今回ご紹介する映画『夏目アラタの結婚』は 、乃木坂太郎の同名ベストセラーコミックを「20世紀少年」3部作、「SPEC」3部作などを手掛けた、堤幸彦監督によって実写映画化したサスペンス映画です。
品川ピエロこと死刑囚の品川真珠は、とある児童の依頼で面会に訪れた、児童相談所職員の夏目アラタから結婚を申し込まれ、何か画策があると感じつつ条件付きで申し込みを受けるのだが…。
下町の古びたアパートから異臭がすると通報があり、警察官が管理人立会いの元その一室に踏み込むと、切断された手足をバッグに詰めている、ピエロのメイクをした小太りの女を発見しました。
被害者の1人山下良介の息子・卓斗は事件以後不登校になり、児童相談所で働く夏目アラタと度々面談していましたが、ある日、アラタに謝罪とお願いがあると母親から連絡が入ります。
しかし、最後に届いた手紙に「直接会って話そう」と書かれてあり、それ以降は手紙を送っても返事はなかったと言います。そこで、父親の頭部を聞き出すため、代わりに真珠と面会してほしいとアラタに頼みました。
いよいよ猟奇殺人鬼の「品川ピエロ」と面会するため、東京拘置所へと出向きます。アラタはモンスターを召喚するようなワクワクを感じつつ、真珠と対峙する20分間に挑みます。
(C)乃木坂太郎/小学館 (C)2024映画「夏目アラタの結婚」製作委員会
相談所に戻ったアラタは真珠の履歴を見ながら、ほとんど学校にも通っていなかった真珠の知能は低いと思い、面会での真珠を振り返りギャップを感じていました。
面会の席に戻った真珠は手紙の文字は幼くて、“こんにちは”の「は」を「わ」と書いていたと指摘します。アラタは疑われ試されていると感じつつ、適当に誤魔化します。
続いて真珠は死刑囚と結婚を望む人の理由は、死刑が確定してしまうと面会や手紙の条件が厳しくなるので、支援者や情報が欲しい記者が多いと言います。
そして、事件の関係者かと聞きます。内心、アラタは図星に驚きますが、“ロリコン”なのかと聞かれ、アラタは自分の好みは同僚の“桃ちゃん”で、年上でぽっちゃりとした、母親のような人だと言います。
真珠からの手紙には母親のような安心する匂いがしたと言い、俺の恋はずっと前から始まっていたと、アクリル板に手を伸ばし、真珠は板の穴からアラタの手の匂いを嗅ぎます。
真珠は自分のことを「ボク」と言い、恐くないのか、出所したら一緒に暮らせるのか尋ねます。アラタは内心恐怖を覚えながら、無罪の確率がないことから「もちろん」だと答えます。
すると真珠は「じゃあ、出るね」と、アクリル板を叩き割ります。しかしそれはアラタの恐怖心が見せた幻影でした。
アラタは今後の文通は下書きの清書を拓斗にしてもらうことにします。そして、彼に“こんにちは”のことを聞くと、拓斗は書き出しはいつも「拝啓、品川真珠様」だと答え、アラタは鎌をかけられたと実感します。
しばらくしてアラタの家に真珠の弁護士、宮前光一が訪ねてきます。真珠との結婚が本意であるか確認し、獄中結婚の多くは離婚に終わり、更に死刑囚との場合は周囲の理解が得られず、職場にも居づらくなることを諭します。
それでもアラタは実行あるのみと言うと、宮前は真珠は心がとても弱い女性と言い、面会の際にアラタから本気の愛をぶつけられたと教えます。
そして、彼女はアラタを信じることができれば、前向きな自分になれる気がすると泣いたと話し、改めて結婚する気があるのか改めて問います。
アラタは真珠のことを「運命の人」だと答えると、宮前は真珠が記入した婚姻届を取り出し、アラタの前に差し出します。
アラタは宮前と一緒に真珠に面会します。婚姻届けを待ちわびていた真珠は、アラタが持ってきていないことに、自分を騙したと激怒します。
アラタは職場や家族の理解を得られないと言い、時間がほしいと言うと、真珠はアラタのことがもっと知りたいと、根掘り葉掘り聞き始め、アラタの母親の名前を聞き出し満足します。
次に真珠は自分の秘密を教えると切り出します。アラタは隠した遺体の一部、特に拓斗の父親の頭部であることを期待しますが、「ボクは誰も殺していない。無罪なの」と言います。
信じるかとアラタに聞きます。アラタは真珠の思惑を探るように、しばらく考え「結婚式は6月に神前式で…」と話し出し、真珠の気持ちをひいてから「信じる」と言いきります。
しばらくして宮前から呼び出されたアラタは、真珠の幼少期のことを聞きます。真珠の母親は育児という育児もせず、転々と引っ越しを繰り返したため、児童相談所も追跡しきれなくなりました。
真珠が小学2年の頃ようやく、児童相談所が保護することになるが、「田中ビネー知能検査」を行ったところ、IQ70という同年代の子供と比べても低い通知でした。
そして、逮捕後の事件の猟奇性から、精神鑑定と同時に同知能検査をすると、IQ108と30以上も跳ね上がっていたと言います。10数年でここまで差異がでるのはありえません。
別人とすり替わった可能性はなく、双子の姉妹がいるわけでもないので、考えられるのはこの間に、彼女に取って衝撃の強い事件があったとしか考えられないと言います。
宮前は多重人格の可能性も示唆しますが、アラタは態度の使い分けはするが、別人格ではないと言うと、宮前は真珠が抱える心の闇を晴らせれば、“無罪”の道も開けるかもしれないと、アラタに協力を求めます。
真珠との面会でアラタは宮前から託された、子供の頃に何か事故や大きなできごとがなかったかと、ぶっきらぼうに質問します。
それに対して真珠はアラタの様子が少し変だと言うと、おもむろにアラタは結婚について、自分には重すぎると切り出し帰ろうとします。
すると真珠は「夢を見たよ」と引き止め、江戸川が2つに別れる分岐のグランドで、見つからない場所を必死に探し、血生臭い何かを必死に埋める夢だったと言います。
更に真珠は「アラタが傍にいてくれればボク、もっと夢が見れる」と付け加えました。
(C)乃木坂太郎/小学館 (C)2024映画「夏目アラタの結婚」製作委員会
アラタは2年も黙秘していて、今さら本当のことを言う訳ないと疑いながら、河原を捜索する警察を遠くから眺めていると、警察犬が何かを見つけ、合図の笛が鳴り響きます。発見されたのは周防英介の左腕でした。
宮前と面会した真珠は黙秘を止めて、話をすると、バラバラ殺人事件の話をしはじめ、アラタは宮前の法律事務所に呼ばれ、その話を聞きます。
最初の殺人が起きた1年くらい前から、真珠は何者かにストーキングの被害を受けていて、ある日、外出から帰宅すると部屋にバラバラにされた遺体があったと言います。
確証はないがそのストーカーは、真珠に近づこうとする男に嫉妬し、犯行に及んだのではないかと言うのです。
しかし、アラタはそのことを通報もせず今まで話さなかったこと、遺体の一部だけを埋める行為もおかしいと指摘します。
宮前は真珠の曖昧だった記憶は、アラタと話すうちに蘇っていると言い、矛盾点について聞き出せるのは、アラタしかいないと頼みます。
アラタにはもう一つ疑問がありました。ピエロメイクをしたような太った女に誰が恋をするのかということです。
宮前は当時の真珠は40kgを切る痩せた女性だったと、1枚のスナップ写真を見せます。彼女はストーカーによるストレスで過食になり、70kg台にまでなったと教えます。
写真の真珠はアルバイト先で、2人のパートのおばさんの背後を通り過ぎる真珠が偶然、写り込んだ写真でした。
痛々しくやせ細った真珠にある種、同情的になった男性がいてもおかしくはなく、被害者の3人は、真珠に何かしらの援助をしていたのではないかと、宮前は推測していました。
真珠が供述を始めたので、控訴審まで3ヶ月の猶予ができたと言い、その間に真珠の無罪を証明する物証や証拠を集めたいと、宮前はアラタに握手を求めました。
真珠に面会したアラタは婚約者というスタンスで、周防とのなれそめを聞き始めます。真珠は激しく困惑します。
もしかして子供がいたりするのかと聞くと、真珠はアクリル板に唾を吐き「産むわけないだろ」と怒りをあらわにします。
アラタは真珠は自分のことを愛するわけがないと詰め寄ると、彼女はたくさん届く手紙の中でも、アラタ(拓斗)がくれた幼い文字の手紙は特別で、自分の理解者になると思ったと言います。
しかし、正真正銘の中学生の字だと確信していたのに、アラタが現れ送り主ではないと直感し、3人目の被害者の中学生の息子ではないかと見抜きます。
アラタは動揺しつつ否定すると、白いタキシードを着て、自筆の婚姻届けを持ってくるよう、真珠は言い放ちます。
アラタは真珠の豹変ぶりから、“赤ん坊”や“子供”というワードに何かしらの弱点があると考えます。そのことを桃山に話すと反応が激しすぎないか、という疑問を投げかけました。
桃山は“赤ん坊”というキーワードに、トラウマがあるほどの恐怖があると推測し、それを掘り起こしてしまったのではと言います。
後日、アラタは白のタキシード姿で真珠に面会し、記入した婚姻届を見せると「今日からお前は夏目真珠だ」と言い、真珠は喜びの涙を流します。
アラタは神前式で挙げる式の姿を語り、真珠は自分の頭の中にある、自分じゃ開けられない“黒い箱”があると言い、アラタが中身を聞くと、「遺体の隠し場所とか」と答えます。
控訴審当日、アラタの姿は傍聴席にあります。拘置所で知り合った死刑囚アイテム・コレクターの藤田信吾は、法廷ファッションが見どころだと言います。
藤田は品川ピエロとして法廷に立った時も傍聴しており、どのように変わっているか期待していましたが、白のワンピース姿で現れた真珠を見て「可愛い」と驚きます。
神波裁判長が真珠に氏名を尋ねると、「旧姓品川。先月結婚したので今は夏目真珠」と答え、傍聴席からどよめきが起きます。
宮前は真珠にストーカーの話から証言させます。真珠は看護学校にいたころ、実習先の病院に、三島正吾という男が熱中症で運ばれてきて、担当したと語り始めます。
三島は真珠の名札を見ると、「品川環の娘か?」と言い、1枚の写真を見せます。そこには三島と写る環と赤ん坊がいました。つまり、三島が真珠の父親だと示します。
三島は仕事ができないことを理由に、一緒に住み始め、小遣いをせびったりしました。付き合っている男がいると知れば、「真珠を返せ」と男性に暴力を振るい始めます。
真珠は三島を殺すため、学校から薬を盗んできたが、殺せず薬を棚の中に隠すと、それ以来、自分が死ぬことだけを考え続けたと話すと、過呼吸になり休廷します。
再廷しふたたび真珠の証言をはじめます。真珠は買い物の約束をしていた周防を駅で待ったが、来ることはなく家に帰ると、三島とバラバラにされた死体があったと話します。
三島は真珠との共犯にするため「1つ隠してこい」と言われ、必死に隠し場所を探した記憶しかないと言います。
悪夢だった毎日を忘れたくて、暴食に走り激太りしたが、そのうち三島自身も自分に嫌気がさし、自分で始末するから時間がほしいと言ったと証言し、「ボクは誰も殺していない」と締めくくります。
しかし、検事は三島がどうやって3人を殺したのかを追及します。3人の腕には注射されたあとがあり、注射をされるのには信頼関係がないとできないと反論し、裁判は閉廷します。
面会すると真珠は証言を信じてくれたか聞きます。アラタは混乱したけど、俺がそこにいたら、真珠の親父をぶっ殺していただろうと答えます。
真珠はアラタに「真珠ちゃん、ここにいたんだ。探したよ」と言ってと頼み、アラタがその願いをきいてあげました。
すると真珠は小学生の頃に住んでいたアパートの前が、住宅の建設中で基礎の下に(相沢純也の)足を埋めたと教えます。
アラタは真珠が保護された養護施設『しらなみ園』に行き、園長から当時の真珠について話を聞きます。
小2でありながら字は読めないし、言葉も遅かったと言い、それでも母親は他の親とは違い、よく面会に来ていたと証言します。
真珠に小遣いはあげていたが、虫歯になっても歯医者に診せることもせず、高カロリーのお菓子ばかり与えていたと教えました。
そして、めったに話さない真珠がある日、『赤とんぼ』を歌っているのを聞いたことがあり、とても上手だったと話します。
第2回公判当日。この日の真珠は学生服で現れます。検事は三島正吾の存在について、確認ができたと、三島と環の写真をモニターに映しだします。
アパートの部屋に付着していた4人目の血液は、三島とDNAが一致したが真珠との血縁がない事も判明したと説明します。
証言台に立った真珠は母が真珠の歌声が好きで、歯並びが変わると歌声も変わってしまうから、歯医者に行ってはだめと言われていた記憶を思いだしました。
その母は時々仕事を理由に、大量のツナ缶とパックご飯を置いて、1週間は家を空けました。真珠は母の口紅を顔に塗りたくり、「お母さん、早く帰って」と泣きます。
検察の尋問は続き真珠は「あいつの写真を消せ」叫び、モニターが切られると真珠は自分が別人なら、この裁判はチャラになるかと裁判長に聞きます。
裁判長はならないと答えると、真珠は3人とも自分が殺した。「死刑でいい」と叫びます。するとアラタは咳払いし気づいた真珠は、傍聴席の柵を飛び越えてアラタに抱きつきます。
真珠は退廷させられ、裁判は閉廷します。アラタは背中に真珠の手の感触を確かめます。
(C)乃木坂太郎/小学館 (C)2024映画「夏目アラタの結婚」製作委員会
面会に行くと真珠は、アラタに抱きついた手を洗いたくないと言いました。しかし、アラタは真珠のことを人殺しであり、無罪だと思ったことは一度もないと言い放ちます。
すると真珠は静かに“無実の罪”で死刑を受け入れるが、亡骸は焼かずに環の田舎にある、母と同じ墓に埋めてほしいと頼みます。
アラタがその場所を聞くと、バス停から裏山を奥に向かって歩くと、少し開けた場所に出るから、周辺に丸いマークを彫った、穴の開いた切り株があると教えます。
環は新潟の遠縁の親戚の家で育ちました。アラタは真珠が教えてくれた通りに、バス停脇の道から裏山に登り、森の奥へ進むと教えてくれた通り、開けた場所に出ます。
辺りを探すと真珠の言っていた切り株を見つけます。アラタがその根元を掘り返すと、埋められたトランクが出てきます。
恐る恐る開けて見ると中には、赤ん坊の遺体と臍の緒の入った桐箱があり、そこに書かれた名前を見て「もっと早く気付くべきだった」と天を仰ぎます。
環は23年前、三島との間に女の子を産みますが、三島とは籍を入れずに“真珠”と名付け品川の籍に入れます。
しかし、環はアパートの階段で足を滑らせ落ちてしまい、生まれたばかりの真珠を死なせてしまいます。環は三島にどうしようとパニックになりますが、やがて三島は環の前から姿を消します。
どうしていいのかわからないまま時間は流れ、追い詰められた環は、相手が誰ともわからない子を妊娠し、人知れず出産をしました。
その子を死亡した真珠として育てますが、年齢は2歳も離れています。環はその事実を隠すために、引越しを繰り返しました。
発達の遅れを隠すために太らせ体重を増やし、歯の生え変わりで年齢が知られないよう、虫歯になっても歯医者にも連れて行かず、「真珠の歌声が好きだから」と言って行かせませんでした。
田中ビネー知能検査で知能指数が低かった理由も、これで説明がつきました。この話を聞いた宮前は、犯行時に真珠が20歳未満だった可能性があると言います。
検察に知られる前にDNA鑑定しておけば、検察の小細工は避けられ、真珠が当時17歳以下なら、起訴できないと希望を抱きます。
宮前は真珠に面会したとき、アラタに今後、裁判にも面会にも来なくていいと言い、1つお願いがあると伝えます。
第3回公判当日。真珠は黒のライダースーツで現れます。遺体で見つかった赤ん坊のDNA鑑定から、真珠とは姉妹だと判明します。
被告は品川環の第2子と思われ、現在の年齢は20歳未満と思われると報告します。裁判長は判決を破棄し、本控訴を棄却すると告げ、検察と弁護士に上告放棄書を提出するよう言い渡します。
裁判の破棄が確定されると、真珠の手錠が外され拘置所へ行く護送車へ向かうが、真珠は「それは任意で強制できない。拘置所に着いたら再逮捕される」と乗車を拒否します。
刑務官は無線で逮捕状を請求しますが、真珠は裁判所では17時には、シフトが交代するため、5分や10分で令状は出せないと言います。
刑務官達で囲まれた真珠は「来てアラタ!」と叫びます。するとバイクでアラタが現れ、真珠をバイクに乗せて逃走します。
17時になる前、裁判長が受付に行くと、アラタが上告放棄書を提出していました。そして、真珠が拘束されている法的根拠について尋ねると、裁判長は「何もない」と答えました。
海岸に来たアラタと真珠は夕日を眺めます。真珠はずっと誰かを待っていて、初めて誰かが来てくれた時から、出られる方法ばかり考えていたと告白します。
そして、法律書などを読み漁り親族なら、犯人隠避の罪に問われないことを知り、アラタに話します。その理由で結婚したのか聞くと、真珠は否定します。
真珠はアラタに目をつむるように言い、アラタの臭いを嗅ぎ2人はキスをすると、真珠は「Hしよう」と言います。
ホテルの一室で真珠は、アラタに児童相談所で働いている理由を聞きます。アラタの父が小学3年の時に死ぬと、母は離婚と結婚の繰り返し、そのたびに苗字が変わったと話します。
そんなアラタの子供の頃は、勤務する児童相談所でも問題児で、所長に世話になったと話し、その恩返しのつもりで働いているけど、きっかけは他にもあると言います。
昔、近所で幼い子が、裸足のまま玄関先でうずくまっているのを見て、虐待なのだと察知し、そんな子を守ってやりたいと思ったからだと話します。
ネットニュースで「逃亡中の品川真珠に逮捕状」と出ると、真珠は母の遺品に古い携帯があり、頭部と一緒に墓地に埋めたと教えました。
アラタは真珠に刺される夢を見て飛び起きます。真珠の姿はありませんが、部屋に置いてある思い出ノートには、真珠のメモが残されていました。
宮前から真珠は昨夜、徘徊中の所を逮捕されたと連絡が入り、真珠との面会は禁止だと告げられます。ノートを確認すると書かれていたのは、寺の名前と“川田家の墓”でした。
その墓は看護学生だった時、仲良くなった身寄りがないという老婆が、「私には入る墓はあるのよ」と言っており、寂しくないよう一緒に入れてあげたと書かれていました。
宮前は真珠にやり直し裁判が始まる前の確認として、3人を殺害したのは三島で、真珠は手伝っただけで、当時18歳未満なら、執行猶予が勝ち取れると話します。
アラタが川田家の墓の石棺を開けると、書かれいた通り携帯が入ったビニール袋と、その奥に頭部の入ったビニール袋を見つけます。
ニュースでは墓参りに来た人が墓地内で、切断された頭部を発見したと報じています。
一方、アラタは児童相談所の一室で、携帯に保存された画像を確認しながら、真珠の生年月日に繋がる写真を探します。
環の第1子の赤ん坊の写真の後を遡ると、2003年9月30日の日付で環に第2子が宿っている、妊婦時代の写真を見つけます。
しかし、アラタに真珠から離婚届が郵送され、宮前から発見された頭部が、三島の物だと告げられます。
真珠は裁判で全て話すと言い、アラタに聞いてほしいと言っていると電話が入ります。やり直し裁判。宮前は第2子妊娠中の環の写真を提示し、犯行時の真珠は17歳の少女だと説明します。
墓地で発見された頭部については、三島のものであり真珠が殺したと告白します。三島に付きまとわれた上、死んだ姉がいると知っている唯一の人間だったからと説明しました。
真珠は三島から「お前は存在していない。居場所も直ぐになくなる」と脅されていました。それが引き金となり、ピエロのようなメイクの真珠が三島を撲殺します。
真珠は『赤とんぼ』を歌う少女の頃を回想します。環は「もう楽になりたいの。ママと一緒に死んで」と言いますが、怖くなって真珠が泣くと、環は死ぬことを諦め、そのせいで長い間辛い思いをしたと感じました。
あの時、死なせてあげればよかったと後悔し、あの3人も「楽になりたい」と言っていたから、母のように苦しまないよう、自分の手で救ってあげたと話します。
3人には自殺願望があり、真珠は毒薬を注射し自殺ほう助をしました。しかし、アラタとの出会いによって、それが間違いだったと気づいたと証言します。
「クソみたいな毎日はずっと続くけど、生きていれば巡り会えたかもしれない。自分を救ってくれる人に。ボクが巡り会えたように…」と、嘆きました。
アラタの方も真珠は本気で自分を愛し、一人の人間として見てくれる人を待ち、駆け引きなどせず、自分とまっすぐ向き合っていたと、気づき嘆き心で詫びるのでした。
ニュースで「連続殺人事件の容疑者の女性に、懲役13年の判決が下された」と報じられ、宮前はアラタの今後について聞きます。
アラタは児童相談所を辞めていました。悲惨な家族から子供を助けようと、児童相談所で働いていたが、自分より悲惨な子供たちを見て、自分はまだマシだと思っていたと語りました。
それを気づかせてくれたのが真珠であり、真珠を助ける資格など自分にははなかったと言います。
女子刑務所に収監された真珠に宮前が面会に行き、本当に会いたい人と代わると、アラタを面会室に入れました。
真珠は自分はアラタから哀れみの目で見られたと感じていたが、アラタはそれを否定し離婚届の字は涙で滲んでいると取り出します。
そして、アラタは寂しいから一緒に生きてほしいと告白し、離婚届を破り捨て明日、神社で結婚式をあげようと改めて言います。
翌朝、神社に袴姿のアラタが立っています。女子刑務所の庭で清掃をしていた真珠は、空を仰ぎ臭いを嗅ぎます。アラタの前に白無垢姿の真珠が現れると、神前で結婚を誓う自分達を想像しました。
雨の中、若い頃のアラタがアパートの前を通りかかると、裸足のまま玄関先に座り、ツナ缶でご飯を食べる太った少女をみかけます。
アラタは少女に「大丈夫か。風邪ひくなよ」と格子柄のタオルハンカチを渡します。少女はそれを受け取りハンカチの匂いを深く嗅ぎました。
女子刑務所の庭に座った真珠は握りしめていた、格子柄のタオルハンカチの匂いを嗅ぎ、空を仰ぎながら微笑み、アラタも神社で空を見上げます。
死ぬことを望んだ男たちは、真珠に助けを求めて出会います。2時間という限られた中には当然収めることのできない、被害者たちの知られざる事情がありました。その詳細はコミック内に描かれています。
テレビの出演がきっかけで、純也の父親は息子は有名人になり、経済的に裕福になっていると勝手に思い込み、仕事を辞め自分の両親が入所している介護施設料の支払いなど、金の無心をするようになりました。