トワイライトシリーズ全5作品の第1作目となる『トワイライト~初恋~』
ヴァンパイアと少女の禁断の恋を描き、全世界でシリーズ累計4200万部を売り上げたベストセラー小説をキャサリン・ハードウィック監督が映像化。
アリゾナからワシントン州の高校に転校してきたベラ役をクリステン・スチュワート、陽の光を浴びても死ぬことのない特別なヴァンパイア・エドワード役をロバート・パティンソンが務めました。
ヴァンパイアと少女の禁断の恋を描くトワイライトシリーズの幕開けは、磁石のように惹かれ合うふたりの関係を描きます。
ワイヤーアクションを多用したダイナミックでスリリングな展開、自然豊かなロケーションの美しさなどの見どころと合わせて、ネタバレありでご紹介いたします。
CONTENTS
映画『トワイライト~初恋~』の作品情報
【公開】
2009年(アメリカ映画)
【原題】
Twilight
【原作】
ステファニー・メイヤー「トワイライト」
【監督】
キャサリン・ハードウィック
【脚本】
メリッサ・ローゼンバーグ
【キャスト】
クリステン・スチュワート、ロバート・パティンソン、ビリー・バーク、アシュリー・グリーン、ニッキー・リード、ジャクソン・ラスボーン、ケラン・ラッツ、ピーター・ファシネリ、カム・ジガンデイ、テイラー・ロートナー、アナ・ケンドリック、マイケル・ウェルチ、ジャスティン・チョン、クリスチャン・セラトス、ジル・バーミンガム、エリザベス・リーサー、エディ・ガテギ、レイチェル・レフィブレ、サラ・クラーク、グレゴリー・タイリー・ボイス、ネッド・ベラミー、マット・ブシェル、ホセ・ズニーガ
【作品概要】
バンパイアと少女の禁断の恋を描き、全世界でシリーズ累計4200万部を売り上げたベストセラー小説を『イントゥ・ザ・ワイルド』(2007)『アクトレス〜女たちの舞台〜』(2014)『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』(2018)『チャーリーズ・エンジェル』(2020)『アンダーウォーター』(2020)のクリステン・スチュワートと『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005)『リメンバー・ミー』(2010)『グッド・タイム』(2017)『ライトハウス』(2019)『TENET テネット』(2020)のロバート・パティンソン主演で映画化。
監督を務めたのは『ロード・オブ・ドッグタウン』(2005)『赤ずきん』(2011)『マイ・ベスト・フレンド』(2015)のキャサリン・ハードウィック。
映画『トワイライト~初恋~』あらすじとネタバレ
何かに追われているような気配を漂わせて、一匹の鹿が森の中を疾走します。
灼熱のフェニックス。17歳のベラは、野球選手と再婚したママの幸せを考え、警察署長をしているパパ・チャーリーのもとへ越すことに決めました。
そこはいつも雨と雲に覆われたワシントン州フォークスという小さな町。小さな頃は毎年2週間をパパの家で過ごしていましたが、ここ数年は来ていません。
家に着くと古くからの知り合いバリーとその息子のジェイコブがやってきます。帰郷のお祝いにとバリーから買ったというピックアップトラックをプレゼントされます。
ベラはその古い車がとても気に入りました。ジェイコブとは子供のころに遊んだことがありました。
ジェイコブは居留地の高校へ通っているため、1人で転校先の高校へ車で向かいます。新参者のベラは学校で注目の的となります。
世話係のエリック、マイク、ジェシカ、アンジェラたちに囲まれて話をしていると、外科医カレン先生の養子だという5人組の姿が。皆、青白い肌を持つ美男美女の容姿で人目を引きつけます。
ジェシカがカレン家の名前を教えてくれました。金髪の子がロザリー、その連れの男がエメット、黒髪のショートヘアの子がアリス、いつも苦悩顔のジャスパー、そして、一際目を引く美男子がエドワードだと。
ベラがしげしげと見ているとエドワードが視線をとらえました。しかし、その目は睨みつけるようで、思わず目をそらします。
生物の授業へ移動したベラが、教室に入ると窓際にエドワードが座っていました。温風の風がベラを吹きつけ、その風がエドワードに当たると、あからさまに顔をしかめて、鼻と口を手で覆いました。
彼の隣りの席に座ると、訝しげな表情を浮かべるエドワードの本意がわからず、不快な思いをするベラ。
エドワードがなぜ自分を避けるのか直接本人に聞こうとしますが、彼は翌日から学校を休みます。そんな時、住んでいる町の周辺で何かの動物に人が殺されたという奇怪な事件が起こります。
フォークス特有のどんよりと薄暗い空から雨が降る朝。ベラが学校へ行くと休んでいたエドワードがいました。この前とは違い好意的な態度で彼の方から改めて自己紹介をしてきました。
他愛もない会話からはじまり、なぜ引っ越してきたのかなど理由を聞かれます。ベラは彼の目の色が黒から金茶に変化しているように見え、そのことを伝えると、彼は困惑したようにその場を去ってしまいました。
車で帰宅しようとピックアップの前にいたベラに突然、タイラーが運転するバンが衝突してきました。遠くにいたはずのエドワードが素手でバンを止め、九死に一生を得ました。
エドワードにその超人的なパワーのことを聞き出そうとしますが、エドワードは「親しくならないほうがいい」などと謎めいたことばかりで真相はわかりません。
マイクたちから居留地にある海岸・ラプッシュに誘われて行くと、偶然にジェイコブに会い、彼から古い伝説を聞きます。
それは、ジェイコブの部族、キラユーテ族はオオカミの子孫だという言い伝えがあり、カレン家の祖先はキラユーテ族の敵だったと言うのです。
ジェイコブの曽祖父がもし土地を侵さなければ彼らの正体を明かさないと取り決めを交わしたという伝説でした。
その伝説を詳しく調べる為、ジェシカとアンジェラがプロムに着ていくドレスを選んでいる間に本屋に足を運びます。本屋から出るともう日が暮れて辺りは真っ暗になっていました。
ジェシカたちと落ち合うレストランに向かおうとすると、5人のチンピラに絡まれます。すると突然、暗闇からシルバーの車が目の前に急停止し、中から降りてきたのはエドワードでした。
またしても、危機を救ったエドワードになぜ自分の居場所が分かったのか聞きますが、話をはぐらかされます。しかし、エドワードがベラ以外の人の心を読めること、とても冷たい手をしていること知りました。
その頃、動物に襲われるという奇怪な事件がまた起こります。襲われて命を落としたのは、パパの友人でした。
ベラは買ってきた本を参考にカレン家の正体が冷人族(吸血鬼)である仮説を立てます。エドワードが異常に敏捷で力が強く、青白く冷たい肌で目の色が変わり、食事をしなく太陽にもあたらないというキーワードから吸血鬼であることを突き止めます。
エドワードにそのことを話すと、ベラを太陽の下に連れていき、太陽にあたった肌が、ダイヤように輝いている姿を見せました。
その肌を「きれい」というベラに「人殺しの肌だ」とエドワードは答え、「僕は殺す運命にある」と言います。ベラは恐怖よりもそれでも一緒にいることを願いました。
エドワードの一族は、ほかの吸血鬼と違い動物だけを狩り、渇きも抑制できるが、ベラの血だけは求めてしまうと打ち明けました。続けてベラを初め避けていたのはベラの香りが苦しかったこと、一緒にいると自制心を失いそうなことを話します。
そんなエドワードにベラは、「あなたを失うのが怖い」と伝え、エドワードは「ライオンが羊に恋をした」と言い、ふたりははじめてお互いの心中を打ち明けます。
翌朝、エドワードの車で学校へ登校するベラは、みんなの視線を浴びます。
人間が吸血鬼になるには、カーライルの主義で選択肢のない者だけを吸血鬼にしていました。エドワードは、1918年に瀕死の時にカーライルに命を救われ、吸血鬼となったのです。
映画『トワイライト~初恋~』感想と評価
“禁断の恋”に落ちるまでの距離感
前作『サーティーン あの頃欲しかった愛のこと』(2003)『ロード・オブ・ドッグタウン』(2005)で少女や青少年の青春の輝きと危うげで物憂げな思春期の心情を巧みに描いたキャサリン・ハードウィック。
本作では、女子高生のベラとヴァンパイアのエドワードがお互いに危険を冒したとしても、どうしようもなく惹かれ合うふたりの距離感を時に熱っぽく、スリリングな展開を交えて描き出しました。
ストーリーは、最悪な出会いからはじまり、さらに2人の行く手を遮る試練を経て、やがて互いを理解し合い結ばれていくという、恋愛映画によくあるパターンです。しかし、オープニングからミステリアスでダークな雰囲気を漂わせ、惹かれ合いながらも釈然としないふたりの距離感の不安定さと相まることで、恋の切なさと純粋さを浮き彫りにします。
ベラを演じたクリステン・スチュワートは、どこかアンニュイな佇まいの美しさを放ち、ヴァンパイアに心を奪われる少女を体現。
そして、ヴァンパイアの宿命に逆らいながらも、ベラを守ろうとするエドワードをロバート・パティンソンが演じ、彫りの深い端正な顔立ちにニヒルなところを感じさせながら、ベラへのひたむきな思いを垣間見せました。
中盤からは、ワイヤーを用いたダイナミックなアクションが展開し、ヴァンパイアの超人的なパワーがダイナミックに描かれます。
エドワードがベラを背負って窓から木に飛び移り、するすると木の頂上まで登る場面では、エドワード(ヴァンパイア)側の世界を見事に映し出します。
それは雲に近いほどの高さから見下ろす山々と海岸に、霧が立ち込め幽玄な世界に包まれたふたりを捉えます。カメラは、ふたりの間を浮遊するようにまわりながら、ズームアウトしていきます。
まるで、雄大な自然の一部にふたりが溶け込むかのような美しいシーンです。
監督が描く甘く危険な世界観
監督を務めたキャサリン・ハードウィックは、『バニラ・スカイ』などの映画美術を手掛けた美術出身の監督です。だからこそ、背景へのこだわりが感じずにはいられません。
舞台となる雨と雲に覆われたワシントン州フォークスで撮影された森林のロケーションは、不可思議な世界に臨場感を持たせています。
また、映画の色調は、ほの暗い森の深緑と調和するような暗いトーンに合わせられ、灼熱のフェニックスやエドワードの肌を太陽の光にさらす時でさえ、ぎらついた太陽を思わせる明るさはなく、青みを帯びる画面を作ります。
映画全体が暗めのトーンで統一されていることで、ベラの部屋のシーンでは、間接照明を用いた赤みを帯びた光が引き立ちます。それは恋慕の情を抱くベラの肌が薄暗い室内で艶めいて映し出されるかのようです。
序盤でベラとエドワードが生物室ではじめて話をするシーンでは、他愛もない会話の中で、互いの視線や仕草を捉えるアップショットで映し、すでに惹かれ合う雰囲気を醸し出します。
時折映し出すエドワードの背景には、窓際に飾られたフクロウの剥製、ホルマリン漬けの瓶、観葉植物などと細部まで抜かりなく配置され、独特な空間を作り上げています。
これは、次作となるキャサリン・ハードウィックの『赤ずきん』でもファンタジック・ダークな世界観にもつながっているのでしょう。
そして、本作の世界観をかきたてる音楽にも注目せざるを得ません。劇中では、レディオヘッドやパラモア、ミューズ、コレクティブ・ソウルなどのオルタナティブロックの楽曲が満載に使われています。
激しく繊細なメロディー、重苦しくも浮遊感のあるサウンドが物語の世界を彩ります。
まとめ
ヴァンパイア・ロマンスをテーマにした作品は、ホラーやアクションよりの『クロコダイルの涙』(2000)、『アンダーワールド』(2003)、『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008)などがあります。
本作は、ヴァンパイアのダークな雰囲気を立ち込めていながらも、モンスターには成り下がらないために動物だけを狩り、渇きも抑制できる一族という設定です。
人間に咬みつくことをしないというのは『オンリー・ラヴァーズ・レフトアライヴ』(2013)のヴァンパイア像とも結びつきます。
いずれもヴァンパイアという存在を際立たせているのは、ヴァンパイアの弱点とも言える“愛”についてです。
そして、本作の“禁断な恋”をより際立たせていることが、血への渇望と葛藤です。
人間の血を飲まないと誓っているエドワードの前に現れたベラは、魅惑的な血の香りを放ち、ベラの血を渇望します。しかし、それにもまして、彼女を守りたい、彼女のことを知りたいという思いに突き動かされるのです。
原作のステファニー・メイヤーが『トワイライト』から15年ぶりの新作として『ミッドナイト・サン トワイライト エドワードの物語』を2021年10月に刊行しました。
全編にわたり、トワイライトを追体験するようなエドワードの視点で、心を容赦なく揺るがし続けるベラの存在が描かれます。
長い時を経て、映画『トワイライト~初恋~』と小説『ミッドナイト・サン トワイライト エドワードの物語』の両作品が交わる面白さを味わえることでしょう。
新刊を読むとエドワードの不可解な行動に隠された真意に触れることができるはず。
映画のラストは、禁断の恋に落ちたベラとエドワードの切なく甘い運命が動きはじめて終わります。
これからどんな運命に翻弄される展開になるのか…。2人の姿を遠目からヴィクトリアが見つめ、不敵な笑みを浮かべて立ち去るシーンが、エンディング曲・レディオヘッドの「15 Step」と被さり、続編へのつながりを見せました。
レディオヘッドのエンディング曲は、混沌とピュアが入り混じったようなメロディーと多彩な音とエレクトロニクスのサウンドが印象的に響きます。