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実写映画『からかい上手の高木さん』あらすじ感想と評価レビュー。永野芽郁×高橋文哉が切なく甘く演じる‟からかい”で絆を深めた10年越しの純愛

  • Writer :
  • 谷川裕美子

‟からかい”は高木さんの最高の愛情表現

アニメ版も話題を集めた山本崇一朗の人気コミック『からかい上手の高木さん』を、『愛がなんだ』(2019)の恋愛の名手・今泉力哉監督が実写映画化しました。

主演は人気実力派の永野芽郁と高橋文哉が務めます。

中学校時代に出会った高木さんと西片。いつも西片少年を笑顔でからかってばかりいた高木さんは、ある日転校してしまいました。その後10年の時を経て懐かしい故郷の中学校の校舎で再会した2人の関係が、温かく甘く切なく描かれます。

からかい、からかわれるという2人の関係は、10年たって変わっていたのでしょうか。思わず恋をしたくなる珠玉のラブストーリーです。

映画『からかい上手の高木さん』の作品情報


(C)2024映画「からかい上手の高木さん」製作委員会 (C)山本崇一朗/小学館

【公開】
2024年(日本映画)

【原作】
山本崇一朗

【監督】
今泉力哉

【脚本】
金沢知樹、萩森淳、今泉力哉

【キャスト】
永野芽郁、高橋文哉、鈴木仁、平祐奈、前田旺志郎、志田彩良、白鳥玉季、齋藤潤、江口洋介

【作品概要】
シリーズ累計1200万部突破の山本崇一朗原作の大人気コミック『からかい上手の高木さん』を、新世代の恋愛映画の名手として名高い今泉力哉監督が実写映画化しました。

原作から10年後の設定で、大人になった高木さんと西片の新たな時間を描きます。『そして、バトンは渡された』(2021)の永野芽郁が高木さん役、『ブルーピリオド』(2024)の高橋文哉が西片役で初共演を果たしました。

原作者の出身地であり物語の舞台であることから「高木さんの聖地」として親しまれている香川県小豆島で全編撮影を敢行しました。

共演は江口洋介、白鳥玉季ほか。

映画『からかい上手の高木さん』のあらすじとネタバレ


(C)2024映画「からかい上手の高木さん」製作委員会 (C)山本崇一朗/小学館

とある島の中学校。隣の席になった女の子・高木さんにいつもからかわれている男の子・西片は、どうにかしてからかい返そうとさまざまな策を練るも、彼女に見破られて失敗ばかりしていました。

そんな2人のずっと続くと思っていたかけがえのない日々は、高木さんが家の事情でパリに引っ越すことになったことから終わりを告げます。

離ればなれになってから10年が過ぎたある日。母校で体育教師として奮闘する西片の前に、高木さんが美術の教育実習生として突然現れました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『からかい上手の高木さん』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『からかい上手の高木さん』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

高木さんは変わらず西片をからかい続けます。西片はそのたびにうろたえるものの、彼女と過ごす時間が楽しいと感じるようになっていました。

西片のクラスには絵を描くのが好きな町田という不登校の男子生徒がいました。西片は少年の自宅を定期的に訪れながらも、無理に学校に来るようにとは言いませんでした。港でスケッチしていた町田に高木さんは話しかけました。絵の上手い彼女に町田は心を開くようになります。

一方、クラスの女子生徒・大関は、西片に悩みを相談していました。町田に告白した彼女は、町田が学校に来なくなったのは自分が原因ではないかと悩んでいました。一方、高木さんも町田から大関との一件を聞いていました。

その翌日、町田は登校し、大関と話をしました。大関は町田の気持ちはわかっていると言い、クラスメイトとして明るく受け入れます。

西片は高木さんを花火に誘いました。浴衣姿の高木さんと西片はお祭りを楽しみ、一緒に美しい花火を見上げます。

実習期間の3週間が過ぎ、高木さんが学校を去る日がやってきました。西片と高木さんは、懐かしい教室の隣同士の席に座って話します。西片は「好き」という気持ちがよくわからないと正直に話し、それでも一緒にいて楽しからという理由で、高木さんに付き合って欲しいと申し込みました。

高木さんは、好きでもないのに付き合うの?とからかった後、自分は10年間ずっと西片が好きだったと話します。そして、付き合って欲しいと言いました。

驚いた西片はうろたえ、口ごもりながら、必死に言葉を探します。最後に、「一生高木さんと一緒にいたいので結婚してください」とプロポーズしました。高木さんは驚きながらも、西片の純粋な思いを受け入れました。

その後、2人は初めて手をつないで一緒に歩いて帰りました。

翌日。西片に手を引かれて高木さんが音楽室に向かうと、クラスの生徒全員が待っていました。町田の姿もあります。

ホワイトボードには感謝のメッセージがいっぱい書かれていました。大関の指揮で、懐かしい曲を生徒たちが歌い始め、高木さんと西片も一緒に口ずさみます。2人の胸には10年前からのさまざまな思い出がよみがえりました。

2人の結婚式の日。自分たちだけの強いつながりは、からかい、からかわれる関係にあると感じていた高木さんは、これからもずっと西片をからかい続けることを誓いました。

映画『からかい上手の高木さん』の感想と評価


(C)2024映画「からかい上手の高木さん」製作委員会 (C)山本崇一朗/小学館

‟からかい”が深めた二人の絆

好きな男の子をからかわずにいられないお姉さん気質の高木さんと、気が良くて純粋で弟気質の西片の胸温まるラブストーリーです。故郷の母校の体育教師となった西片の前に、美術の教育実習生として高木さんが現れ、物語が始まります。

中学生の時に出会った2人は、淡い恋心を互いに抱いていましたが、家の都合で高木さんは転校してしまいました。しかも行き先はフランスのパリ。小さな島に暮らす少年にとっては、地の果てのような遠い地です。

高木さんの首に巻いたスカーフや、ふんわりしたロングスカートなどのファッションは、『麗しのサブリナ』でパリでレディになって帰ってきたオードリー・ヘップバーンを少し思わせます。

美しいレディへと成長した高木さんですが、まったく変わることなく西片をからかい続けます。からかわれた時に「えっ!?」とうろたえる西片のかわいいこと。思わずからかいたくなる高木さんの気持ちがよくわかります。

大人びた高木さんを演じる永野芽郁と、あどけない少年のような表情を見せる高橋文哉の魅力が溶け合います

ラスト30分の主人公2人だけのセリフ劇は、恋愛映画の名手・今泉力哉監督の真骨頂です。どこに向かうのかわからない西片の優柔不断にも思える語り口が、いつの間にか胸打たれる純愛の告白に行き着きます

どこか頼りない西片ですが、高木さんは彼の心の純粋さに気づいていましただからこそ、彼女の最高の愛情表現である‟からかい”を続けていたのです。

高木さんが‟からかい上手”なのと同じくらい、西片は‟からかわれ上手”です。

人によってはバカにされたと感じ、からかわれることを嫌う男性も多くいますが西片は違いました。もっとも、純粋な彼は、‟からかい”の中に自分への深い愛情が潜んでいること本能的に気づいていたのかもしれません。

もう一つの小さな恋物語


(C)2024映画「からかい上手の高木さん」製作委員会 (C)山本崇一朗/小学館

2人の名前が明かされず、名字だけで呼び合うところも本作の魅力です。しかも、女性は「さん」付けで、男性は呼び捨て。学校時代の甘酸っぱい懐かしさが、この呼び名だけでも強く伝わってきます。

純粋な10年愛の深さに胸打たれます。初恋が叶うというだけで、すでに夢のような話です。巷では決して多くはないハッピーエンドがさらりと描かれるからこその感動があります。

一方、同じく互いを名字で呼び合っている現役生徒の小さな恋物語も描かれます。こちらの恋愛の方が現実的でシビアです。

大関という少女はクラスメイトの町田に告白したものの、その後町田が学校に来なくなってしまったため、自分のせいではないかと心を痛めます。悪いことをしたという思いと、少しでも彼に影響を与えられたことへの皮肉な満足感がないまぜになった感覚。そして彼の幸せを望みながらも別の人に見せる笑顔を見ると嫉妬してしまう苦い思い。それらを、大関は中学生とは思えないほど克明に西片に話します。

一方の町田は人嫌いの少年で、大関の気持ちを思いやることができず、告白は暴力みたいなものだと憤る気持ちを高木さんにぶつけます。しかし、その後自分の幼さに気づいたのでしょうか。彼は、翌日から登校するようになります。

町田は大関に向き合って話し、謝ろうとしましたが、大関は「あなたの気持ちはわかってる」と言って笑って許します。大人びた表情と態度を見せる名子役の白鳥玉季と、どこかひねた町田役でいい味を出している齋藤潤の表情に魅了されます

女の子は大人になるのがはやいとつくづく思い知らされます。すべてを受け入れ、前を向いて歩き出せる強さを感じさせる大関は、本作のもう一人の主人公といえるかもしれません。

まとめ


(C)2024映画「からかい上手の高木さん」製作委員会 (C)山本崇一朗/小学館

切なくなるほど純粋で美しい10年越しのラブストーリー『からかい上手の高木さん』

10年間離ればなれだったことは、二人にとって幸運だったのかもしれません。一緒にいすぎると家族のようになってしまい、恋愛への一歩が踏み出すのが難しくなることも多いからです。大人になってから再会できたことが、彼らの幸せを後押ししたのでしょう

結婚式でからかい続けることを神に誓った高木さん二人の末永い幸せを約束する、最高のラストシーンです。



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