映画『Love song』は2023年10月20日(金)より池袋シネマ・ロサにて上映!ほか全国順次公開!
シンガー・花の復讐とアウトローな男たちを描く和製フィルムノワール。
シンガー・花を売り出そうとマネジャーの猛はヤクザから覚醒剤を盗み、売り飛ばしてお金にしようとします。しかし、すぐにヤクザにバレてしまい撃たれて猛は亡くなります。
死の間際に花に薬を持って逃げるように言い残します。花は街から出ずに猛を撃った久住に復讐を誓い、久住もまた薬と花を探しているのでした。
そんな時、花は幼馴染の誠と再会し、誠が花と猛の元を去った理由を知っていく……。
石原プロで『西部警察』シリーズや、『もっとあぶない刑事』シリーズ、『ゴリラ・警視庁捜査第8班』シリーズなどの作品で助監督として経験を積み、93年に監督としてデビューし、キャリアを積んできた児玉宜久が監督を務めました。
ヒロインの花役には、元「AKB48」メンバーで、Netflixドラマ『全裸監督2』(2021)などドラマや映画・舞台と幅広く活動する増田有華。
幼馴染の誠は、『おんなのこきらい』(2014)、『ずぶぬれて犬ころ』(2018)の木口健太が演じました。
CONTENTS
映画『Love song』の作品情報
【公開】
2023年(日本映画)
【監督】
児玉宜久
【脚本】
村川康敏、宍戸英紀
【キャスト】
増田有華、木口健太、山口大地、藤吉久美子、本田博太郎、青木一馬、平山大、牧野裕夢、広瀬彰勇、大川夏凪汰、佐藤真澄、角謙二郎
【作品概要】
元「AKB48」メンバーで、Netflixドラマ『全裸監督2』(2021)や『過激派オペラ』(2016)に出演した増田有華がヒロインの花を演じ、幼馴染の誠役には、『おんなのこきらい』(2014)、『ずぶぬれて犬ころ』(2018)の木口健太が演じました。
更に、もう一人の幼馴染・猛役には、『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』(2023)の青木一馬、敵の久住役には、Netflixドラマ『今際の国のアリス シーズン2』(2022)などの山口大地が務めました。
映画『Love song』のあらすじ
シンガーの藤咲花を売り出すため、猛はヤクザから覚醒剤を騙し取り、売り捌いてお金にしようと思っていました。
しかし、すぐにバレて暴力団の久住に見つかり、銃で撃たれてしまいます。人が通りかかり、久住と手下はその場から逃走します。
撃たれて息も絶え絶えのなか、猛は花に電話をかけます。覚醒剤の隠し場所を教え、「それを持って今すぐ逃げろ」と言います。
状況が分かっていない花でしたが、言われるまま探すと覚醒剤が見つかり、猛がそのせいでトラブルに巻き込まれたことを察して家を飛び出します。
彫り師の知り合いから、猛を殺したのは久住であると知った花は、彫り師の忠告も聞かず、久住に復讐しようと心に決めます。そんななか、花は幼馴染の誠に再会します。
花が暴力団に追われていることを知った誠は、花を匿い、花の復讐劇に巻き込まれていきます。
映画『Love song』の感想と評価
横浜ハードボイルドには“ラブが似合う”
元「AKB48」メンバーの増田有華をむかえ、横浜を舞台に繰り広げられるハードボイルドラブストーリー。
幼馴染である花と猛は、花がシンガーとして成功することを共に夢を見ていました。アメリカでレコーディングするために大金が必要になり、猛は暴力団の覚醒剤を盗んでしまいます。
そして暴力団によって殺されてしまった猛。そのことを知った花は、警察に届けることも、街を出ることもせず、復讐することを誓います。
暴力団の久住をはじめ、アウトローな男たちが登場しますが、復讐を誓い、銃を手に入れ「自分のケツは自分でふく」と言い放つ花も同様にアウトローな存在だと言えます。
本作は、復讐をベースに、切ない三角関係と、かつて3人で仲良く過ごし夢を見ていたあの頃を忘れきれずにいる青春の残り香が感じられます。
久住に追われている花と偶然再会した誠は、花を隠れ家のような場所に匿います。しかし、花はただ守られているだけの存在ではありません。
止められても復讐への意思は変わらず、危険を顧みず久住の居場所を探し、復讐の機会を狙います。そんな花を見ていられない誠でしたが、誠はうまく花に気持ちを伝えられないでいました。
その理由は誠が花と猛の元を去った理由に起因していました。猛も誠も花に思いを寄せていましたが、猛はその思いを花に伝え、花は猛と関係を持ちました。
その様子を見てしまった猛は、花が幸せならそれでいい、隣にいるのが自分ではなくてもいいと2人の元を去ったのです。花への思いもありましたが、誠にとって猛もかわいい弟分のような存在だったのかもしれません。
増田有華の魅力と“ラブソングが濃い”
一方で、花への思いから2人のそばにいることが辛かったということもあったでしょう。そのような複雑な思いから、再会した花に対してもどこか突き放すような冷たい言い方をしてしまいます。
そんな誠に花は、誠のことが好きだったからこそ女として意識して欲しくて猛と関係を持ったことを話します。そのまま2人は今まで空白の時間を埋めるかのように体を重ねます。
誠は今度こそ花のそばにいる、絶対守ると誓います。そんな花と猛に対し、暴力団の久住は花と猛の夢を馬鹿にし、誠のことも見下します。
花は、猛が信じた夢を守るためにもと復讐への気持ちを強めますが、相手は暴力団です。そう簡単に復讐できる相手ではありません。2人の身にも死の危険が迫っていました。
渋いハードボイルドな世界観と夢を信じ共に田舎から出てきた3人の純粋さ、そして切ない三角関係がエモーショナルな情感を引き立てます。
また、暴力団相手にもひるまず復讐を誓う、芯のあるヒロインを演じた増田有華も印象的です。シンガーという役どころからジャズからラブソングまで歌を披露する場面もあり、AKBのファンにとっても嬉しい場面でしょう。
まとめ
本作では、シンガーとして成功する夢を抱く花と猛、そして2人の元を去ったけれど、2人のことを常に気にかけていた誠の3人の関係性が印象的ですが、暴力団の久住も非常に魅力的な登場人物と言えます。
久住は、暴力団の上司に田舎から出てきたことで馬鹿にされ、見下されています。屈辱的な思いも幾度もし、最後は怒りのまま上司に刃向かう姿が描かれています。
その姿は下剋上であるとともに、久住なりの復讐とも言えるのかもしれません。そのような久住の姿から、久住が花や猛に対して馬鹿にするような態度をするのは、否定された自分と違い、夢を信じ続けているからなのかもしれません。
久住は、花と猛に対して羨ましいという思いすら抱いていたのかもしれません。
最後に花がバーでジャズを歌う場面が流れ、そこに久住もやってきますが、その久住はかつての久住の姿とは違っています。それは花が夢見た世界なのか、現実の世界なのか曖昧な描かれ方をしています。
誠は今度こそともに生きていこうと花に言いますが、そんな誠も久住に撃たれてしまいます。切実な思いが実らない予感を感じさせるからこそ、ラストに向かって切ない情感が引き立つのです。
冒頭で花が作詞していたラブソングがラスト花によって歌われ、歌詞の内容が映画とリンクし、観客の胸に強く突き刺さります。