映画『記憶の居所』は2024年3月29日(金)から4月11日(木)までUPLINK吉祥寺にて上映
⻑編映画『この日々が凪いだら』がモスクワ国際映画祭コンペティション部門で最優秀女優賞を受賞した26歳の新鋭監督・常間地裕による中編『記憶の居所』が、2024年3月29日(金)から4月11日(木)までUPLINK吉祥寺にて『朝をさがして』と共に2本立て上映されます。
〈記憶〉をモチーフにした三編からなるオムニバス形式の作品です。
最初の「味の話」には山下リオ、小久保寿人、男女の逃避行を描いた「香の話」にはサトウヒロキ、橘舞衣、二人の女学生を描く「音の話」には成瀬凜、富山雅らが出演します。それぞれ異なるスタッフが制作しているので、異なる作劇、演出アプローチが味わえます。
味覚、嗅覚、聴覚というそれぞれの“感覚”がテーマと密接に結びついている三作品が溶け合い、やがて一つの映画という〈記憶〉になる瞬間をぜひ目撃してください。
映画『記憶の居所』の作品情報
【公開】
2024年(日本映画)
【監督・脚本・編集】
常間地裕
【キャスト】
山下リオ、小久保寿人、磯⻄真喜、林裕太、永井彩加、田野真悠、なす(柴犬)、山本奈衣瑠、サトウヒロキ、橘舞衣、山口森広、成瀬凛、富山雅
【作品概要】
長編劇場デビュー作『この日々が凪いだら』が、第45回モスクワ国際映画祭にて最優秀女優賞を受賞した常間地裕監督による最新作。
「味の話」「香の話」「音の話」という三編からなる本作は、〈記憶〉をモチーフにしたオムニバス作品であるのと同時に、一時間に満たない愛おしい中編映画です。
母娘の交流を描いた「味の話」には山下リオ、小久保寿人、磯⻄真喜、山本奈衣瑠らが出演し、男女の夜の逃避行を描いた「香の話」にはサトウヒロキ、橘舞衣らが出演します。
二人の女学生の関係を瑞々しく描き出した「音の話」には成瀬凜、富山雅らが参加。この三編がときに交差し合っては離れ、観客それぞれの〈記憶〉に特別なアクションを起こします。
また、三作品はスタッフも異なり、作劇も演出アプローチもまったく異なっています。
映画『記憶の居所』のあらすじ
[味の話]
看護師の唄は他者の死に慣れてしまい、疎遠になっていた母の死の報せを聞いてもなんとも思いませんでした。唄は故郷へ向かいますが…。
[香の話]
いっぽう、美術館で出会った男と女は、屋台でおでんを一緒に食べながら美術について語り合っていました。その後、ふたりは月夜の中をプロヴァンスへと向かって車を走らせ…。
[昔の話]
そして、一人の少女がまだ名も無き音楽をピアノで奏でるとき、また一人の少女はその姿を夢中になって見つめ…。
映画『記憶の居所』の感想と評価
味覚、嗅覚、聴覚を通じて「記憶の居所」を探る、心の旅を描く一作です。
記憶はいったいどこにあるのでしょうか。忘れてしまったこと、忘れたくないこと、忘れたいこと、さまざまなすべてが、それぞれの人の中にたくさん降り積もっていったものを「記憶」と呼ぶような気がします。
無意識下にもたくさん積まれているそれらは、ふとしたはずみに思いがけずに転げ落ちてきて、当人を驚かせるものなのではないでしょうか。
人の感覚はとても敏感で繊細で、季節や気温、湿度からでさえ、思いもよらない記憶を呼び覚まされることがあります。
本編の第1作に登場する「味覚」が記憶を呼び起こす強い力を持っていることは、誰もが知るところです。第1話の主人公は、昔食べていた料理の味を通して、そこに隠されていた過去の秘密に気づかされます。
過去を乗り越えたときに人は成長するものだということが伝わってきて、胸が熱くなる作品です。わだかまりが溶けていくには長い時が必要であるという事実に、共感せずにはいられません。
小説調で語られる2作目は何もかも幻想的です。出会った女に心の中でつけた名前、月に例えるおでんの描写、「プロヴァンス」という遠い地の響き、そして、その非現実的な目的地を目指して月夜を走り抜ける車。
現実とは思えない体験をしてみたいという、誰もがどこかで抱いている夢を実現したかのような一作です。
ラストの作品は、瑞々しいふたりの少女の姿を映し出します。セリフも少なく、片方の少女が熱くもう片方の少女を見つめているだけの本作は、空想の世界かのように美しく切ない空気感を醸し出しています。
まとめ
記憶の底をさらうかのように、不思議な感覚を呼び起こす作品『記憶の居所』。
異なるキャスト、スタッフが生み出すカラーの異なる三作の小品が、ときに絡み合い、溶け合いながら、さまざまな記憶をするすると手品のように引き出していきます。
観ているうちに、心の奥底にいつの間にか「居所」を見つけて隠れていた記憶がよみがえるかもしれません。
『記憶の居所』がは2024年3月29日(金)から4月11日(木)までUPLINK吉祥寺にて『朝をさがして』と共に2本立てロードショーです。