映画『私たちは天国には行けないけど、愛することはできる』は2025年3月14日(金)よりシネマート新宿ほかで全国順次ロードショー!
ノストラダムスの予言による地球終末論が噂され、不安が漂う1999年。テコンドー部のジュヨンは、ファストフード店で働くイェジに出会います。イェジに出会ったことで、ジュヨンの中に新たな思いが芽生え始めます。
映画『私たちは天国には行けないけど、愛することはできる』は、階級差別や性差別が色濃く残る1999年の韓国を舞台に、互いに手を取り立ち向かう少女たちの姿を描きます。
ジュヨン役を『はちどり』(2020)のパク・スヨン、イェジ役をNetflixの大ヒットドラマ『イカゲーム』のイ・ユミが務めました。
『はちどり』(2020)に続く、社会的抑圧を受ける少女たちの息苦しさと連帯を描いた映画です。
CONTENTS
映画『私たちは天国には行けないけど、愛することはできる』の作品情報
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【日本公開】
2025年(韓国映画)
【英題】
No Heaven,But Love
【監督】
ハン・ジェイ
【キャスト】
パク・スヨン、イ・ユミ、シン・ギファン、キム・ヒョンモク
【作品概要】
詩的なタイトルは、ハン・ジェイ監督がたまたま読んだ本の一節から着想を得たとのこと。世紀末という不安定な時代を生きる、少女たちの青春物語です。
ジュヨン役は『はちどり』(2020)のパク・スヨン、イェジ役はNetflixドラマ『イカゲーム』のイ・ユミ。また『ショー・ミー・ザ・ゴースト』(2023)のキム・ヒョンモクも出演しています。
そして、映画作中でイ・ユミ演じるイェジが歌うのは、1997年にリリースされたJaurim(자우림)の『Finding Lover!(애인 발견!!!)』です。
映画『私たちは天国には行けないけど、愛することはできる』のあらすじ
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1999年、世紀末。ノストラダムスの予言が囁かれた不安の時代。
テコンドー部に所属する高校生ジュヨンは、厳しく理不尽なコーチの指導に耐えきれずにいました。友達のミヌに頼まれて、ファストフード店で働くイェジに告白のメモを渡します。
ある日、コーチに反発したジュヨンは、主将をはじめとしたテコンドー部員たちに暴行を受けていました。そこを助けてくれたのは、イェジでした。
ジュヨンの母親は、少年院の家庭体験プロジェクトを担当しており、プロジェクトをきっかけにイェジは、ジュヨンの家で暮らすことになります。少しずつ仲良くなっていく2人。
ある日、母親の提案でミヌ、イェジ、ジュヨン、テコンドー部の友人であるソンヒで益山(イクサン)へ旅行に行くことに。ジュヨンは少しずつ芽生え始めた、イェジへの気持ちに気づき始めていました。
益山での夢のような時間は過ぎ、テコンドー部を休んでいるジュヨンのシワ寄せが他の部員に向かっていました。そして、金メダルを期待されているソンヒは親と学校のプレッシャーだけでなく、皆に言えぬことがありました……。
愛する人のために立ち向かう、少女たちに立ちはだかる過酷な現実。それでも光は、見出せるのでしょうか。
映画『私たちは天国には行けないけど、愛することはできる』の感想と評価
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女性に対する抑圧の理不尽さ、息苦しさを思春期の揺れ動きとともに描き出した『はちどり』(2020)は、韓国映画界におけるフェミニズムのムーブメントに影響を与えました。
そんな『はちどり』の舞台は、1994年のソウル。映画『私たちは天国には行けないけど、愛することはできる』の物語は、その5年後が舞台になっています。
本作は、ジュヨンがイェジと出会うことで芽生えた感情の瑞々しさを描いていますが、それ以上に重いテーマとして「抑圧」が描かれています。
コーチから日常的に暴行を受ける部員たち。主将はコーチに逆らえず、怒られないために自らも部員に対して暴行を行います。言うことを聞かないジュヨンに主将らが暴行しているところに、イェジが助けます。
ジュヨンの母は、暴行を受けアザができているジュヨンを見て「辛かったらやめても良いのよ」と言います。ジュヨンは部活に行かずイェジと共に過ごしていますが、その時間は永遠に続くわけではありません。
不当な扱いに対して、声を上げても相手にされない、そんな理不尽さに怒りを感じます。しかし、それでもその声は、同じ思いを抱えた人に届いていき、連帯となります。
1人の勇気が皆の勇気になり、少しずつ変わっていく。その流れの中に「今」があるのです。
そしてその勇気は「自分ではない誰か」を思うからこそ出せるという側面もあるでしょう。ジュヨンは大切な友達のため、そして愛するイェジのために声を上げ続けます。
傷つきやすく、社会的にも立場の弱い少女たちは、どうしても誰かを傷つけることから守るために、自身の犠牲を選んでしまうという側面はあるかもしれません。
どこまでも理不尽な不幸の連鎖に苦しい気持ちになりますが、それでもどこかに希望を感じられることが救いと言えます。
重いテーマも描き出しつつ、イェジに惹かれていくジュヨンのみずみずしさ、まっすぐで強い思いに胸を打たれます。カラオケのシーンや益山の旅行など、思春期の揺れ動く心も見どころの一つです。
まとめ
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10代の少女たちを取り巻く理不尽な境遇と、愛することの美しさを描いた映画『私たちは天国には行けないけど、愛することはできる』。
互いに惹かれ合うジュヨンとイェジでしたが、ジュヨンの母は「同情心を愛情と勘違いすることもある」とジュヨンの気持ちを否定します。
女性であることの抑圧がまだ色濃く残っていた1999年において、同性愛も認められているものではなかったのです。
かつて愛し合ったけれど、その感情を心の奥にしまい込んでいた2人が再会する映画『ユンヒへ』(2022)に登場するユンヒとジュンも、現代での年齢が40代だと考えると、まさに90年代に学生時代を過ごしていたと言えます。
そんなユンヒとジュンは、互いに愛し合っていましたが、周りの大人によって引き裂かれジュンは父と共に日本へ、ユンヒはその後精神病院に入れられてしまいます。
そのような状況からも、90年代、2000年初期において同性愛者が世間で認められていなかったことが伺えます。それでも愛する気持ちの美しさ、愛する人のためなら、後悔しないという強さを本作では描いています。
重いテーマも映し出しながら、初恋の美しさ、眩さを描いた青春映画になっています。