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Entry 2020/11/15
Update

Netflix映画『グレイス 消えゆく幸せ』ネタバレあらすじと感想評価。タイラーペリー監督が殺人事件の仕組まれた”罠”を描く

  • Writer :
  • からさわゆみこ

Netflixおすすめ映画『グレイス 消えゆく幸せ』を紹介!

身に覚えのない悪意によって、地位や名誉、財産までも奪われた中年女性が、茫然自失の末に殺人を犯します。その結果、彼女の自供だけで、事件が解決されようとしていました。

奪われた誇りを取り戻す意味、そのために必要な勇気を訴えかけるNetflix映画『グレイス ‐消えゆく幸せ‐』をご紹介します。

演出を担当したタイラー・ペリー監督は、舞台から映画まで自ら脚本を執筆し、監督を務めるなど多岐に渡って活躍し、主に黒人文化や黒人社会を作品で扱うことが多いことから、アメリカ黒人の女性層から高く支持されています。『グレイス ‐消えゆく幸せ‐』でも、世代や立場の異なる黒人女性2人の物語を描いています。

映画『グレイス -消えゆく幸せ-』の作品情報

Netflix『グレイス -消えゆく幸せ-』

【日本公開】
2020年(アメリカ映画)

【原題】
A Fall from Grace

【監督/脚本】
タイラー・ペリー

【キャスト】
クリスタル・フォックス、フィリシア・ラシャド、ブレシャ・ウェッブ、メカッド・ブルックス、シシリー・タイソン、タイラー・ペリー、エイドリアン・パスダー、マシュー・ロー、ドノヴァン・クリスティ・Jr、ウォルター・フォントルロイ、アンジェラ・マリー・リグスビー

【作品概要】
『グレイス -消えゆく幸せ-』が初の主演作となる、グレイス役のクリスタル・フォックスは女優兼歌手で、演劇女優として活動したのち、アカデミー賞を受賞した、コメディー映画『ドライビングミスデイジー』(1989)で、女優デビュー。

グレイスの親友サラ役のフィリシア・ラシャドは、多数のブロードウェイ作品に出演したのち、映画界へ進出しました。映画ロッキーシリーズの「クリード」で、主人公の母親役で知られています。クリスタル・フォックスとフィリシア・ラシャドは共に、タイラー・ペリー作品でいくつか起用されており、本作では主要な人物として登場。また、監督自身も弁護士事務所の上司、ローリー・ガラックス役で、嫌味な役どころを好演。

映画『グレイス -消えゆく幸せ-』のあらすじとネタバレ

バージニア州の平穏で小さな街。何もかもを失い絶望に打ちひしがれた老女が、2階の屋根から身投げをしようとし、警官からとどまるよう説得されています。

老女は「私は何てバカだったの。失ってしまった、何もかも」と、つぶやきながら説得にも耳を傾けず、そのまま身を投げてしまいます。

警官のジョーダンは、弁護士事務所で働く、妻のジャスミンと2人暮らしです。ジョーダンと入れ替わって、ジャスミンが仕事で家を出ました。

職場に向かう途中で、カーラジオは、平穏な街で起きた“グレイス・ウォーター事件”と呼ばれる、妻のグレイスが夫のシャノンを殺害した凶悪殺人事件のニュースばかりを報じています。

ジャスミンの務める弁護士事務所は、グレイス・ウォーターの国選弁護士として指名を受けました。

弁護士と言っても、グレイスは取り調べに対して、既に犯行を自供し、証拠も十分ということで、裁判を起こさない代わりに、減刑を求める“司法取引”に応じさせる手続きをするだけでした。

ジャスミンは上司のローリーから、グレイスの担当するように命ぜられますが、凶悪事件を扱ったことのないジャスミンは尻込みをします。

裁判沙汰にしたくないローリーは、「司法取引の書類を作成するのは得意だろ?」と、四の五の言わずとりかかれと言い放ちます。

同僚からは重大事件を任されたジャスミンを祝福します。「重大事件だけど、あなたは州検察からの印象がいいし、有利に働くわ」と、楽観視しています。

ジャスミンは収監されているグレイスを面談するため、拘置所に出向きます。しかし、彼女に関する資料を見て、腑に落ちないことが出てきます。

グレイスは元銀行員で、交通違反すら1つもない善良な市民で殺人とは無縁に思えたからです。

若い夫と2人で、幸せそうな笑顔で写る写真を見ていましたが、取調室に来たグレイスの姿にはその面影がまったくありません。

グレイスは罪を認めているため、弁護士は不要と言っていましたが、「司法取引の条件を仮釈放付きの懲役15年で出す」と言うと、「刑務所はこの街の近くにしてほしい。息子や孫といつでも会えるように」と、希望を出します。

その晩、初の重大事件を担当するジャスミンを祝福しに、同僚2人が家を訪れます。そこでダニーは苦言を呈しました。

それはグレイスに関する人柄でした。社会的地位もあり、日曜学校で手作りクッキーをふるまう、善良で良識ある人なのに、自白だけで事実を見逃してはいないか?と、いうことです。

ジャスミンは、本人の自白と複数の状況証拠があることで、逆に法廷で闘う方が高リスクになると考えます。その上、彼女には殺人事件を戦う裁判に全く自信がありません。

ダニーは「人を刑務所に送る責任は重い、君が目指すところはどこなのか?」と、言い帰っていきました。

ジャスミンは今の弁護士事務所に入れた時は、宝くじにでも当たったような喜びだったのに、詐欺師や窃盗をする最低とも言える人間を扱い、そんな彼らを弁護することに嫌気がしているといいます。

翌日、弁護士事務所にグレイスの息子マルコムが来訪し、母親の無実を訴えます。母からは面会を拒絶されて会えないと言います。

また、検察に出した司法取引条件の仮釈放有、懲役15年は却下され、仮釈放のない終身刑が妥当だと言い渡されます。

ジャスミンは入る刑務所はせめて、ミルストーン刑務所にしてほしいと訴えるのがやっとでした。

ジャスミンはグレイスに現状を伝えます。グレイスは「それが限界なの?」と聞くと、ジャスミンは裁判を起こせば、検察は死刑を求刑するだろうと言います。

グレイスは諦め取引に応じると告げると、そのまま絶望でむせび泣きます。その姿をジャスミンは、何度も振り返りながら、取調室を出て行きました。

グレイスの姿が頭に残ったジャスミンは、翌日彼女と親しかった友人のサラに、アポイントをとって会いに行きます。

ジャスミンはサラの家まで来ると部屋の窓から、外を見ていた老女を見ますが、彼女はすぐにカーテンを閉めてしまいます。サラは独り身の老人に部屋を貸して生活していました。

事件前のグレイスの様子について、サラは離婚したけれども、家も仕事も持ち暮し向きは順調に見えた。しかし、将来については悲観的だったといいます。

それは息子のマルコムが結婚した頃からといいます。マルコムの結婚式は元夫の家で行われ、参列したグレイスは元夫が、娘ほども年の若い女性と再婚し、人生を満喫しているのを知ります。

そのことで人生に不公平を感じ、人生をやり直し誰かを愛し愛されたいと、話すようになったと言います。

出会い系のパーティーや社交場ではなく、日常の生活の中で昔ならではの出会いを望むグレイスに、サラはいつも輝いているには、もっと外に出るべきとアドバイスしていました。

サラはグレイスがシャノンと出会うきっかけとなった、“写真展”のチラシをジャスミンに渡しました。

ジャスミンは自宅に帰り、事件現場の写真を確認します。すると不信に思う点がみつかりました。検分の説明と出血の仕方が不自然なことです。

そのことをローリーに伝えます。しかし、専門機関を使う予算はないと取り合ってもらえません。ジャスミンは裁判を起こすと言いますが、ローリーは司法処理の書類を作成し、さっさと終わらせろと一喝しました。

ジャスミンは司法取引の書類をもって、再び拘置所にいきます。サインするようペンを渡す時に、サラからもらった写真展のチラシも一緒にだすと、グレイスの様子が一変しました。

そしてジャスミンは、グレイスに夫との間に何があったのか、詳しく話しをするよう聞きはじめ、グレイスも記憶を遡りゆっくり語り始めます。

以下、『グレイス -消えゆく幸せ-』ネタバレ・結末の記載がございます。『グレイス -消えゆく幸せ-』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

Netflix『グレイス -消えゆく幸せ-』

グレイスはサラからの誘いで、チラシにあった写真展へ出かけます。サラは所用ができて行けなくなったと連絡があり、グレイスは1人で出かけました。

グレイスが作品を見ていると、1人の若い黒人男性がグレイスに声をかけます。

グレイスは展示してある写真を見て、“才能ある女性”が撮ったものと直感で言います。写真家の名前が“シェイン”か“シャノン”という女性名で、写真の陰影や撮る角度が、女性目線だという理由です。

グレイスは写真の場所はエチオピアの奥地で、土地勘のある人が撮ったものと予想します。すると、男性は「エチオピアは詳しいの?」聞きます。グレイスはアフリカの歴史が好きで、一度行ってみたいと答えます。

男性は「人生観が変わる」とすすめるとグレイスは「行ったのね!ラッキーだわ!」と驚き、男性は「君に出会えたこともラッキーだ」と言います。

グレイスはハッとしながらも、男性の胸元のウゾのネックレスをみつけ褒めると、アフリカで買った一点物だと言いました。男性は展覧会の主催者に、声をかけられ離れます。

彼が写真展の写真を撮った“シャノン”でした。シャノンは展覧会の収益のほとんどを、チャリティーに寄付するとまでいう好青年でした。

グレイスは写真家を女性だろうと言った手前、話していた相手がシャノンだと知って、そっと会場を後にしました。

次の日、グレイスがオフィスに行くと、展覧会で観た写真のパネルと一輪のバラ、そして“今度、食事でもどう?”というメモが届いていました。

男性から口説かれるのは25年ぶりだと、グレイスはときめき有頂天になります。しかし、その反面シャノンには“何か目的がある”と、疑いもしました。

才能ある若いアーティストが、平凡でしかも歳の離れた女を口説くには、何か裏があると思うのが自然です。グレイスは警戒しながらも、ワクワクする気持ちが抑えられません。

グレイスは事の詳細をサラに話し、どうするべきかを相談しました。サラはもちろん電話するように後押しします。

グレイスは軽く思われないよう、1日おいてからシャノンへ電話します。“プレゼントのお礼”のつもりで電話をしたというと、お礼なら直接言って欲しいと、シャノンはグレイスを“昔ながらのダイナー”での食事に誘いました。

初デートは気の合う話で盛り上がり、時間も忘れるほど。けれどもグレイスの警戒心は固く、会話やデートを重ねても常に慎重でした。

それでもシャノンはグレイスに対してとても紳士的で、強引な行動はしません。徐々に彼女の中に彼に対する警戒心は解け、シャノンに夢中になっていきます。

そして、ある晩のデートでシャノンは、グレイスにサプライズを仕掛けます。蛍が現れる森に連れて行き、幻想的な雰囲気の中、彼はグレイスにプロポーズしました。

ロマンチストなグレイスは、この演出に感動しプロポーズを受け、完全にシャノンを信頼し、心身共に受け入れます。

ジャスミンはさらに踏み込んで、その後に何がおこったのか聞き出そうとします。するとグレイスは「ダニエル・ミッチェルを知っているでしょう?この刑務所で死んだ。あなたが担当した受刑者」と、聞きます。

さらにジャスミンに対して受刑者の間では、“裁判で闘ったことのない、一番使えないやつを送り込んできた”、そんな風に言われていると話します。

「勝とうともせず取引を成立させるだけ・・・私にとっては都合がいいけど」と、グレイスは諦めたように、書類にサインをしそれ以上は話しませんでした。

ジャスミンはグレイスに言われたことは正論で、弁護士である自信を喪失してしまいました。それでもグレイスには、もっと深い闇と事情がありそうだと気づいています。

ジャスミンは再びグレイスに面会し、一生刑務所にいたければ、書類を検察に提出するだけと前置きし、「今までの犯罪者とは違う。心の底から信じられる。あなたは無実よ。」そして、最善を尽くして戦いたいとグレイスにいいます。

グレイスはシャノンと結婚をして、彼の紳士的な優しさに、目が眩んでいったと話します。時に仕事中のオフィスに花束を持って訪れ、写真を撮ったりするサプライズも新鮮で幸せに感じました。

しかし、そんな幸せな日々も短く突然、何倍もの不幸がグレイスを襲います。ある晩、目が覚めるとシャノンがベッドにおらず、階下からシャノンが誰かと会話する声が聞こえます。

「誰と話しているの?」と声をかけると、「僕も早く会いたい・・・また、明日電話する」と、いい電話を切り、“探られること”と、“質問されること”の2つが嫌いだとグレイスに言い、寝室にもどります。

翌日、グレイスは職場からサラに、“他に女がいるのでは?”と相談しますが、サラは「男ならよくあることよ」と言いました。

そんな通話中、グレイスのオフィスを怪訝そうに覗きながら、会社の幹部役員が通りすぎ、グレイスは上司に会議室へ来るよう呼ばれます。

上司はグレイスの部署を内部監査したところ、顧客の口座から37万9000ドル消えていて、それがグレイスのパソコンから、IDとパスワードが使用されて行われたと言います。

グレイスにとっては身に覚えのない、青天の霹靂(へきれき)のような内容でした。しかし、反論する猶予もなく即日解雇を言い渡され、オフィスから追い出されます。

グレイスはサラを自宅に呼んで、事の詳細を話します。そこへシャノンが帰宅し、グレイスは、「何度も電話したけど出なかったけど、女といたの!?」と問い詰めました。

シャノンは2人きりで話したいと言い、サラはどんな場合もグレイスの味方と言って家を出ます。シャノンは数枚の写真をグレイスに出して見せました。

それは小児癌で入院している子供たちに、蛍を見せに行った時の写真でした。電話の相手も病棟で働く60代の看護師長だったと説明します。

グレイスは謝罪し、自分の身におきたことも説明します。シャノンは親身になって、引き出されたお金の流れや、個人情報漏洩の調査などを一緒にはじめます。

その中で銀行に調査を依頼しに行ったグレイスは、42日前に自宅を担保に37万5000ドルの融資をうけ、その返済が滞っていると言われます。

その貸付にも身に覚えのないグレイスは、銀行で訴えると保証人は、“フリンチ公証人”だったと言われ、その所在地を訪れると公証役場はなく、廃虚となった家で、ポストには、“A・マッカーシー”という宛名の郵便物があり、別人宅の住所でした。

再び銀行へ行き、42日前の融資をうけに来た人物を特定するため、監視カメラの録画を観ます。そこにはシャノンの姿が映っていました。

全てはシャノンの仕業と知り、グレイスは再び彼を問い詰めますが、怒らせると危ない組織からの借金があって、返済しないとならなかったと言い訳します。

グレイスは銀行の顧客口座からお金を盗んだと責め、全部返すよう訴えると、シャノンは州法律を持ち出し、妻の財産は夫の物だと逆切れして開き直り、グレイスの家に居座ります。

警察に訴えても民事は弁護士に相談するよう促され、サラと弁護士事務所に行くと裁判費用に1万ドルかかる上、裁判で決着するのに2年はかかると言われます。

費用の面でも時間の面でも、グレイスは切羽詰まっていきました。その上、シャノンは彼女が留守の家に女を連れ込み、追い打ちをかけました。

そして、悪びれることなくグレイスくらいの年齢で独り身は、寂しくて隙があって脆くて、騙すのは簡単だったと告白しました。

更に「グレイスのことは好きだけど、君が僕を愛するようには、僕は君を愛せない」と、言ったことで、グレイスをつなぎとめていた理性や自尊心が全て崩れ去り、暴挙へと動かしてしまいました。

バットでシャノンの頭部を何度も殴打し、彼を引きずり地下室へ落とし、グレイスは車であてもなく走り続け、サラに「彼を殺して、地下室へ落とした」と連絡します。

ジャスミンは「殺した」とサラに言ってしまったことを懸念します。しかし、サラは地下室に遺体はなかったと、グレイスに連絡しました。

ジャスミンは生きているということ?と聞きますが、確かに殺したが“消えていた”と、“遺体”はどこなのか聞いても、彼女は分からないと言ったまま、時間切れとなりました。

ジャスミンはサラのところへ事情を聞きに行きます。サラは確かにグレイスの家に行ったが入れ違いで、息子のマルコムが車で去っていくのを見かけます。

そして、地下室を確認したところ遺体はなかったと話し、遺体はマルコムが持ち去ったか、茫然自失のグレイスがトランクで運んだのだろうと言います。

サラは涙ながらにグレイスを案じ、その話を聞いたジャスミンは、グレイスはサラとマルコムをかばうために、嘘の供述をしたと考えました。

ジャスミンは裁判に挑むと決め、ドニーとアリスに手伝いを頼み、ローリーに直談判しに行きますが、却下しローリー自らが書類をもって検察に行くと言います。

先回りしたジャスミンはグレイスに、裁判で戦うと言って欲しいと説得し、その熱意にグレイスも裁判に臨む決心をしました。

シャノンの犯罪歴をジョーダンに調べさせましたが、何もでてきません。偽名のためだと思われ、写真展のチラシから指紋が採取できないか頼みます。

ジャスミンは証人としてサラを召喚すると提案しますが、ドニーは危険な賭けだといいます。彼女は“親友”の証言は印象をよくするためと決めます。

裁判は始まりますが、状況は検察側が優勢で、ジャスミンに焦りが出始めます。グレイスにサラを証人に出したいというと、グレイスは親友を巻き込みたくないと反対します。

それでもジャスミンはサラを証人として尋問します。最初は順調な証言が続きましたが、検察側の尋問で、サラはグレイスとの通話記録の件で追求され、“偽証すると訴えられる”と攻め込まれ、夫を殺したと連絡があったと証言してしまいました。

裁判はジャスミンの初歩的なミスで窮地に追い込まれた上に、法廷上のルールを無視したため法廷侮辱罪で、拘置所に留置されてしまいました。

ローリーは反抗的なジャスミンに、時に法律は不公平で、それを正すのが弁護士の仕事なのに、準備不足で法廷に臨んだあげく、最終陳述はドリーがすることになった。と、言います。

陪審員の判定は有罪と出てグレイスは敗訴します。法廷を後にしようとグレイスがサラに声をかけた時、彼女はサラの胸元のシャノンと同じの、ウゾの首飾りをしているのを見ました。

グレイスはシャノンと出会うまでの記憶を遡り、サラが写真展に誘ったこと、シャノンに会うことを後押しし、シャノンがパソコンの画面を写真で撮ったことなどを思い出します。

テレビではグレイスの有罪を報道し、ジャスミンは落ち込みます。そして、ジョーダンに送られサラに会いに行きます。

サラの家まで来ると、窓から外を覗いていた老女が徘徊していて、ジャスミンは家まで連れ帰りますが、老女は自分の家は、シャノンが公証人の家と偽った住所を言います。

そして、老女は「私はここで死にたくない。グロリアやブレンダ、シェインのように・・・シェインは自分の家の屋根から飛び降りたのよ。彼女は写真家だった」と話します。

ジャスミンはジョーダンが話していた、老女の自殺の話しを思い出し、シャノンが撮ったという写真の写メを老女に見せ、シャノンとは“シェイン”のことだと気づきます。

老女は自分だけでも逃げ出して、家に閉じ込められた人を助けようとしていました。部屋の奥から物音がして、ジャスミンはようすを見に入っていきます。

その頃、ジョーダンは、サラが変装を繰り返し詐欺の容疑で指名手配されていることを知り、サラの家に向かいます。

ジャスミンが部屋の奥に入って行き、鎖につながれた大勢の女性を発見しますが、背後から誰かに襲われ拘束されます。そこにサラが帰宅し、シャノンと共に共謀していたことが明らかとなります。

ジョーダンはサラの家に行き、サラを拘束しますが逃げられてしまいます。そして、ジャスミンを捜索し女性たちも一緒に発見した直後、ジョーダンはシャノンに襲われて攻防をすることに。

そして、拘束を解いたジャスミンの反撃と、駆けつけた警官隊によって保護され、事件は解決へと向かいました。

サラとシャノンは親子で25年間に渡り、高齢者や中年の女性の財産や年金を狙った、詐欺を繰り返していたのです。

グレイスは逆転無罪となり釈放され、ジャスミンは重大事件の裁判で、初の勝訴を手に入れました。グレイスは待ち構えた取材に「まだ、決着していない」と言い残します。

一方、逃亡したサラは再び偽名を使い変装をして、お金持ちの老人を狙い動き出していました。

映画『グレイス -消えゆく幸せ-』の感想と評価

Netflix『グレイス -消えゆく幸せ-』

Netflix映画『グレイス -消えゆく幸せ-』は、若い弁護士の成長を描くと共に、心の弱さから、自滅させていく悪質な詐欺はいるのだと教えています

身近なところでも高齢者を狙った、架空請求やオレオレ詐欺、還付金詐欺など手口も巧妙になり、被害も減っているとはいえない現状があります。そういうニュースを見るたびに、なぜ騙されてしまうのだろうと思いますが、詐欺というのは人の弱みにつけ入り、用意周到にターゲットを狙ってきます。

疑心暗鬼になりすぎても、世知辛さを感じぜざるを得ませんが、グレイスのように慎重で冷静さをもってしても、詐欺というのは上をいく場合もあると、注意喚起しているのでしょう。

詐欺師は用意周到でマメらしい

本作に出てくるシャノン(モーリス)とサラ(ベティ)親子の詐欺行為は、非情に綿密で巧妙かつ調査や根回しが用意周到です。それを示すのが、25年間逃亡し続け、詐欺で生計を立てているということで、実におぞましいです。

冷静に考えてみれば、自分より年上の親友なら、そんなに簡単に「若い男の誘いに応じろ」などアドバイスせず、「大丈夫なの?騙されているんじゃない?」というのが自然です。

グレイスがサラを信じ切っていた面もありますが、彼女が自分のキャリアや英才だけを自負せず、外に向けた社交性があれば、もう少し人を見る目を養えたでしょう。人の意見に左右され己を見失った時、脆くも騙されてしまったのです。

アメリカの高齢者を狙った詐欺事件

アメリカでも電話で高額宝くじに当選し、投資チャンスが得られ200ドルが、2000ドルにできるというアプローチで、次々に投資をさせる手口があったと報道がありました。

また、老人の「後見人」を名乗る人物によって、家や家財などの財産を奪い取っていくという、詐欺も増えています。それは、アメリカには高齢になったとき、健康や財産管理をしてくれる、“後見人制度”を利用する場合があるという事情も深く関わっています。

騙された人の特徴は認知症が発症している場合が多いといわれ、判断力が低下しているところに、行政がグルになっている悪質な場合もあり、映画さながらの詐欺事件から、告発者も増加していると言われています。

まとめ


Netflix『グレイス -消えゆく幸せ-』

Netflix映画『グレイス -消えゆく幸せ-』は、弁護士として華やかな活躍を夢みる若き女性が、重大犯罪の少ない平穏な街で詐欺や窃盗など、軽犯罪の事務処理しか担当させてもらえないジレンマと、重大事件を請け負うと決めた重圧の中での、キャリアと人間的成長を描いています。

夢に向かって努力して勉強し、そのチャンスを掴んだとしても、自分の描いていた世界と現実は違うことはあります。経験豊かな上司や先輩のアドバイスを聞かず、持論に執着したことで、自分だけではなく、仲間や職場をも窮地に追いやるという、失敗もしがちといえるでしょう。

本作は、経験や実績は自身を成長させて自信につなげますが、上司や仲間の協力なしには成し遂げられないことを伝えています。経験豊かな人間であったとしても、ふとした心の隙につけいる悪い人間はいるのだと、自分の肝に銘じさせた作品でした。


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