映画『黄龍の村』は2021年9月24日(金)より池袋シネマ・ロサ他にて劇場公開!
ジャンルとして常に人気の最前線に位置し続ける「ホラー映画」ですが、その中には様々な「サブジャンル」が存在しています。
サブジャンルの種類は多岐に及び、和ホラーの代名詞でもある「オカルトホラー」や猟奇殺人を描いた「サイコホラー」など、ホラー映画はサブジャンルが違うだけで全く方向性の違う面白さを見せてくれます。
今回は新進気鋭の映画監督である阪元裕吾が「日本」の雰囲気を徹底的に活かし製作した映画『黄龍の村』(2021)を、「村ホラー」というサブジャンルの視点からその魅力をご紹介していきます。
CONTENTS
映画『黄龍の村』の作品情報
【公開】
2021年(日本映画)
【監督・脚本】
阪元裕吾
【キャスト】
水石亜飛夢、松本卓也、鈴木麻由、秋乃ゆに、ウメモトジンギ、石塚汐花(アイドルカレッジ)、大坂健太、上のしおり、藤井愛稀、中村龍介、小玉百夏、安田ユウ、陸野銀次郎、海道力也、一ノ瀬ワタル、伊能昌幸
【作品概要】
過激な社会風刺で話題となった『ファミリー☆ウォーズ』(2018)で商業映画デビューを果たし、『ベイビーわるきゅーれ』(2021)で注目を集める阪元裕吾が監督を務めた最新ホラー映画。
ミュージカル「テニスの王子様 2nd Season」での俳優デビュー後、『鋼の錬金術師』(2017)や『青夏 きみに恋した30日』(2018)など話題作に多く出演する水石亜飛夢が主演を務めました。
映画『黄龍の村』のあらすじ
同窓の生徒たち7人と共に思い出づくりのキャンプへと向かう大学生の北村優希(水石亜飛夢)。
旅の途中、宿泊先へと向かう道中の山道で車がパンクしてしまい、助けを求めた一行は山奥の辺境で「龍切村」を発見します。
しかし、村を訪れた一行を出迎えたのは頭部に包丁の刺さった案山子や話しかけても反応しない村民でした。
徐々に気味の悪さを覚える優希たちでしたが、親切な村民である新次郎(陸野銀次郎)に出会い温かく迎え入れられます。
優希は旅行者を歓迎する新次郎の過剰な接待に違和感を覚えながらも、彼に勧められるがままに「龍切村」で一晩を過ごすことにしますが……。
孤立無援、「村民全員」が恐怖の対象!
「旅行者が怪異や殺人鬼に襲われる」というホラー映画の定番プロット。定番であり定石であるからこそ、恐怖の対象となる存在やビジュアルなどが工夫され続け、色褪せることのない魅力が詰まっています。
映画『黄龍の村』では、恐怖の対象が旅行者たちの訪れた村そのものとなる「村ホラー」を、日本でしか出来ない風土的魅力たっぷりに描写していました。
「村ホラー」の魅力がつまった映画
日本の「村ホラー」映画といえば、清水崇監督による『犬鳴村』(2020)を始めとした「実録!恐怖の村シリーズ」が記憶に新しいと思います。
しかし、『犬鳴村』はサブジャンルとしては「村ホラー」というよりは「オカルトホラー」に分類される作品であり、「呪怨」シリーズを手がけてきた清水崇監督らしさの光る作品でした。
一方、『黄龍の村』における恐怖の対象は「心霊的な現象」ではなく、あくまで生きた人間が住む「村」そのもの。
「携帯の電波すら届かない村の中で、村民全員が自分たちを狙う人間だとしたら」という、人がたくさんいるにも関わず閉塞感を味わうことが出来る「村ホラー」であり、奇抜なビジュアルの相手ではないからこその恐怖が映画からは伝わってきます。
日本と「村ホラー」の相性の良さ
現代では日本人の多くが、恒例的な行事への参加を除けば無宗教とされています。そして無宗教者であるがゆえに、宗教に傾倒する人に対し、認識のズレから発生する違和感を恐怖と感じることもあります。
しかしその一方で、日本では古くから民間信仰が盛んであり、地域共同体に根付いた氏神に対する信仰は現代でも一部の地域で続いています。
見慣れた国内の風景の中で全く別の信仰が行われている様子、言わば「同じ言語」と「同じ風景」の中にある自身の理解の及ばない文化がもたらす違和感と恐怖は、自身の知る世界とのズレを描く「村ホラー」にとっては格好の材料。
本作は日本の持つ独特な田舎の雰囲気とあいまって、「村ホラー」が「村」の持つ温かさと冷たさを双方に描くことの出来るジャンルだと確信できるような作品となっていました。
「常識」に「NO!」を叩きつける異色の物語
名作映画『食人族』(1983)やスウェーデンのコミューンを舞台とした映画『ミッドサマー』(2019)など、「村ホラー」に分類することの出来る映画の多くは本作と同様に「民間信仰」を題材としています。
「常識」というものは生まれた地域や国の文化によって形成されるものであり、生まれた場所が違うのであれば同じ人間であっても「常識」が違って当然と言えます。
『ミッドサマー』では主人公たちの訪れたコミューンの中で行われる「他者の死」を前提とした儀式を淡々と描き恐怖を煽りながらも、一方でそのコミューンではその儀式こそが彼等の「常識」である様も描いていました。
そんな「常識が異なるのであれば仕方がない」という、否定しにくいメッセージ性が「村ホラー」の定番ともされていますが、映画『黄龍の村』ではその「定番」を良しとはしていません。
「固定概念」や「古くからの悪習」に毅然と「NO!」と叩きつける本作は、そのコミュニティの「常識」があるにせよ時代の変化や他の文化の「常識」にも対応して行くべきだという、若き監督だからこそ込められる力強いメッセージ性のある作品でした。
まとめ
「村ホラー」の定番のプロットを突き進みながらも、その一方で「村ホラー」の定石を打ち破る映画『黄龍の村』。
物語がテンポよく展開される本作は中盤に驚愕の展開が待ち受けており、一瞬たりとも目を逸らすことは許されません。
阪元裕吾監督自身が「ごった煮」映画と語るほど異色すぎる、新感覚の和製「村ホラー」映画『黄龍の村』は、2021年9月24日(金)より池袋シネマ・ロサ他にて劇場公開です。