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Entry 2021/02/06
Update

映画 樹海村ネタバレ|結末ラスト感想とエンドロール解説考察。山田杏奈×山口まゆ演じる姉妹の運命分けた“約束”と“呪い”への変質

  • Writer :
  • 岩野陽花

映画『樹海村』は2021年2月5日(金)より全国ロードショー公開!

2020年に大ヒットした『犬鳴村』に続く「恐怖の村」シリーズ第2弾であり、「自殺の名所」と知られる富士・青木ヶ原樹海、インターネット怪談の名作「コトリバコ」がそれぞれに持つ恐怖を再解釈・融合させたホラー映画。

それが2021年2月5日(金)公開の映画『樹海村』です。

本記事では、映画『樹海村』ラストシーンおよびエンドロール映像にて描かれた展開の意味をそれぞれ考察・解説。主人公姉妹の命運を分けた原因、「約束の物語」としての映画『樹海村』の姿を探ります。

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映画『樹海村』の作品情報


(C)2021「樹海村」製作委員会

【公開】
2021年(日本映画)

【監督】
清水崇

【脚本】
保坂大輔、清水崇

【キャスト】
山田杏奈、山口まゆ、神尾楓珠、倉悠貴、工藤遥、大谷凜香、塚地武雅、黒沢あすか、安達祐実、國村隼

【作品概要】
2020年に大ヒットしたホラー映画『犬鳴村』に続いて制作された「恐怖の村」シリーズの第2弾であり、「自殺の名所」として知名度が高い青木ヶ原樹海、知る人ぞ知るインターネット怪談の名作「コトリバコ」を題材に新たな恐怖の物語を描いた作品。

主演のの山田杏奈・山口まゆをはじめ、神尾楓珠、倉悠貴、工藤遥、大谷凜香、塚地武雅、黒沢あすか、安達祐実、國村隼らが出演。そして監督はシリーズ第1弾『犬鳴村』に引き続き、「呪怨」シリーズなどJホラーを代表する監督の一人・清水崇が務めた。


映画『樹海村』のあらすじ


(C)2021「樹海村」製作委員会

かつて人々を戦慄させ、多くの人間を死に絶えさせた禍々しき古き呪いは、木々と根と苔に覆われた樹海の深き深き奥へと封印されました。

やがて13年後。響(山田杏奈)と鳴(山口まゆ)の姉妹の前に、封印されたはずの呪いが姿を現します。

そして樹海では、謎の行方不明が続発していました……。

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映画『樹海村』ラスト考察・解説


(C)2021「樹海村」製作委員会

響が聞いた「呼び声」と鳴を苦しめた「耳鳴り」

映画終盤、樹海内の地下洞穴に転落してしまった鳴は、すでに「村人」の一員と化した輝(神尾楓珠)と美優(工藤遥)がコトリバコから放った「指」……から伸び生えてきた「村人」たちに襲われます。しかし精神病棟の隔離室で同じく樹海村の呪いに襲われていたものの、自身の「異能」をもって思念体を洞穴に出現させた響は姉・鳴の逃走を助けます。

「村人」たち全員が樹木と化し襲撃が収まったのも束の間、強烈な耳鳴りでその場にうずくまる鳴。一方の響は「何かの呼び声」に気づき、自身の運命を悟った上で「お姉ちゃんは逃げて」と告げます。かつての母・琴音と同じ運命を辿らせたくない鳴は拒みますが、響の左手薬指はすでに「村人」たち同様に切り落とされていました。

響は鳴を抱きしめ「ずっと一緒にいるからね」とだけ口にすると、鳴を突き飛ばします。やがて響の足に木の根が食い込み始め、樹木となったはずの「村人」たちも彼女の体に群がり融合。大樹と化した響は洞穴の天井にぶつかり出口となる穴を開けた後、完全な樹木へと変化。同時に隔離室にいた「実体」の響も息絶えたのです。

姉妹の命運を分けたのは、響が映画作中でも幾度か耳にしていた「呼び声」が聞こえたか否かであることは明らかでしょう。そして祖母・唯子(原日出子)の証言にもある通り、姉妹の母・琴音(安達祐実)も一時期から「何か」が見える力を発現し怯えるようになっていた事実から、呪いに囚われた亡者たちの姿とその記憶をみる、或いは聞く響の異能の力は、母から受け継いでしまった「業」であることも伺い知れます。

「紙一重」だった姉妹の命運


(C)2021「樹海村」製作委員会

そして響が自室に残した謎の絵図をスマホ撮影した際、鳴もまたその絵図を通じて樹海村の過去の記憶を幻視していることからも、鳴もまた妹・響同様に少なからず母・琴音の「業」と「異能」を受け継いでいました

しかし前述の通り、鳴が「耳鳴り」として感じ取っていたものを、響は「自身を呼ぶ声」と感じ取ってしまったことで、樹海村の呪いに絡め取られ、囚われてしまいました。もし鳴も、ソレを「耳鳴り」ではなく「呼び声」と感じ取ってしまっていたら……「琴音の血をより濃く受け継いでいた否か」という紙一重の差で、鳴は九死に一生を得たのです。

或いは、鳴が幼き日に樹海で母・琴音と交わした「響のこと、ちゃんと見てあげてね」という約束を通じて、鳴が母・琴音の死後も続く「異能」に守られていた可能性も捨て切れません。

しかし「約束」の結果は、母から濃く受け継いだ業と異能によって、幼少期に樹海村で多くのものを目にし、樹海村に深く踏み入れ過ぎてしまった響に逆に助けられ、村の呪いに囚われた彼女に対し鳴は何もできなかったという残酷極まりないものでした。

「約束」の物語としての『樹海村』:ラストシーンにて


(C)2021「樹海村」製作委員会

映画『樹海村』は「指切り」という行為に込められている意味「約束/結束」を通じて、怪談「コトリバコ」に込めらられた「呪殺の道具を製作するに至った村人たちの『約束/結束』という狂気」という恐怖に着目。コトリバコが持つ「呪殺の道具」という性質から見出した、「村の約束/結束の証であり、村の存続・繁栄を意味する象徴」という一見真逆な性質を独自に解釈・描写しています。

そのことを踏まえると、『樹海村』の物語は「呪い」の物語であるとともに、「約束」の物語でもあると読み解くことができます。

鳴が樹海内の穴に転落した時、そこで記憶の奥底で眠っていた本当の記憶、母・琴音が命を落とした本当の理由も映像として幻視しています。そして母が幼き日の自身と交わした「響のこと、ちゃんと見てあげてね」という約束を思い出し、母の決死の愛情、何より母の末期と「約束」を忘れてしまっていた自分自身の不甲斐なさに涙を流したのです。


(C)2021「樹海村」製作委員会

また美優の失踪後、「寺を放火した理由」を鳴に尋ねられた場面にて、響は彼女は「私が死ぬ時、一緒にいてくれる?」と姉に問いかけます。そして前述の映画終盤にて、自身の運命を悟った響は「ずっと一緒にいるからね」とだけ「約束」します。しかし響の死によって自身の命を救われ、樹海を脱出できた鳴は一言「一緒にいるって言ったくせに」とだけ呟きます。

「ずっと一緒にいるからね」と約束をしたにも関わらず、結局樹海村の呪いに囚われてしまった妹・響への怒りと悲しみ。幼き日、決死の覚悟で姉妹を逃した母・琴音と最期に交わした「響のこと、ちゃんと見てあげてね」という約束を守れなかった自分自身への怒りと悲しみ。そして、響の「私が死ぬ時、一緒にいてくれる?」という鳴にとっては決して叶えたくはない約束が、「自分のみが生き残る」という形で叶ってしまったことへの怒りと悲しみ。

より端的に言い換えるならば、「後悔」という感情。それらがあらゆる形で自身の心に生じたことで、『樹海村』ラストシーンにて鳴はあの一言をこぼしました。そしてその「後悔」たちは全て、鳴が交わしてきた「約束」によって生じてしまったものなのです。

「約束」をも絶やす悍ましき「約束」:エンドロールにて


(C)2021「樹海村」製作委員会

しかし映画『樹海村』のエンドロール中には、姉妹と母娘の余りに切ない「約束」と後悔をも踏みにじる、絶望的な光景が描写されています。それがとある一家の車庫で少女が見つけた「コトリバコ」と、いずこから聞こえてきた「きちゃダメ」という響の弱々しい声です。

『樹海村』作中に登場するコトリバコは、「指切り」という「約束/結束」の行為によって製作された樹海村の約束/結束の証であり、村の存続・繁栄を意味する象徴として描かれています。そのように描かれている『樹海村』版コトリバコは同時に、「約束」の一線を越えた先に「呪い」が存在することを暗示しています。

「約束」という個々にその名前を持つ愛情を、名前すらも失った集団の狂気という「約束」によって絶やす。あらゆる約束やそこに込められた様々な想いまでをも飲み込み、「自分たちが生み出した樹海村の繁栄」という約束をより強めていく。

それは樹海村の村人たちによって結ばれた「約束」が最早「呪い」と化していること、「呪い」へと成り果てた「約束」こそが、「約束」を通じて名前を持つ愛情を他者に抱き続ける人々を絶望に至らしめることを示しているのです。

まとめ


(C)2021「樹海村」製作委員会

映画『樹海村』作中のとある場面にて、樹海をよく知る男・出口(國村隼)は、かつて「神の森」であった樹海では「生贄」という口実で長らく「口減らし」の風習が行われていた(あくまで『樹海村』の作中設定ですが)と明かしています。

そして「風習は終わったが、自分で死にたいというやつがここへくる」「誰にもわかってもらえない」「そういう奴らの思いはどこへいくと思う?」と同場面で発言していた出口は、のちにコトリバコの由来についても「手に余るものを神の森に捨ててきた報いだろう」と語っています。

誰かが遺棄した約束の「責」が集団という塊……「箱」のような形をした塊と化し、自分たちが定めた約束に基づき新たな「責」を生み出した。その「責」は塊の分身といえる「箱」を介して、自分たちが定めた「責」を見知らぬ他者や集団へと矛先を向け続ける。

それは変わり果てた負の約束=「呪い」そのものであり、約束に伴う「責」の遺棄と押し付け合いこそが、約束を呪いへと変質化させ存続させるという救い難い真実でもあります。


(C)2021「樹海村」製作委員会

強制的であれ、自主的であれ、誰かが/何かが「責」を負わなくてはならない。けれども、そんなもの背負いたくなどない……上から下へとこぼれ落ちていくように流れていく約束の「責」は、やがて約束を「呪い」へと変える。その様は、「樹海に捨てられた人々が作った村」という特異な環境のコミュニティだけでなく、あらゆる形式のコミュニティにて立ち現れるものといって過言ではないでしょう。

映画『樹海村』は「樹海村」というコミュニティに関する都市伝説、「コトリバコ」という呪いに関するネット怪談を組み合わせることで、「コミュニティにおいて『呪い』はいかにして生まれ、途絶えることがなくなるのか?」を真正面から描いています。そして誰もが一笑に付してしまうような結論を、ラストシーン及びエンドロールにて真剣に提示しているのです。

「今も、呪いは続いている」と。







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