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『春に散る』映画ネタバレ原作小説のあらすじ結末とラスト評価解説。夢の達成を確信する主人公に投影される生きる意味とは⁈

  • Writer :
  • 星野しげみ

沢木耕太郎の小説『春に散る』が2023年に映画になって登場!

沢木耕太郎氏の傑作小説『春に散る』(朝日新聞出版)の映画化が決定。

作者の沢木耕太郎が半生をかけて追い続けてきたボクシングを通じて、“生きる”を問うというテーマが盛り込まれた本作は、朝日新聞での連載時から大きな話題を呼びました。

将来を期待されたボクサーが夢破れて渡米。40年後に帰国した彼は、当時の仲間たちと再会し、さらにかつての自分と同じようにチャンピオンをめざす若者と出会います……。


(C)2023映画『春に散る』製作委員会

映画化は、『』(2020)『護られなかった者たちへ』(2021)など人間ドラマの名手・瀬々敬久監督がとりまとめ、主演の2人は佐藤浩市と横浜流星が務めます。

2023年の映画公開に先駆けて、小説『春に散る』をネタバレ有りでご紹介します。

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小説『春に散る』の主な登場人物

【広岡仁一】
元凄腕ボクサー。真拳ジム四天王の一人。アメリカから帰国後かつての夢を追う。

【黒木翔吾】
将来を期待されるプロボクサー。伸び悩み夢を諦めかけていた時に広岡に導かれて夢に再挑戦する。

【藤原次郎】
元凄腕ボクサー。真拳ジム四天王の一人。

【佐瀬健三】
元凄腕ボクサー。真拳ジム四天王の一人。

【星弘】
元凄腕ボクサー。真拳ジム四天王の一人。

【土井佳菜子】
真拳ジム近くの不動産屋の事務員。

小説『春に散る』のあらすじとネタバレ


沢木耕太郎:『春に散る』 朝日新聞出版

元ボクサーの広岡仁一は、若い頃は有望なボクサーで世界チャンピオンを期待されていましたが、試合に負けてしまい、心の傷を負ったままアメリカに渡りました。

広岡はアメリカで再起を目指してボクサー生活をしますが、チャンピオンの夢が叶(かな)わず、落ちぶれた生活に身をやつしたあと、ホテルで働き始めました。

広岡の働きぶりがホテル営業者の眼にとまり、広岡はその後継者として成功。大金を手にしますが、その後心臓発作に襲われ、40年ぶりに日本へ戻ることにしました。

40年ぶりに帰国した広岡がまず目指したのは、後楽園ホール。ボクシングの試合を観に行きました。

そこで昔を懐かしむように観覧していると、昔お世話になっていたボクシングジムの経営者の娘に偶然出会いました。

一度昔のジムに来るようにと言われ、広岡は19歳から26歳までボクシング漬けになっていた「真拳ジム」を訪れます。

ジムは以前の会長が亡くなり、娘の令子がその後を継いで若いボクサーを育てていました。

広岡がそこにいた頃はジムの全盛期で、広岡仁一、藤原次郎、佐瀬健三、星弘の四天王がいました。

誰がチャンピオンになってもおかしくないほどみな凄腕だったのに、なぜか一人もチャンピオンになれませんでした。

広岡が令子にかつての仲間の消息を尋ねましたが、藤原以外は消息不明でした。

短気な藤原はある日喧嘩に巻き込まれ、傷害事件をおこして、現在服役中だと言います。

日本に何のために帰って来たのか、これといった目的を持たない広岡でしたが、かつての仲間を訪ねてみようと思います。

広岡はジムを出るとその足で商店街に赴き、小さな不動産屋に入ります。そこで手ごろな部屋を借りることにしました。

不動産屋の事務員土井佳菜子は細かいところにも気が付く心優しい女性でした。

一人暮らしになる広岡が不自由しないよう、何かと気配りのある采配を振るってくれました。

おかげで広岡は借りた部屋で気持ちよく生活を送り、まずは刑務所にいる藤原に面会に行きました。

藤原は結婚しましたが、妻子と別れ、今は1人で生活していたといいます。

藤原からは佐瀬の居所がわかり、故郷に引っ込んだと言う佐瀬を広岡は訪ねます。

佐瀬は山形県の酒田でジムを始めましたが失敗。借金を抱え親族からも見放されて寂しく一人暮らしをしていました。

人目を阻むような生活をしている佐瀬ですが、広岡を見ると懐かしそうに昔話を始めます。

佐瀬からは星の居所がわかりました。星は飲み屋のママと一緒になっていると言います。広岡は今度は神奈川の星が住んでいるという飲み屋の店を訪ねました。

シャッターのしまった店の2階に住んでいる気配があり、広岡が訪ねるとやはり星はドアを開けてくれました。

4人の中で唯一家庭持ちと思われた星ですが、相手の女性は病気で亡くなっていました。

傷心の星に広岡は、昔の仲間で共同生活しないかと持ち掛けます。

世話になっている不動産屋にもう少し大きな家を借りたいと相談すると、すぐに佳菜子が良い物件をみつけてくれました。

最初広岡の呼びかけにしぶっていた昔の仲間たちですが、そのうちに一人、また一人と集まって来ました。

昔合宿を共にし、世界王座を目指しながら失敗した仲間たちと、再び一つ屋根の下で共同生活が始まります。

広岡が以前借りたアパートにいた子猫も一緒にやってきて、まるで元ボクサーたちの老人ホームのような、シェアハウスとなりました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『春に散る』ネタバレ・結末の記載がございます。『春に散る』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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シェアハウスの生活が軌道に乗りかけたころのこと。

佳菜子も参加した新生活を祝う飲み会のあと、街中でチンピラたちに絡まれました。しかし、老いたりとはいえ元ボクサーたちはアッという間に彼らをノックアウトします。

広岡が叩きのめした青年は、引退を考えていた現役ボクサー・黒木翔吾でした。

翔吾は年寄りと思っていた広岡の技に恐れおののき、手当をした佳菜子に「あの爺さんたちは何者か?」と聞きます。

元ボクサーと言われ名前を聞いて、爺さん4人は昔の真拳ジムの四天王だということがわかりました。

一度は引退を考えていた翔吾ですが、それをきっかけに爺さんたちの指導を仰ぐことになります。

広岡たちは真拳ジムの令子のところへ行き、翔吾のことを話しました。

翔吾の父はあるジムの会長でしたが、戦意消失の翔吾が再びリングに復帰するのならと、真拳ジムへの移籍も許してくれました。

翔吾はそれまでは、千葉の方の自宅から広岡たちのシェアハウスに通ってトレーニングしていましたが、真拳ジムのトレーニングもするようになると、通うのが大変になりました。

そこで相談し、皆満場一致で翔吾もシェアハウスに住むことになりました。そしてみなと同じように身寄りのない佳菜子もまた一緒にハウスの住民となりました。

広岡仁一、藤原次郎、佐瀬健三、星弘、に加え黒木翔吾。そして母の再婚性で土井を名乗っていた佳菜子の実父の姓は六浦でした。

1、2、3、4、5、6と、数を背負った名前の6人と、チャンプと名付けられた子猫との共同生活が始まりました。

順調にトレーニングをつんだ翔吾は、やがて世界タイトルに挑戦するまでに成長しますが、ある日ボクサーにとっては致命的な網膜裂孔という病気になってしまいます。

それは片目を失明するかもしれない恐ろしい病気でした。

霊感治療のような能力が幼いころにあった佳菜子は、「翔吾君を治したい」と治療しますが、成長して霊感がなくなったのか、治せませんでした。

佳菜子は心から治したいと思った人を治せなかったと号泣しますが、翔吾は佳菜子が普通の女性であったことが嬉しいと言います。

その後翔吾はレーザー治療で目の治療をして、4月の世界戦に挑むことになりました。

3月中旬になって広岡は翔吾に自分の得意技、クロス・カウンターを教え始めました。

いよいよ世界チャンピオンとの試合の日。

翔吾は目の治療をおえて挑みます。試合は一進一退。どちらが勝つのかわからない熱戦で、最終的にほとんど同時にダウンしましたが、判定結果でかろうじて翔吾に勝利が告げられました。

その後、翔吾は病院で眼の手術を受けます。病気になった目の視力が戻るかどうかはわかりません。

病室の翔吾を見舞い、広岡は帰路につきながら、「リングで果敢に戦った翔吾は、リング上で無限になれた。自分の行きたかった世界へ行けたのだろう。つまり本当のボクサーになったのだ」と思いました。

ふと桜が見たくなった広岡は運河の土手に向かいます。

桜が舞い散る中を歩いていた時、突然心臓の発作が彼を襲いました。悪いことに常備している薬のニトログリセリンは、別の服のポケットに入れて取り出すのを忘れ、持っていません。

心臓の痛みが激しくなり意識が次第に薄れていきます。たまらず土手に這いつくばるようにしゃがみます。

広岡は、「1年前に帰国したのはこのためだったのかも知れない。この1年が自分に心を残すべきささやかな場所を与えてくれていたのだ」と、満足げに思いました。

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小説『春に散る』の感想と評価

過去に夢破れて日本を去った一人の元ボクサー・広岡が帰国。それぞれ荒んだ生活をしていた昔の仲間を探し当て、かつての寮生活のような共同生活を始めます。

小説『春に散る』には、広岡たちが自分たちと同じようにプロボクサーの道を踏み外しかけている黒木との出会いがあり、全員で夢に再チャレンジしていく様子が描かれています。

そこにはあるのは、‟熱血スポーツ根性もの”と一言で言えない深いテーマでした。

四天王が織りなすそれぞれの人生ドラマが盛り込まれ、「生きること」「夢を持つこと」がどんなに大切かが伝わってくる感動作でした。

本作の題材がボクシングとわかり、まず頭に浮かぶのは、1968年から1973年にかけて『週刊少年マガジン』に連載された漫画『あしたのジョー』(原作:高森朝雄・作画:ちばてつや)です。

同時に、時代背景も「昭和」という気がしましたが、広岡がアメリカから日本へ帰国し、目にした40年振りの東京にはスカイツリーが存在しました。

この物語は、そんなに遠い昔の話ではなく、平成の日本のこと、だったのです。

ですから、広岡が回想する昔はあきらかに「昭和」であり、共に練習に励み、チャンピオンへの夢をみた仲間たちとの黄金の日々は、過ぎ去りし良き青春時代でした。

夢破れて40年が経過し、時代は平成に移ります。

広岡とかつての仲間もしがない爺さんたちになっていましたが、黒木翔吾という若者をボクシングチャンピオンにするという新たな夢にチャレンジする目標ができます。

やり残したことをやるんだという新たな目標を掲げ、生き生きと共同生活をおくる爺さんたちの姿に、人間とはこう生きるべきということが現れていました

広岡を助けようとする女性事務員佳菜子の存在も爺さんのシェアハウスに華を添えます。

本作は、スポーツ小説とも言えますが、心温まるヒューマンドラマと言った方がふさわしい小説でした。

映画『春に散る』の見どころ

映画『春に散る』の監督は、人間ドラマの名手と言われる瀬々敬久。主役の広岡には佐藤浩市、黒木翔吾は横浜流星がそれぞれ演じます。

佐藤浩市演じる広岡は、黒木翔吾を導くことで人生に尊厳を取り戻そうとする役柄です。

くすぶった炎が燃え上がるような力強い精神力で、人生というリングに再び返り咲く広岡

挫折を経験しながらもまた新たに這い上がろうとするその姿には、人生感を纏った男の生き様があり、それを体現しようとする佐藤浩市の存在感に期待は高まります

一方、横浜流星が任されたのは、広岡と出会って諦めかけていた夢に再挑戦する黒木翔吾役。

格闘技経験も豊富な横浜流星は、ボクシング技と熱き青春の血潮をどう表現するのでしょう。こちらも見逃せな見どころの一つです。

小説は主人公の回想シーンと現在を織り交ぜて展開。広岡の仲間であるジムの四天王それぞれの人生ドラマは、胸に迫るものがありました。

人生の浮き沈みを体験した四天王の夢への再チャレンジが、原作小説では見せ場の一つなのですが、映画では広岡と黒木の1対1の対峙で描かれるのかも知れません

それはそれでまた、見応えあるものと期待が高まります。

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映画『春に散る』の作品情報

【日本公開】
2023年(日本映画)

【原作】
沢木耕太郎:『春に散る』(朝日新聞出版)

【監督】
瀬々敬久

【プロデューサー】
星野秀樹

【キャスト】
佐藤浩市、横浜流星

まとめ

沢木耕太郎の小説『春に散る』をネタバレ有でご紹介しました。

思わず涙ぐむラストシーンが用意されている本作は、瀬々敬久監督によって映画化されました。

瀬々敬久監督は、『64 ロクヨン』(2016)を始めこれまで何度もタッグを組んできた佐藤浩市と、以前から注目していたという横浜流星を主演に迎え、2人の生き様をスクリーンに映し出します。

映画『春に散る』は2023年公開予定! 乞うご期待!

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