80年代、映画とともにヒットした音楽をピックアップ!
ドキュメント映画『a-ha THE MOVIE』で知られるアーティストa-haは、80年代のポピュラー音楽界において大ヒット曲「TAKE ON ME」により一大センセーションを巻き起こしました。
これらの動向は、いわゆる「80’s」と呼ばれるサブカルチャームーブメントの中でも非常に大きな要素として、今なお強いアピール力を誇っています。
一方そのムーブメントは映画とも融合し、映画の強烈な印象とあわせて、今なお大衆の心に残るメロディーを世界に広げていきました。
今回はそんな80年代映画とともにヒットを記録した主題歌や挿入歌を、当時の風情を感じさせる映画のベスト10に合わせて紹介します。
CONTENTS
80年代作品第10位 映画『フットルース』作品情報
【公開】
1984年(アメリカ映画)
【脚本】
ディーン・ピッチフォード
【監督】
ハーバート・ロス
【キャスト】
ケビン・ベーコン、ロリ・シンガー、ダイアン・ウィースト、ジョン・リスゴー、クリス・ペン、サラ・ジェシカ・パーカー、ジョン・ローリン、エリザベス・ゴーシー、フランシス・リー・マッケイン、ジム・ヤングス
【作品概要】
都会からロックもダンスも禁止された田舎に越してきた青年がもがく姿を通して、保守的な社会に反発する若者たちの恋と友情を描いた青春ドラマ。2011年にはリメイク作品『フットルース 夢に向かって』が公開されています。
監督は「愛と喝采の日々」のハーバート・ロス。『パトリオット・デイ』(2017)などのケビン・ベーコンが主演、本作は彼の出世作となりました。
主題歌:「フットルース」ケニー・ロギンス
映画は1984年に公開。この時期は1983年の『フラッシュダンス』、1984年の『ゴーストバスターズ』などミュージックビデオと映画作品のタイアップとしてヒットを飛ばした作品も出ており、映画と音楽との関係としても大きな動きが見られました。
ケビン・ベーコン主演でダンス禁止令の出されたとある街にやってきた一人の青年を中心に、古いしきたりに縛られる敗退した町の空気に向き合う若者たちの姿を描いた本作は、テーマとして音楽、ダンスといったキーワードが合致したことからも大ヒットを飛ばし、全米一位を獲得しました。
なおロギンスは『フットルース』のオリジナルサウンドトラックに対してほかに楽曲「アイム・フリー」を提供しています。さらに映画音楽としては『トップガン』(1986)以外にも「ボールズ・ボールズ」シリーズ、『オーバー・ザ・トップ』『素晴らしき日〜ワン・ファイン・デイ』といった作品にも音楽で参加しています。
挿入歌:「Holding Out For A Hero」ボニー・タイラー
『フットルース』の音楽としては、この挿入歌も非常に有名な楽曲であります。ウェールズのシンガー、ボニー・タイラーの歌う曲ですが、以後エリザベス・アン・ガットマン、ジェニファー・ソーンダース、Frou Frou、そして『フットルース 夢に向かって』ではエラ・メイ・ボーエンがこの曲のカバーを発表と、多くのアーティストがカバー曲を発表しています。
日本では同年に葛城ユキ、麻倉未稀らが日本語版で「ヒーロー Holding Out For A Hero」のタイトルでカバーを発表、特に麻倉の歌うバージョンは当時のドラマ『スクール☆ウォーズ』でも使われ、大きな知名度を得ました。
80年代作品第9位 映画『グーニーズ』作品情報
【公開】
1985年(アメリカ映画)
【脚本】
クリス・コロンバス
【監督】
リチャード・ドナー
【原案】
スティーブン・スピルバーグ
【キャスト】
ショーン・アスティン、ジョシュ・ブローリン、ジェフ・コーエン、コリー・フェルドマン、ケリー・グリーン、マーサ・プリンプトン、ジョナサン・キー・クァン、ジョン・マツザク、ロバート・ダビ、ジョー・パントリアーノ、アン・ラムジー
【作品概要】
『グーニーズ』(1985)は、住居を追われる危機にある低所得者地区の少年たちが、あるきっかけで伝説の海賊が隠したとされる財宝のありかを示した地図を発見、自分たちの暮らしを守るために宝探しの冒険に出向く姿を追った冒険物語です。
原案、製作総指揮にスティーブン・スピルバーグが名を連ね、「リーサル・ウェポン」シリーズや『マーヴェリック』(1994)『陰謀のセオリー』(1997)などを手掛けたリチャード・ドナーが監督を務めています。
主題歌:「グーニーズはグッド・イナフ(原題:The Goonies ‘R’ Good Enough)」シンディー・ローパー
この曲も、ある意味作品を象徴する重要な要素の一つといえるでしょう。主題歌を歌うシンディー・ローパー自身も、劇中にテレビ放送される「本人」の役にてカメオ出演を果たしています。
この主題歌は、1984年にヒットシングルを連発して発表し、音楽界では当時一躍時の人となっていたローパー自身も作詞・作曲に加わっていた作品ですが、もともと「Good Enough」というタイトルだったものを、映画とのタイアップが決まったことで「グーニーズはグッド・イナフ」というタイトルに変更された経緯があります。
耳に残る印象的なサビのメロディー、個性的なローパーの歌声は、物語のポジティブな求心力を生み出すことへの大きな力となっています。
一方、映画作品に出演の経験もあるローパー。当時はMTV進出の影響で多くのミュージックビデオが人々の関心を引きましたが、ローパーの本作主題歌の映像もさることながら、代表曲「タイム・アフター・タイム」のミュージックビデオの名演でも高い評価を得ています。
80年代作品第8位 映画『カクテル』作品情報
【公開】
1989年(アメリカ映画)
【原作・脚本】
ヘイウッド・グールド
【監督・脚本】
ロジャー・ドナルドソン
【キャスト】
トム・クルーズ、ブライアン・ブラウン、エリザベス・シュー、リサ・ベインズ、ローレンス・ラッキンビル、ケリー・リンチ、ジーナ・ガーション、ロン・ディーン
【作品概要】
アメリカのウォール街で一攫千金を夢見ていた青年が夢届かず、一時しのぎで始めたバーテンダーとしての活動の中で、成功と挫折を乗り越え自身の幸せを手にしていく姿を描いたストーリー。
『追いつめられて』(1987)のロジャー・ドナルドソン監督が作品を手掛けました。
主題歌:「ココモ」ビーチ・ボーイズ
映画『トップガン』(1986)で一躍シーンの最前線に踊り出たトム・クルーズの主演作としては、当時この『カクテル』でも大きく注目されました。当時『トップガン』(1986)が大ヒットを飛ばした際には、ファッションとして劇中でクルーズが劇中で着用していたアメリカ空軍風のジャケットMA-1 が飛ぶように売れました。
一方、この『カクテル』で見せたバーテンダー・テクニックも、西海岸で人気を博し当時バブル景気に沸く日本でも流行したプール・バーで大きな広がりを見せ、クルーズに迫るべくさまざまなテクニックを披露するなど、ユニークな味を提供するバーテンダーも広く注目されていました。
その意味で『カクテル』は、80年代のサブカルチャー文化に深く根差した作品といえるでしょう。
「ココモ」はアメリカのベテランロックバンドであるザ・ビーチ・ボーイズの曲。ビキニの娘、サーフィン、ホットロッド、海といったアメリカ西海岸における若者のサブカルチャーに深く根差したイメージを感じさせるザ・ビーチ・ボーイズですが、この曲もそんな彼ららしさを存分に見せたもの。
楽曲は、前ヒット曲「グッド・ヴァイブレーション」以来22年ぶりに全米第一位に輝き代表曲となったという異例の作品でもあります。
挿入歌:「ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー」ボビー・マクファーリン
また同じく『カクテル』の楽曲として大きく注目を浴びたのが、ジャズ歌手のボビー・マクファーリンによる挿入歌「ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー」。この曲も特徴的な楽曲といえます。
この曲は楽器を使わずリズム、ベースなどの歌以外のセクションをすべてマクファーリンの声のみで構成するという異色作であり、この年のグラミー賞でも数多くの受賞を果たしました。
なおミュージックビデオには俳優のロビン・ウイリアムス、ビル・アーウィンらが出演しています。
80年代作品第7位 映画『ウーマン・イン・レッド』作品情報
【公開】
1985年(アメリカ映画)
【脚本】
ジーン・ワイルダー、ジャン=ルー・ダバディ
【監督】
ジーン・ワイルダー
【キャスト】
ジーン・ワイルダー、チャールズ・グローディン、ジョセフ・ボローニャ、ジュディス・アイビ、マイケル・ハドルストン、ケリー・ルブロック、ギルダ・ラドナー
【作品概要】
物語は1977年のフランス映画『Un éléphant ça trompe énormément』のリメイク作品で、サンフランシスコ市のまじめな職員男性が、出勤途中に見かけた赤いドレスの美女に心を奪われたことにより、あの手この手でアタックを仕掛ける様を描いた作品です。
映画『俺たちに明日はない』(1967)にも出演したジーン・ワイルダーが主演、監督を務めます。
主題歌:「心の愛(原題:I just called to say I love you)」スティービー・ワンダー
この作品名を聞くと、真っ先に主題歌名が浮かぶ人も少なくないのではないでしょうか。
作品自体の評価はそれほど大きなものにはなりませんでしたが、アメリカのミュージシャンであるスティービー・ワンダーが歌うこの主題歌は、1984年のアカデミー賞、ゴールデングローブで歌曲賞、英国アカデミー賞で主題歌賞を受賞と、作品を世に大きく印象付けるカギの一つとなっています。
もともとはワンダーが親交のあった日本のフォークグループのブレット&バターにプレゼントした曲でありながら、本作での起用のために自身が歌うバージョンのリリースを先にしてほしいと頼んだという逸話もあります。
またこの主題歌は、その後日本でもCMのテーマソングやテレビドラマの主題歌として起用されたこともあり、日本にも非常になじみ深い曲となっています。
ちなみにワンダーは1990年のスパイク・リー監督作品『ジャングル・フィーバー』でも、主題歌および映画音楽を担当しています。
80年代作品第6位 映画『ゴースト・バスターズ』作品情報
【公開】
1984年(アメリカ映画)
【脚本】
ダン・エイクロイド、ハロルド・ライミス
【監督】
アイバン・ライトマン
【キャスト】
ビル・マーレイ、ダン・エイクロイド、シガニー・ウィーバー、ハロルド・ライミス、リック・モラニス、アニー・ポッツ、ウィリアム・アザートン、アーニー・ハドソン、デビッド・マーグリーズ
【作品概要】
大学を追われたことをきっかけに幽霊退治会社「ゴーストバスターズ」を始めた3人の科学者が数々の幽霊騒動に立ち向かう姿を、当時の最新SFXとあわせユーモラスに描いたコメディー映画。
続編『ゴーストバスターズ2』が作られた後にリメイク作品を発表、そして2022年に続編『ゴーストバスターズ アフターライフ』が発表されました。
『ツインズ』(1988)『キンダガートン・コップ』(1990)などのアイバン・ライトマンが作品を手掛けました。ライトマンは続編『ゴーストバスターズ2』でも監督を務めています。また脚本を担当したのは、本作でメインキャラクターを演じたダン・エイクロイド、ハロルド・ライミスの2人。
主題歌:「ゴーストバスターズ」レイ・パーカーJR
この作品も、80年代の大ヒット作品としては多くの人の記憶に残った作品といっていいでしょう。この作品の主題歌は、ブラックミュージックの人気アーティストであるレイ・パーカーJr.の歌う『ゴースト・バスターズ』。
ラップっぽくメロディーの不確かな導入から始まり、サビでの「Ghostbusters!」とコーラスの叫ぶ声が思い切り気分的に上がるこの曲は、作品のクライマックスに見られた「ニューヨーク市民を巻き込んでの団結」的な雰囲気にピッタリ。
第一作に続いて作られた3作でもサウンドトラックに収録され、作品のカラーを決定づけた要素となっています。
サビと共に印象的なベースラインの効果も相まって全米で一位を獲得、また日本では2013年にはNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」に出演していた杉本哲太が、劇中のカラオケシーンで歌ったことも話題となりました。さらにCMでの使用の例もあり、国内でも大きな人気を博した80年代音楽の一曲といっていいでしょう。
80年代作品第5位 映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』作品情報
【公開】
1985年(アメリカ映画)
【監督・脚本】
ロバート・ゼメキス
【キャスト】
マイケル・J・フォックス、クリストファー・ロイド、リー・トンプソン、クリスピン・グローバー、トーマス・F・ウィルソン、クローディア・ウェルズ
【作品概要】
アメリカのとある平凡な一家に生まれた青年が、変人と呼ばれるも優秀な頭脳を持つ友人の博士が作ったタイムマシンに乗り、自身の親が出会った頃や自身の未来に向かってタイプスリップ、さまざまな困難を乗り越えて自身の未来を切り開いていく姿を描いたSFコメディー物語。
『フォレスト・ガンプ 一期一会』(1994)や『キャスト・アウェイ』(2000)、『ザ・ウォーク』(2015)などのロバート・ゼメキスが監督を務めました。また80年代のアメリカ映画を代表する俳優の一人、マイケル・J・フォックスが主演を担当、以後このタッグは続編三部作にまで続きます。
主題歌:「パワー・オブ・ラブ」ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース
当時大ヒット作品となった「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ3作。このシリーズ第一作に主題歌にアメリカン・ロックバンドのヒューイ・ルイス&ザ・ニュースによる「パワー・オブ・ラブ」が起用されました。
正式には以後続いた『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』では主題歌が存在せず、『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』では同じくアメリカン・ロックバンドのZZトップによる「ダブルバック」が起用されていますが、このシリーズを象徴する曲の印象としては、恐らくこの曲の印象が最も強いと言えるでしょう。
フォックスが経てきたサクセス・キャリアや若き日の出演作『摩天楼はバラ色に』『バラ色の選択』などのイメージから、フォックス自身にいわゆるアメリカンドリーム実現のシンボル的なイメージを持たれる面もあり、そんな彼が出演する本作も、エネルギッシュでポジティブなカラーを持ったこの曲のイメージとも重なるところがあるといえるでしょう。
以後、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースは数々のヒットを飛ばし、文字通り「アメリカン・スタイルの」ロックバンドとしてブレイクしますが、「パワー・オブ・ラブ」はバンドとして最大のヒットを記録し、一番の代表曲となっています。
ちなみにバンドのボーカリストであるヒューイ・ルイスは、シリーズ第一作にカメオ出演も果たしています。
80年代作品第4位 映画『ホワイトナイツ/白夜』作品情報
【公開】
1985年(アメリカ映画)
【脚本】
ジェームズ・ゴールドマン、エリック・ヒューズ
【監督】
テイラー・ハックフォード
【キャスト】
ミハイル・バリシニコフ、グレゴリー・ハインズ、イザベラ・ロッセリーニ、イエジー・スコリモフスキ、ヘレン・ミレン、ジェラルディン・ペイジ、ジョン・グローバー、ウィリアム・フットキンス、シェーン・リマー
【作品概要】
芸術の自由を求め祖国を捨てたソ連の一人の青年と、自国の政策に抵抗してソ連に亡命したアメリカの青年という全く正反対の立場にある二人の友情を描いた物語。「カリブの熱い夜」を手掛けたテイラー・ハックフォードが監督を務めました。
主題歌:「セイ・ユー、セイ・ミー」ライオネル・リッチー
ソウル、R&Bのスターであるライオネル・リッチーの代表曲の一つともいえる「セイ・ユー、セイ・ミー」。意外にこの曲は知っていても、この曲が映画の主題歌であることを知らなかったという方も多いのではないでしょうか。それほどまでに美しく、ドラマチックな印象が強い楽曲であります。
この曲は、もともとリッチーがハックフォード監督から楽曲依頼を受けた際に送ったデモ音源を監督が気に入ったことから本作の主題歌に使用されることになりました。
ところがミュージックビデオには映画のシーンが差し込まれているにもかかわらず、リッチーが所属する大手レーベル・モータウンの意向により映画のサウンドトラック収録が許されず、結果的にはこの楽曲のみのシングルとしてリリースされたという経緯があります。
ユニークなのは、基本的には全編がゆったりしたバラードなのですが、後サビに入る前に一部リズミカルなビートにふっと切り替わり、そして雄大さと情熱を込めた後サビへと続いていくところにあります。
ある意味全編をシリアスで抒情的なテーマで表しながら、映画の登場人物たちが携わるダンス、踊りという躍動感あふれる部分をふっと取り込んで物語の核心に近づいていく、そんな物語の展開にうまく重なった構成でもあります。
楽曲は同年のビルボード・チャートで一位を獲得するなどの大ヒットを獲得した一方、1985年のアカデミー歌曲賞、ゴールデングローブ賞 主題歌賞を受賞と、映画の主題歌としても高く評価されました。
80年代作品第3位 映画『バットマン』作品情報
【公開】
1989年(アメリカ映画)
【脚本】
サム・ハム ウォーレン・スカーレン
【監督】
ティム・バートン
【キャスト】
マイケル・キートン、ジャック・ニコルソン、キム・ベイシンガー、ロバート・ウール、パット・ヒングル、ビリー・ディー・ウィリアムズ、マイケル・ガフ、ジャック・パランス、ジェリー・ホール、トレイシー・ウォルター、リー・ウォレス、ウィリアム・フットキンス
【作品概要】
ボブ・ケイン原作のDCアメリカン・コミックス「バットマン」を原作としたシリーズ第1弾。架空の都市ゴッサムシティで、犯罪者を退治するヒーロー、バットマンの活躍を描きます。
『シザーハンズ』などのティム・バートン監督が作品を手掛けました。キャストにはマイケル・キートン、ジャック・ニコルソン、キム・ベイシンガーら豪華俳優が名を連ねています。
主題歌:「バットダンス」プリンス
映画『バットマン』の主題歌「バットダンス」は、80年代のヒット作の中でも少し異質なものといえます。
もともとプリンスはこの映画に対し「ダンス・ウィズ・ザ・デビル」という楽曲を提供しようとしていたものの、土壇場でこの「バットダンス」という楽曲に変更したといわれています。(ちなみに「ダンス・ウィズ・ザ・デビル」は未発表曲となっています)
楽曲はかなり前衛的で、当時のプリンス自身が持っていた複数の楽曲アイデアを組み合わせて、一つの楽曲にしたというもの。
今でこそバラエティーに富んだ楽曲が世にあふれ、この曲のように難解な楽曲も多く排出されていますが、ある意味キャッチーさこそが主流であった当時のポピュラー音楽としては、かなり先進的なイメージでありました。
しかし、1987年の『スーパーマンIV』以降に方向転換を迫られたDCコミックスの映画化路線において、この楽曲は映画作品のイメージを大きく揺さぶったという意味でも多大な貢献を成したといえるでしょう。
映画との完全なタイアップ映像ではなく、バットマンのキャラクターをダンサーと見立てたミュージックビデオも高く評価され、1990年のソウル・トレイン・ミュージック・アワードでベストR&B /ソウルミュージックビデオ、MTVビデオミュージックアワードで最優秀映画音楽ビデオ賞にそれぞれノミネートされました。
80年代作品第2位 映画『ネバーエンディング・ストーリー』作品情報
【公開】
1985年(西ドイツ映画)
【脚本】
ウォルフガング・ペーターゼン、ヘルマン・ヴァイゲル
【監督】
ウォルフガング・ペーターゼン
【キャスト】
ノア・ハサウェイ、バレット・オリバー、タミー・ストロナッハ、モーゼス・ガン
【作品概要】
ドイツの作家ミヒャエル・エンデによる児童文学小説「はてしない物語」(原題:Die unendliche Geschichte)を原作に作られた物語。
イジメられっ子の少年が、ある日いじめっ子からの逃亡の末に学校の天井裏で「ネバーエンディング・ストーリー」というタイトルをつけた不思議な本を発見、本に記された物語を通して幻想的な世界“ファンタージェン”を体験するとともに自身の弱さに向き合っていく姿を描きます。
『U・ボート』(1981)『アウトブレイク』(1995)『エアフォース・ワン』(1997)『ポセイドン』(2006)などのウォルフガング・ペーターゼン監督が作品を手掛けました。
主題歌:「ネバーエンディング・ストーリーのテーマ(原題:The NeverEnding Story)」リマール
作品のテーマ曲「ネバーエンディング・ストーリーのテーマ」は、映画『トップガン』(1986)の「デンジャー・ゾーン」などを作った80年代音楽の立役者、イタリアのジョルジオ・モロダーが手掛けた楽曲です。
楽曲の始まり、終わりがそれぞれフェードイン、フェードアウトとなっており、まさに映画の「ネバーエンディング」なイメージを表しているといわれています。
世界的にもヒットを博したこの楽曲は、イギリスのポップロックバンド、カジャグーグーのボーカリストであるリマールが歌っています。実はリマール自身が歌っているパート自体は非常に短いのですが、軽快でファンタジックなメロディーに合わせ続いていく女声のコーラスメロディーへのつながりが秀逸で、耳に残りやすい構成の楽曲となっています。
またこの曲は日本の芳賀健司、坂本美雨、E-girlsらのカバーでも多くの人に親しまれました。なおモロダーは「ネバーエンディング・ストーリーのテーマ」以降、リマールのソロアルバム制作にも参加しています。
80年代作品第1位 映画『トップガン』作品情報
【公開】
1986年(アメリカ映画)
【脚本】
ジム・キャッシュ、ジャック・エップス・Jr
【監督】
ティム・バートン
【キャスト】
トム・クルーズ、ケリー・マクギリス、ヴァル・キルマー、アンソニー・エドワーズ、トム・スケリット、マイケル・アイアンサイド、ジョン・ストックウェル、バリー・タブ、リック・ロソヴィッチ、ティム・ロビンス、ジェームズ・トルカン、メグ・ライアン、エイドリアン・パスダー、クラレンス・ギルヤード・Jr、ウィップ・ヒューブリー
【作品概要】
『ハンガー』(1983)や『ディス・オブ・サンダー』(1990)、『マイ・ボディガード』(2004)などの名匠トニー・スコット監督が作品を手掛けた青春アクション作品。
物語ではアメリカ・カリフォルニア州の米海軍航空基地におけるエリートパイロット養成校「トップガン」を舞台に、型破りながら優秀な技術を持った若手パイロット、マーべリックが、訓練における同僚たちとの衝突、苦悩や恋を通して成長する姿を描きます。
「ミッション:インポッシブル」シリーズや『アウトロー』(2013)などに出演するトム・クルーズが主演を務めています。
主題歌:「デンジャー・ゾーン」ケニー・ロギンス
80年代の作品としても未だ強い印象を残している『トップガン』(1986)。特に2022年には本作で主演を務めたトム・クルーズが続投する続編映画『トップガン マーヴェリック』が公開される予定にもなっており、注目が再燃しています。
70年代前半にアメリカン・カントリー音楽グループ、ロギンス&メッシーナのメンバーとして活躍したケニー・ロギンスの歌うこの曲は、当時確立しつつあったミュージックビデオ・ビジネスとのタイアップ効果もあって、本作とともに大ヒットを飛ばしロギンス自身の代表曲の一つにもなりました。
登場人物の荒ぶる心理や緊張した空気を表したような強いイメージの曲調はアピール性も強く、『トップガン マーヴェリック』でも続いて曲が起用される動きもあり、2018年のロギンスのインタビューでは作品のために新バージョンを提供する予定にあると語っています。
ちなみに『トップガン』(1986)のオリジナルサウンドトラックに対してロギンスはもう一曲「真昼のゲーム(原題:Playing with the Boys)」も提供しています。
挿入歌:「愛は吐息のように(原題:Take My Breath Away)」ベルリン
また『トップガン』(1986)に起用された楽曲としては、「デンジャー・ゾーン」とは全く対照的な曲である、アメリカのロックバンド、ベルリンが提供したこのラブバラードも強い印象を残しました。
楽曲自体は「デンジャー・ゾーン」同様、『トップガン』(1986)の音楽を担当したジョルジオ・モロダーがベルリンと共作、プロデュースを担当しており、ベルリンとしては最大のヒットを飛ばしました。
なおベルリンはこのヒット後、日本公演をおこなったのちに1度解散をしましたが、1997年に再始動。オリジナルメンバーとしてはボーカルのテリー・ナンのみで以後大きなヒットこそ果たせていませんが、地道な活動を続けています。
まとめ
80年代の映画にまつわる音楽をほんの一例ながら紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか? この頃の音楽は、ある意味時代そのものを表していたとも言えます。
この頃、日本では、映画公開後にその主題歌、挿入歌がCMなどで使われるなど、盛んにカバーが発表されるなどでその印象をさらに強いものとしていました。
例えば先述のボニー・タイラーの「Holding Out For A Hero」もしかり、また1983年の映画『フラッシュダンス』で使われた、アイリーン・キャラの「フラッシュダンス…ホワット・ア・フィーリング」などもその一曲であります。
また、80年代のポピュラー音楽をエンドロールで使用する映画も数多くありますが、例えば2019年公開の映画『フロントランナー』では、時代表現が難しい場面でふと80年代音楽を流すことで、まさに「80年代」の風景に移して見せていました。
この時代の音楽を知ることは、ある意味この時代の映画を知り時代を知ることにもつながる、とも言えるでしょう。