Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ラブストーリー映画

Entry 2023/01/29
Update

『アイスクリームフィーバー』原作ネタバレ結末とあらすじ感想評価。川上未映子映画化で綴る“淡い初恋と心の痛み”

  • Writer :
  • 星野しげみ

川上未映子の短編『アイスクリーム熱』が『アイスクリームフィーバー』として映画化決定!

2008年『乳と卵』で芥川賞を受賞した川上未映子。2013年出版された短編集『愛の夢とか』の中に収録された『アイスクリーム熱』が、これまで発行された小説の中で初めて映画化されます。

映画タイトルは『アイスクリームフィーバー』。2023年7月14日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほかで全国ロードショーの作品です。


(C)2023「アイスクリームフィーバー」製作委員会

吉岡里帆をはじめとする若手キャストを起用した映画で、監督を務めるのはアートディレクターの千原徹也。従来の映画製作方法に囚われない手法で企画・立案し、初監督を成し遂げました。

映画『アイスクリームフィーバー』では、10~30代の女性4人を登場人物にして彼女たちの人生を描いています。

映画原作となった短篇『アイスクリーム熱』をネタバレありでご紹介します。

小説『アイスクリーム熱』の主な登場人物

【わたし】
アイスクリームショップでアルバイトをする女性

【彼】
2日おきぐらいにアイスクリームを買いに来る男性

小説『アイスクリーム熱』のあらすじとネタバレ


川上未映子『愛の夢とか』(講談社、2013)

アイスクリームショップでアルバイトをしているわたし。

初めて彼がアイスクリームを買いに来た時、一目見て彼が好きになりました。

彼は2日おきに規則正しく、決まって夕方の4時くらいに来て、イタリアンミルクとペパーミントスプラッシュの組み合わせで、アイスクリームカップを買っていくのです。

それはいつもきまって同じ組み合わせでした。

彼が来るようになって丁度2カ月目にあたる日に「どうしていつもカップなの」「アイスクリームの何が好きなの」と尋ねてみました。

「まず冷たいこと。それから甘いこと」「邪魔だから」。

模範解答をされて、わたしは黙ってしまいました。

彼もわたしのことを嫌いではないと思います。向かいにもう一軒アイス屋があるのに、2日おきに通ってくるし、わたしに注文するし、一回につき一度はわたしの目をじっと見ますから。

ある日、彼が店に来た時に、わたしはもう仕事が上がるので一緒に駅まで歩いて帰らないかと誘ってみました。

彼は「いいよ」と言いました。

並んで歩きながら、わたしはとりとめないことを話し、彼にいろいろ聞きました。

彼は駅の向こうに一人で暮らしていて、家で仕事をしている33歳。

わたしは「アイスクリームが作れる、得意なんだよ」と嘘をついてその日別れました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『アイスクリーム熱』ネタバレ・結末の記載がございます。『アイスクリーム熱』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

次の日も彼はアイスクリームを買いに来ました。それから同じように駅まで一緒に帰る日が何回かありました。

彼が何も言わないので、「いつアイスクリームを作りに行っていいの?」「今日でもいいの?」と聞いてみました。

彼が「いいよ」と言ったので、わたしはそのまま彼の部屋に押しかけて行きました。

真夜中を過ぎて朝の4時までかかって作ったアイスクリームは大失敗。

どろどろのお粥みたいになり、全然おいしくなかったけれども、わたしも彼も黙って食べました。

それ以来、彼はアイスクリームを買いに来なくなりました。

彼の家の方に行くこともしません。わたしは彼の家の表札で確認した名字しか知らないし、彼はわたしの名前も知らないのです。

1カ月くらいは何となく苦しい気持ちでいたけれど、2カ月にさしかかる頃には、もう何も考えなくなっていました。

それから、アイスクリームは突然閉店することになりました。わたしは次のアルバイトを探しますが、なかなか見つかりません。

そして、わたしは自分が何もできないまま、こんな大人になってしまったことを思い知らされました。

小説『アイスクリーム熱』の感想と評価

わずか10ページ足らずの短いお話です。アイスクリーム屋でアルバイトをしている主人公がお客の男性に一目ぼれ。

いつも同じアイスを買っていく彼に興味を持ち、ある日声をかけて駅まで一緒に帰ります。

短い会話で「わたし、アイス作るの上手なの」と、嘘をつきます。本当はアイスクリームなんか作ったこともないくせに。

そしてついに彼の自宅で手作りアイスを作って一緒に食べることになったのですが・・・。

恋愛、人生はそんなに甘いものではありません。みじめな結果となり、わたしの恋も終わりを遂げます。

彼の来店を毎日待つ‟わたし”の乙女心がいっぱいつまった本作。彼への一途な気持ちが述べられるのに対して、彼の気持ちは一切描かれていません。あくまでわたしサイド視線で話は展開します。

名前も知らない彼を思う主人公に、自分もそんな思いをしたことがあると共感する方も多いのではないでしょうか。

その一方では、あまりにあっけない恋の終わりに物足りなく思う方もいるでしょう。憧れていた彼と少し親しくなれば、こんなものかと思うこともたくさんあるのです。それは人生においても言えること。

初恋の切ない痛みや人生の喜怒哀楽を、アイスクリームをキーワードにコンパクトにまとめ上げた小説でした。

映画『アイスクリームフィーバー』の見どころ

原作小説は千原徹也監督によって『アイスクリームフィーバー』というタイトルで映画化決定。原作との大きな違いは、主人公が4人の女性というところです。

吉岡里帆、モトーラ世理奈、詩羽、松本まりかという4人のキャスト陣が、アイスクリームショップを舞台にそれぞれの人生模様を演じます。

吉岡里帆演じる、夢を諦めかけている常田菜摘は、アイスクリーム屋のアルバイトです。アイスクリーム屋の常連客で、人生に怯えて一歩を踏み出せないでいる作家・橋本佐保を、モトーラ世理奈が演じます。

また、10代後半でまだ恋が何かも知らない、菜摘のアルバイトの後輩・桑島貴子は詩羽、アイスクリーム屋の近所の銭湯に通う、仕事が生きがいの女性高嶋優に松本まりかが扮し、物語に厚みを持たせます。

1人の女性の恋愛話だけなく、4人の“想い”と“人生”が交錯。そこにあるのは、4人分の人生の重みでしょう。恋に仕事にと、人生を謳歌する女性たちの姿に期待します。

初監督を務める千原徹也のアートディレクターとしてのセンスが、どのように映画に反映されているのか、とても楽しみです。

映画『アイスクリームフィーバー』の作品情報


(C)2023「アイスクリームフィーバー」製作委員会

【日本公開】
2023年(日本映画)

【原作】
川上未映子:『愛の夢とか』(講談社)収録の『アイスクリーム熱』

【監督】
千原徹也

【脚本】
清水匡

【キャスト】
吉岡里帆、モトーラ世理奈、詩羽、松本まりか、安達祐実、南琴奈、後藤淳平、中谷清也、コムアイ、MEGUMI、片桐はいり、松本まりか、もも、藤原麻里菜、新井郁、ナツ・サマー

まとめ

芥川賞作家・川上未映子の短編小説『アイスクリーム熱』をご紹介しました。

アイスクリームにまつわる短い恋愛小説ですが、そこには初恋に翻弄される女性の瑞々しい感性と大人への第一歩が描かれています。

映画化にあたっては登場人物も増えて、人生模様も複雑になると予想されます。アイスクリームも解けそうなアツいラブも用意されているのではと秘かに期待します。

映画『アイスクリームフィーバー』。2023年7月14日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほかで全国ロードショーです。


関連記事

ラブストーリー映画

【ネタバレ映画】隣のステラ|あらすじ感想評価と結末の考察。キャストの福本莉子×八木勇征が女子高生とスターとの切なく爽やかな恋を演じる!

届かない恋のもどかしさがたまらない 人気コミック『隣のステラ』を実写映画化したラブストーリー。『今夜、世界からこの恋が消えても』(2022)の福本莉子と『劇場版 美しい彼~eternal~』(2023 …

ラブストーリー映画

映画『プラハのモーツァルト 誘惑のマスカレード』あらすじと感想

モーツァルト生誕260年記念の本作『プラハのモーツァルト 誘惑のマスカレード』。 あの名作『アマデウス』に続き、遂に新たなるモーツァルト映画の誕生。1787年のプラハを舞台に天才音楽家を巡る愛と、また …

ラブストーリー映画

映画『蝶々夫人』ロイヤルオペラの公開日と上映館は?

映画館でオペラを観るのはいかがでしょうか? 日本に魅せられたプッチーニが書き上げたオペラ名曲『蝶々夫人』。ロイヤル・オペラは2017年5月26日(金)から公開! 他人を愛することを知ったわずか15歳の …

ラブストーリー映画

映画『彼女が好きなものは』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。原作 浅原ナオトのWEB小説を神尾楓珠と山田杏奈が印象的な演技で魅せる

ゲイであることを隠して生きる高校生・純とBL好きであることを秘密にしているクラスメイトの紗枝。思いがけないきっかけで付き合うことになった2人は……!? 浅原ナオトの小説『彼女が好きなものはホモであって …

ラブストーリー映画

映画『午前0時、キスしに来てよ』ネタバレ感想レビュー。少女漫画の実写化で胸キュンシーン満載!

この冬、キラキラのシンデレラストーリーが誕生。 おもわず「恋したい!」気分になるかも!? 『近キョリ恋愛』『きょうのキラ君』と映画化が続く、人気漫画家みきもと凛の、単行本累計300万部突破となった『午 …

『還り花』
Cinemago|想像力の海へ、シネマダイビング。
ACT1|次の物語は、人からはじまる。
Cinemagoオンラインショップ|DVD・鑑賞チケット・オリジナルグッズ
『血を吸うスマトラオオコンニャク』
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学