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A24映画『ライトハウス(The Lighthouse)』あらすじネタバレと感想。実話が基で実際に起きた事件とは

  • Writer :
  • Moeka Kotaki

映画『The Lighthouse(ザ・ライトハウス)』は2019年10月18日アメリカにて公開。

2016年、ニューイングランド地方の深遠な森に住む一家を襲う悪夢を描いた『ウィッチ』で高く評価されたホラー映画の新星ロバート・エガース。

ロバート・エガース監督が二人の名優を起用した作品と共に帰ってきました。

白黒のヴィジュアル、ざらついた恐怖が場面写真からすでに滲む『ライトハウス(The Lighthouse)』です。

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映画『ライトハウス(The Lighthouse)』の作品情報


(C)2019 A24 Films

【公開】
2019年 アメリカ映画

【原題】
The Lighthouse

【監督】
ロバート・エガース

【キャスト】
ロバート・パティンソン、ウィレム・デフォー

【作品概要】
監督を務めたのはロバート・エガース、脚本は彼の兄であるマックス・エガースと共に執筆されました。

若い灯台守エフレイム・ウィンスロウを演じるのは「トワイライト」シリーズでブレイクし、デヴィッド・クローネンバーグ監督の『マップ・トゥ・ザ・マスターズ』(2014)やクレール・ドニ監督の『ハイ・ライフ』(2019)とアート系映画にも出演、また次期バットマン役が決定したロバート・パティンソン。

老人の灯台守トーマス・ウェイクを演じるのは「スパイダーマン」シリーズのグリーン・ゴブリン役でおなじみ、近年では『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(2017)でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、また全米映画批評家協会賞助演男優賞受賞始め数々の賞を受賞、『永遠の門 ゴッホの見た未来』(2018)でアカデミー賞主演男優賞にノミネート、ヴェネツィア国際映画祭男優賞を受賞とブロックバスター系とインディペンデント系双方の作品で活躍する名優ウィレム・デフォーです。

本作は第72回カンヌ国際映画祭の監督週間で初上映され[国際映画批評家連盟賞の独立選出部門を受賞し、映画評論家たちに高く評価されています。

映画『ライトハウス(The Lighthouse)』あらすじとネタバレ


(C)2019 A24 Films

荒れ狂う海を進む一隻のボート、岩でできた小島にそびえ立つ灯台を見つめる男二人の後ろ姿で映画は始まります。

老いた男と若い男、二人は4週間の間の新しい灯台守として島に派遣されてきました。

老いた男はベテランらしく海や灯台守のうんちくめいたこと、願掛けなどを夕食時に語りますが若い男は耳を貸しません。

老いた男はいつも酒を飲んでおり、自分だけが灯台最上部の灯りの場に近づき若い男にはそれを許しません。

“ラッド(若者)”と呼ばれる若い男は思いドラム缶を運ぶために螺旋階段を上ったり石炭を運んだり、雑用を含む重労働を老いた男にさせられます。

合間に若い男はベッドのシーツの中に人魚の彫り物を見つけ、それを握りしめながら自慰をします。

夜な夜な老いた男は灯りの場所へ向かっており、恍惚とも言える悩ましい表情を浮かべている様が映し出されます。

一方若い男は威嚇してくるカモメに奮闘、また人魚に海に引きずり込まれる悪夢に悩まされていました。ある日老いた男は若い男に灯台を白いペンキで塗るように命じます。

ロープで吊られ作業していた若い男ですが落下してしまいました。

その日若い男は老いた男と共に酒をのみ、自分の名前はエフレイム・ウィンスロウだと明かします。

老いた男も自分の灯台守としての過去を語ります。

そしてまたある日、ウィンスロウが水道をひねるとどす黒い液体が流れ出しました。カモメの死体が水槽に落ちていたのです。

そこにまたカモメが彼を威嚇しにやってきて、ウィンスロウは岩に打ちつけて殺します。すると風向きが不安定になり始めました。

陸に戻る予定の二人でしたが嵐のため迎えの船はやってこず、この灯台に立ち往生することになります。

二人は埋めてある予備の酒瓶を掘り起こしひたすら酔っ払います。

老いた男は自分の名をトーマス・ウェイクだと明かします。ウィンスロウは「俺の友人のトムに」と言い、二人は乾杯しました。

以下、『The Lighthouse』ネタバレ・結末の記載がございます。『The Lighthouse』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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嵐はますますひどくなるばかり。

ウィンスロウとウェイクは毎日酒をあおり、狂ったように踊り時には掴み合いをするような日々が続きます。

ウェイクは何やら日誌のようなものをつけており、ウィンスロウは好奇心を抱いていますが覗くことはできません。

酔っ払ったウィンスロウはウェイクに自分の本当の名はかつての同僚トーマス・ハワードで本物のウィンスロウは既に死んでいることを明かします。

雨はますます激しくなりウィンスロウとウェイクは酒をのむスピードを早めます。

ウィンスロウは相変わらず人魚の彫り物で自慰行為をしていますが、幻想か現実か岩場で寝そべる人魚とセックスをし怯えてボートで島を逃げ出そうとしますがウェイクに捕まります。

ほぼ酒もきれ灯油をのむ二人は錯乱状態になり、荒波が小屋を破壊してしまいました。

翌朝海水が流れ込んできた部屋に浮かぶウェイクのノートを見つけたウィンスロウはウェイクが明かした彼の過去はすべて嘘だったと知り彼を激しく罵ります。

ウィンスロウとウェイクは殴り合いになり、ウィンスロウはウェイクを殴っているうちに人魚や本物のウィンスロウの死体、フジツボなどがくっついた異形のウェイクが重なります。

ウィンスロウはウィエクを打ちのめし彼を犬と呼び、ウェイクは文字通り犬のように四つん這いになって灯台のもとの穴に投げ入れられ、ウィンスロウは彼を埋めようとします。

体が埋まりきらないうちにウィンスロウはウェイクが持っていた灯台の灯りの部屋に通じる鍵を捕りました。

小屋に戻り煙草を吸おうとすると這い上がってきたウェイクが再び襲いかかりますが、ウィンスロウは斧で彼を叩き潰します。

ウェイクの血を浴びたウェイクはやっと灯りの部屋に。光っている中心部がゆっくりと開き、ウィンスロウは高揚し絶叫しました。

映画は死体となったウィンスロウがカモメに内臓を啄ばまれている場面で幕を閉じます。

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映画『ライトハウス(The Lighthouse)』の感想と評価

参考:『The Lighthouse』の公式ツイッター

基となった実際の事件とは

深い暗闇がはびこる森を舞台にした『ウィッチ』から一転『The Lighthouse』の舞台は荒れ狂う海にそびえ立つ灯台。

ロバート・エガースの創造性に満ちた本作のベースとなった物語は1801年、ウェールズ南西部のペンブルックシャーにあるスモールズ灯台で起こった実際の事件

トーマス・ハウエルとトーマス・グリフィスという2人の男が灯台守として派遣されたのですが、グリフィスが途中で病にかかってしまいました。

しかしそこに嵐が到来し、残されたハウエルはグリフィスの腐敗死体と灯台で数ヶ月も過ごさなければならなかったそうです。

また人間の感情に起因する恐怖ではなく絶対的、宇宙的な恐怖や不安を描いた『クトゥルフ神話』の作者ハワード・フィリップス・ラヴクラフトや『アッシャー家の崩壊』『落とし穴と振り子』など閉鎖的な空間と呼応し精神を病む人々、生き埋めなどのテーマを繰り返し描くエドガー・アラン・ポーや『白鯨』のハーマン・メルヴィル、近代イギリス怪奇小説の三巨匠のひとりアルジャーノン・ブラックウッドなどの影響がみられます。

真っ暗な螺旋階段を下に転がり落ちていくような恐ろしさ、この緊迫した瞬間に永遠に閉じこめられる不安、波の唸りと耳をつんざく鳥の鳴き声、目に見える全ての世界への疑い…。

これらの要素を扱いながらも何度もウィレム・デフォー演じるウェイクのおならのシーンがあるなど思わず笑ってしまうところもあり、『ウィッチ』よりも珍妙でいっそう不気味な作品となっている『The Lightohuse』。

35mmで撮影された美しくも恐ろしい白黒映像が魅力のひとつですが、本作のアスペクト比はほぼ正方形の1.19:1。

閉塞感を募らせるこの比率は様々なホラーの名作が生まれたドイツ表現主義時代の映画監督、フリッツ・ラングたちが使用していたものです。

荒々しい暗闇の中露呈される彼らの顔は往年の恐怖映画の怪物たちの表情のようでもあります。

またウィンスロウが自分がトーマスであることを仄めかすシーンやウェイクと部屋で口論するシーンなど構図やズームイン/アウト、影が効果的に使用され移り変わる二人の力関係を示すように撮影されています。

サイレント時代の恐怖映画の系譜を引き、妄想や幻覚が入り乱れる悪夢的なシークエンスなどはシュルレアリスム映像作家、デヴィッド・リンチ映画を、妖しげな人魚が登場する点はカーティス・ハリントン監督のホラー映画『ナイト・タイド』(1963)を彷彿とさせます。

また館が登場人物の疑念や恐怖と共振する『たたり』(1963)やデボラ・カー主演の『回転』(1961)のオマージュか、不安を煽る螺旋階段が効果的に使用され、またロバート・パティンソン演じるウィンスロウ(トーマス・ハワード)は“信用できない語り手”として登場します。

3つの神話を軸にし濃厚な映画に昇華

本作の軸となっている話は三つ、ギリシャ神話の海神プロテウスプロメテウス、『シーシュポスの神話』と考えられます。

フジツボをつけた異形の姿に変身している奇妙なシークエンス、海を畏れ敬うと共に先を見通している節があるウェイクのキャラクターはプロテウスは予言と変身の術に長けた海の老神と重ねられます。

『シーシュポスの神話』は神に刑罰を与えられ山の頂上まで岩を運び上げるという刑罰を永遠に受け続けることになったシーシュポスの物語。彼が頂上までたどり着くと岩は山のふもとまでまた転がり落ちてゆく、そんな無意味な苦行をシーシュポスはずっと続けることになるのです。

アルベール・カミュは彼の随筆の中で人生もシーシュポスの道のりと同じく無意味で苦しいものだけれども、岩を持ち上げ運ぶことに情熱や楽しさを抱くこともできると書き不条理な世にある生のあり方を説きました。

ウェイクに言いつけられ灯りのはるか下で重労働をし、重いドラム缶を階段の上まで運ぶウィンスロウの姿はシーシュポスであり人間そのもの

そして人間たちに火を渡すことを拒んだ全能の神ゼウスからこっそり火を盗み出そうとし、怒りを買ってオオワシに内臓を毎日啄められ永遠の苦痛を与えられるプロメテウスの姿もまた灯台の灯りに自分も近づこうとしてカモメに内臓を喰われる最期を迎えたウィンスロウに重なります。

ですが本作は自らも罪を背負い、不条理な毎日を過ごす中光を求めてもなお苦難に襲われる人間の姿を描いた物語という解釈の他にも考えを巡らせることができる作品です。

何度も登場する自慰行為のシーン、光を前にして恍惚とするウェイク、人魚とのセックスの合間に挿入される女性器を連想させる灯台の灯り、ナイフや灯台に酒瓶の数々と本作は性的なシンボルと興奮に満ちており、またウィンスロウとウェイクが抱擁したりキスをする寸前まで近づいたりと登場人物二人が肉体的に接近するシーンも描かれています。

最期ウィンスロウが灯りに接近する場面では彼は血を顔に塗りたくった醜悪な形相で絶叫しますが、同時に悦びに満ちている恍惚とも取れる表情を浮かべているのです。

そこに達すれば何が起こるか、どんな罰や報いを受けることになるか分からないけれども欲したい、近づきたいと願う対象は叶わぬ恋愛、社会的な成功、芸術の創作、人生の様々な分野で言えることです。

ウィンスロウは禁忌を冒してでも近づきたかった光の存在と同時に恍惚を得ることができた代わりに苦悶と死を受け入れた、戦う人間の姿でもあります。シンボルや描写を踏まえてのこの最期は非常に官能的です。

閉鎖的な状況での二人劇を行ったロバート・パティンソンとウィレム・デフォーの狂乱、錯乱した演技は彼らのキャリア史上最高と言って過言ではないほど凄まじいもの。

映像、音楽、名優二人の化学反応、ミニマムなようでいて様々な濃厚な要素に満ちた“これぞ映画”と脳天を撃ち抜かれる作品です。

まとめ

参考:『The Lighthouse』の公式ツイッター

例えばトラウマや罪悪感などに起因する“恐怖”もあれば全く別の絶対的、あまりに巨大な“恐怖”もあるのではないか。

シュルレアリスティックで滑稽に見える登場人物二人の会話や行動、末路にも私たち一人一人のある要素が含まれているのではないか。

ただ怖がらせるだけではなくこうした漠然、曖昧とした物事を上映後も問いかけ続け映画の持ち得る手法が五感すべてを刺激する、そんな気迫が溢れ、またロバート・エガース監督の映画製作者としての美学が感じられる作品。

近年なかなか観ることのできない濃厚な毒がはびこる作品が『ライトハウス(The Lighthouse)』です。

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