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韓国映画『夜叉 容赦なき工作戦』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。ソル・ギョング×パク・ヘスの最強バディが“世界一スパイが多い街”に挑む|Netflix映画おすすめ96

  • Writer :
  • 咲田真菜

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第96回

殺人者の記憶法』(2017)、『君の誕生日』(2019)など、映画を中心に活躍するソル・ギョングと『イカゲーム』(2021)で主人公の幼なじみ、チョ・サンウを演じて話題となったパク・ヘスが共演するスパイ映画『夜叉 -容赦なき工作戦-』。

本作は「世界一スパイが多い街」といわれている中国の瀋陽を舞台に、各国のスパイが繰り広げるサスペンスアクション映画です。『監獄の首領』(2018)のナ・ヒョンが監督を手がけています。

韓国スパイ映画『夜叉 -容赦なき工作戦-』は、Netflixで2022年4月8日から配信!

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら

映画『夜叉 -容赦なき工作戦-』の作品情報


Netflix「夜叉 容赦なき工作戦」

【公開】
2022年(韓国)

【脚本】
アン・サンフン ナ・ヒョン

【監督】
ナ・ヒョン

【キャスト】
ソル・ギョング パク・ヘス 池内博之 ヤン・ドングン イエル ソン・ジェリム パク・ジニョン 

【作品概要】
中国・瀋陽を舞台に、韓国諜報機関の極秘工作チームが危険な任務に挑むサスペンスアクション。

とある事情により左遷された検事は、極秘工作チームのリーダーで「夜叉」と呼ばれる男と関わることに。彼らを中心に各国のスパイたちが熾烈な争いを繰り広げます。監督は『監獄の首領』(2018)のナ・ヒョン。

映画『夜叉 -容赦なき工作戦-』のあらすじとネタバレ


Netflix「夜叉 容赦なき工作戦」

検事のハン・ジフン(パク・ヘス)は、どんな権力にも忖度をしない正義感あふれる人物。「罪は罰するべき」との信念のもと、仕事に邁進してきました。

ある日、長い間追い続けてきた大企業・サンイングループの会長の悪事を暴く寸前に部下の不正捜査が明るみになり、会長の不正追及を断念。本庁から一転「墓場」と呼ばれている閑職へ追いやられてしまいます。

毎日仕事もなく、ボーっと過ごしていたジフンですが、同部屋の同僚が中国・瀋陽に監査へ行くようヨム・ジョンウォン局長から促されているところに遭遇。本庁へ復帰できるチャンスだと、ジフンは瀋陽行きを自ら願い出ます。

瀋陽では、極秘工作を行う通称「ブラックチーム」と呼ばれている組織が活動をしていました。そのチームを率いているのが、チ・ガンイン(ソル・ギョング)です。

「夜叉」と呼ばれている彼は、目的遂行のためには手段を選ばない問題児ではあるものの、ミッションを必ずやり遂げる人物として一目置かれていました。チームメンバーである3人からも厚い信頼が寄せられています。

瀋陽入りしてすぐに、夜叉の常識から逸脱した行動に巻き込まれていくジフン。

堅物のジフンからすれば、夜叉の行動は決して許せるものではなく「ありのまま報告する」と夜叉に詰め寄ります。

一方の夜叉も、融通の利かないジフンのことが気に食わず「お前を見ていると、昔、学級委員が履いていたナイキを思い出す」と言い返します。

しかしそんな2人の目の前に、韓国・北朝鮮・日本が関わる大きな事件が立ちはだかろうとしていました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『夜叉 -容赦なき工作戦-』ネタバレ・結末の記載がございます。『夜叉 -容赦なき工作戦-』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

夜叉がマークしていたのは、日本のスパイであるオザワ・ヨシノブ(池内博之)。二人の間には長い間因縁があり、夜叉は今度こそオザワを叩き潰すと決意していました。

オザワが会食をしている場へ、夜叉はジフンとともに乗り込みます。

夜叉はジフンを「中国当局の上層部」だと紹介し、とっさにジフンもそのフリをします。そして夜叉とオザワの火花散る会話を黙って聞いていました。

堅物でありながらも、瞬時に最適な行動を取ることができるジフンのことを、夜叉は「ナイキ」と呼び、いつしか気にかけるようになっていました。

夜叉たちが追っているのは、北朝鮮の金庫番で、隠し資金が4兆円にものぼるというムン・ジョンウク。彼がいる場所を突き止め乗り込みましたが、すでに何者かに銃撃されたムンは虫の息でした。

最後の力を振り絞り、ムンは夜叉に「娘のジュヨンを絶対に日本の奴らに渡さないでほしい」と言い残し息絶えます。

夜叉たちを待っていたジフンは、警察がやってきたのを見て急いでに知らせにいきます。そこで夜叉は罠にはめられたと知り、激しい銃撃戦となります。

その頃、ムンの娘・ジュヨンはオザワにとらえられ、日本総領事館内で拷問を受けていました。

オザワは「例のものをどこに隠したのか」とジュヨンを問いつめ、ジュヨンは「私が死ねばすべて明らかになる」とオザワの要求に応じません。

夜叉たちはジュヨンを助けるため、日本総領事館へ正面突破することを決意します。

夜叉の突拍子もない発言にジフンは呆れて笑いますが、4年前に香港で味わった屈辱を晴らそうと考えている夜叉は本気でした。そしてなぜか突入メンバーに、ジフンも加えられていたのでした。

しかし日本総領事館への正面突破を目前に、ジフンは夜叉に「やっぱり間違っている。正義を貫くべきだ」と訴えます。

それに対し夜叉は「正義とは、何としてでも守るべきものだ。それが俺の正義だ」と答え、その言葉にジフンの心は動かされます。

かつて日本軍が防空壕として作った地下道を利用し、日本総領事館へ突入した夜叉とジフン。無事にジュヨンを助け出し、ジフンは彼女とともに日本総領事館を脱出します。

ジュヨンは、父親が半島のためだと信じて日本のスパイとして働いていたこと、しかし実際はオザワにだまされていたことをジフンに告白します。

そして父親が握っていた極秘情報とは「二重スパイのリスト」のことであり、オザワが育てた二重スパイの数は107人おり、活動と指令報告書、資金の出どころまで存在することを明かしました。ムンはそれを公にしようとしたため、オザワたちに殺されたというのです。

またスパイのリストはサンディアゴの大学サーバー内のデータベースにあり、それにアクセスできるのはジュヨンだけでした。

ジフンはジュヨンの話を夜叉に知らせるため、電話をかけます。しかし「自分を派遣したヨム・ジョンウォン局長が日本側のスパイなのではないか」と言ったところでジフンに追手が迫り、夜叉も仲間だと思っていたホン課長に銃撃されてしまいました。

オザワに拘束されたジフンは、夜叉を殺すことを命じられ、できなければ韓国にいる家族を殺すと脅されます。仕方なく夜叉を呼び出したジフンは、彼を撃ってしまいます。

やがてオザワが待つ場所に連行されたジフンとジュヨン。オザワはジュヨンにデータベースへアクセスするように命じます。

ちょうどその頃、夜叉の仲間たちがオザワのアジトへ乗り込んでいました。そしてそこに、夜叉も姿を見せました。

実はジフンは事前に、夜叉の恋人に対して「お前を撃つが、何があっても自分を信じてほしい」と夜叉への伝言を頼んでいたのです。

夜叉とオザワの因縁の対決が決する時がきました。

一面火の海となったのを見たジフンは、銃を持って乗り込み夜叉を助けようとしますが、オザワに撃たれてしまいます。

オザワはこれで自分の勝ちだと確信し、意気揚々とスパイのリストを削除するのですが、なぜかデータは各所に転送されてしまいます。

ジュヨンはあらかじめ、データ削除を行った瞬間にデータが転送されるようプログラミングを仕掛けていたのです。

怒り狂うオザワを、夜叉はその場で打ちのめします。そして夜叉は「ナイキ、何としてでも生き延びて、法律で奴らを裁くんだ」と言い残しました。

ジフンは帰国し、本庁へと復帰。今回のデータが各所に転送されたことで、サンイングループの悪事は明るみになり、会長に実刑判決を下すことに成功しました。

そしてある日、ジフンのもとに死んだと思っていた夜叉から電話がかかってきます。

「ナイキ、かなりの悪党を見つけた。すぐに来い」と告げる夜叉。「また巻き込むのか」と答えるジフンは、笑みを浮かべていました。

映画『夜叉 -容赦なき工作戦-』の感想と評価

Netflix「夜叉 容赦なき工作戦」

最強の凸凹コンビが誕生!

ソル・ギョングが演じる手段を選ばない最強のスパイ・夜叉、パク・ヘスが演じる堅物の検事ジフン。この映画の物語の最大の魅力はやはり、どう見ても水と油に思える二人が、最強のバディになっていく点です。

「法律こそが正義」と信じているジフンにとって、夜叉のやることは理解できないことばかりですが、そんな夜叉が仲間から一目置かれている理由を聞いたり、実際に自分の目で確かめたりすることで、考えを変えていきます。

夜叉もまた、堅物なのに機転がきき、なおかつ柔道をやっていたことから運動神経がよいジフンに信頼を寄せるようになります。

「お前を見ていると、昔、学級委員がはいていたナイキを思い出す。当然その靴は踏んでやったよ!」と子どもっぽい憎まれ口をたたくところもある夜叉。

そしてジフンは怪しげな女性に名前を聞かれ、思わず「ナイキ」と答えてしまうユーモラスな場面も。そして夜叉たちに巻き込まれ、銃撃戦の中逃げ惑う場面は、ドンくさい雰囲気が出ており笑ってしまいます。

全編ハードボイルドタッチの作品ですが、この2人のちょっとクスッと笑えるやり取りや、バディとして信頼するようになっていく過程をみていくのも、この作品の魅力の一つでしょう。

「渋いワル」がハマる池内博之

Netflix「夜叉 容赦なき工作戦」

池内博之が演じるオザワは、徹底的に「悪」として描かれました。日本のヤクザをイメージしているのか、取り巻きが銃ではなく刀で応戦する場面もあります。

池内自身もヤクザの親分を意識しているのか、物静かに圧をかける演技で迫力を見せていましたセリフも日本語が多いものの、英語と中国語を駆使しています。

物語の終盤、落ち着き払っていたオザワが怒り狂う場面では、それまでの冷静さはどこにいったのか、取り乱し、最終的には無様な最期を迎えます。そのような変化も含めて、ワルを極めた池内の演技にも注目です。

まとめ

本作はスパイ映画で、人を裏切り、裏切られ……というのが繰り返し描かれていきます。

そうしたスリル満点な展開はもちろん、夜叉とジフンのカッコよさと垣間見えるユーモアの絶妙なバランスで形作られたバディ像、そして裏切りだらけの劇中世界を戦い抜くバディの強い絆を描いた物語には、誰もが引き込まれるはずです。

「続編が作られるのでは」とも予感させられる『夜叉 -容赦なき工作戦-』。最強バディの今後に注目です。

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