それはいつもと変わらぬフライトのはずでした。しかし、高度2万8000フィートに達した時、韓国・仁川発ハワイ行のKI501便の飛行機内に謎のウイルスがばら撒かれてしまいます。
どの空港も、バイオテロが発生した飛行機の着陸は許可しません。感染か墜落か、究極の選択を迫られる乗客・乗員たちと、人々を何としても救おうとする地上にいる警察や国土交通大臣たちによる奮闘の結末とは?
韓国・仁川(インチョン)空港。娘のスミンとハワイへと向かう飛行機恐怖症のパク・ジェヒョクは、空港で執拗に自分たちにつきまとう謎の若い男が、同じ便に搭乗したことを知って不安がよぎります。
離陸直後、パク・ジェヒョクは隣の席に座っていた乗客男性が見ていた動画を見て驚愕しました。飛行機でのバイオテロ(以後、飛行機テロと表記)の犯行予告動画に映る男が、空港で執拗につきまとっていた謎の若い男と同一人物だったからです。
パク・ジェヒョクの話に耳を疑う乗務員たち。さらにスミンから機内で再会した男に「ここにいる人たちは全員死ぬよ」と言われたことを聞き、乗務員の1人が男に身分証の提示を求めに行きます。
すると隣のデスクに座っていた同僚から、高級マンションに住む小学生から、「飛行機テロの犯行予告動画をアップした男は近所のおじさんだ」という通報があったと知らされます。
ク・イノは真偽を確かめるべく、自身が率いる捜査チームとともに、通報があった高級マンションへ急行。通報した小学生たちに直接話を聞くと、男は他の住民の家に勝手にゴミを捨てて近隣トラブルを起こしており、その家のおばあさんを殺したという噂があるというのです。
(C)2022 showbox and MAGNUM9 ALL RIGHTS RESERVED.
しかし、時すでに遅し。離陸後まもなく、ジェヒョク親子とリュ・ジンソクらがいるエコノミークラスのトイレに駆け込んだ40代の乗客男性が、喀血した後に死亡。パク・ジェヒョクはすぐにリュ・ジンソクによる犯行だと気づき、人混みをかき分けて彼を問い詰めます。
パク・ジェヒョクと揉み合いになったリュ・ジンソクは着ていた服がはだけてしまい、右のワキの下にある縫合痕を晒してしまいました。そこへ、KI501便に飛行機テロを目論むリュ・ジンソクが搭乗しているとの知らせを受けた副操縦士のヒョンスが現れ、彼を尋問します。
リュ・ジンソクは「英語で話せば追及をかわすことができる」と考えましたが、すぐに韓国語を話せることがバレてしまい、手に検査キットを持って逃走を図りました。
しかし、「手に何か持ってる」というパク・ジェヒョクの叫びを聞いた複数の乗客男性により、リュ・ジンソクは抵抗むなしく取り押さえられ、別室に監禁されました。
ホッとしたのも束の間、KI501便の空気浄化システムが20年前の古い方式のせいで、機内の空気が再循環します。これにより2人の機長と、ウイルスがばら撒かれたトイレを調べに行った乗務員、乗客たちが次々と体調不良を訴えていきました。
一方、飛行機テロの知らせを受けた韓国政府は、大統領府危機管理センターと航空テロ対策本部をスカイコリアン航空に設置しました。
国土交通省のキム・スッキ大臣と大統領府危機管理センターのパク・テスが合流したのち、ク・イノたちは作戦会議を開きました。
リュ・ジンソクの経歴を調べた結果、彼は多国籍製薬会社「ブリコム社」で微生物学の専任研究員として働いていましたが、4年前に退職していたことが判明。さらに彼の母親は有名な微生物学者でしたが、今年2月に病死していました。
また機内で死亡した乗客男性と、リュ・ジンソクの家で発見された遺体にはある共通点がありました。それは喀血後に死亡していることと、全身に水疱があることです。そしてウイルスは人への感染力が強く、また自然発生的な感染とは異なるため、致命的なものであることも判明します。
リュ・ジンソクがウイルス殺人を行ったのも、ウイルスを使って飛行機テロを起こすのも、人への殺傷が目的だと推測したク・イノは、地上にもばら撒くのではないかと恐れ、本人への交渉を求めました。
KI501便に衛星電話をかけ、パク・テスがヒョンス副操縦士を介してリュ・ジンソクに犯行動機と要求は何かと質問します。
これに対しリュ・ジンソクは、犯行動機は「逃げ場のない飛行機に閉じ込められ、実験用のネズミみたいにじたばたともがきながら死んでいく様子が面白いから」と語りました。そしてリュ・ジンソクの要求はただ一つ、「俺と一緒に、この飛行機に乗る人全員が死ぬこと」でした。
治療薬の有無に関しては黙秘を貫いたリュ・ジンソクは、喀血後に死亡しました。その直後、飛行機が激しく揺れ、そのまま急降下していきました。
2人の機長が体調不良で倒れ、ヒョンス副操縦士も乗務員と一緒にウイルスがばら撒かれたトイレを見に行ったため、今コックピットにいるのはパイロット1人だけです。
ですが、そのパイロットもウイルスに感染していたことで、やがて喀血後に死亡。操縦桿に彼の体がのしかかっているため、機体が急降下しているのです。
パク・ジェヒョクと機長のチャンが急いでコックピットに駆け込み、操縦桿を引っ張り上げたおかげで、間一髪のところで墜落は免れました。その直後、機長のウォンとリュ・ジンソクがウイルス感染によって死亡したことが発覚しました。
機内の様子を撮影した乗客がネット上に動画をアップしたことにより、マスコミはこぞってこの飛行機テロのことを報じました。
さらにスカイコリアン航空にマスコミが殺到。やむを得ずキム大臣は、マスコミとテレビを見ている国民に向けて現時点で把握している情報を全て明かし「韓国政府はアメリカと緊密に協力し、KI501便が一刻も早く着陸できるよう、全力を尽くしています」と言いました。
このニュース報道を受け、韓国政府は航空政策室長とキム大臣、保健福祉省大臣、疫病管理庁長官による対応チームを結成。アメリカとの交渉を開始するべく、彼女たちを渡米させました。
一方KI501便の機内では、乗客からのリクエストを受け、感染者または医者は機体後方へ、それ以外の人は前方へ移動するよう、乗務員たちが必死に誘導していました。
そんな中、1人の乗客男性が騒ぎを起こします。アトピー持ちのスミンの腕にある湿疹を、ウイルスに感染したことによる水疱ではないかと執拗に絡んだり、他の若い女性客にも「その腕の赤いのは水疱ではないか」「感染者だ」と必要以上に騒いだりしたのです。
その乗客男性のせいで、スミンは前方に移動することができず、父親に泣きながら後ろへ行こうと促します。またスミン同様に「感染者だ」と非難された若い女性客とその仲間、周囲にいた乗客女性は、乗客男性に白い目を向けながらも後方へ移動しました。
飛行機が離陸しようとした瞬間、キム大臣ら対応チームのもとに韓国の国家意思を決定する代表的なブレーンである国家行政機関「国家安全保障会議(NSC)」から、「真相が解明されるまでアメリカはKI501便の着陸を断固拒否する」とホワイトハウスから通達があったと知らされます。
(C)2022 showbox and MAGNUM9 ALL RIGHTS RESERVED.
同時刻。KI501便を1人で操縦していたヒョンス副操縦士の体に、水疱ができ始めていました。そんな彼に鞭打つかのように、アメリカ・サンフランシスコの管制塔から「テロが起きた機体は着陸を許可できない。仁川空港へ引き返せ」との連絡が入ります。
ヒョンス副操縦士は葛藤の末、ハワイに向けていた航路を変更。仁川空港に引き返すことにした直後、次々と乗客乗員が原因不明で死亡し、機内は恐怖とパニックの渦に巻き込まれていきました。
ヒョンス副操縦士は乗客乗員の命を守るべく奮闘するも、飛行のタイムリミットが迫ってきます。そこでヒョンス副操縦士は、かつてパイロットとして有名だった元機長のパク・ジェヒョクに操縦を頼むことにしました。
ですが、2人には確執がありました。
パク・ジェヒョクの現役時代、悪天候に見舞われたフライトがありました。飛行機のエンジンは故障し出火してしまい、緊急着陸をめぐってパク・ジェヒョクは管制塔と意見が分かれました。
パク・ジェヒョクは管制塔からの指示を無視して緊急着陸を試みるも、機体は全焼。乗客は全員無事でしたが、後方で乗客を誘導していた乗務員が2人焼死してしまいました。
それは、乗客が荷物をとろうとして非常口が塞がれていたのが原因でした。しかしながら、焼死した乗務員の1人は、ヒョンス副操縦士の妻。後悔に苛まれたパク・ジェヒョクはその日以来、飛行機に乗ると息が詰まって操縦できなくなってしまい、パイロットを辞職しました。
そんな過去を持つパク・ジェヒョクが、ハワイに向かう理由は2つあります。
1つ目は、アトピー持ちなことを友だちにからかわれ苦しみ、両親の離婚後に無口になってしまったスミンを空気のいいところに住まわせたいと思ったから。2つ目は、ハワイでパク・ジェヒョンの知り合いが軽飛行機の事業をしており、理論の授業の講師をやらないかと誘われていたからです。
一方ク・イノたちは、事件の捜査協力に一切応じようとしないブリコム社に乗り込もうとするも、まだ確証がないため必要な捜査令状を出すことができず、門前払いされてしまいます。
捜査令状が出るのを待っていたク・イノのもとに、ブリコム社の女性社員から情報提供の電話がかかってきました。その女性社員の話によれば、ブリコム社の社員の1人オ・ソンフンがリュ・ジンソクと共謀しており、ニュースを見るなり逃げるように帰宅したといいます。
オ・ソンフンの自宅の住所を聞き出したク・イノたちは、すぐさまオ・ソンフンの家へと急行。窓から逃走したオ・ソンフンを追跡します。
追走劇の末、ク・イノたちはようやくオ・ソンフンを捕まえましたが、彼が突然リュ・ジンソクの共犯者ではないと主張してきました。
話を詳しく聞くと、数年前に中東から実験用のウイルスが届くも、それは感染力が強く危険なウイルスの変異種「SC-1」だったことが判明。
SC-1の管理者は、リュ・ジンソクでした。リュ・ジンソクの故意によって3人の研究員がウイルスに感染。2人が死亡、1人は何とか生き延びたといいます。
この唯一の生存者が警察に通報したことで、3人の研究員がウイルスに感染したことを知ったブリコム社は、リュ・ジンソクの過失によるものとして処理して、彼を解雇して真実をもみ消しました。
解雇されたことに怒るリュ・ジンソクを可哀想だと思ったオ・ソンフンは、彼の「死んだ研究員たちの無念を晴らして復職したい」という嘘に騙され、SC-1のサンプルを送ってしまったのです。
唯一の生存者である女性研究員の話によると、リュ・ジンソクは教育ママである母親に抑圧されたことによるストレスが溜まると、動物を殺して喜びを感じていたといいます。彼女たちはこのことを会社に報告しましたが、それを逆恨みしたリュ・ジンソクによってウイルスに感染させられたのです。
女性研究員の証言と、リュ・ジンソクの家で発見された遺体から検出されたウイルスが、ブリコム社の実験用ウイルスと一致したことが決め手となり、ク・イノたちは再びブリコム社に乗り込み、彼らと口論を繰り広げます。
するとそこへ、パク・テスからの報告を受けたキム大臣が現れ、ブリコム社の社員たちに「抗ウイルス剤とワクチンを提供すれば情状酌量の余地がある。事実が知れたら倒産では済まない」と言いました。
この言葉を受け、ようやくブリコム社は「飛行機テロに使われたのは自社の実験用ウイルス」と認め、抗ウイルス剤とワクチンを無償で提供すると公式発表しました。これには仁川空港に駆けつけた搭乗客の家族も、KI501便の乗客乗員も絶望の中に希望を見出して歓喜しました。
ですがここまで、悪天候に備えて多めに燃料を入れておいたおかげで何とか持ちこたえられていましたが、とても韓国・ソウルの飛行場まで飛行を続けることはできません。しかもヒョンス副操縦士もパク・ジェショクも、このまま操縦できる体調ではありませんでした。
飛行を続けるタイムリミットが迫る中、ヒョンス副操縦士は「非常宣言」を布告し、日本・成田空港に緊急着陸しようとします。
「非常宣言」とは、飛行機が危機に直面し、通常の飛行が困難になったとき、パイロットが不時着を要請することです。非常宣言が布告された航空機には優先権が与えられ、他のどの航空機より先に着陸でき、いかなる命令を排除できるため、航空運航における戒厳令の布告に値します。
これを受け、韓国政府は日本政府に「すでに抗ウイルス剤およびワクチンを確保したから、着陸に協力してほしい」と要請しました。
対して日本政府は、「同一のウイルスではあるものの、最初のウイルスと比べて潜伏期間が極めて短いため、人為的なものであるか自然的なものであるかは別として、変異した可能性が高い」という厚生労働省の確認を受け、国民の生命と安全を保障するべく、KI501便の緊急着陸を断固として拒否しました。
しかし、ヒョンス副操縦士はこれ以上飛行を続けるのは限界だったため、成田空港の管制塔と航空自衛隊の戦闘機による度重なる警告を無視し、乗客の命を守るために成田空港への緊急着陸を試みます。
ところが、ヒョンス副操縦士が倒れたことで、機体はついに操縦不能となり、地上へと急降下していきます。パク・ジェヒョクは操縦桿を握ってなんとか機体を安定させ、成田空港への緊急着陸を諦め、韓国に向けて回航しました。
その直後、キム大臣は韓国国内で交渉を開始。しかしパク・テスとNSCは、変異したウイルスに抗ウイルス剤およびワクチンが効かず、韓国に着陸した場合に起こる危機を考えてKI501便の着陸に難色を示します。
この会話を聞いていたク・イノは、無謀な作戦を思いつきました。なんと自らウイルスを投与し、抗ウイルス剤の実験体になるというのです。
韓国の領空を飛行するKI501便に大韓民国の空軍の戦闘機が護衛につきました。ですがソウル飛行場を含む韓国国内の全空港に、KI501便の着陸に反対するデモ隊が押し寄せたため、肝心の着陸する場所がありません。
韓国市民の意見が二分化する中、着陸に反対する韓国市民からいわれのない誹謗中傷をネットやニュースを通じて受けたKI501便の乗客乗員の間でも意見が2つに分かれます。
このまま韓国国内に着陸して、抗ウイルス剤およびワクチンを使って生き延びるか。それとも、家族や着陸に賛成してくれる他の市民のことを考えて着陸せずにこのまま機内で死ぬべきかと。
葛藤の末、パク・ジェヒョクたちは「降りない」と決断しました。なぜなら110人の乗客乗員全員が、ウイルスに感染してしまったからです。
パク・ジェヒョクは地上にいる全ての韓国市民に向けて、その旨を音声メッセージで伝えました。そしてパク・ジェヒョクたち乗客乗員全員が、地上にいる家族に向けて涙を流しながら「愛している」と言い、別れを告げていきます。
誰もが悲嘆にくれたその瞬間、心肺停止状態だったク・イノが蘇生し、抗ウイルス剤が有効であることが証明されました。
キム大臣からの知らせを受け、パク・テスたち大統領府危機管理センターと航空テロ対策本部は、急いでKI501便に交信を試みるも、交信が絶たれていて通じません。
そこでパク・テスたちは、搭乗客の家族に協力を仰ぎ、KI501便の乗客乗員に何とかして「抗ウイルス剤の効果が確認されたから戻ってこい」と伝えようとします。家族からのメッセージがパク・ジェヒョクたちに無事届き、KI501便は韓国に戻りました。
パク・ジェヒョクと彼をアシストする航空テロ対策本部が話し合った結果、着陸場所は彼が訓練で着陸したことがあるソンム飛行場に決定。しかしその途中で電源が消えてしまい、レーダーからも消失してしまいます。
そんな状況の中、パク・ジェヒョクはスピードを落とし、高度を下げるために方向転換を繰り返して、1本しかないソンム飛行場の滑走路への着陸を試みました。
後日。KI501便は無事ソンム飛行場に降り立ち、パク・ジェヒョクたち110人の乗客乗員は抗ウイルス剤およびワクチンの投与による治療を受け、平和な日常を取り戻しました。
しかしク・イノは誤った量のウイルスを投与したのか、抗ウイルス剤の効果が出て以来は正常な行動ができず、自力で呼吸することができません。
その責任を問われたキム大臣は、国土交通大臣を辞職しました。ですが彼女の顔はとても晴れやかで、KI501便が無事着陸できたあの日の光景を思い出していました。
パク・ジェヒョクはスミンを連れて、同じ便に搭乗していた乗客乗員とその家族によるパーティーに参加し、ク・イノへの感謝を込めたまなざしで見つめました。ク・イノも言葉は話せないものの、自分の決断により人々が救われたことをとても喜んでいました。
リュ・ジンソクによってばら撒かれた致死率の高いウイルスが、彼と何の因果関係もない150人の乗客乗員に迫る恐怖と、度重なる墜落の恐怖に終始ハラハラドキドキさせられます。
それに加えて度重なる墜落の恐怖、ニュース報道を見た韓国市民による誹謗中傷の嵐によって、ウイルスに感染した乗客乗員とその家族が心身ともに追い詰められ絶望していく様は思わず目を背けたくなるほどつらいです。
4人は誰よりも乗客乗員の命を救うことを考え、奮闘したことによってKI501便は無事に着陸できましたし、110人全員が治療を受けて平和な日常を取り戻すことができたのだと思うと感涙します。
バイオテロ犯のリュ・ジンソクは、ただ無差別に150人の乗客乗員を殺すためにウイルスをばら撒いたのではなく、自分を抑圧してきた母が病死してアイデンティティを失ったからか、自らもウイルスに感染して自殺しようとしていました。