Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

サスペンス映画

Entry 2021/06/27
Update

映画『復讐者たち』感想レビューと内容解説。ユダヤの史実を基に知られざるナチス殺害計画が展開する

  • Writer :
  • 松平光冬

ユダヤ人たちによるドイツ人殺害計画を描いた実録サスペンス

映画『復讐者たち』が、2021年7月23日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネクイントほかで全国公開されます。

ホロコーストを生き延びたユダヤ人たちが実際に行ったナチス残党への復讐計画を描いた、実録サスペンスドラマ。

「目には目を、歯には歯を」の誓いの元、600万ものドイツ人を標的にした者たちが招く結末とは?

映画『復讐者たち』の作品情報

(C)2020 Getaway Pictures GmbH & Jooyaa Film GmbH, UCM United Channels Movies, Phiphen Pictures, cine plus, Bayerischer Rundfunk, Sky, ARTE

【日本公開】
2021年(ドイツ、イスラエル合作映画)

【原題】
Plan A

【監督・脚本】
ドロン・パズ、ヨアヴ・パズ

【製作】
スカディ・リス、アブラハム・ピルヒ、ヒリック・ミハエリ、シャロム・アイゼンバフ

【製作総指揮】
モリー・コナーズ、アマンダ・バウワーズ、ジェーン・オスター、ヴィンセント・モラーノ

【編集】
エイナット・グラサー・ザーヒン

【キャスト】
アウグスト・ディール、シルヴィア・フークス、マイケル・アローニ、イーシャイ・ゴーラン、オズ・ゼハビ

【作品概要】
ホロコーストを生き延びたユダヤ人たちによる復讐計画の行方を描いたサスペンスドラマ。

イスラエル製ホラー『エルサレム』(2016)、『ザ・ゴーレム』(2019)を手がけてきたドロンとヨアブのパズ兄弟が、生存者への取材を基に監督、脚本を担当。

主なキャストは、『イングロリアス・バスターズ』(2009)、『名もなき生涯』(2019)のアウグスト・ディール、『ブレードランナー2049』(2017)、『蜘蛛の巣を払う女』(2019)のシルビア・フークスです。

映画『復讐者たち』のあらすじ


© 2020 Getaway Pictures GmbH & Jooyaa Film GmbH, UCM United Channels Movies, Phiphen Pictures, cine plus, Bayerischer Rundfunk, Sky, ARTE

1945年、敗戦直後のドイツ。

ホロコーストを生き延びたユダヤ人のマックスは、収容所で離れ離れになった妻子がナチスに殺されたことを知り、復讐を決意します。

やがて、ナチス残党を密かに処刑しているユダヤ旅団に合流したマックスは、より過激な報復活動をするユダヤ人組織「ナカム」の存在を知ります。

ナカムは、ドイツ人600万人を標的にした驚くべき復讐計画「プランA」を企てていました。

ナカムを危険視する旅団兵士のミハイルに協力する形で、彼らに接触したマックス。

ナカムの女性メンバー、アンナと心を通わせていくうち、マックスは自らの内にくすぶっていた復讐の怨念を再び燃え上がらせていき…。

映画『復讐者たち』の感想と評価

今明かされるユダヤの民によるナチスへの復讐

第二次世界大戦において、連合国がナチスドイツを降伏させた1945年5月8日をもって自由の身となったユダヤの民たち。

戦史上では迫害される存在としか見られていなかった彼らですが、その中には、加害者ナチスへの復讐を目的とする者たちがいたことをご存知でしょうか。

本作『復讐者たち』はそうした、武装したパレスチナのユダヤ人によって編成されるユダヤ旅団を主とする、ナチス狩り部隊にスポットを当てています。

妻子を殺されたフランス人医師が一人で復讐に臨む『追想』(1975)や、その『追想』のファンを自認するクエンティン・タランティーノ監督によるバイオレンス劇『イングロリアス・バスターズ』など、ユダヤ人がナチスに復讐する「ポエティック・ジャスティス(詩的正義)」作品は過去にもありますが、本作は、実際に“目には目を、歯には歯を”の復讐計画に関わった生存者たちからの証言を基にしています。

監督のドロンとヨアヴのパズ兄弟は、1948年建国のユダヤ人国家・イスラエル出身。

『エルサレム』(2016)、『ザ・ゴーレム』(2019)とユダヤの歴史を起源とするスリラーを手がけてきた2人にとって、本作は同胞たちがたどってきた知られざる戦史に立ち返る内容となりました。

『追想』(1975)

ナチスを狩る者がナチスに

妻子がナチスに殺されたことを知った主人公マックスは、ナチス残党を密かに処刑するユダヤ旅団の兵士ミハイルと出会い、行動を共にすることに。

そんな中、旅団よりもはるかに過激な報復活動を実行する組織「ナカム(ヘブライ語で「復讐」の意)」に遭遇します。

ナカムは、元ナチスのみならず一般のドイツ人に対しても憎悪をたぎらせており、ニュルンベルクで大規模な復讐計画を企んでいました。

イスラエル建国に動くミハイルにとって、ナカムの行動はユダヤ人のイメージ失墜につながる――その意向を汲んだマックスは、スパイとしてナカムのメンバーに参加します。

ここで重要なのは、ナカムのターゲットが罪のないドイツ人にも及んでいるという点です。

すなわち、ドイツ人を無差別に殺そうと企むナカムは、ユダヤ人を問答無用に殺していたナチスと同化することを意味します。

ドイツ人への復讐を生きる目的とした彼らと同行するうちに、マックスもまた、過激行動にのめり込むこととなるのです。

まとめ


(C)2020 Getaway Pictures GmbH & Jooyaa Film GmbH, UCM United Channels Movies, Phiphen Pictures, cine plus, Bayerischer Rundfunk, Sky, ARTE

ナカムの女性メンバー、アンナは言います。「裁判による正義を待つ時間はない」。

マックスやユダヤ旅団、そしてナカムの面々は、「正義」という名目でドイツ人を私的に裁こうとします。

しかし彼らはやがて、血を流さない最大の復讐方法を見出すこととなります。

ドイツ司法においては、長らく曖昧にされてきたナチ戦犯の訴追は、1980年代に入りようやく本格化。

さらに2011年刊行の法廷サスペンス小説『コリーニ事件』(2020年に映画化)がきっかけで、過去の戦争犯罪を洗い出して再検討するシステムも構築され、より法の名の下における「正義」が執行されるようになったのです。

これまで公になることのなかった、ユダヤ人による秘められた史実を通して、「復讐とは、正義とは何か?」を突き詰めて考えてみるのもいいかもしれません。

『復讐者たち』は、2021年7月23日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネクイントほかで全国公開。




関連記事

サスペンス映画

『ナイブズ・アウト』ネタバレ結末あらすじと感想評価の解説。事件の真相をドーナツに例えてアメリカの南部訛りで熱く推理を語る

映画『ナイブズ・アウト/ 名探偵と刃の館の秘密』は、犯人捜しの謎解きを楽しむミステリー作品。 資産家が死体で発見され、警察は遺産相続人である家族を事情聴取しますが、同行した名探偵は誰もが嘘をついている …

サスペンス映画

『ジュラシックパーク』ネタバレ結末あらすじと感想解説。恐竜!最強絶滅⁈テーマパークを描いたスピルバーグ作品

1993年制作のスティーブン・スピルバーグ映画『ジュラシック・パーク』 続編を製作すると年間興行収入ランキングで必ず上位に入る、とさえ言われる「ジュラシック」シリーズ。 長年続く大人気のこのシリーズは …

サスペンス映画

映画『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

ジョン・カサヴェテスが自らの姿に重ね合わせたのは、“クレイジー・ホース”に夢を掛けた男、コズモ・ヴィッテッリ。 異色のフィルム・ノワール『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』をご紹介します。 映画『チャ …

サスペンス映画

Netflix映画『1922』ネタバレ考察と感想。原作小説との比較を通して解説する妻を殺した男の破滅

それは運命などではない「因果応報」という破滅の道! 映画『1922』はモダンホラー作家スティーブン・キングの同名小説『1922』を映画化したものです。 舞台はアメリカのネブラスカ州にある、広大な農村地 …

サスペンス映画

映画『NERVE ナーヴ 世界で一番危険なゲーム』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

映画『NERVE ナーヴ 世界で一番危険なゲーム』のあらすじネタバレと感想や評価をまとめました! 以下、あらすじやネタバレが含まれる記事となりますので、まずは『NERVE ナーヴ 世界で一番危険なゲー …

Cinemago|想像力の海へ、シネマダイビング。
ACT1|次の物語は、人からはじまる。
Cinemagoオンラインショップ|DVD・鑑賞チケット・オリジナルグッズ
『血を吸うスマトラオオコンニャク』
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学