映画『Shirley シャーリイ』は2024年7月5日(金)より全国順次公開!
「魔女」と呼ばれた世界的ミステリー作家シャーリイ・ジャクスンの伝記小説を、現代的かつ斬新な解釈で描いた心理サスペンス映画『Shirley シャーリイ』。
一人のミステリー作家が新作執筆のスランプに陥った際に出会った人物たちとの奇妙な出来事を、現実・虚構が交錯する世界で映し出します。
監督は、マーティン・スコセッシがその才能にほれ込んだというイギリス出身のジョセフィン・デッカー。
さらにエリザベス・モスをはじめとした俳優陣が実力を存分に発揮しています。
映画『Shirley シャーリイ』の作品情報
【日本公開】
2024年(アメリカ映画)
【原題】
Shirley
【原作】
スーザン・スカーフ・メレル
【監督】
ジョセフィン・デッカー
【製作総指揮】
マーティン・スコセッシ。アリソン・ローズ・カーター、アリサ・テイガー
【キャスト】
エリザベス・モス、マイケル・スタールバーグ、ローガン・ラーマン、オデッサ・ヤングほか
【作品概要】
スーザン・スカーフ・メレルが執筆した、幻想怪奇小説で知られる作家シャーリイ・ジャクスンの伝記小説を基に、シャーリイの創作にまつわる物語を幻想的に描いた心理サスペンス。
製作にはマーティン・スコセッシが名を連ね、監督は『Madeline’s Madeline』『The Sky Is Everywhere』を手がけたジョセフィン・デッカーが担当しています。
シャーリイ役は『アス』『透明人間(2020)』『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』のエリザベス・モス。シャーリイの夫スタンリー役は『君の名前で僕を呼んで』『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』『ドクター・ストレンジ』のマイケル・スタールバーグ。
さらにシャーリイに運命を翻弄される妊婦ローズ役に『帰らない日曜日』のオデッサ・ヤング、ローズの夫フレッド役に『ウォールフラワー』のローガン・ラーマンらが名を連ねています。
映画『Shirley シャーリイ』のあらすじ
1948年、『ニューヨーカー』誌上に発表した短編『くじ』が一大センセーションを巻き起こした後、新しい長編小説に取り組んでいたシャーリイはスランプから抜け出せずにいました。
着想の元になったのは、ベニントン大学に通う18歳の少女・ポーラが突如として消息を絶った未解決の失踪事件。
部屋に引きこもってばかりいるシャーリイの状況を変えようと、大学教授である夫のスタンリーは、バーモント州の学園都市へ移住を計画している助手フレッドと彼の妻ローズを居候として呼び寄せます。
「新居が見つかるまでの間、無料で部屋と食事を提供する代わりに家事や妻の世話をしてほしい」とスタンリーに半ば強引に言いくるめられた夫妻は、何も知らずに共同生活を送ることに。
他人が家に上がり込むのを毛嫌いしていたシャーリイでしたが、ひどい扱いを受けても懲りずに自分の世話を焼くローズを通じて、次第に執筆のインスピレーションを得るように。ローズもシャーリイの魔女的なカリスマ性に魅入られ、二人の間には奇妙な絆が芽生えます。
しかし、この風変わりな家に深入りしてしまった若々しい夫妻は、やがて自分たちの愛の限界を試されることになります……。
映画『Shirley シャーリイ』の感想と評価
本作は実在の作家シャーリイ・ジャクスンのとある作品の執筆過程に迫った、スーザン・スカーフ・メレル作の伝記小説が原作です。
作中でシャーリイが、夫の大学の学生で行方不明となった女性ポーラ・ジーン・ウェルデンを意識し新作の構想を練るシーンもあり、時期的には1951年に発表された小説『Hangsaman(邦題:絞首人)』の執筆時期を描いた物語と思われます。
「作家」の姿を描いた映画といえば、スティーブン・キングの中編小説が原作の『シークレット・ウィンドウ』などがあり、作品を作り上げていく過程において生まれる物語の筋書きと現実世界の交錯という部分で共通したものが感じられます。
そうした意味では、作家自身が作品を生み出す際に、心の中に生み出してしまう強迫観念的な心理こそが本作のテーマであるといえるでしょう。
ヒット作を出し、周囲に対し強気を崩さないシャーリイ。そんな妻を認めながらも、圧力をかけていく大学教授で書評家の夫スタンリー。二人の不安定な関係は、フレッドとローズという来客を招き、不安な気持ちに陥れることで自身の心に何らかの糧を得ていきます。
そして若い夫婦の不安が最高潮に達した時、作家としては最も幸せな時を迎える一方で、シーンとしては人間の「底」の部分を覗き見るような暗いイメージが描かれます。
これこそがまさにシャーリイ・ジャクスンの作品群の真骨頂であると物語から思わせる展開となっているわけですが、その描き方はまさに作家という職業の難しさ、厳しさそしてある意味「恐ろしく愚かな」面。
人物の描写がある意味ホラー的な作品よりもよほど生々しく、闇を抱えた人の心の奥底を垣間見るような、ダークな気分を味わえる作品であるといえるでしょう。
まとめ
本作の注目ポイントとしては、やはり主演を務めたエリザベス・モスの怪演。常に精神的に不安定な状態にあり、心に不安を抱えた弱々しい表情を見せたかと思うと、次の瞬間には抑圧的な一面が出たりと、一見予測のつかない心理変化を表現しています。
しかしその存在感は物語にはまった絶妙な表現となって、見る側にジワジワと沁み込むような刺激を与えていきます。
そして、いちばんの見どころはラストシーン。シャーリイの複雑な心理状態を「無言」による一人芝居で表現、思わぬ表情を見せ程よい混乱を生じさせます。
「本作で描かれた物語は、劇中劇だったのか」「「フレッドとローズの夫妻は『実在』するのか」「彼らの最後の運命は」など、モスが見せた最後の表情はこのような顛末を思い切り発散させ、作品が生み出す不安感を最大限に引き出しているといえるでしょう。
映画『Shirley シャーリイ』は2024年7月5日(金)より全国順次公開!