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映画『寝ても覚めても 』あらすじネタバレ。原作結末は意外なラスト⁈

  • Writer :
  • Yasu

恋愛映画『寝ても覚めても』は、9月1日(土)よりテアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国公開

柴崎友香が野間文芸新人賞を受賞した同題小説を、濱口竜介監督が映画化。2018年5月に開催された第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品され話題となりました。

東出昌大が同じ顔だがまったくタイプの違う男の麦と亮平、1人二役を演じ、ヒロインは唐田えりか。共演に瀬戸康史、山下リオ、伊藤沙莉、渡辺大知、仲本工事、田中美佐子など豪華キャストが脇を固めます。

濱口竜介監督は『ハッピーアワー』で、ロカルノ、ナント、シンガポールはじめ、数々の国際映画祭で主要賞を受賞し、その名を世界に轟かせた新進気鋭の映像作家で、満を持して商業映画デビューを果たします!

映画『寝ても覚めても』の作品情報


(C)2018「寝ても覚めても」製作委員会

【公開】
2018年(日本映画)

【原作】
柴崎友香

【監督】
濱口竜介

【脚本】
田中幸子、濱口竜介

【キャスト】
東出昌大、唐田えりか、瀬戸康史、山下リオ、伊藤沙莉、渡辺大知、仲本工事、田中美佐子

【作品概要】
「違う名前、違うぬくもり、でも同じ顔。運命の人は二人いた」謎の男に恋をした女。しかし、その謎の男はほどなくして姿を消す。そして3年後、女は謎の男の生き写しにの男と出会う。そっくりだったから好きになったのか、好きになったからそっくりに見えるのか?めくるめく十年の恋を描いた物語。

柴崎友香プロフィールと作品の特徴

柴崎友香(しばさきともか)は、1973年10月20日生まれの大阪府出身の純文学作家。

大阪府立大学総合科学部の国際文化コース人文地理学専攻を卒業。

その後、1999年に、短編『レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー』を、「文藝別冊 J文学ブック・チャートBEST200」に掲載されたことで、作家デビューを果たします。

2000年に河出書房新社より出版された『きょうのできごと』は、2004年に行定勲監督によって、妻夫木聡と田中麗奈の主演で映画化されました。

2006年に新潮社より出版した『その街の今は』は、第23回織田作之助賞大賞を受賞。その翌2007年に同作品で、芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞を獲得し、さらに注目を集めます。

また、2010年に『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞受賞を獲得。

その後、自身の作品でたびたび芥川賞候補に上がっていたが、ついに2014年に文藝春秋より出版した『春の庭』で芥川賞を受賞しました。

原作『寝ても覚めても』のあらすじとネタバレ


(C)2018「寝ても覚めても」製作委員会/COMME DES CINEMAS

朝子と麦の出会いは、百貨店のエレベーターホール。

朝子がエレベーターを待っていると、降りてきたエレベーターの中から、パーカーにジーンズ、素足にゴム草履、といういでたちの手足が長い男、麦が歌を口ずさみながら出てきました。

そんな口ずさんでいる歌も含めて、心奪われる朝子。

麦のことが気になりながらも、エレベーターホールではただ通りすがっただけで終わります。

しかし、朝子は、飲み屋で麦と再会します。

その後、友だち関係を経て、自然と恋人同士になりました。

しかし、フワッとしている麦は、突然、フワッと姿を消したりします。

また、朝子が家に帰ってくると、何事もなかったように朝子の部屋にいて、朝子が一週間前に掃除しようと思っていたが掃除もせず、濡れたまま放置していた雑巾代わりのタオルに生えているカビをしゃがんでじっと見て、

「すげーな。この強い感じの緑色。ふわっとしてる」

「俺は遅くなってもちゃんと帰ってくるから大丈夫」

「さあちゃんがいるところに帰ってくる」と、謝ることもない麦。

朝子は突然いなくなったことを、とがめることもなく、ただ目の前に麦がいることに幸せを感じていました。

そして、またも麦が突然姿を消します。

今度は帰ってきません。

麦が姿を消してから3年が経ったある日、朝子は麦を見つけます。

しかし、その男は麦本人ではなく、麦の顔をした亮平という男でした。

顔のパーツも輪郭も、再び見る事を願っていた麦そのものの顔であるにも関わらず、その男は麦ではありません。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『寝ても覚めても』ネタバレ・結末の記載がございます。『寝ても覚めても』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
朝子が倒れたところを、亮平が介抱したことをきっかけに朝子と亮平は恋人同士になります。

朝子は、亮平と付き合いが続いても、顔が麦そのものに見えて仕方がありません。

しかし、朝子の友だち春代は、「雰囲気が麦に似ている」という程度で、朝子がいうほど、麦と亮平が似ているようには感じてはいませんでした。

そんな時、テレビに麦が映っているところを見かけます。

なんと、麦は鳥居麦として俳優になっていたのでした。しかも、超売れっ子とのことでした。

これはまぎれもなく麦だと確信する朝子。

そしてある日、携帯電話を横向きにして画面をじっと見ている男女のグループに出くわします。

そのグループの会話から漏れ聞こえてくる言葉の中で、明確に聞き取れた言葉がありました。

その言葉は「鳥居麦」でした。

朝子は一緒にいた春代と、急いで携帯電話を取り出し、「TV」と書かれたボタンを押し、画面を食い入るように見ます。

画面に映ったのは麦でした。

男女のグループの会話を聞いていると、「入り口のとこで」「あ、ほんとだ」「生中継?」「カッコよかった?」「まぁ、普通かな」。

朝子がいる場所のすぐ近くで、麦が出演している番組の撮影が行われていたのです。

朝子は春代と共に、大急ぎで麦がいるであろう場所へと向かいます。

人だかりをかきわけ、その撮影場所へと到着した朝子でしたが、そこには撮影していた形跡はあるものの、麦はいません。

しかし、朝子はいかにも芸能人が乗ってそうなマイクロバスを見かけます。

番組スタッフらしき人が機材を運び入れたりしています。

「あの中に麦がいる」と確信した朝子は、駆け寄りますが、番組スタッフの鉄壁のガードを崩すことができず、会う事はできません。

走り去るマイクロバスに向かって手を振る朝子。

するとある日、朝子の自宅前で「さあちゃん」という声が聞こえます。

朝子の目の前にいるのは麦で、「さあちゃんが手を振っていた。だから会いにきた」。

マイクロバスに手を振っている朝子を、麦はマイクロバスの中から見ていたのです。

突然消えては、突然現れる男、麦。

そのまま、朝子と麦は遠い所へと向かいます。

春代からは電話で、「亮平君のこと好きやし。亮平君のこと裏切ったあさちゃん、最低やと思う。だから、しゃべったりするのこれが最後」と絶縁宣言される朝子。

気にせず、麦のことしか見えていない朝子。

目的地へ向かっている道中、麦の顔を見ながら、「この人は亮平じゃない!」と感じ…。

麦に似ていたから亮平を好きになったわけではなく、亮平と一緒にいる時、麦を想っていた時の感情と同じになったと気がつき、“亮平の事が好きだ”と確信します。

そして、朝子は別の女と一緒にいる亮平と再会します。

「会いたかった」と。

『寝ても覚めても』の原作と映画の違いは?


(C)2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会

クライマックスの“心地好い裏切り”

原作小説の背表紙には「ラスト30ページ間で起こることは生涯忘れることはできない」とあります。

たしかに、物語の中盤までは、純文学らしくじわじわと進んでいきます。

それがクライマックスでは、怒涛の展開に引き込まれます。

【亮平と人生を歩む⇒麦が現れる⇒麦と共に生きる(亮平を裏切る)⇒亮平への想いに気づき亮平の元へ】という展開です。

「麦にそっくりだから好きになったのか?好きになったからそっくりに見えるのか?」の問いへの答えがクライマックスにあります。

東出昌大の1人二役に注目!

原作小説では、麦と亮平は朝子だけが同じ顔に見えているだけであって、実際は雰囲気は似ていても、姿、形は違う、という設定です。

しかし、映画では東出昌大が一人二役を演じる事から、姿や形が同じという設定になるようです。

ふわっとしている麦と、ちゃんとしている亮平。

映画やドラマであらゆる役柄をこなしている東出昌大が演じています。

映画『桐島、部活やめるってよ』で、2013年に第36回日本アカデミー賞新人俳優賞

2014年には映画『アオハライド』『寄生獣』『クローズEXPLODE』『0.5ミリ』を対象に、第88回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞

新人俳優からセカンドステージとしての演技派に移行するであろう東出昌大が、麦と亮平を演じ分けるのか要注目です。

まとめ

書評家である豊﨑由美は、原作者の柴崎友香の作品を、このように評しています。

「柴崎友香の小説で書かれる恋は、なんというか、こう、いつも少し変わっているのだった。筆致は端正でさっぱりしているにもかかわらず、読んでいると気持ちがざわつく。胸の奥に、変な感触の何かを刷毛でさっと塗り付けられた、そんな違和感を覚えたりするのだった」

たしかに、頷ける的確な評で、そんな感じです。

ありますよね、好きなった人が有名ハンサム芸能人に似ていると感じること。

端から見れば「どこがやねん!」と、突っ込むような風貌でも、ありますよね。

好きになった人が有名な美人芸能人に似ていると感じるの。他人から見れば「あなたの目は大丈夫ですか?」と突っ込むような風貌でも…。

“寝ても覚めても”のごとく、その人のことが“頭から離れない恋愛”というものは、そういった人間の感覚すらもかき乱すものなのでしょう。

恋は盲目ですから!

原作を読んで映画の公開が待ち通しくなりました。

映画『寝ても覚めても』は、9月1日(土)よりテアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国公開

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