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Entry 2018/03/03
Update

映画『去年の冬、きみと別れ』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も【岩田剛典おすすめ代表作品】

  • Writer :
  • 村松健太郎

岩田剛典主演映画『去年の冬、きみと別れ』

映画『去年の冬、きみと別れ』は、『教団X』『悪と仮面のルール』などで知られる芥川賞作家の中村文則によるサスペンス小説の映画化です。

映像にするのは不可能と言われた原作を、大胆な構成を持って映像化することに成功しました。

出演はEXILE・三代目J Soul Brothersのメンバーで、映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』や「HIGH&LOW」シリーズなどで俳優としても活躍している岩田剛典。本作で謎を追うジャーナリストを好演しています。

映画『去年の冬、きみと別れ』の作品情報

【公開】
2018年(日本映画)

【原作】
中村文則

【監督】
瀧本智行

【キャスト】
岩田剛典、山本美月、斎藤工、浅見れいな、土村芳、北村一輝

【作品概要】
原作は芥川賞作家の中村文則が執筆したサスペンス小説。『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』などで知られ、俳優としても人気の高い、三代目J Soul Brothersの岩田剛典を主演に迎えて実写映画化。

耶雲の婚約者である百合子役に、映画『ピーチガール』の山本美月が演じ、事件の容疑者である木原坂役として、映画『昼顔』の斎藤工も共演を果たしました。

演出は映画『樹の海』『脳男』『グラスホッパー』で知られる瀧本智行監督が務め、脚本は映画『無限の住人』の大石哲也が担当しています。

主題歌はオリジナルボーカリストのLISAが復活したm-floの新曲「NEVER」。

映画『去年の冬、きみと別れ』のキャラクターと配役


(C)2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

耶雲恭介(岩田剛典)

結婚を前に大勝負を仕掛けようと、真実を追うフリーライター。

松田百合子(山本美月)

恭介の婚約者。結婚準備を前に心のすれ違いを感じています。

木原坂雄大(斎藤工)

カメラマン、目の前で盲目のモデルが焼死する事件を起こした過去を持っています。

木原坂朱里(浅見れいな)

雄大の姉。弟に対して過剰なほどの愛情を注ぎます。

吉岡亜希子(土村芳)

雄大のスタジオで焼死した盲目のモデル。

小林良樹(北村一輝)

記事企画を持ち込んできた恭介に対応する週刊誌編集者。

映画『去年の冬、きみと別れ』のあらすじとネタバレ


(C)2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

フリーのルポライターの恭介は、ある記事を週刊誌のベテラン編集員小林のもとに持ち込みます。

それは木原坂雄大というカメラマンが撮影中に火災を起こし、モデルをしていた盲目の女性・吉岡亜希子が命を落としたという事件の記事でした。

結婚を控え、自身の力を試したいと意気込む恭介ですが、この事件はカメラマン雄大の姉朱里の尽力もあって、雄大に執行猶予付きの判決が出て決着を迎えていたものでした。

しかし、恭介は殺意を否定した警察の判断を疑い、改めて過去から雄大の人生を追うことにします。

恭介に興味を持った雄大は、雄大のスタジオに自由に出入りができるようになり、距離を詰めていきます。

雄大に近づきすぎないようにと編集者の小林は警告しますが、恭介は取りつかれたように雄大を追います。

雄大と姉の朱里は幼いころ虐待を受けていた可能性があり、2人の父親は不審な死を遂げていました。

そして恭介は、幼い頃から木原坂姉弟は姉弟以上の深い繋がりを持っていたことを知ります。

姉弟による殺害の可能性も考えましたが、父親の死因となった傷は成人の身長でないと着かない傷であることが分かっていました。

2人の協力者の存在も考えられましたが、それに当てはまる人物はいませんでした。

雄大は皮肉なことに事件を機に注目を浴びることになり、改めて売れっ子カメラマンとなりました。本人はくだらない写真ばかりだと言いますが、朱里は褒め続けます。

恭介は、ある秘密の写真がありかもしれないとことを知ります。それはあのモデル焼死事件現場で雄大が撮ったという写真でした。

恭介は婚約者の百合子との結婚式を直前に控えていましたが、取材に没頭します。マリッジブルーともいえる状況になり、百合子とはすれ違いが続き、気まずい空気が流れます。

そこに雄大が現れます。雄大もまた恭介に興味を抱き、周辺をうろつくようになりました。そして雄大の興味の対象に百合子が入ってしまいます。

さらに恭介にも行き先を告げずに百合子は姿を消します。やがて恭介は百合子が雄大の事務所にいることを知りました。

雄大は本当の魅力を引き出せると言って、百合子を連れ出していたのです。

雄大は百合子の自由意志だと強調しますが、かつてのモデル焼死事件を重ねた恭介は小林とともに雄大のスタジオに向かいます。

しかし、すでにスタジオは炎に包まれていました。

そして椅子に拘束されて燃え盛る百合子の姿を狂喜に満ち溢れた顔でカメラに収め続ける雄大。

百合子は死に、雄大は殺人犯として逮捕されます。小林は途方に暮れ、朱里も行方不明のままです。

恭介は呆然としたまま抜け殻のようになってしまいました。

以下、『去年の冬、きみと別れ』ネタバレ・結末の記載がございます。『去年の冬、きみと別れ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

実は、恭介には全く別の目的がありました。耶雲恭介という名前も偽名で、最初に語っていたフリーライターとしてのキャリアも偽物でした。

彼は、最初の被害者吉岡亜希子の元恋人でした。過剰な思い込みから、亜希子と別れた直後、亜希子は雄大のモデルとして軟禁され焼死しました。

軟禁には朱里と小林も加わっていました。

小林は姉弟の父の教え子で、2人の異常な繋がりと朱里の魅力に取りつかれ父を刺し殺し、共犯関係となっていました。

また、大人の女性となった朱里の肉体にも溺れていました。恭介は亜希子の悲劇を追う中で朱里と出会い、真相を知ります。

そして、雄大を2人の人間を殺した、つまり死刑の可能性の出る状態にするために復讐計画を練りました。

百合子とは婚約者でもなんでもなく、ネット上で知り合い結婚前にすれ違う婚約者を演じていただけでした。

軟禁されるのも計算のうちで、一瞬のスキを狙って百合子は脱出。それを待っていた恭介は、百合子の代わりに先に軟禁していた朱里を座らせ、そして恭介は朱里に火をつけます。

亜希子の時の写真に失敗していた雄大は嬉々として写真に収めますが、それが強い絆で結ばれた姉であることは知りません。

そして現場にいた小林も、それが自分が溺れた朱里だとは夢にも思っていませんでした。

亜希子が死んだのは一年前の秋でしたが、真相を知ったその冬、恭介は復讐のために化け物になることを決め、今は亡きかつての恋人に別れの手紙を綴っています。

映画『去年の冬、きみと別れ』の感想と評価


(C)2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

大胆な構成による映画化

中村文則の執筆した小説『去年の冬、きみと別れ』(幻冬舎文庫)を読んでいる方はお分かりになるかと思いますが、これは1ページ目から順序良く映像化しては、元も子もない内容となっています。

それゆえに映像化不可能と言われていたのですが、これに対して章立ての構成をシャッフルして映画を成り立たせて見せました

参考映像:『ユージュアル・サスペクツ』(1995)

例えば、1995年にアメリカで製作され、脚本家のクリストファー・マッカリーがアカデミー脚本賞を受賞した、サスペンス映画『ユージュアル・サスペクツ』などの傑作サスペンスに近い作りに挑んでいます。

結果的に原作以上に岩田剛典が演じる耶雲恭介に感情移入しやすい作品になりました。

『銃』『銃2020』と中村文則作品は映像化が続いていますが、本作が最良の一作となったと言っていいでしょう。

まとめ


(C)2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

出演作を重ねるごとに演技力に磨きをかけているEXILE・三代目J Soul Brothersのメンバーの岩田剛典。

本作の役どころは、婚約者との結婚を間近に控える新進気鋭のルポライター耶雲恭介です。

暗い秘密を抱える影のある役を見事に演じ切り、その演技力を見せ付ける作品となりました。

恭介は、盲目の美女が巻き込まれた不可解な焼死事件と、容疑者の異端の天才写真家である木原坂雄大について調査をします。

真相を追い掛けるうちに、いつしか抜け出すことのできない深みに飲み込まれていくその様に注目です。

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