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Netflix『桜のような僕の恋人』ネタバレ感想と結末の評価解説。中島健人と松本穂香が演じる満開の桜のように儚く美しい恋

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

中島健人(Sexy Zone)と松本穂香の共演、宇山佳佑によるベストセラー恋愛小説「桜のような僕の恋人」を映画化

美容師の美咲に恋し、諦めかけていたカメラマンの夢をかなえることを決意する晴人。

しかし、美咲は人の何十倍も早く老いていくという“早老症”という難病を発症してしまう……。

永遠に忘れられない、美しくも切ない恋を描いた感動作。

Sexy Zoneのメンバー中島健人が人間らしい等身大の若者を演じ、松本穂香が難病を発症してしまう美咲を演じます。

監督は『神様のカルテ』(2011)の深川栄洋、脚本は『君の膵臓をたべたい』(2017)の吉田智子が担当しました。

映画『桜のような僕の恋人』の作品情報

【配信】
2022年(日本映画)

【原作】
宇山佳佑『桜のような僕の恋人』(集英社文庫刊)

【監督】
深川栄洋

【脚本】
吉田智子

【主題歌】
Mr.Children「永遠」(TOY’S FACTORY)

【キャスト】
中島健人、松本穂香、永山絢斗、桜井ユキ、柳俊太郎(柳は旧漢字が正式表記)、若月佑美、要潤、眞島秀和、モロ師岡、及川光博

【作品概要】
朝倉晴人を演じるのは、2011年にSexy Zoneのメンバーとしてデビュー、『銀の匙 Silver Spoon』(2014)や『ニセコイ』(2018)など数々の作品に出演してきた中島健人。

有岡美咲役には『わたしは光をにぎっている』(2019)、『君が世界のはじまり』(2020)などの松本穂香

監督は『ドクター・デスの遺産 BLACK FILE』(2020)、『そらのレストラン』(2019)などの深川栄洋監督。

映画『桜のような僕の恋人』のあらすじとネタバレ

朝倉晴人(中島健人)が初めて有岡美咲(松本穂香)に出会ったのは、昨年の夏。ありふれた午後でした。

クーポンを握り締め美容室にやってきた晴人を担当したのが美咲でした。ぎこちなく、お任せでお願いしまうという晴人。

仕事の話を聞かれて咄嗟にカメラの…と晴人が言いかけると美咲は、カメラマンさんですか!と話が弾みますが、実際はカメラマンを目指していたもののあまりの辛さに一ヶ月で逃げ出してしまい、今はアルバイトを転々としていました。

切り終えた姿を見て驚きつつもお礼を言う晴人に美咲は急にホッとした顔になり、「心臓ばくばくしていたんです、私にとって朝倉さんはお客さま第一号なので」と満面の笑みで言った美咲に晴人は心惹かれます。

それから晴人は月に一度、美咲の働くPennylaneに通うようになります。しかし、本当はカメラマンではないことを美咲に言えずにいました。

美咲が好きだと言った映画は何度も見て、恋人がいないと知った日にはジャングルジムを回してはしゃいだ晴人は勇気を出してデートに誘おうと髪を切られている最中に晴人は振り返ってしまい……美咲は何と晴人の耳たぶを切ってしまったのです。

自分の不注意なので何でも言ってください、何でもしますと平謝りする美咲に晴人は「僕と一緒に桜を見にいきませんか、僕とデートしてください」とデートに誘います。

デートに向かった晴人は美咲に何故美容師になろうと思ったのか聞きます。

「魔法が使えるから。私めちゃめちゃテンパなんですよ、兄の彼女のあやのさん(桜井ユキ)に美容室に連れて行ってもらったら悩んでいたことがなくなって、魔法みたいだと感動して」

眩い笑顔で話す美咲に晴人は意を決してカメラマンではないことを話します。

カメラマンを目指して見習いとして事務所に入ったものの、才能のなさを感じ、毎日怒られる日々に逃げ出したことを話します。

なぜ、そんな嘘をついたのかと聞く美咲に晴人は嫌われたくない、がっかりさせたくないと答えます。

すると美咲は、「私が職業で人を判断する女っていることですか?大体まだ何にもしていないのに諦めるなんてあり得ない。何があっても辛くても続けないよ」と怒って帰ろうとします。

「変わりたいんです!逃げ続けてきた自分から。ちゃんと自分を誇れるように。だから変わります、あなたに好きになってもらえるように」

そう宣言した晴人は以前辞めた事務所で働き始めます。初めての給料でお礼として美咲を食事に誘います。4月誕生日だった美咲にピンク色のシザーケースをプレゼントします。

「満開の桜みたいだなって、美咲さんの笑った顔」

美咲は戸惑い、どうして私なのかと聞きます。

「いつも髪を切ってもらって、僕は何をしているのだろうと、もっと仕事に向き合えばよかった。美咲さんを好きになってよかった」と言う晴人に美咲の心も動かされていきます。

美咲も「私もあなたのこと好きになりたい。私でよかったら付き合ってください」と言い2人は付き合うことになります。

デートを重ねて距離が近づいていく2人でしたが、美咲の体に異変が起き始めます。熱を出し寝込んだ美咲は心配する兄に言われて病院の診察をうけます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『桜のような僕の恋人』ネタバレ・結末の記載がございます。『桜のような僕の恋人』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

検査の結果、美咲は人の何十倍も早く年をとってしまう“早老症”であると診断されます。見た目だけでなく、身体の老化により癌などのリスクも高まると言われます。

更に美咲の場合は早老症の中でもファストフォワード症候群であると診断され、一年も経たずに老人のようになる可能性があるといいます。

美咲は晴人と花火大会に行き、大雨で中止となってしまいますが、夕方になり雨が止んだので花火を買って砂浜で花火をします。

晴人は美咲に「結婚してくれませんか?僕はこの先も美咲さんと生きていきたい」と言います。

「まだ付き合って3ヶ月だよ、他に好きな人できるかも」と言う美咲に「それでも美咲さんがいい、僕の最後の恋人だって」と晴人は答えます。

しかし、美咲の時間は刻一刻と限られていきます。美咲は大好きだった仕事をやめ、突然晴人の家を訪れ、その日は泊まり2人は体を重ねます。

明け方、眠っている晴人に「ずっと一緒に年を取れればよかったね、さよなら晴人くん」と言い残して美咲は去ります。

その後美咲は晴人との連絡を断ちます。何があったのかわからない晴人は何度も美咲の家に訪れますが、美咲の兄(永山絢斗)に美咲はここにいないと追い返されてしまいます。

その姿を見た美咲は医者に協力してもらい、以前好きだった人と再会し、今はその人と住んでいるからもう会えないと、晴人に電話します。

「ふざけるな、人を馬鹿にするなよ」と晴人は怒り泣き、美咲を忘れられずにいます。

そんな晴人に写真家の先生は、写真を撮るときに何を願うのか、どんな願いを込めたいのか、と問われます。

更に事務所の先輩であるマコト(若月佑美)に山登りに付き合ってくれと言われます。マコトは世界中を旅して山を登り、その景色を撮りたいという夢があると晴人に話します。今やっている広告の仕事は夢のため、生活するためだと言います。

少しずつ自分の夢に向かって歩き始める晴人。一方で美咲は自分の体が老いていく変化に戸惑い、抗おうと必死になっていました。

あやのが美咲に無理して色んなコラーゲン剤など飲む必要ないのではないか、と美咲の体を気遣って言いますが、「美人で皺ひとつないあやのさんにはわからない」とついきついことを言ってしまいます。

退院し、自宅療養するとこになった美咲は、自宅へ寄る途中に晴人の勤めている写真事務所によってくれるようあやのに頼みます。事務所で働いている晴人の姿を見て思わず涙が溢れ出します。

自宅に帰った美咲はあやのにもう家に来ないでほしいと告げます。本当の姉のように好きだから、老いていく自分と比較してあやのさんを妬みたくない、嫌いになりたくないと言います。

嫌いになってもいい、気にしないというあやのでしたが、美咲は頑なに聞き入れず、私がいなくなってもずっと兄の家族でいてあげてと頼みます。

それから美咲は自分の部屋に閉じこもり、塞ぎがちになっていきます。兄はそんな美咲を何とか元気づけようと頑張り、クリスマスの日に靴下を渡し願い事を書いたらいいと言います。

後日兄が靴下を見ると中にあった紙に「早く楽になりたい」という願いが書かれているのを見ます。更にゴミ箱にはくしゃくしゃに丸められ捨てられたメモ紙があり、そこには「晴人くんに会いたい」と書いてありました。

どんなに諦めようとしても美咲の晴人への想いは忘れ去ることができなかったのです。そのメモを見た兄は晴人に会いにいき、真実を全て話し、美咲を救ってほしいと頼みます。

突然のことで戸惑いながらも晴人は美咲の家に向かい、扉越しに美咲に語りかけます。勝手に話したこと兄が美咲に謝ると、「ずっと怖かった、けど嬉しかった。また声が聞けた。好きって言ってもらえた」と言います。

それから毎日のように美咲の家に訪れ日々のことを話す晴人。そして晴人が初めて作品を展示会に出すことになり、美咲に見てほしいと頼みます。

しかし美咲は今の姿で晴人に会うことを恐れ、なかなか外に出ようとしません。そんな美咲に兄は病気になってたくさんのことを諦めてきたけど、もう諦めなくていいんだと美咲の背中を押します。

美咲はやっとのことで個展会場に向かい、晴人の作品を見にいきます。写真は美咲と晴人が出会った美容室から始まり、どれも美咲と出かけたところばかりでした。2人で過ごした時間を思い出しながら写真を眺めます。

最後に飛び込んできた作品のタイトルは“かわらないもの”でした。

個展に訪れた美咲でしたが、会場に晴人の姿はありません。その頃晴人は美咲の家に向かっていたのです。

兄から会場に向かったと聞き、慌てて走り会場に向かう晴人は途中の公園で倒れている年配の女性を見かけ助けます。

「大丈夫ですか」と声をかける晴人でしたが、その女性は美咲でした。晴人は外見の変わった美咲に気付けなかったのです。

そのことに気づいた美咲は何とか笑いかけて「ありがとう」と言います。

晴人がその女性が美咲であったことを知ったのは美咲の死後でした。美咲の部屋にある桜色の帽子をみて気づき、晴人は泣き崩れます。

美咲が晴人に向けてかいた最後の手紙にはあの日結局会えなかったね、と書かれていました。

晴人の作品を見た先生は、誰かのためだけに撮られた写真を初めて見たと言い、答えはファインダーの中にしかない、僕らは撮り続けて答えを探すしかないと晴人に言います。

晴人は気づいてあげられなかった瞬間を悔やみながらも、答えを探して写真を撮り続けることを決意します。

映画『桜のような僕の恋人』の感想と評価

君の膵臓をたべたい』(2017)や『余命10年』(2022)など、病による恋人との別れを描いた恋愛映画は数多く作られ、本作もその一つであると言えます。

当たり前のように続く日常で、誰かと過ごすその一瞬や時間がいかに大切であるかということを人はつい忘れてしまうものです。

失ってからこそ気づく大切さけれど失ってからではもう遅い、そのような経験は誰にでもあるのでないでしょうか。

タイトルにもある桜。満開の桜の美しさは言うまでもないですが、桜はいつかは散ってしまう、だからこそ美しく、儚げな印象を抱くのでしょう。若くして早老病により亡くなってしまう美咲はまさに桜のように美しく、同時に儚さも感じさせる人物でした。

病により美咲は時間が有限ではないこと、そして自分の体の変化に戸惑い、怯え、時にはあやのや兄に対してきついことを言ってしまったり、弱音を吐いてしまいます。そのような美咲の等身大の若者らしさが更に観客の胸を打ちます。

中島健人演じる晴人も等身大の若者であり、本作は恋愛映画であり、カメラマンになりたいという夢を追う一人の若者の成長譚でもあります。

カメラマンになりたいと見習いとして飛び込んでみたもののその業界のキツさに逃げ出してしまった晴人は、冒頭その後ろめたさからか暗く自信のない印象を受けます。

しかし、夢に向かいひたむきに頑張る美咲に出会ったことで美咲を眩しく思う一方で、自分ももう一度頑張りたいと思い始めるのです。

撮るときに何を願う、どんな思いを込めたいか、と問われた晴人が出した答えは美咲との時間でした。病気になったことにより、美咲は時間が奪われていくこと、同じ未来を描けないことに嘆き苦しんでいました。

そんな美咲に対し晴人は“かわらないもの”と言う題で自分と美咲が過ごしてきた時間は通り過ぎた過去ではなく、未来へと続いていく、確かに2人の中にある、“かわらないもの”だという思いを込めたのです。

なくなっていくものにばかり目を向けていた美咲は、確かにあるもの、変わらないものに気づくのです。

カメラはその瞬間を切り取って永遠にすることができます。カメラを通して美咲に変わらない一瞬を伝えた晴人でしたが、そんな晴人自身が気づけなかった、一瞬も同様にたくさんあるのです。

プロポーズした時の寂しさと嬉しさの混じった美咲の顔、突然家にやってきた美咲、嘘をついて晴人と別れようとしたこと、そして外見の変わってしまった美咲に気づけなかったこと……いくつもの気づかなかった一瞬への後悔が晴人を突き動かし、シャッターを切らせるのです。

美しくも儚い満開の桜のような晴人と美咲の恋、そして夢へと向かう姿や病により夢を諦めざるを得なかった美咲、等身大の2人の葛藤は見る人の心に共感を呼ぶでしょう。

まとめ

中島健人(Sexy Zone)と松本穂香の共演、宇山佳佑によるベストセラー恋愛小説を映画化した『桜のような僕の恋人』。

満開の桜のような美咲と出会って諦めかけていたカメラマンへの夢に向かっていく決意をしていく晴人と、早老症という難病にかかってしまう美咲の一瞬の美しい恋を描いています。

美咲に片思いをし、思いを告げ付き合い始めた2人が過ごした時間はたった数ヶ月でした。しかし夢のようなその数ヶ月が2人にとっていかに大切で幸せな瞬間であったか伝わってきます。

会えなくなってもお互いにお思い合う2人が再び再会し、以前のように語り合う姿はその先が見え始めているからこそ切なく、涙を誘われます。

人はもう戻ってこない瞬間をつい悲しんでしまいますが、その瞬間は過去ではなく確かにあったもので、これからも変わることがないということを、晴人の写真を通じて教えてもらったような気持ちになります。

見終わった後は今ある時間、共に過ごす存在の大切さそして失うばかりではないことを改めて感じさせてくれます。





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