連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第175回
P.A.WORKSの‟お仕事シリーズ”第5弾映画『駒田蒸留所へようこそ』が2023年11月10日(金)より全国ロードショーされます。
崖っぷち蒸留所の再起に奮闘する若き女性社長と、夢もやる気もない新米編集者が家族の絆をつなぐ‟幻のウイスキー”復活を目指す物語です。
青春物からSF要素のある学園物の他、『花咲くいろは』(2011)『SHIROBAKO』(2020)『サクラクエスト』(2017)など、「働くこと」をテーマに日々奮闘するキャラクターを描いてきたP.A.WORKSが次に描く舞台は「ウィスキー蒸留所」。
ジャパニーズウイスキーの製造の仕方やそれに費やす年数と苦労を余すところなく描かれた、ウイスキー愛にあふれた物語をご紹介します。
映画『駒田蒸留所へようこそ』の作品情報
【日本公開】
2023年(日本映画)
【原作】
KOMA復活を願う会
【監督】
吉原正行
【脚本】
木澤行人、中本宗応
【主題歌】
駒田琉生(CV:早見沙織)『Dear my future』
【声のキャスト】
早見沙織、小野賢章、内田真礼、細谷佳正、辻親八、鈴村健一、堀内賢雄、井上喜久子、中村悠一
【作品概要】
吉原正行が監督が務めた、P.A.WORKSの「お仕事シリーズ」第5弾となる劇場版オリジナルアニメーション。アヌシー国際アニメーション映画祭・コントルシャン部門や第36回東京国際映画祭 ・アニメーション部門の正式出品作品です。
世界でも注目されるジャパニーズウイスキーを題材に、経営難にあえぐ蒸留所の再起に奮闘する若き女性社長・駒田琉生と新米編集者・髙橋光太郎が、家族の絆をつなぐ”幻のウイスキー”復活を目指します。
駒田琉生の声は『聲の形』(2016)や2022年の『ローマの休日』新日本語吹き替え版で主役を果たした早見沙織が担当します。
映画『駒田蒸留所へようこそ』のあらすじ
先代である父の亡き後、実家である「駒田蒸留所」を継いだ若き女性社長・駒田琉生(こまだ・るい)。
経営難の蒸留所の立て直しを図るとともに、災害の影響で製造できなくなった“家族の絆”とも呼べる幻のウイスキー「独楽(KOMA)」の復活を目指し日々奮闘しています。
父が亡くなった後、母は憔悴しきり、長男は実家を飛び出して別の蒸留所に務めています。琉生は、そんなバラバラになった家族の絆も取り戻そうとしていました。
そこに、やりたいことも見出せず職を転々としてきたニュースサイトの記者・髙橋光太郎(たかはし・こうたろう)が、ウイスキー製造などの取材にやって来たのですが……。
映画『駒田蒸留所へようこそ』の感想と評価
本作は、P.A.WORKS「お仕事シリーズ」の第5弾作品であり、2023年度アヌシー国際アニメーション映画祭・コントルシャン部門や第36回東京国際映画祭・アニメーション部門に正式出品された作品です。
人気声優・早見沙織が命を吹き込む主人公の駒田琉生は、聞く人全てを優しく包み込むような温かな声で周囲の人を魅了し、今にも倒産しそうな駒田蒸留所の立て直しを図ります。
地道な経営をする蒸留所を舞台にした本作ですが、監督の吉原正行はアヌシー国際アニメーション映画祭で、本作にかける熱い想いを下記のように観客に語っています。
若者の成長期を描きたいと思った時に、今の若い人たちと対照的な職業を題材に選びました。ウイスキーは3年から10年を樽の中で熟成させないと商品として売り出せないのです。仕事を始めて成果物に変わるのが10年先なのです。これに主人公たちがどう挑んでいるのかを、今の若者たちにぜひ観ていただきたいです。
あまり知られていないウイスキーの製造工程も作品を通じて紹介されます。手間と時間をかけてできあがるウイスキーの美味しさも理解でき、香りまでもが漂ってきそうな作品となりました。
長期戦ともいえるウイスキー作りに挑む主人公たち。彼らが体験する、じっくりと作り上げる成果物への愛着とウイスキー作りの喜びをぜひご自身の目でお確かめください。
まとめ
ウイスキー作りのお仕事映画『駒田蒸留所へようこそ』をご紹介しました。
蒸留所の若き社長という役職に加えて気鋭のブレンダーとして注目される駒田琉生と、やることが見出せず職を転々としてきた高橋光太郎。
これまでの境遇もモチベーションも対照的な2人ですが、幻のウイスキーを復活させるために、いつしか一緒に奔走するようになります。
幻のウイスキーは無事に復活させることができるのでしょうか。また、ばらばらだった駒田一家の絆も取り戻すことができるのでしょうか。
気になる見どころに加えて、琉生と光太郎の「お仕事」に対する向き合い方にも注目したい作品です。
映画『駒田蒸留所へようこそ』は2023年11月10日(金)より全国ロードショー!
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。