映画『ソウルの春』は2024年8月23日(金)より全国順次公開!
歴史の裏に隠された、韓国の軍事クーデター事件をもとに作られた映画『ソウルの春』。
1979年に一時民主化に進みかけた韓国においてその道を阻んだ大事件を、人気俳優陣オールスターにて描きました。
メインキャストのファン・ジョンミン、チョン・ウソンは、本作を手がけたキム・キム・ソンス監督の2016年作品『アシュラ』に出演、本作は再びの競演となりました。
映画『ソウルの春』の作品情報
【日本公開】
2024年(韓国映画)
【原題】
서울의 봄
【英題】
12.12: The Day
【監督】
キム・ソンス
【キャスト】
ファン・ジョンミン、チョン・ウソン、イ・ソンミン、パク・ヘジュン、キム・ソンギュン、チョン・マンシク、チョン・ヘイン、イ・ジュニョクほか
【作品概要】
1970年代末に韓国で実際に起きた軍部のクーデター事件をもとに、フィクションを交えながら映画化したサスペンスドラマ。
『MUSA 武士』(2001)『FLU 運命の36時間』(2013)などのキム・ソンス監督が作品を手がけ、韓国では2023年の観客動員数第1位となる大ヒット作品となりました。
メインキャストは『哭声/コクソン』(2016)『工作 黒金星と呼ばれた男』(2018)などのファン・ジョンミンと、『無垢なる証人』(2019)『私の頭の中の消しゴム』(2004)などのチョン・ウソン。
映画『ソウルの春』のあらすじ
1979年10月26日、独裁者と言われた韓国大統領が側近に暗殺され、国中には民主化を期待する国民の声が高まっていました。
しかしそんな中で暗殺事件の合同捜査本部長に就任したチョン・ドゥグァン保安司令官は、密かに新たな独裁政権の座を狙い陸軍内の秘密組織「ハナ会」の将校たちにクーデター実施を呼びかけ、同年12月12日にクーデターを決行します。
一方、高潔な軍人然とした行動規範を見せ、多くの尊敬を集めていた首都警備司令官イ・テシンは、自身の信念に基づきチョン・ドゥグァンの暴走に対抗するべく立ち上がります。しかし彼の部下にはハナ会のメンバーも潜んでおり、状況としては圧倒的に不利な状況に置かれていました……。
映画『ソウルの春』の感想と評価
タイトルにもある「ソウルの春」とは、1979年10月26日に韓国のパク・ジョンヒ大統領が暗殺された10・26事件の直後で、国内で民主化ムードが漂った政治的過度期を示しており、具体的には1980年5月17日の非常戒厳令拡大措置が発令されるまでの期間を指します。
この物語はその「ソウルの春」が終わりを迎えるきっかけともいえる、1979年12月12日に発生した「粛軍クーデター」を題材としたものです。
主人公であり、クーデターの首謀者であるチョン・ドゥグァンは、「ソウルの春」終焉後に事実上国家を独裁的に治めていた第12,13代大統領のチョン・ドゥファン(日本語読み ぜん・とかん)がモデルで、1980年5月18日に起きた近代韓国の歴史的事件である「光州事件」のきっかけも、彼を主導として行われた軍事クーデターがきっかけであり、その評価は大統領の座を退いた直後より、ほぼ批難ばかりを受けてきた悪名高い存在であります。
この物語で描かれる彼の姿は、まるでナチス・ドイツを率いた独裁者アドルフ・ヒトラーを彷彿するもの。軍人の視点から見た政治という建前を振りかざし、正気とは思えない行動を次々と繰り返していきます。
総じて見ると独裁的な政治の恐ろしさ、そして不毛さという部分が非常に強く感じられる作品であるとも言えるでしょう。
しかし反面「ソウルの春」という時期は、歴史から見るとほんの一瞬の出来事であったようにも見えながら、それに続く厳しい時代があったからこその現代が存在していることを、改めて考えさせられるものであります。
一方、本作の見どころは、なんといってもファン・ジョンミン、チョン・ウソンというメインキャスト2人の対立。
まさに怪演という言葉がピッタリな、強烈な個性を魅せるファンと、一方で正論を前面にあくまでも真っ直ぐな姿勢を貫き通すチョン。
それぞれのキャラクターは、かつてキム・ソンス監督が手がけた映画『アシュラ(2016))からそのまま持ってきたような対立構造を示しており、2人が織りなす強烈な緊張感は健在。まさに『アシュラ』(2016)の再戦ともいえるキャスティングであるといえるでしょう。
役者としての性質は全く異なるものの、それぞれが良い相乗効果を生み出している様子も見られ、2人のキャストを中心とした物語は単なるサスペンス映画としても非常に見応えのある場面を演出しています。
まとめ
この物語の重要なポイントは、チョン・ドゥグァンの取り巻きの人物たちが、いかに彼を後押ししていたかという点にあります。
物語中のチョン・ドゥグァンの取り巻き、いわゆる「ハナ会」の人物たちは、彼とは対照的にカリスマ性や野心に乏しく、当初無謀とも見られたドゥグァンの計画には躊躇し途中挫折しそうになりながら、要所で彼の言葉に引っ張られていくという人物ばかり。
その中でも最も興味深いのが、パク・ヘジュンが演じるノ・チゴンという人物。チョン・ドゥファンの後を継いで第13代大統領となったノ・テウがモデルの人物であります。
全てにおいて独裁的であったチョン・ドゥファンの政治を批判し、韓国が民主化への大きな歩みを進めるきっかけを作っていったノ・テウ大統領でしたが、物語ではハナ会のメンバーの中で最もドゥファンに近い人物であり、彼の主張を推し進めることに若干のためらいを見せながらも、結果的に彼を一番理解していた人物であったように描かれています。
歴史的な経緯から見るとノ・テウ元大統領の存在は重要ながら違和感すら覚えるものであり、改めてこの顛末で描かれた歴史的大事件の不条理さを最も如実に示したものであると言えるでしょう。
映画『ソウルの春』は2024年8月23日(金)より全国順次公開!