綾瀬はるかが‟未来を救うダークヒロイン”になる!
かつて冷徹非情な美しき諜報員「リボルバー・リリー」として恐れられた女性を、綾瀬はるかが演じた映画『リボルバー・リリー』。
ハードボイルド作家・長浦京の同名小説を原作に、『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020)『パレード』(2009)『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)などの話題作を送り出した行定勲監督が映画化しました。
大正時代、国家の重要機密に関わる情報をもった少年を助けるため、元諜報員の小曾根百合が、陸軍相手に死闘を繰り広げます。
百合の花を連想させる姿で挑む銃撃戦、幻想的な霧の中の死闘など、ハードボイルドでありながら美しい映像で凄まじい戦いが描かれます。
武装した陸軍に対して、艶やかなドレスに身を包みリボルバーを撃つ綾瀬はるかの華麗なるアクションが炸裂する映画『リボルバー・リリー』をネタバレあらすじ有りでご紹介します。
映画『リボルバー・リリー』の作品情報
【日本公開】
2023年(日本映画)
【原作】
長浦京『リボルバー・リリー』(講談社文庫)
【監督】
行定勲
【脚本】
行定勲、小林達夫
【企画】
紀伊宗之
【キャスト】
綾瀬はるか、長谷川博己、羽村仁成(Go!Go!kids/ジャニーズJr.)、シシド・カフカ、古川琴音、清水尋也、ジェシー、佐藤二朗、吹越満、内田朝陽、板尾創路、橋爪功、石橋蓮司、阿部サダヲ、野村萬斎、豊川悦司、アフロ、鈴木亮平
【作品概要】
ハードボイルド作家・長浦京の代表作である小説『リボルバー・リリー』が原作のアクションサスペンス。監督は『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020)『パレード』(2009)『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)など、さまざまな話題作を送り出してきた行定勲。
「リボルバー・リリー」の異名で恐れられた元諜報員・小曾根百合を綾瀬はるかが演じる他、長谷川博己、羽村仁成(Go!Go!kids/ジャニーズJr.)、シシド・カフカ、古川琴音、清水尋也、ジェシー(SixTONES)、阿部サダヲ、野村萬斎、豊川悦司ら豪華キャストが集結し、鈴木亮平もラストに登場します。
映画『リボルバー・リリー』のあらすじとネタバレ
1924年(大正13年)、東京は関東大震災から1年が過ぎようとしていました。
復興に向かう東京の墨田区にある歓楽街・玉の井。その一角にあるカフェ「ランブル」のオーナー・小曾根百合(綾瀬はるか)は、旧知の人物・筒井国松(石橋蓮司)が犯したとされる細見一家殺人事件が気にかかり、現場である秩父に向かいます。
国松の住まいである小屋には銃撃の痕があり、陸軍の軍人たちが調べていました。何か腑に落ちないものを感じて帰路についた百合は帰りの列車の中で、軍人に追われている少年をみかけて彼を助けました。
少年の名は細見慎太(羽村仁成)。彼は国松が犯人とされた殺人事件の生き残りであり、陸軍の軍人たちが躍起になって捜索をしていた対象でした。
一家殺人事件の当日、細見家には突然軍人たちが訪れ、父である細見欣也(豊川悦司)の行方を尋ねてきました。家族がみな知らないと言うと、「殺れ」の一言で家族や使用人が殺されてしまいました。そして慎太はただ一人、縁の下に隠れ難を逃れたのです。
口数の少ない慎太から少しずつこれまでの話を聞き出した百合。慎太が何かを父・細見欣也から預かって「玉の井の小曾根百合の元へ行け」と言われたことを知ります。
それ以上のことは何も知らない慎太を、冷酷な陸軍はどこまでも追ってきます。百合は愛銃であるS&W M1917リボルバーで陸軍の軍人を返り討ちにし、その射撃の腕前はわざと急所を外して追っ手たちを仕留め切るほどでした。
只者ではない女、小曽根百合。彼女こそ、かつて台湾で特殊な戦闘能力を持ったスパイを養成する「幣原機関」で訓練を受け、「幣原機関の最高傑作」とまで称された諜報員だったのです。
なんとか「ランブル」に辿り着いた百合と慎太。玉の井に出入りする腕利き弁護士・岩見良明(長谷川博己)が慎太に関する事件の調査を始めたところ、彼の父・欣也は軍が保持する重要な国家機密に関わっていたことがわかりました。
特殊な投資の仕方で陸軍の軍資金の一部を自分名義の口座に振り込み、外国の銀行へ預けていた欣也。しかもその銀行とは1年おきに更新が必要な特殊な契約を結ぶ必要があり、更新なされなかった場合は預金は銀行のものになるというものでした。
慎太が父から預かっていたのは、口座と金額が明記された書類でした。彼は書類を大事に腹に巻き付けていたのですが、「ランブル」に到着する寸前、百合の後輩にあたる元諜報員・南始(清水尋也)に奪われてしまいました。
ですが、書類だけでは預金はおろせません。預金をおろすには、慎太の指紋と暗証番号が必要だとわかりました。また暗証番号を解くための暗号文も、慎太が書類を腹に巻き付けていた布に描かれていたのです。
細見家が陸軍に襲われた時、床下に隠れて生き延びた慎太は、近くに住んでいた父の友人・国松の小屋へ行って助けを求めました。そこへ外国へ行ったはずの父が戻ってきて「道が全て封鎖されている」と告げました。
父は慎太に書類を預け、小曾根百合を訪ねるように言います。そして慎太が逃げた後に小屋は陸軍に包囲されてしまい、刃向かった国松は殺され、父・欣也も自害を選びました。その事実は知らない慎太ですが、自分が独りになったことは悟っていました。
岩見は今は弁護士ですが、元海軍出身で暗号解読の知識を身に付けていたことから、布に書かれていた暗号文もなんとか解きました。
暗号文は、ある寺の住所を指し示していました。そこに暗証番号が隠されているのに違いありません。百合と慎太はその寺へ行くことにしました。
銀行の契約更新日まで、あと10日。莫大な資金が消えてしまうかもしれない危機感から、陸軍は躍起になって慎太を探し続けていました。
映画『リボルバー・リリー』の感想と評価
原作小説との違いは?
映画『リボルバー・リリー』の原作は、長浦京のハードボイルド小説。「幣原機関」なるスパイ組織で訓練された、ズバ抜けた実力を誇る諜報員・小曾根百合が、国家機密に関わる情報を持つ少年を助けるために奮闘します。
映画のストーリーはほとんど原作通りですが、最も大きな違いは、細見欣也が「かつて百合が愛した水野と同一人物」として設定されたこと。
欣也と水野が同一人物として設定されたことで、国松との関わりも分かりやすいものになり、後半のストーリーに重みも出てきました。
拳銃の腕前はもちろん、格闘戦にも優れた百合。人を殺しても何とも思わない冷酷な諜報員と思われがちですが、水野を愛し、自身の子という大切なものを喪ったことで、諜報員を引退したという過去を持っています。
慎太を助けたのも当初は成り行きからでしたが、陸軍に追われる経緯を知り、なおかつ彼の父である欣也の正体を知った後半では、水野の想いが乗り移ったかのように、慎太を救うことに命を懸けます。
最高に強くて美しい。そしてなんとも頼もしい、見事なダークヒロインの誕生となりました。
大正ロマンが漂う作品
物語は1924年(大正13年)の東京から始まります。1912〜1926年の大正時代15年間において、1914年(大正3年)から1918年(大正7年)には第一次世界大戦が起こりました。
第一次世界大戦の5年後にあたる1923年(大正12年)には、関東大震災が。再び混沌とした帝都・東京で、戦時中に諜報員としてその名を馳せた百合は一市民として生きていました。
復興を遂げようとする町の賑わいは作品でも映し出され、「モダンガール」と呼ばれる西洋風のファッションの女性たちも登場。百合もまた、大正ロマンと呼ばれる文化にふさわしいドレスを着こなしています。
水野からの教えでもあった、諜報員時代の百合のモットーは「殺人をする時でも身なりは美しく」。美しいドレスは、百合の戦闘のためのユニフォームと言えます。
そんな百合を演じた、綾瀬はるかの役作りも大変だったことでしょう。特訓の成果と思える、凛とした美しさを身に纏いながら戦う姿、鍛えに鍛えぬいた格闘の技と拳銃の腕前は、みごとなものでした。
『奥様は、取り扱い注意』(2021)でもハードなアクションを披露した綾瀬はるかですが、本作での衣装はドレスであるため、とても動きにくかったと言います。
しかし、スカートで隠された太ももにリボルバーをガーターベルトで止めて、早わざで抜いて撃つ様は大胆かつ妖艶! 艶やかなドレス姿で拳銃を撃ちまくるヒロインの姿に脱帽の思いです。
まとめ
行定勲が監督を務め、綾瀬はるかが女性諜報員を熱演する『リボルバー・リリー』をご紹介しました。
主人公の百合が敵として拳銃を撃っていたのは陸軍ですが、本当の意味で“狙い撃ち”したかったのは、権力争いの絶えない軍閥政府と戦争への道を突き進もうとする日本の未来だったのに違いありません。
ポスターのキャッチコピー「未来を救う悪になれ」がピタリとハマる、百合の物語でした。
また映画ラストには、鈴木亮平が百合を狙う殺し屋として現れます。一瞬だけの登場でも物凄いインパクトがあり、彼の登場は物語を引き締めていました。
明るい未来を予想させる慎太との別れで終わらないのが、伝説の諜報員「リボルバー・リリー」らしいラストとも言えます。