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映画『Smoke』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

  • Writer :
  • 西川ちょり

映画『Smoke』のあらすじネタバレと感想やラスト結末をまとめました!

以下、あらすじやネタバレが含まれる記事となりますので、まずは『Smoke』映画作品情報をどうぞ!

映画『Smoke』作品情報

【公開】
2016年(アメリカ)

【原題】
Smoke

【監督】
ウェイン・ワン

【キャスト】
ハーヴェイ・カイテル、ウィリアム・ハート、ハロルド・ペリノー・ジュニア、フォレスト・ウィテカー、ストッカード・チャニング、アシュリー・ジャッド

【作品概要】
作家のポール・オースターが脚本を担当、『ジョイ・ラック・クラブ』のウェイン・ワン監督がメガホンをとり、ニューヨーク、ブルックリンに住む人々の人間模様を描いた1995年の作品です。このたびデジタルリマスター化されスクリーンに復活しました。

映画『Somke』あらすじとネタバレ

煙草屋に男が入ってきて、煙草二缶とライターを買って行きました。店長のオーギー・レンは、常連客に今のは作家のポール・ベンジャミンで、もう長いこと新作を発表していない、数年前に起こった銀行強盗で妊娠中の妻を亡くしたんだよ、と語ります。

ポールが歩いていると黒人の少年に引っ張られて二人は歩道に倒れてしまいます。その横を車が猛スピードで通り過ぎました。お礼がしたいからと、ポールは少年をカフェに誘い、うちに泊まりたくなったら連絡してくれと電話番号を教えます。

ある夜、ポールが煙草を切らしたとオーギーの店にやって来ました。話しているうちにオーギーが毎日写真を撮っていることが判明。彼は自分の作品を貼ったスクラップブックを取り出しました。

それらは、いつも同じ場所から自分の店を撮った、定点観測の写真でした。一生をかけた一大プロジェクトだ、とオーギーは言いますが、ポールにはみんな同じ写真に見えてしまいます。「もっとゆっくり見なきゃ。」と言われ、じっくり写真を見始めたポールはその中に生前の妻が映っているのを見つけ、思わず涙ぐんでしまいます。

少年がポールの家に突然やってきました。彼はすきを見て紙袋を本棚に隠します。少年が二晩泊まったところで、ポールは気が散って仕事ができないと追い出してしまいます。二日後、少年のおばが訪ねて来ました。自分の父親が生きているという噂を聞いて彼は家を出たようなのです。

少年はトーマス・ジェファソン・コールといい、父であるサイラス・コールのガレージを探しあて、偽名を名乗ってバイトとして働いていました。

オーギーのもとに、昔つきあっていたルビーがやってきました。「あたしたちの娘」を助けてくれという彼女。本当に自分の娘なのか?と疑うオーギーでしたが、彼女と一緒に少女に会いに行きます。少女は母親の顔を見るなり子供は堕ろしたと言い放ち、二人は追い返されてしまいます。

トーマスが再びポールの家を訪ねると、思いがけず歓迎されます。ポールはオーギーにトーマスを雇ってくれるように頼みます。早速働きだしたトーマスでしたが、大事な商品を濡らすという大失敗をやらかします。

ポールは本棚の紙袋を発見していました。中には5千ドルを超える金が! トーマスに問いただすと強盗が落としたものを拾ったのだと言います。トーマスはその金を損害の埋め合わせとしてオーギーに渡し、オーギーはそれを生活に困っているルビーにそっくり手渡します。

トーマスがサイライスのところにいると、ポールとオーギーが訪ねてきて、トーマスが偽名を名乗っていたことがバレてしまいます。サイライスに問い詰められ、本名を明かすと、「嘘だ」と暴れだすサイラス。大騒ぎのあと一同はピクニックのテーブルにつき、葉巻をくゆらせます。

数ヶ月後、ポールは新聞社からクリスマスストーリーの原稿依頼を受けました。何かいい話はないかとオーギーに尋ねると、オーギーは昔、自分が経験した話を語り始めます。

「俺が写真を撮るきっかけになった話さ。ある日店番をしていると少年が万引きをしやがった。追いかけるとやつは財布を落として逃げちまった。中には免許書と何枚かのスナップ写真が入ってた。少年の幼いころの写真、母親と一緒に映った写真、そいつを見るとなんだか怒りが治まっちまった。警察に訴える気にもなれなくて財布を持ち帰り、そのままにしていた。クリスマスに思い出して返してやろうと少年の家に出かけていった。ベルを押して「ロジャーはいますか?」と言うと、90歳くらいのばあ様がドアを開けた。盲目だった。彼女は俺に「来てくれたのロジャー?」と言った。考える前に「うん、そうだよ。クリスマスだから来た」と答えていた。彼女はぼけかけていたが他人と孫の違いくらいわかる。わかっていて楽しんでいた。俺も調子を合わせ適当なことをいろいろ話した。仕事についたとか結婚のこととか。ばあ様はわかって喜んでいた。いろいろ買い込んで二人で食べた。トイレを借りると、箱にはいったままの35ミリカメラがたくさん積んであった。一ついただこうという気分になった。ばあさんは眠っていた。財布をテーブルに置いてカメラを持って外に出た」。

じっと聞いていたポールは「その後は会わなかったのかい?」と聞きます。2,3ヶ月して気が咎めて返しに言ったんだがばあ様はいなくなっていたとオーギーは答えます。「死んだのかな」とポール。「ああ」とオギー。

ロジャーは微笑みます。彼はその話がうまくできたフィクションだろうと考えています。それを指摘されても尚、オーギーは「秘密をわかちあえない友達なんて本当の友達といえるか?」と微笑むのでした。

『Smoke』の感想と評価

映画の舞台は1990年代のブルックリンです。現在のブルックリンは洗練された街に変貌していますが、映画は下町の雰囲気を残した当時の風景を記録しています。

ハーヴェイ・カイテル扮するオーギーの煙草店は煙草の他にも、スナック菓子や雑誌なども置いています。街のよろず屋の役割を果たしているのでしょう。彼は毎日通りの向かいから自分の店の正面を写真に撮っているのですが、この写真が実にいいのです。皆同じように見えて、一つ一つ違う。天候や季節の違い、通りかかった人々の顔ぶれ、動作の違い、それはオーギーが「プロジェクト」と呼ぶとおり貴重な「記録」ですが、アートの領域から見ても素晴らしいものです。

ウィリアム・ハート扮するポールにオーギーが語るクリスマスストーリーの信憑性は実に曖昧です。曖昧といえば、ストッカード・チャニング扮するルビーが娘の父親をオーギーだと言っていますが、これもかなり怪しい話です。

物語はその曖昧さをはっきりさせる方向には動きません。寧ろ、煙草の煙のように、ゆるやかに流れてしまいます。それが恐らくこの物語に登場する人物の生きる知恵なのでしょう。

フォレスト・ウィテカー扮するサイライスが、少年が自分の子と知って取り乱す場面のあと、ピクニックのテーブルを囲んで、各々がくつろいでいる(あるいは疲れ果てて放心している)ショットは、見事な構図と相まって、忘れがたい場面としていつまでも心に残りそうです。

まとめ

本作は1995年に恵比寿ガーデン・シネマで公開され、数年後、『ボウリング・フォー・コロンバイン』に拔かれるまで同館の動員記録1位を誇った作品です。

孤独を抱えた作家が、地域の人々と触れ合う中で、豊かな気持ちを取り戻していく姿が感動的です。

「煙の重さを量れるというやつがいたんだ」というふうに時折、ポールが煙草にまつわるエピソードを語る場面も印象に残る愛すべき作品です。

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