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Entry 2022/02/22
Update

ネタバレ映画『牛首村』感想考察とあらすじ結末の解説。犬鳴村の遼太郎の姿も!実在の舞台モデルにリンクする“震えを聞く”という恐怖の根源

  • Writer :
  • 岩野陽花

実在の最恐心霊スポット×伝説の怪談「牛の首」
恐怖の村シリーズ第三弾『牛首村』!

九州に実在する心霊スポットを題材にした『犬鳴村』(2020)、自殺の名所として有名な富士の樹海を舞台にした『樹海村』(2021)に続く村シリーズ第三弾『牛首村』。

北陸最恐の心霊スポット・坪野鉱泉を舞台に、「その恐ろしさゆえに誰もその内容を知らない」とされる伝説の怪談「牛の首」をモチーフに新たな恐怖譚を生み出しました。

本作を手がけた清水崇監督曰く、『犬鳴村』『樹海村』そして『牛首村』は「恐怖の村」シリーズであると同時に「血筋の三部作」でもあるとのこと。

本記事では、映画『牛首村』をネタバレ有りあらすじとともに紹介していきます。

映画『牛首村』の作品情報


(C)2022「牛首村」製作委員会

【公開】
2022年(日本映画)

【監督】
清水崇

【脚本】
保坂大輔、清水崇

【出演】
Kōki,、萩原利久、高橋文哉、芋生悠、大谷凜香、莉子、松尾諭、堀内敬子、田中直樹、竜のり子、麿赤兒

【作品概要】
清水崇監督が手がけてきた「恐怖の村」シリーズの第三弾。富山県に実在する北陸最恐の心霊スポット・坪野鉱泉を舞台に、「その恐ろしさゆえに誰もその内容を知らない」とされる伝説の怪談「牛の首」をモチーフとした物語が描かれる。

主演は本作で映画初出演・初主演を果たしたKōki,。「牛首村」にまつわる呪いと恐怖に巻き込まれてゆく女子高生姉妹を一人二役にて演じた。

映画『牛首村』のあらすじとネタバレ


(C)2022「牛首村」製作委員会

ある夜、肝試し配信をすべく、多くの曰くや体験談の数々によって恐れられている温泉旅館の廃墟、通称「坪野鉱泉」へと訪れた女子高生のアキナ(大谷凜香)とミツキ(莉子)、そして詩音(Kōki,)。

顔出しを嫌がる詩音に「牛の首」を模したゴムマスクを被せるアキナ・ミツキ。そして「異世界につながる」と噂される建物内のエレベーターに、詩音を無理やり閉じ込めてしまいます。

エレベーターのカゴ内に、ひとりきりにされた詩音。すると彼女の腰にボロボロに傷ついた何者かの両腕が絡みつき、詩音の恐怖は頂点に達します。

またカゴの天井からも、何者かの手が降りてきます。詩音はその手を掴もうとし、腰に絡みつく両腕から逃れようとしますが、結局天井から降りてきた手を掴むことはできず、誤ってその手に深い引っ掻き傷を残してしまいます。

異変に気づいたアキナ・ミツキはエレベーターのドアを開けようとしますが、突如昇降路内のカゴが動き出し、最下階へと落下。しかし轟音とともに最下階へと着地したカゴの中に、詩音の姿はありませんでした。

……どこかの部屋の窓ガラスに指で蝶と花の絵を描く、二人の少女。少女たちは外で虫取りをするが、一人が蝶を殺してしまう。蝶を埋葬し終えた彼女は、「殺しちゃったの?」と尋ねてきたもう一人の少女に「ひとりぼっちじゃ、かわいそう」と答える……そんな夢から目覚めた、女子高生の奏音(Kōki,)。

奏音は普段通りの日常を送りますが、スマホの音声認識端末の異常や自室の外から感じとった何者かの気配、何よりもいつできたのか分からず、明らかに自然にできたものではない手の引っ掻き傷を無視できずにいました。

ある日、バイト先に訪れたクラスメイトの蓮(萩原利久)にアキナたちの肝試し配信の動画を見せられる奏音。そして彼女は、動画内で誤って牛首マスクを外してしまった詩音……どこの誰かも知らない、しかし自分とあまりに瓜二つな女子高生の顔を見て驚きます。

スマホの音声認識端末や作曲アプリの異常、そして泣き続ける「牛頭人身」の少女の幻覚など、奏音が周囲から感じとる異変は次第に強まっていきました。ついに彼女は、動画内に出演していた自分と瓜二つな「あの子」に会うため、蓮とともに坪野鉱泉がある富山県へと向かうことを決心します。

夜行バスで富山県に到着した奏音・蓮。名物である蜃気楼で見えた「無数の、二人組の人影」奏音が違和感を抱きながらも、二人は富山県で暮らしているという山崎(松尾諭)と出会います。

二人と知り合った山崎は、自身の車で目的地である坪野鉱泉へ案内することに。またその道中での車内にて、奏音・レンは山崎から「牛首トンネル」とそのトンネル内にあったという奇妙な地蔵、そして知ってはならない怪談「牛の首」の噂を聞かされます。

「車の前に突如女が飛び出してきて轢いてしまうが、轢かれた女はどこにもいなかった」というアクシデントに遭遇しながらも、坪野鉱泉に到着する三人。山崎は外へ残り奏音・蓮は建物の探索を始めますが、山崎は「屋上から身を投げ続ける女」に遭遇してしまいます。

一方、奏音は詩音が乗っていたエレベーターへ向かいます。原因不明の手の引っ掻き傷……夢の中で誰かを助けようとして伸ばした手についた引っ掻き傷がやはり「ここ」で生じたのだと察しつつも、奏音は最下階に落ちたエレベーターのカゴ内を確かめようとします。

カゴ内の壁に設置されていた鏡には、指で描かれた蝶と花の絵が。それは奏音が夢で見た絵そのものでしたが、スマホの音声認識端末が以前同様に「ヨリシロ(依り代)」を勝手に検索し始め、ひとりでにカゴ内の鏡が割れるという怪現象も目の当たりにしました。

その後、奏音・蓮は例の動画を山崎に見せた際に、詩音らの着ている制服が山崎の卒業校と同じものだったことが判明。また彼女らのSNSに投稿されていた写真に映っていた海岸も分かり、奏音・蓮はその海岸を訪ねることにします。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『牛首村』ネタバレ・結末の記載がございます。『牛首村』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2022「牛首村」製作委員会

到着した海岸にて、奏音・蓮は危うく入水自殺をしかけた将太(高橋文哉)に出くわします。奏音の顔を見てひどく動揺した彼は、エレベーターでの事故以来行方不明となっている詩音の恋人でした。

将太の案内で、とある集落に詩音の実家を訪ねる奏音・蓮。そこで二人は、出張しているはずの奏音の父・直樹(田中直樹)と、奏音の姿を見た途端「ごめんなさい」と謝り続ける女性……父からは「死んだ」と聞かされていた母・風歌(堀内敬子)と対面します。

奏音と詩音は双子であり、詩音は母・風歌とともに地元で暮らし、奏音は父・直樹とともに地元を離れた……全く知らなかった事実に動揺し家を飛び出した奏音は、誘われたかのように夢の中で見たあの野原にたどり着きます。

そして奏音は、例の二人の少女は幼少期の自身と詩音であったこと、それは夢ではなく自身が体験した記憶であること。そして幼い自分は、当時着物を着た謎の女に連れ去られそうになり、詩音がそれを止めてくれたことを思い出します。

自身が4歳の時行方不明になったこと。大人の誰もが彼女を見つけられなかったにも関わらず、同じく当時4歳の詩音が突然奏音を連れてきたこと。奏音は行方不明時の記憶を失っていたこと……自身を探していた母とともに家へ戻った奏音は、かつてあった出来事を父に聞かされます。

そのまま家に泊まり、詩音の自室で寝ることにした奏音に元に、再び泣き続ける牛頭人身の少女が現れます。少女の正体が行方不明の詩音では感じた奏音は、牛の頭があくまで「人間が皮を被っているだけ」であると気づき、その皮を外します。

ところがその皮の下にあった顔は、詩音ではない全くの別人……幼い頃自身を連れ去ろうとした女でした。衝撃も収まらぬまま、奏音の脳裏にはある一連の光景がフラッシュバックします。

夜更け、並んで寝かされている双子の少女。「タエコ」「アヤコ」と呼ばれる二人のうち、大人たちに「牛の首」を被せられるタエコの姿を隣で見つめているアヤコ。大人たちがいなくなった後、眠り続けるタエコから脱がせた牛の首を自ら被って遊んでいたアヤコは、大人たちが戻ってきたことで皮を被ったまま寝たフリをする。

牛の首を被っていたはずの「タエコ」と間違われ、どこかへ連れていかれるアヤコ。大人たちはやがて間違いに気づくが、そのままアヤコを「穴」の中へ捨ててしまう……。

アヤコが姿を消し、意識を取り戻した奏音は、祖父・実(麿赤兒)と寝たきりの祖母・妙子(竜のり子)に「アヤコって誰?」と尋ねます。祖父は若かりし頃の妙子の写真を見せ、その顔が例の女と瓜二つであることに奏音は驚きます。

かつて「村」では、生きていくのも地獄という状況の中で双子は「牛の子」と忌み子扱いされ、「村の守り神に返す」という名目で7歳になった双子のうちの一人に牛の首を被せ、穴に投げ入れて餓死させるという因習があったことを語る祖父。

また父も、かつて行方不明状態から生還した奏音が唯一覚えていたことが「アヤちゃん」という女性の名であり、何かが起こることを恐れたゆえに別居を選んだと奏音に伝えます。

後日、山崎が泊まるホテルで彼と待ち合わせをする奏音・蓮・将太。いつまで経っても現れない山崎を呼びに行った蓮は、「自身の顔が牛になっている」という幻覚で錯乱する山崎と遭遇します。

錯乱し続ける山崎はエレベーターに乗ろうとしますが、あらゆる隙間から無数の小さな手が湧いて出てきた途端、カゴが突如落下。エレベーターの出入口とカゴに挟み込まれた山崎の体は、真っ二つに切断されました。

事故が起こった後、将太は動画に出演していたアキナは投身自殺、ミツキは車の前に自ら飛び込んだことで轢死していたことを奏音・蓮に明かします。

呪いを恐れた蓮は奏音に帰ろうと提案するも断られ、ひとり夜行バスで東京へ戻ろうとします。しかしその車内で、蓮は何組もの双子の亡霊たちに取り囲まれとり殺されてしまいます。

「不審死」と処理された蓮の亡骸を見て、悲しみに暮れる奏音たち。そして彼の手に握られていた石でできた小さな「牛の首」は、過去の記憶の中でアヤコが握っていたそれと同じであり、首に結ばれていた紐ネクタイは詩音の制服のものだと気づきます。

石でできた牛の首を祖父母に見せる奏音。それはかつて「村」の峠にあった、人の顔と牛の顔をそれぞれに持つ二対の地蔵「牛首地蔵」のそれであると語った祖母は、奏音とともに牛の首へ触れ、村に伝わっていたわらべ歌を歌い出します。

気づいた時には、奏音・将太の意識と肉体は過去の時代へと飛び、双子の因習によって子どもたちが捨てられ続けてきた例の穴の中にいました。そこで二人は、辺り一面に転がる子どもたちの死体の残骸、そして詩音を見つけます。

やがて穴の入り口がある天井から、村人の男たちの声が聞こえてきました。彼らは「子どもたちの死体しかないはずの穴の中から、誰かの歌声が聞こえてくる」という噂を確かめにきたのです。


(C)2022「牛首村」製作委員会

ランタンを吊るし、ハシゴを降ろして穴の中の様子を探る村人たち。そこに、人か獣かも分からない鳴き声をあげながら、アヤコが姿を現します。

7歳の時に、確かに穴の中へ捨てられたアヤコ。しかし彼女は、因習によって自分と同様に穴の中に捨てられた子どもたちの屍肉を食らうことで飢えをしのぎ、これまで生き長らえていたのです。

全ての事実に気づいた村人たちは戦慄し、穴の中から脱出。またハシゴを登ってこようとするアヤコを棒で突き、再び穴の中へと落とします。

ランタンの火が燃え移ってしまった穴の中から、奏音・詩音・翔太もハシゴで脱出。しかしアヤコもハシゴを登って穴を脱出し、詩音に襲いかかります。

蓮が穴のある洞窟へアヤコを再び閉じ込めたのち、奏音・詩音・翔太は今はなき「村」へと立ち入ります。すると三人の前に、牛の首を被った大勢の子どもたち、かつての牛首村の村人たち、そして村人たちと同じ「大人」の姿をした、殺された双子の亡霊たちが姿を現します。

亡霊から逃げるうちに、崖へとたどり着いた奏音・詩音・翔太。すると突然詩音が苦しみ始め、彼女の全身からは人面瘡のように子どもたちの亡霊が浮かび上がります。そしてその顔はいつの間にか、アヤコへと変化していました。

絶望的な状況の中、「ひとりぼっちじゃ、かわいそう」という言葉を思い出した奏音は、詩音の肉体に憑依したアヤコを抱きしめながら崖から身を投げました。そして気づいた時には、奏音・詩音・翔太は坪野鉱泉にあるエレベーターのカゴ内にいました。

無事生還した詩音は、母とともに「牛首地蔵」の前で手を合わせていました。そして欠けていた牛の首を地蔵へと据え直すと、その場を後にしました。

しかし牛首地蔵の頭は、ひとりでに地面に転げ落ちました。そして一瞬、詩音の顔がアヤコのそれへと変わると「ひとりぼっちじゃ、かわいそうでしょ?」と口にするのでした。

映画『牛首村』の感想と評価


(C)2022「牛首村」製作委員会

「血筋の三部作」最終作には『犬鳴村』のあの子も!

2020年の『犬鳴村』、2021年の『樹海村』、そして2022年の『牛首村』と続いてきた「恐怖の村」シリーズ。シリーズ全作を手がけてきた清水崇監督は、『牛首村』までの三作は「血筋の三部作」でもあると語っています。

その集大成にあたる『牛首村』では、一作目・二作目ともに登場しいずれも悲惨な死を遂げているパラレルワールドならぬ「パラレルキャラクター」のアキナをはじめ、過去作に登場したキャラクターも再登場しています(実は本作のカフェの場面では、映画『ホムンクルス』主人公の名越進にそっくりな男の姿も)。

『牛首村』作中、詩音に会うために坪野鉱泉がある富山県に向かった奏音は、夜行バスの車内でひとりの少年と出会います。そしてその少年は、ふとした瞬間、犬のような唸り声とともに口元を拭った……彼こそが犬鳴村の村人の子孫であり、アキナ同様『犬鳴村』『樹海村』に登場し続けてきた遼太郎なのです。

樹海村』での再登場時にも、樹海村とコトリバコの呪いを察知していた遼太郎。その犬以上の嗅覚は『牛首村』でも発揮されており、奏音とその妹・詩音を侵蝕する「牛の首」の呪いを感じとっていました

シリーズ三作の主人公はなぜ全員「音」の名前?


(C)2022「牛首村」製作委員会

犬鳴村』の主人公の名は「」。『樹海村』の主人公とその姉の名は「」と「」。そして『牛首村』の主人公とその妹の名は「奏音」と「詩音」……。

改めて並べてみるまでもなく、これまでシリーズの作品を観続けてきた方の誰もが「なぜ主人公は全員、『音』にまつわる名前なのだろう?」と疑問を持たれたはずです。

犬鳴村』でのわらべ歌と犬の唸り声、『樹海村』での声なき声など、音/声による恐怖の演出が描かれてきた過去のシリーズ作品。

『牛首村』においても、奏音・詩音の祖母であり怨霊と化したアヤコの姉・妙子が歌うわらべ歌が登場します。しかし何よりも重要なのは、本作のモチーフとされている都市伝説「牛の首」最大の特徴が「誰もその内容を知らない、聞いたことがないが流布されてきた怪談」という点です。

怪談の名すらほとんどの文献に記されず、誰もその内容の全容を知らないし存在の証拠となるソースもない。ところが、その存在だけは流布されてきた。それは「真実か否かは怪しいが、人々の間で語られ続けてきた恐ろしい話」=「怪談」の特徴そのものといえます。

そして「これは○○から聞いた話なんだけど……」という怪談お決まりの定型句の通り、怪談が生じる「虚実性」が成立するのになくてはならないのが、「記録する」でも「読む」でも「語る」でもない、「聞く」という行為なのです。

それこそが、世間に流布されてきた都市伝説/怪談を題材にしたシリーズの主人公たちに「音」にまつわる名を命名した理由なのではないでしょうか。

まとめ


(C)2022「牛首村」製作委員会

「遠方から迫り来る脅威」を感知する時、最も重要なのが「震え」という音であることは、人間のみならずほとんどの動物が同じであるといえます。

鳴き声・うめき声・呼吸音といった音声としての空気の震えはもちろん、怪獣映画のように巨大な怪物が歩いてくる時の地響きもまた「震え」の一部といえます。つまり「震え」とは、生命の危機という根源的な恐怖を感知するために最も重要な要素なのです。

犬鳴村』『樹海村』そして『牛首村』の主人公たちの名が皆「音」にまつわる名であるのは、「震えを伴う恐怖を感知する者」としてのホラー映画の主人公には最早必然ともいえるネーミングなのだといえます。

また『牛首村』のラストにて、怨霊アヤコとその呪いに憑かれたままである詩音の名だけが、ただの震えや音声ではない「言葉」としての意味も持つ「詩」を冠していること……「詩(シ)」は「死(シ)」を連想させる音であることも、本作が「血筋の三部作」の最終作たる所以なのかもしれません。






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