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【映画ネタバレ】君と私|あらすじ感想とラスト結末評価。韓国実話のセウォル号事件を基に描かれた”少女たちの背景”にあるものとは?

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

セウォル号沈没事故を背景に紡がれる女子高生たちの愛の物語

2014年4月、大韓民国の大型旅客船「セウォル」が沈没し、多くの乗客が亡くなった痛ましい事件が起きました。

『君と私』はセウォル号事件を題材に、修学旅行を翌日に控えた2人の少女の夢のような愛の物語です。

ドラマ「D.P. 脱走兵追跡官」シリーズなど名バイプレーヤーとして活躍する俳優チョ・ヒョンチョルが、7年の歳月をかけて脚本を繊細に作り上げた初の長編監督作。

修学旅行の前日。セミは教室で不思議な夢を見ます。不安になったセミは学校を早退して入院している大好きなハウンに会いに行きます。

足を怪我して修学旅行に行けないハウンでしたが、セミはハウンと一緒に修学旅行に行くことを諦められられずにいました。

しかし、どこか煮え切らないハウンにセミはもどかしさを感じ、些細な喧嘩ですれ違ってしまいます。

セミを演じたのは、『スウィング・キッズ』(2020)、『サムジンカンパニー1995』(2021)のパク・ヘス。ハウン役には、『あしたの少女』(2023)のキム・シウン。

映画『君と私』の作品情報


(C)2021 Film Young.inc ALL RIGHTS RESERVED

【日本公開】
2025年(韓国映画)

【英題】
The Dream Songs

【監督】
チョ・ヒョンチョル

【脚本】
チョ・ヒョンチョル、チョン・ミヨン

【撮影】
DQM

【音楽】
オヒョク

【キャスト】
パク・ヘス、キム・シウン、オ・ウリ、キル・へヨン、パク・ジョンミン

【作品概要】
ドラマ「D.P. 脱走兵追跡官」シリーズなど名バイプレーヤーとして活躍する俳優チョ・ヒョンチョルが、7年の歳月をかけて脚本を繊細に作り上げた初の長編監督作。

撮影を担当したのはKPOPアイドルのMV、広告映像などを中心に手がけてきたDQM。音楽を手掛けたのは韓国の4ピースバンド・HYUKOH/ヒョゴのボーカルを務めるOHHYUK/オヒョク。

映画『君と私』のあらすじとネタバレ


(C)2021 Film Young.inc ALL RIGHTS RESERVED

修学旅行の前日、教室で眠っていたセミは、不思議な夢を見ます。そして居ても立っても居られず、早退して入院している大好きなハウンに会いに行きます。

ハウンは自転車とぶつかり怪我をしたせいで、修学旅行に行けなくなっていました。それでも諦めきれないセミは、何とかして修学旅行に行こうと誘います。

先生を説得するというセミに、ハウンは家にあるビデオカメラを売ったらお金になるかもしれないと言います。

ハウンの家に向かった2人。ビデオカメラを探していたハウンは、亡くなった愛犬ジェリーのおもちゃを見つけます。

ジェリーとの思い出を話すハウンでしたが、「2480」という番号から何度も電話がかかってきます。借金取りからの迷惑電話と言い、出ようとしないハウンに嘘をついているとセミは問い詰めようとします。

そしてセミはハウンの携帯を奪い、パスワードを教えてと聞き出そうとします。しかしハウンは教えず、思わず「執念深いよね」と言ってしまいます。

セミは傷つき拗ねてしまいます。そんな中、ビデオカメラを見つけた2人は、SNSで売り手を募集します。

売り手はなかなか見つからず、2人は散歩をしながら周りの風景を撮影しています。するとそこに、白い迷子犬が現れます。2人は「シンシク」と名付けて犬を追います。

しかし、セミがお菓子を買いに行くと、ハウンもシンシクもいなくなっていました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『君と私』ネタバレ・結末の記載がございます。『君と私』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2021 Film Young.inc ALL RIGHTS RESERVED

やっとハウンを見つけ出すと、男子高校生と楽しそうに話していました。そしてビデオカメラの買い手が見つかったというのに、ハウンは渋り始め、修学旅行に行くことにも消極的な態度を取ります。

どこか煮え切らないハウンにセミは感情をぶつけてしまいます。ハウンが謝って何か言おうとしますが、セミは聞かずにどこかに言ってしまいます。

一人で拗ねていたセミは高校の同級生と遭遇し、ショッピングやカラオケに行きます。同級生はセミがハウンとのことを話そうとしても、途中で他のことが気になって真剣に話を聞いてくれません。

そこに、ハウンの幼馴染のダエから電話があり、ハウンが病院に帰っていないと言います。ハウンの行方を探してダエと合流したセミでしたが、自分とハウンの仲を邪魔するダエのことをよく思っていないセミは苛立っています。

ダエはこっそりハウンのSNSにログインし、ハウンが連絡をとっていた男性を見つけます。その男性を突き詰め、ダエとセミと友人らは男性にハウンとの関係を聞き出そうとします。

その男性はハウンと付き合っているわけではありませんでした。しかし、ハウンが事故にあったその場にいて、事故にあったのはその男性から逃げようとしていたからだったのです。

付き合っている人ではないとわかっても、自分との約束をすっぽかして男性と会っていたことにセミは怒ります。

そんなセミにダエは「ハウンの気持ちも考えなよ、あんたはいつも自分のことばっかりで、愛情ばかり求めている」と責めます。

「私はどうせクズよ」とセミは拗ねて、一人学校に向かいます。するとそこになぜかハウンもいました。互いに驚いていると、校庭にいなくなったはずのシンシクが現れます。

セミはシンシクの飼い主に連絡し、飼い主のもとに戻ることができました。そして帰り道、セミはハウンに今日見た不思議な夢の話をします。

夢を見てどうしても今日告白しようと思い、試すようなことをしてしまったと明かします。「ハウンが大好き、ハウンも同じ思いだったらいいのに」と泣くセミに、ハウンは携帯をどこかにやってしまったから電話してと言います。

電話はハウンのポケットから鳴っています。ハウンはその携帯をとって、「見て」とセミに伝えます。携帯を手にとって表示された名前には「フンババ」と書いてありました。

ハウンのノートに「フンババにキスしたい」と書いてあり、セミは今日一日「フンババ」の正体は誰なのかもやもやしていましたが、「フンババ」とはセミのことだったのです。

「私も同じ思いだよ」とハウンはセミに言います。2人は両思いだったのです。幸せに包まれながら家に帰ったセミ。

翌朝セミは、ペットのオウムに「またね、すぐ帰ってくるよ」と言い、修学旅行に出かけるのでした……。

映画『君と私』の感想と評価


(C)2021 Film Young.inc ALL RIGHTS RESERVED

2016年のセウォル号事件から来年で10年となります。多くの人が亡くなり行方不明となったこの事件は、発生直後の政府の対応、後手後手となった救出に多くの批判が集まりました。

遺族をはじめ。多くの人が真相解明を求め、今もその動きは続いています。そのような痛ましい事件を題材に、チョ・ヒョンチョル監督は少女2人の愛の物語に昇華しました。

眠りからさめるセミに姿をとらえた場面から始まる本作は、全体を通して夢の中のような、いつかのホームビデオのような淡い質感で描かれています。

そこには同性愛に対する無理解などの障壁のない、等身大の恋に思い悩む少女たちの姿があります。セミはハウンを好きすぎるあまり周りが見えず、自分勝手な行動をしたり。自分の思いがうまく伝わらないことに拗ねたりします。

一方でハウンは、さまざまなことが重なり、どうすれば良いのか、どうしたいのか、分からない状態にあります。うまく伝える自信がなく、心の内にとどめてしまうハウンにセミは不安を感じてしまうのです。

2人は未熟だからこそ、相手に求めすぎたり、うまく伝えられずすれ違ってしまったりします。

その姿は等身大の高校生であり、その後彼女たちに怒ること、つまりセウォル号事件を想起し、より辛くなります。

あの時気持ちを伝えていたら……といくら後悔しても、亡くなった人は戻ってきません。

エモーショナルで詩的な世界観に儚さや苦しさを感じるのは、事件のことを知っているからという側面もあります。

私たちは、いつか来る終わりからつい目をそらして日常を生きています。同時に誰かの不幸も人は忘れてしまいます。「忘れないでいる」ことは生者のエゴかもしれませんが、セウォル号のような事件を風化させてはいけません。

本作は、チョ・ヒョンチョル監督が亡くなった人に捧げるレクイエムであり、事件を風化させないために映画の力を通して観客に訴えかけます。

まとめ


(C)2021 Film Young.inc ALL RIGHTS RESERVED

ドラマ「D.P. 脱走兵追跡官」シリーズなど、名バイプレーヤーとして活躍する俳優チョ・ヒョンチョル初の長編監督作『君と私』。

7年の歳月をかけて繊細に練り上げられた脚本は、セウォル号事件を想起させる演出はされているものの、直接的な描写やセリフは描かれません。

冒頭のセウォル号の説明は、韓国で公開された際にはなく、日本で上映する際に入れたものと言います。センシティブな題材に対する真摯な姿勢が映画にも現れている一方で、そこには危険性も孕んでいます。

それは、映画が事件を利用してしまうという危険性です。実話ベースの映画化とは違い、題材にした本作におけるドラマの展開はオリジナルのものです。

だからこそ、儚くエモーショナルな恋愛を仕立て上げるために事件を利用したと指摘されかねない危うさがあるのです。

それは実際の事件だけでなく、エモーショナルさ、ビジュアルの美しさとしてLGBTQ+の物語も利用され、鑑賞対象として消費されてきたという側面もあります。

本作においてそのような危うさが一切ないとは言い切れませんが、チョ・ヒョンチョルは実際に講師として高校生に触れるなど、丁寧な取材を通して作られたことが感じられる映画になっています。



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