は母国フランスで短編連続テレビドラマ『Jeune et golri』『Unlikely Stepmom』を手がけてきました。

また主演を務めたのは、『シェルブールの雨傘』(1964)『ロシュフォールの恋人たち』(1967)など、名だたる名作に出演し続けてきたカトリーヌ・ドヌーブ。さらに『12か月の未来図』(2017)のドゥニ・ポダリデス、『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019)のサラ・ジロドーらが名を連ねています。



映画『ベルナデット 最強のファーストレディ』のあらすじ

(C)2023 Kare Productions – France 3 Cinema – Marvelous Productions – Umedia

大統領を目指す夫ジャックの影で彼を支えるベルナデット・シラク。

1995年、ジャックは晴れて大統領に選ばれ、夫婦そろってようやく大統領府にたどり着きます。しかしその努力にもかかわらず夫やその側近、そして夫の広報アシスタントである娘・クロードらからは「時代遅れ」と軽視されていました。

そしてある日、彼女はクロードより「時代遅れのファーストレディ」を返上するという目的で教育係として、かつて知事を夢見ていたエリゼ宮の職員ベルナール・ニケをあてがわれることに。

仕事らしい仕事もなく悶々とした日々を過ごすベルナデット。しかしそんな日々を打破すべく野望を抱き、彼女はニケに「知事にしてあげる」という約束を告げ自らの作戦参謀として行動を開始、メディアより注目を集める最重要人物を目指して奮闘し始めます。

かつてのネガティブなイメージは徐々に払しょくされ、変化を見せながらさまざまなメッセージを発信し続ける彼女の姿に、時にはジャックの存在を差し置いて徐々に多くの視線が彼女に寄せられ始めていくのでした。

映画『ベルナデット 最強のファーストレディ』の感想と評価

(C)2023 Kare Productions – France 3 Cinema – Marvelous Productions – Umedia

物語の最初に見られる展開で、ベルナデットという女性に対し強調されるイメージは、その「負」の部分にあります。

かつてフランスではその旺盛な行動力に「ブルドーザー」と呼ばれた夫ジャック・シラクの仕事に積極的な口出しをしない、そんな彼女はどちらかというと「古風な女性」というイメージを見せており、その風貌を夫や娘までもが見下した態度で接していました。

そして彼女にあてがわれたのは、出世の夢を砕かれた冴えない一人の男性ニケ。しかしこの出会いは、いつしか「負け犬の復讐劇」として大きく彼女らを変えていきます。

さまざまな行動を通して、大きく前進していくベルナデット。時には夫ジャックの前を行くようなイメージでメディアに取り上げられ、一躍時の人として注目を浴びます。

しかし時に彼女は夫の前に出ることを躊躇し、一歩引いた存在であることを選びます。そこには自身の立場を考えながらも夫婦、家族の関係が最優先であることにふと気づく光景が見られます。

この構図は表向きとしてフェミニズム的な思想を感じさせながらも、実は「フェミニズムという断片的な思想と愛のはざまに悩み、女たちはどう生きていくべきかを改めて考えさせている」ようでもあるわけです。

(C)2023 Kare Productions – France 3 Cinema – Marvelous Productions – Umedia

この対立関係はそのまま右派、左派といった政治的思想の対立にも重なる印象をもたらしています。先進性をアピールし存在感を増したベルナデットでありますが、もともとは夫や娘からその行動のやぼったさを揶揄された「古風な女性」。

彼女は「時の人」となりながらも、ふと改めて夫への愛を振り返ったりと、決して自身が歩んできた道を否定しません。そこには両端の思想それぞれにおける意味を改めて問うているような意向も感じられます。

パンチの効いたスラップスティック・コメディでありながら、政治の第一線に立つ人物の伴侶「ファーストレディ」という立場より、人々の思想を改めて考えさせられる物語であるといえるでしょう。

ちなみに劇中ではジャック・シラクのほか、彼の次に大統領に選ばれたニコラ・サルコジが登場、フランスの政治的な歴史の中で垣間見られた2人の軋轢のイメージがコメディとして描かれており、「ファーストレディ」のベルナデットの存在感を生かすスパイスとなっています。

まとめ

作品を手がけたレア・ドムナック監督は、本作以前はフランスのテレビドラマを手がけていました。

2021年に放送された『Jeune et Golri』は、21歳の女性が46歳の子持ちの男性に恋し結婚することで巻き起こるハチャメチャな日々を描いたコメディ。

性格的に一癖ある主人公女性の結婚生活という、ある意味周りから理解されにくい立場の女性が奮闘するさまは、本作の主人公ベルナデットとどこか重なるイメージをおぼえることでしょう。

また本作は政治の世界を題材としたテーマでありますが、その中に明確に示されている家族の絆を表した光景は物語の中でも重要なポイントであり、この点においても『Jeune et Golri』と共通するものが見えてきます。

このような特質は、ドムナック監督の作品の中でも重視しているポイントであると感じられるところであります。

映画『ベルナデット 最強のファーストレディ』は2024年11月8日(金)より全国順次公開!




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