Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2018/09/13
Update

映画『それでも夜は明ける』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も

  • Writer :
  • Cinemarche編集部

今回取り上げるのは第86回アカデミー賞作品賞をはじめ、数々の賞を受賞した衝撃の実録映画『それでも夜は明ける』です。

悲惨な歴史の真実を、名優たちが体当りで挑んで描いた本作について詳しくご紹介します。

映画『それでも夜は明ける』の作品情報


(C)2013 Bass Films, LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l. in the rest of the World. All Rights Reserved.

【公開】

2014年(イギリス・アメリカ合作映画)

【原題】
12 Years a Slave

【監督】
スティーブ・マックイーン

【キャスト】
キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ポール・ダノ、ギャレット・ディラハント、ポール・ジアマッティ、スクート・マクネイリー、ルピタ・ニョンゴ、アデペロ・オデュイエ、サラ・ポールソン、ブラッド・ピット、マイケル・ケネス・ウィリアムズ、アルフレ・ウッダード、クリス・チョーク、タラン・キラム、ビル・キャンプ、クワベンジャネ・ウォレス

【作品概要】
舞台は1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人のバイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていましたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまいます。

白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなく、12年の歳月を送ったのです… 自由黒人ソロモン・ノーサップによる体験記”Twelve Years a Slave”を原作に、セックス依存症に悩む男の姿を生々しく描いた『SHAME』(2011)の監督スティーヴ・マックイーンが映画化。

主人公ソロモンを演じるのはローレンス・オリヴィエ賞にも輝いたイギリス演劇界に欠かせない俳優キウェテル・イジョフォー。

残酷な性格、選民主義者の農園支配人エップスを演じるのは『SHAME』で主演を務めたマイケル・ファスペンダー。他にもベネディクト・カンバーバッチ、ポール・ダノ、ブラッド・ピットと名俳優たちが顔を揃えます。

エップスから暴行を受ける女性奴隷に扮するのは『ブラックパンサー』(2018)、『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』(2017)に出演する新進気鋭の女優ルピタ・ニョンゴ。彼女は本作での演技が賞賛され、第86回アカデミー賞作品賞、助演女優賞、脚色賞をはじめ数々の賞を受賞しました。

映画『それでも夜は明ける』のあらすじとネタバレ


(C)2013 Bass Films, LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l. in the rest of the World. All Rights Reserved.

ソロモン・ノーサップは自由黒人で、故郷サラトガではバイオリン奏者として生計を立てながら愛する家族とともに暮らしていました。

ある時友人から紹介された二人組に、自分たちの周遊公演に参加しないかと誘われたソロモン。

実はこれは嘘で、ソロモンは薬を飲まされ拉致されてしまいます。目覚めると暗い部屋の中で手首は鎖で繋がれており、彼はジョージアの奴隷逃亡者だということになっていて、他の奴隷と共に収容所へ移送されました。

収容所でソロモンはクレメンスという賢い奴隷と、娘を連れたエリザという母親の奴隷と出会いいます。

彼らは船で移送されることになり、奴隷のロバートはその船を乗っ取ろうと企てていました。

しかしある夜、奴隷商人たちがエリザをレイプしようと入ってきた時、それを止めたロバートは刺し殺されてしまいます。

そしてクレメンスとソロモンに死体を川へ捨てるよう命じました。ソロモンはある時フォードという農園主に子供と引き離されたエリザとともに購入されることになりました。

フォードは信仰心が厚く温厚な性格の持ち主でした。

ソロモンは知識を使って材木の水運を提案します。

これが成功しフォードに目をかけられますが、農園の監督ティビッツにねたまれてしまいます。

ある日ソロモンはティビッツにリンチされ、帰宅したフォードによって手当てされますがソロモンの身の危険を感じたフォードは彼を売ってしまいました。

別の農園の支配人、エップスはフォードと異なり陰湿で冷酷な性格でした。

以下、『それでも夜は明ける』ネタバレ・結末の記載がございます。『それでも夜は明ける』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
エップスの農園では奴隷たちは綿花の摘み取りをさせられており、綿花の収穫量が少ない者は鞭打ちの罰を受けていました。

若い女性奴隷パッツィーは毎日大量の綿花を積み貢献をしていましたが、エップスから性的暴行を受ける日々。

鞭打ちも受けることがない彼女を見てエップス夫人は腹ただしく思っていました。

ある時、エップスは近隣の農園オーナーのところへソロモンとパッツィーを労働に行かせます。

そこで2人が話しているのを見たエップスは、口説いていると誤解し激しくののしり、その夜パッツィーをレイプしました。

彼女はエップスからの性的虐待や嫉妬する夫人からの仕打ちで身も心も限界を迎えていました。

ある日、農園にアームスバイという白人奴隷がやってきました。

アームスバイはかつて監察官でしたが、不祥事を起こし奴隷に身を落としていたのです。アームズビーという男が加わっていた。

ソロモンは自分と近い境遇で親身なアームスバイを信用し、自由を取り戻すべく手紙を書くことに決めました。

しかしいよいよ手紙を届けようという日の夜、帰ってきたエップスにアームスバイは全てを喋ってしまいます。

幸い手紙をまだ渡していなかったため、エップスはアームスバイを信用せずソロモンは難を逃れました。

その後も長い奴隷としての日々を送るソロモン。そんなある日彼はカナダ人で大工のバスという男と出会います。

バスは奴隷反対派で良心的な男でした。ソロモンは最後の望みとバスを信用し自らの素性を明かし、北部時代の知人に手紙を送ることを懇願します。

数日後、エップスの農園に保安官とソロモンの故郷で店を経営していた知人パーカーがやってきて、ソロモンはついに自由の身となりました。

去り際、ソロモンに駆け寄りパッツィーは泣崩れます。12年ぶりに故郷へ帰ったソロモン。

子供だった娘は結婚していました。「許してくれ」と言うソロモンに妻は「あなたは何も悪くない」と抱きしめるのでした。

映画『それでも夜は明ける』の感想と評価


(C)2013 Bass Films, LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l. in the rest of the World. All Rights Reserved.

理不尽な体罰を受け、過酷な労働を強いられ、虐待されてもじっと耐え続けます。

人間を奴隷として扱うという狂った日常の中で過ごす白人、黒人たち。

本作『それでも夜は明ける』では、目を覆いたくなるような現実を真っ向から描きます。

最後ソロモンが解放されたからといって、彼らの日常が平和になるわけではありません。

物語のルイジアナ州が奴隷解放宣言を受け入れたのは1862年。エップスにところに残されたパッツィーはその後10年あまりも農場で地獄の日々を送ることになるのです。

解放されたソロモンも“自由黒人”ということが認められただけ。“自由黒人”は家族とともに暮らし、“奴隷黒人”は過酷な労働を強いられる生活。人が人として扱われない、恐ろしいかつてあった現実の空気をひしひしと知ることができます。

またエンドロールに流れる主人公サイモンの「死因、場所、状況は全て不明」という説明は彼が奴隷としての人生を終え活動家として生きていた時に、何者かに暗殺された可能性も連想させます。

劇中で怪演を見せるのは最初ソロモンに虐待をしたティビッツ役ポール・ダノと冷酷な農園主エップス役のマイケル・ファスペンダー。

鬼のような差別主義者を演じる2人の迫力は圧巻です。

サイモン役のキウェテル・イジョフォーはもちろん、パッツィー役のルピタ・ニョンゴの演技と存在感も心に残ります。

まとめ


(C)2013 Bass Films, LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l. in the rest of the World. All Rights Reserved.

ある1人の男の、奴隷としての12年間を描いた『それでも夜は明ける』。

誰も幸せではない、それが普通の日常だった時代を描いた『それでも夜は明ける』。

今現在も無くなってはいない、人種間の対立や理不尽な事件。ぜひそのルーツと目を背けてはいけない現実を映した本作をご覧ください。


(C)2013 Bass Films, LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l. in the rest of the World. All Rights Reserved.

関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『オーバーナイトウォーク』あらすじと感想評価。女優になるために上京した妹と関西に残った姉が真夜中のボケツッコミな道行き

磯部鉄平監督作品が、アップリンク吉祥寺にてレイトショー公開 「大阪アジアン映画祭」インディ・フォーラム部門「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」「Kisssh-Kissssssh映画祭」など、さまざまな …

ヒューマンドラマ映画

映画『ハルカの陶』あらすじネタバレと感想。奈緒演じる女性の成長と備前焼の歴史を受け継ぐ陶工たちの情熱

備前焼を作るのは土と炎。そして強い意志と情熱を注ぐ人々。 映画『ハルカの陶』は、東京で平凡な生活を送るOLが偶然出会った備前焼に惹かれ、備前焼作家を目指す物語。 主人公・小山はるかを演じるのは、201 …

ヒューマンドラマ映画

映画『チィファの手紙』感想と考察評価。岩井俊二監督が中国で『ラストレター』のもうひとつの物語を描く

岩井俊二監督初の中国映画『チィファの手紙』は2020年9月11日(金)より全国ロードショー予定。 『スワロウテイル』『花とアリス』の岩井俊二監督。彼の初長編映画作品である『Love Letter』(1 …

ヒューマンドラマ映画

映画『1944 独ソ・エストニア戦線』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。ナチスドイツとソ連の両軍の戦場となってしまったエストニアと“その国民の運命”とは⁈

悲劇の戦場を描いた第88回アカデミー賞外国語映画賞エストニア代表作品! エルモ・ヌガネンが監督を務めた、2015年製作のエストニア・フィンランド合作の戦争ドラマ映画『1944 独ソ・エストニア戦線』。 …

ヒューマンドラマ映画

黒澤明映画『生きる』ネタバレ感想と結末までのあらすじ。リメイク版公開前にオリジナル版の魅力を解説

黒澤明監督が描いた、ヒューマンドラマの頂点にして最高傑作! 世界な映画監督として今もなお影響を与え続けている巨匠・黒澤明が、1952年に公開した人間賛歌の映画『生きる』。 映画以外のリメイク版も多く、 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学