Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

サスペンス映画

Entry 2024/06/05
Update

『Shirleyシャーリイ』感想評価とあらすじ解説。エリザベス・モスが“魔女”シャーリイ・ジャクスンの創作過程と作家ゆえの苦悩を怪演

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『Shirley シャーリイ』は2024年7月5日(金)より全国順次公開!

「魔女」と呼ばれた世界的ミステリー作家シャーリイ・ジャクスンの伝記小説を、現代的かつ斬新な解釈で描いた心理サスペンス映画『Shirley シャーリイ』。

一人のミステリー作家が新作執筆のスランプに陥った際に出会った人物たちとの奇妙な出来事を、現実・虚構が交錯する世界で映し出します。

監督は、マーティン・スコセッシがその才能にほれ込んだというイギリス出身のジョセフィン・デッカー。

さらにエリザベス・モスをはじめとした俳優陣が実力を存分に発揮しています。

映画『Shirley シャーリイ』の作品情報


(C)2018 LAMF Shirley Inc. All Rights Reserved

【日本公開】
2024年(アメリカ映画)

【原題】
Shirley

【原作】
スーザン・スカーフ・メレル

【監督】
ジョセフィン・デッカー

【製作総指揮】
マーティン・スコセッシ。アリソン・ローズ・カーター、アリサ・テイガー

【キャスト】
エリザベス・モス、マイケル・スタールバーグ、ローガン・ラーマン、オデッサ・ヤングほか

【作品概要】
スーザン・スカーフ・メレルが執筆した、幻想怪奇小説で知られる作家シャーリイ・ジャクスンの伝記小説を基に、シャーリイの創作にまつわる物語を幻想的に描いた心理サスペンス。

製作にはマーティン・スコセッシが名を連ね、監督は『Madeline’s Madeline』『The Sky Is Everywhere』を手がけたジョセフィン・デッカーが担当しています。

シャーリイ役は『アス』『透明人間(2020)』『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』のエリザベス・モス。シャーリイの夫スタンリー役は『君の名前で僕を呼んで』『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』『ドクター・ストレンジ』のマイケル・スタールバーグ。

さらにシャーリイに運命を翻弄される妊婦ローズ役に『帰らない日曜日』のオデッサ・ヤング、ローズの夫フレッド役に『ウォールフラワー』のローガン・ラーマンらが名を連ねています。

映画『Shirley シャーリイ』のあらすじ


(C)2018 LAMF Shirley Inc. All Rights Reserved

1948年、『ニューヨーカー』誌上に発表した短編『くじ』が一大センセーションを巻き起こした後、新しい長編小説に取り組んでいたシャーリイはスランプから抜け出せずにいました。

着想の元になったのは、ベニントン大学に通う18歳の少女・ポーラが突如として消息を絶った未解決の失踪事件。

部屋に引きこもってばかりいるシャーリイの状況を変えようと、大学教授である夫のスタンリーは、バーモント州の学園都市へ移住を計画している助手フレッドと彼の妻ローズを居候として呼び寄せます。

「新居が見つかるまでの間、無料で部屋と食事を提供する代わりに家事や妻の世話をしてほしい」とスタンリーに半ば強引に言いくるめられた夫妻は、何も知らずに共同生活を送ることに。

他人が家に上がり込むのを毛嫌いしていたシャーリイでしたが、ひどい扱いを受けても懲りずに自分の世話を焼くローズを通じて、次第に執筆のインスピレーションを得るように。ローズもシャーリイの魔女的なカリスマ性に魅入られ、二人の間には奇妙な絆が芽生えます。

しかし、この風変わりな家に深入りしてしまった若々しい夫妻は、やがて自分たちの愛の限界を試されることになります……。

映画『Shirley シャーリイ』の感想と評価


(C)2018 LAMF Shirley Inc. All Rights Reserved

本作は実在の作家シャーリイ・ジャクスンのとある作品の執筆過程に迫った、スーザン・スカーフ・メレル作の伝記小説が原作です。

作中でシャーリイが、夫の大学の学生で行方不明となった女性ポーラ・ジーン・ウェルデンを意識し新作の構想を練るシーンもあり、時期的には1951年に発表された小説『Hangsaman(邦題:絞首人)』の執筆時期を描いた物語と思われます。

「作家」の姿を描いた映画といえば、スティーブン・キングの中編小説が原作の『シークレット・ウィンドウ』などがあり、作品を作り上げていく過程において生まれる物語の筋書きと現実世界の交錯という部分で共通したものが感じられます。

そうした意味では、作家自身が作品を生み出す際に、心の中に生み出してしまう強迫観念的な心理こそが本作のテーマであるといえるでしょう。


(C)2018 LAMF Shirley Inc. All Rights Reserved

ヒット作を出し、周囲に対し強気を崩さないシャーリイ。そんな妻を認めながらも、圧力をかけていく大学教授で書評家の夫スタンリー。二人の不安定な関係は、フレッドとローズという来客を招き、不安な気持ちに陥れることで自身の心に何らかの糧を得ていきます。

そして若い夫婦の不安が最高潮に達した時、作家としては最も幸せな時を迎える一方で、シーンとしては人間の「底」の部分を覗き見るような暗いイメージが描かれます。

これこそがまさにシャーリイ・ジャクスンの作品群の真骨頂であると物語から思わせる展開となっているわけですが、その描き方はまさに作家という職業の難しさ、厳しさそしてある意味「恐ろしく愚かな」面

人物の描写がある意味ホラー的な作品よりもよほど生々しく、闇を抱えた人の心の奥底を垣間見るような、ダークな気分を味わえる作品であるといえるでしょう。

まとめ


(C)2018 LAMF Shirley Inc. All Rights Reserved

本作の注目ポイントとしては、やはり主演を務めたエリザベス・モスの怪演。常に精神的に不安定な状態にあり、心に不安を抱えた弱々しい表情を見せたかと思うと、次の瞬間には抑圧的な一面が出たりと、一見予測のつかない心理変化を表現しています。

しかしその存在感は物語にはまった絶妙な表現となって、見る側にジワジワと沁み込むような刺激を与えていきます。

そして、いちばんの見どころはラストシーンシャーリイの複雑な心理状態を「無言」による一人芝居で表現、思わぬ表情を見せ程よい混乱を生じさせます

「本作で描かれた物語は、劇中劇だったのか」「「フレッドとローズの夫妻は『実在』するのか」「彼らの最後の運命は」など、モスが見せた最後の表情はこのような顛末を思い切り発散させ、作品が生み出す不安感を最大限に引き出しているといえるでしょう。

映画『Shirley シャーリイ』は2024年7月5日(金)より全国順次公開!






Warning: Use of undefined constant php - assumed 'php' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/demachi2026/cinemarche.net/public_html/wp-content/themes/stinger8-child/single.php on line 150

関連記事

サスペンス映画

【ネタバレ】ピギーPIGGY|あらすじ結末感想と評価解説。復讐リベンジ少女⁉︎子豚と虐められたことに打ち勝っていく“パワフルなエンパワメント”

“いじめっ子”が謎の車に連れ去られた。目撃者の“いじめられっ子”の少女は警察に話すか、見殺しにするか? スペインの田舎町で暮らすサラは「PIGGY(小豚)」と揶揄され、クラスメートからいじめられていま …

サスペンス映画

『フライトゲーム』動画無料視聴はU-NEXT。ネタバレ感想と犯人は?

リーアム・ニーソンといえば娘が誘拐されて凄い怒ったり、自分の身分が根こそぎ知らない男に奪われたり、キリスト教を棄教させられたりと、結構大変な目に遭う役が多い印象です。 今作『フライト・ゲーム』でも負け …

サスペンス映画

映画『15ミニッツ』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。ロバート・デ・ニーロ演じる刑事が凶悪連続殺人犯に立ち向かう

サイコパスコンビvs有名刑事と若手放火調査官の戦いを描いたサスペンスアクション! ジョン・ハーツフェルドが脚本・製作・監督を務めた、2001年製作のアメリカのサスペンスアクション映画『15ミニッツ』。 …

サスペンス映画

『ナイブズ・アウト』ネタバレ結末あらすじと感想評価の解説。事件の真相をドーナツに例えてアメリカの南部訛りで熱く推理を語る

映画『ナイブズ・アウト/ 名探偵と刃の館の秘密』は、犯人捜しの謎解きを楽しむミステリー作品。 資産家が死体で発見され、警察は遺産相続人である家族を事情聴取しますが、同行した名探偵は誰もが嘘をついている …

サスペンス映画

映画『猿ノ王国』あらすじ感想と内容解説レビュー。“タテ社会の病理”をテレビ局の最上階と最下層の視覚化で描く大人の寓話

映画『猿ノ王国』が、2022年4月2日(土)より「Ksシネマ」にて劇場公開。 「コロナ・ワクチン特集」のオンエアに関する是非を巡り、さまざまな人間の思惑が入り乱れる映画『猿ノ王国』。 テレビ局を舞台に …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学