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映画『駅までの道をおしえて』あらすじネタバレと感想。キャスト陣が伊集院静の原作短編小説を“優しさ”で演じる

  • Writer :
  • 村松健太郎

映画『駅までの道をおしえて』は10月14日(金)より全国ロードショー公開

作家・伊集院静の同名短編小説を、数々の話題作のプロデューサーとして活躍する橋本直樹自らが監督・脚色を手がけて映画化。

主演を務めたのは、人気音楽アーティスト・米津玄師が作詞・作曲・プロデュースしたことで知られる楽曲『パプリカ』を歌った混声ユニット「Foorin(フーリン)」の最年少メンバー・新津ちせ。

新津演じる幼い少女を見守る大人たちには、笈田ヨシをはじめ、坂井真紀、滝藤賢一など日本映画界には欠かせないキャスト陣ばかり。

そしてもう一“匹”の主役・ルーを演じた犬・ルーの熱演にも注目です。

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映画『駅までの道をおしえて』の作品情報


(C)2019 映画「駅までの道をおしえて」production committe

【公開】
2019年(日本映画)

【原作】 
伊集院静

【脚色・監督】
橋本直樹

【キャスト】
新津ちせ、笈田ヨシ、有村架純、坂井真紀、滝藤賢一、羽田美智子、マキタスポーツ、市毛良枝、塩見三省、余貴美子、柄本明

【作品概要】
伊集院静の同名短編小説をもとに、プロデューサーとして知られる橋本直樹が監督・脚色を手がけた長編映画作品。橋本監督にとって本作は長編2作目にあたります。

幼い少女とその愛犬、そして彼女と偶然出会った老人との心の交流を通じて、大事なものとの別れをファンタジックに描く、切なくも愛おしいヒューマンドラマです。

混声ユニット「Foorin(フーリン)」の最年少メンバー・新津ちせとベテラン俳優・笈田ヨシの可愛らしい掛け合いが楽しめるほか、大人になった主人公のモノローグを人気若手女優・有村架純が担当している点も見どころです。

映画『駅までの道をおしえて』のあらすじとネタバレ


(C)2019 映画「駅までの道をおしえて」production committe

小学校に通っている8歳の少女・サヤカは、臨海学校に出かけた数日の間に愛犬・ルーがいなくなってしまったことを受け入れられず、一人寂しくかつての散歩コースを通う日々を過ごしています。

今から一年ほど前、学校になじめずにいたサヤカは偶然通りがかったペットショップにてルーと出会いました。

ルーは一度は誰かに買われていったものの、その飼い主の事情でペットショップへ戻されてしまった犬でした。ルーの環境に自身を重ね合わせたサヤカは、必死になって両親を説得します。

サヤカは両親から、犬の方が人間よりも遥かに寿命が短く、どれほどルーが長生きしたとしても必ず先に別れることになると諭されます。

また、自身が住んでいるマンションがペット禁止であることも判明。突きつけられた現実に幼いながらも悩むサヤカですが、「先に別れることを受け入れる」と両親に宣言します。

そしてルーの犬小屋は、マンションのすぐ近所に住む伯父さんの家の庭を借りることで解決しました。


(C)2019 映画「駅までの道をおしえて」production committe

朝晩の餌やりと毎日の散歩を、サヤカは欠かさずこなします。

ある日、サヤカとの散歩コースから逸れてしまったルーは、壁を通り抜けてその内側へと潜り込みます。

仕方なくルーの後を追うサヤカでしたが、壁を通り抜けた先に広がる原っぱはのちにサヤカとルーの秘密の場所になりました。

やがてルーが原っぱの地面を掘り始めたことに気がついたサヤカは、自身もまた地面を掘り返し始めます。

サヤカとルーが掘り返した地面から出てきたのは、二つの鉄の柱。当時のサヤカには分かりませんでしたが、その正体は古い線路の痕跡でした。

時は過ぎ、夏が訪れます。夏休みが始まることで、ルーと今まで以上に多くの時間を過ごせると思っていたサヤカですが、臨海学校で数日間留守にしている間にルーは急な変調によって死んでしまいました。

ルーが自身より先に命を終えることは分かっていたはずのサヤカでしたが、それがまさか一年ほどでやってくるとは思っておらず、強いショックを受けてしまいます。

そして別れをどうしても受け入れることができず、ルーとの思い出が残るかつての散歩コースへ通うようになったのです。


(C)2019 映画「駅までの道をおしえて」production committe

そんなある時、フセという老人と、彼が拾ったルースという名の犬に出会います。

「ルー」と「ルース」。見た目は全く違うのにルーと名前がそっくりなルースをきっかけに、サヤカはフセと親しくなり、彼の営むジャズ喫茶に通うようになりました。

実はフセもまた、数十年前、幼くして亡くなった息子・コウイチローのことを受け入れ切れずにいました。

互いの似ている境遇は、年齢も立場も違う少女と老人を友達のようにしてゆきます。

ある週末。サヤカとフセは、フセにとって思い出の場所である逗子の海へと出かけます。

あたたかな日差しの中で思わずうつらうつらしてしまうサヤカ。その夢の中で、彼女はルーを連れたコウイチローの姿を見ました。

以下、『駅までの道をおしえて』ネタバレ・結末の記載がございます。『駅までの道をおしえて』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2019 映画「駅までの道をおしえて」production committe

逗子へ出かけた翌日、いつものように喫茶店へと向かったサヤカ。

しかし、そこにフセの姿はありませんでした。

そして、フセは重い病によって喫茶店近くの病院に入院しており、そこを抜け出してサヤカと会っていたことを知ります。

病院で再会するサヤカとフセ。それから間もなくして、フセはこの世を去りました。

最期の時、フセから「駅に行く」という言葉を聞かされたサヤカは例の原っぱへと向かいます。

原っぱにたどり着いたサヤカの前には、ルーとともに掘り返したあの線路を伝って赤い電車が現れます。

いつの間にか駅のプラットホームも現れ、サヤカとは反対側のホームに佇んでいたフセは赤い電車へと乗り込みました。

そこには、ルーとコウイチローの姿もありました。

サヤカを残して、赤い電車は走り去ってゆきます。

ひとりぼっちになったサヤカのもとには、フセやコウイチローとの出会いをもたらしてくれたルースが駆け寄ってきました。

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映画『駅までの道をおしえて』の感想と評価


(C)2019 映画「駅までの道をおしえて」production committe

「こういう女の子、いるなぁ」と自然に思わせる、新津ちせ演じる小学生・サヤカのキャラクター造形は絶妙です。

年相応の幼さを感じさせる一方で、「どこでそんな言葉を覚えてきたんだろう?」と微笑んでしまうような言葉遣いや仕草がとても自然です。

とある場面にて、サヤカは神社の長い階段をヘトヘトになって登り切った後に「健康に良すぎるなぁ」という言葉をボソッとつぶやきます。

またペットショップでの場面では、一度買われたにもかかわらず戻されてしまったルーに向かって「君、前向きにいかないとだめだよ」と語りかけます。

そういった言い回しが妙に大人くさく“ませて”おり、その幼い容姿と相まってギャップの笑い、それも愛おしさを感じさせる笑いを観る者に誘います


(C)2019 映画「駅までの道をおしえて」production committe

一方で、愛犬・ルーの死を頑なに受け入れられない態度や仕草は、彼女が決して死に慣れてなどいない、まだまだ幼い子どもであることが分かります。

誰もがその成長を見守りたくなるサヤカのキャラクター造形は、2010年生まれでサヤカとはほぼ同年代である新津ちせの“自然”と“努力”の賜物と言えます。

それらを引き出した橋本直樹監督の手腕は見事ですし、観客同様にサヤカと荒津の姿を見守る大人たちを演じた、笈田ヨシ、坂井真紀、滝藤賢一、羽田美智子、マキタスポーツ、市毛良枝、塩見三省、余貴美子、柄本明など技巧・実力揃う俳優たちのフォローもまた素晴らしい匙加減でした。

まとめ


(C)2019 映画「駅までの道をおしえて」production committe

映画『駅までの道をおしえて』を一言で評するならば、それは「優しい映画」に他ありません。

サヤカの行動をできる限り理解したうえで、その行動の意味や伴う責任について、“親”或いは“大人”として語りかける。そしてまだ子どもである彼女の思いや悩みを、自身たちの干渉によって“壊れてしまう”ことだけは気をつける。

サヤカの思いや悩みをサヤカ自身の心と体によって向き合わせるように努める大人たちの支えがあるからこそ、劇中におけるサヤカの“自由さ”が存在しているのです。

そして、そのように「理想の大人像」として子どもであるサヤカと接しながらも、時には子ども以上に思い悩む大人たちの姿もまた本作が描こうとする大人像でもあります。


(C)2019 映画「駅までの道をおしえて」production committe

「亡くなったもの・失ったものとの別れ」というどんな時代・場所でも共通する悩みを通じて、子どもを“自由さ”とともに育ててゆこうとする「理想の大人像」と、それでも悩みに囚われてしまう「現実を生きる大人像」。

その相反する大人の姿を、サヤカ或いは子どもという純粋な視点によって見つめる。

そうすることで、本作は「多くの苦悩、多くの別れを経験してきたからこそ、大人たちは子どもたちに“自由さ”の意味を伝えようとする優しさを持てる」ということを観る者に伝える、とても温もりのある作品に仕上がったのです。



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