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Entry 2024/06/04
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『THE MOON』感想評価とあらすじ解説。韓国映画キャスト陣“ド・ギョンス×ソル・ギョング”で描く宇宙開発競争の現在

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『THE MOON』は2024年7月5日(金)より全国順次公開!

月面着陸を目指すべく打ち上げられた有人ロケット。

しかしその行く手には、思わぬ事故とともにさまざまな障壁が立ちはだかり……。

韓国が宇宙開発競争に挑むべく打ち上げたロケットに事故が発生、たった一人残された乗組員を救うべく奔走する人々の姿を描く映画『THE MOON』

宇宙という大舞台に挑む韓国の現在を考えさせられるなど、宇宙開発競争というテーマに対して非常に興味深いポイントを描いた作品をご紹介します。

映画『THE MOON』の作品情報


(C)2023 CJ ENM Co., Ltd., CJ ENM STUDIOS, BLAAD STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED

【日本公開】
2024年(韓国映画)

【原題】
더 문(英題:The Moon)

【監督】
キム・ヨンファ

【キャスト】
ソル・ギョング、ド・ギョンス、キム・ヒエ ほか

【作品概要】
月面着陸ミッションを背負った韓国の有人ロケットが事故に遭い、唯一生き残った一人の新人宇宙飛行士が月面探査ミッションに挑むべく奮闘する姿を描いたSFストーリー。

「神と共に」シリーズ(2017)、『ミスターGO!』(2013)などのキム・ヨンファ監督が本作を手がけました。

主人公ジェグク役は『ペパーミント・キャンディー』(1999)『罪深き少年たち』(2022)のソル・ギョング。ドラマ出演などでも知られる人気K-POPグループ「EXO」のド・ギョンスが、新人宇宙飛行士ソヌ役を務めます。ソルは本作が兵役後初の長編映画出演作となり、韓国国内では話題となりました。

映画『THE MOON』のあらすじ


(C)2023 CJ ENM Co., Ltd., CJ ENM STUDIOS, BLAAD STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED

月面の有人探査に挑むべく、3人の乗組員を乗せて韓国より宇宙に打ち上げられた有人ロケット「ウリ号」。しかしロケットは月周回軌道への進入を前に、太陽風の影響で地球との交信を絶ってしまいます。

通信再開後に判明したのは、修理のため船外に出たクルー二人が事故で命を落としてしまい、残されたのは一人、新人宇宙飛行士ソヌだけであったこと。彼を救出するべく、5年前の有人探査機打ち上げ時に失敗の責任を取り組織を去ったジェグクが呼び出されます。

一方で宇宙船に残されたソヌは、一人で仲間の遺志を継ぐことを決意し、月面への着陸を成功させます。彼が地球に帰還するためには、NASAの月周回宇宙ステーションに戻る必要があり、センターが彼と最接近するまで48時間あります。

無事帰還すべく奔走するソヌと人々でしたが……。

映画『THE MOON』の感想と評価


(C)2023 CJ ENM Co., Ltd., CJ ENM STUDIOS, BLAAD STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED

近年世界的に加速の一途をたどっている宇宙開発競争。本作はそのテーマに韓国からの挑戦というポイントで物語を作り上げています。

世界的な競争という意味では、軍事力などのいわゆる「力」の関係という側面に注目されがちでありますが、宇宙開発競争はどこか対照的な印象であり、先進的で前向きなイメージの戦いとも見えます。

本作ではその課題に正面から向き合い、世界のトップに君臨する国と肩を並べようとする序章の展開は、現代の韓国を強く表す空気感を覚えます。

一方で高度な技術が必要であり、常に失敗と隣り合わせにある宇宙開発。日本でもさまざまな失敗の報道がニュースで流れるたびに、その難しさは多くの人が知るところでしょう。

本作は、その「一歩前に進みたい」という強い意志と、危険と隣り合わせの世界で何を優先すべきか、というはざまにいる人々の思いを、さまざまな視点で緊張感たっぷりに描いています。


(C)2023 CJ ENM Co., Ltd., CJ ENM STUDIOS, BLAAD STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED

重要なミッションの途中に重大な事故が発生した場合、何を優先すべきなのか?そしてその決定は誰が下すべきなのか?

物語での打ち上げは韓国単独で行われたはずが、事件は国際間の問題にも発展するなど、この挑戦に向けたさまざまな疑問・課題が次々と現れてきます。

過去の有人ロケット打ち上げの責任者だったジェグクは、失敗の責任を取って現場を退いた人物でありながら、この新たな挑戦の中で、まさにこの出来事の当事者として宇宙船の生き残った宇宙飛行士ソヌを助けるべく奔走します。

ですがその姿からは、生涯「当事者」として背負わされる運命のようなものすら見えてくるでしょう。

本作の物語は、こうした大きく新たな挑戦を行うことに伴いついてくる責任の大きさ、人生への影響を示すとともに、困難を成し遂げることの尊さを豊かなスケールで表現しており、困難にも果敢に挑戦していくべきであるという、国レベルの思想としてあるべき姿勢を示しているようでもあります。

まとめ


(C)2023 CJ ENM Co., Ltd., CJ ENM STUDIOS, BLAAD STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED

配役としてユニークなのが、キム・ヒエ演じるNASAの担当責任者。彼女は「ソヌを助けたい」という韓国側の思いと、様々に存在するしがらみにより救出に消極的なアメリカ側との狭間に立たされることになります。

女性がこのような立ち位置でミッションにおける重大な判断を下すポジションにいる組織体制は、ある意味フェミニズムを強調した現代的な組織の在り方を示しているようでもあり、新鮮な空気感を覚えさせます。

さまざまな立場の狭間で苦しむ彼女の表情を表したキムの演技力もまた秀逸であり、新たな時代の風景としてあるべきものを考えさせられるポイントでもあります。

映画『THE MOON』は2024年7月5日(金)より全国順次公開!




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