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Entry 2022/06/01
Update

【本田望結インタビュー】『きさらぎ駅』ホラー映画初出演での学びと“みんなが応援してくれる選択”の先の幸せ

  • Writer :
  • 河合のび

映画『きさらぎ駅』は2022年6月3日(金)より全国ロードショー!

凪待ち』『タイトル、拒絶』などで知られる恒松祐里の映画初主演作『きさらぎ駅』。

ネットの匿名掲示板発の“現代の神隠し”として人々の心を虜にしてきたキングオブ都市伝説「きさらぎ駅」を題材に、誰も体感したことのない都市伝説の正体を描いたホラーです。

photo by 田中舘裕介

このたびの劇場公開を記念して、主人公・春奈がきさらぎ駅で遭遇する女子高校生・宮崎明日香を演じられた本田望結さんにインタビュー。
初のホラー映画出演となった本作での学び、ご自身の女優という仕事や「二人の本田望結」に対する現在の想いなど、貴重なお話を伺いました。

ホラー映画ならではの芝居を学べた

(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会
──今回の映画『きさらぎ駅』への宮崎明日香役としてのご出演は、本田さんにとって初のホラー映画出演にもなりました。
本田望結(以下、本田):実は「高校生」の役も本作が初めてだったんですが、あまりそのことへの不安や緊張などはなく、素直にうれしかったのをよく覚えています。

とにかくお芝居をすることが大好きですし、経験が無駄になることなんて絶対にないと考えています。実際に撮影現場へ入ってみても、これまで出演させていただいた作品とは全然違うことばかりを経験したので、『きさらぎ駅』に参加できて本当に良かったと感じています。
──今回の映画『きさらぎ駅』へのご出演を通じて、特に大きな学びとなったご経験は一体何でしょうか。
本田:本作の多くの撮影は、カットを割らない一連撮りだったんです。通常の作品のお芝居だと、一つのシーンを寄りで撮り・引きで撮りという風に複数のアングルのショットを撮っていくんですが、本作ではシーンを一連の流れで撮っていくんです。

そうなるとカメラには360度全てが映ってしまうので、映り込まないよう周囲にスタッフさんがいない状況で撮影を進めていくことになるため、キャスト側もスタッフ側も「リアル感」をもって撮影に望めたのがとても面白かったです。

また人間は大抵、何かにワッと驚かされたらコンマ何秒ですぐに反応するはずです。それをリアルに再現するのがお芝居の一番大事なところだと思うんですが、ホラー映画ではコンマ何秒という速度で物事や映像を展開させてしまうと、映画を観ている方が情報を認識し切れず「今、何が起こったの?」と困惑させてしまうんです。

そしてカメラも一台での撮影だったので、カメラワークと呼吸を合わせてリアクションをするという「間」を考えてのお芝居が必要だったんですが、それは今まで経験したことのないホラー映画ならではのお芝居のあり方でもありました。永江監督も数々のホラー作品を撮られてきた方であり、明日香の役作りは私に一任してくださった上で、ホラーならではの「間」を意識したお芝居、カメラワークのあり方を多くお教えてくださいました。

「こういうお芝居もあるんだ」と映像作品におけるお芝居の新しい扉を開くことができたと感じているので、本作へ参加できたのはやはり間違いなく意味があったと思っています。

女優という世界では「新人」

photo by 田中舘裕介
──「お芝居をすることが大好き」と先ほどおっしゃっていましたが、本田さんはお芝居または演技のどのような点に魅力を感じられているのでしょうか。
本田:3歳の頃から私はこの世界にいるんですが、年々「お芝居のことが本当に好きなんだな」と実感が強まっています。やはり「本田望結ではない人」になれるのがお芝居の魅力だし、同時に難しさだと思っています。

「自分はお芝居が好きなんだ」ということは今回の『きさらぎ駅』でも強く感じましたし、自分はお芝居をすることと同じくらい「みんなで一つの作品を作り上げる」という達成感が好きなんだと実感したんです。

また子役時代から多くのお芝居をさせていただいてきて、その頃に学べたことで現在までにつながっているものは数え切れないほどあるんですが、「子役」と「女優」は本質的には違うものだとも感じています。

お芝居そのものは多くの作品でさせていただけたものの、「女優」としての私はまだまだ若手の新人だと思うので、今はとにかく学んで学んで、学び続けています。ですから女優という世界での「慣れ」はまだ何も感じていなくて、かつて子役時代に学んだものを生かしながらも、この世界で新しい発見に出会い続ける日々を送っています。

二人の本田望結

photo by 田中舘裕介
──本田さんは「女優」としてのご自身を、お芝居のお仕事と同じく3歳の頃から続けられている「フィギュアスケーター」としてのご自身をどのように捉えられているのでしょうか。
本田:芸能の世界で本田望結と名乗る時、誰かに紹介される時には「〇〇の本田望結です」という風に、肩書きというものが常に名前のそばにあります。その中で自分にとっては、やはり「女優の本田望結です」が一番「本田望結」だと感じています。

ただフィギュアスケートに関しても同じくらいそれを感じていて、私の内では二人の「本田望結」がいる感覚があるんです。現場では「女優の本田望結」としてお芝居に臨んでいる一方で、スケートリンク上では「フィギュアスケーターの本田望結」として練習を続けている。また現場でもリンク上でもない時には、「二人の本田望結」がそれぞれ私の中にいます。

その切り替えが現時点ではうまくいってるので特に悩むこともないんですが、将来大人になっていく中でその切り替えが難しくなった瞬間が、自分にとっての自己を見つめ直すタイミングなのかなと小さい頃から考えてます。

また小さい頃から「どっちの方が好きなんですか?」と尋ねられることが多いんですが、その際には「『お父さんとお母さん、どっちが好き?』と尋ねられているような感覚です」と答えています。それぐらい選びようがなくて、答えようがない質問なんです。

そこにいてくれることに感謝する一方で、当たり前のようにいてくれる存在。それがお芝居でありフィギュアスケートだと感じています。

みんなが応援してくれる選択の先にある「幸せ」

photo by 田中舘裕介
──「二人の本田望結」を見つめ直す時といういつか訪れるかもしれない可能性に対し、今現在の本田さんならばどう向き合いたいとお考えなのでしょうか。
本田:小さい頃から10年以上この生活をしてきて、いまだにその切り替えがうまくいかなったということはないため、それだけ二つが大好きなんだと感じています。もしこの先、その切り替えがうまくいかない時が訪れるとしたら、それは二つに対する想いに変化が生じた時であり、終わりの時なのかもしれないと感じています。

ただ、もし未来の自分にそんな時が訪れるのだとしたら、その責任は今ここで生きている自分にあるとも考えています。そしてそうならないためにも、未来の自分がいるであろう諦めない道、つまり楽しい道を選び、進み続けたいと思っています。
──本田さんが人生において「選択」を行うにあたって、最も大切にしている「指標」とは何でしょうか。
本田:小さい頃から「一番大変なもの」を選ぶようにしていて、それは今後も変わらないかなと感じています。たとえばAとBという二つの選択肢の中でAを選び、その結果何かしらの失敗をした時に「Bの方を選んでいたら、今頃幸せだったのかな」と思えた場合、多分Bの方が正解なんです。

たとえBという選択肢の先でも失敗をしたとしても「失敗はしたけれど、AではなくBを選んでよかった」と思えるでしょうし、その時点でBという選択肢は「本物」だと信じられます。そういう風に一方の選択肢を選んでみて「失敗した後に、もう一方の選択肢を自分はどう捉えるか?」と考えることはよくしています。

自分自身では「選択」と捉えていないものも含め、人間は一日何百回何千回と大小さまざまな選択をしながら生きていると思います。ただ私は、正直まだ「これは自分の人生にとって、本当に大きな選択だった」と感じた選択を経験していません。

これから大人として仕事を続けていく以上、そうした大きな選択が訪れることに多少不安も感じています。その中でも、自分が後悔をしない選択をし続けるのはもちろん、何よりも自分に寄り添ってくれる方々の言葉を大切にしているからです。

みんなの応援がないと人間はがんばれないと思いますし、みんなが応援してくれる人間、みんなが応援してくれるところに行かないと「幸せ」というものはないと思うので、一つ一つの励ましの言葉を大切することは、大人になっても変わらずに続けたいと感じています。
インタビュー/河合のび
撮影/田中舘裕介
スタイリスト/田中トモコ(HIKORA)
ヘアメイク/牧野裕大(vierge)
衣装協力/ailéFanM、貼るだけピアス Leange、AGU、お世話や

本田望結プロフィール

2004年生まれ、京都府出身。フィギュアスケーターとしても活動。

2011年、『家政夫のミタ』(日本テレビ系)への出演で話題となり、2015年、『ポプラの秋』で映画初主演、2017年には『探偵少女アリサの事件簿』(テレビ朝日系)でドラマ初主演を飾る。

近年の出演作には、ドラマ『陰陽師』(2020/テレビ朝日)、『どうせもう逃げられない』(2021/MBS)、映画『バイプレイヤーズ〜もしも100人の名脇役が映画を作ったら』(2021)など。

映画『きさらぎ駅』の作品情報


【公開】
2022年(日本映画)
【監督】
永江二朗
【脚本】
宮本武史
【キャスト】
恒松祐里、本田望結、莉子、寺坂頼我、木原瑠生、瀧七海、堰沢結衣/芹澤興人/佐藤江梨子
【作品概要】
都市伝説「きさらぎ駅」の謎に迫る主人公・堤春奈を演じるのは、『凪待ち』(2019)でおおさかシネマフェスティバル2020にて新人女優賞を受賞後、『タイトル、拒絶』(2020)やNetflixドラマ『全裸監督 Season2』(2021)でヒロインを務めるなど、話題作への出演が続き注目される恒松祐里。彼女にとって本作が映画初主演となる。

さらに女優・フィギュアスケーターとして活躍する本田望結、モデル・女優として活躍しドラマ『ファイトソング』(2022)など話題作へ立て続けに出演する莉子、『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』で主演を務めた寺坂頼我、『魔進戦隊キラメイジャー』で人気を博した木原瑠生などが登場。そして物語の鍵を握る葉山純子役を佐藤江梨子が演じる。

監督は『真・鮫島事件』をはじめネット都市伝説を基にした映画化で定評のある永江二朗。

映画『きさらぎ駅』のあらすじ


(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会

大学で⺠俗学を学ぶ女子大生の堤春奈(恒松祐里)は、卒業論文で十数年来、ネットで現代版“神隠し”と話題になっている都市伝説「きさらぎ駅」を題材に取り上げることにした。

リサーチの結果、「きさらぎ駅」の原点となった書き込みの投稿者『はすみ』ではないかとされる葉山純子(佐藤江梨子)という女性の存在を知る。ようやく純子への連絡先を知り、数ヶ月にわたりメールでやりとりした結果、春奈は純子と会う約束を取り付ける。

指定された場所は「きさらぎ駅」の舞台となった路線にある一軒家。春奈を出迎えた純子はどこか影のある雰囲気を持つ女性。部屋へ案内され、早速ネットで噂される『はすみ』本人との真偽を確かめる春奈に対して、純子はどこか謎めいた笑いを浮かべながらも春奈からの問いかけに静かに頷く。

続けて、純子から「きさらぎ駅」にたどり着いた経緯、その後の出来事などを聞いた。その内容は春奈には到底信じられるものではなかったが、純子の話の中で春奈はなぜ純子だけが「きさらぎ駅」へとたどり着くことができたヒントに気づく。

純子と別れた春奈は自然に「きさらぎ駅」の舞台となった遠州鉄道の駅へ向かう。この選択が春奈の運命を大きく狂わせることになってゆく。

編集長:河合のびプロフィール

1995年生まれ、静岡県出身の詩人。2019年に日本映画大学・理論コースを卒業後、2020年6月に映画情報Webサイト「Cinemarche」編集長へ就任。主にレビュー記事を執筆する一方で、草彅剛など多数の映画人へのインタビューも手がける。

2021年にはポッドキャスト番組「こんじゅりのシネマストリーマー」にサブMCとして出演(@youzo_kawai)。

photo by 田中舘裕介





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