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Entry 2020/11/09
Update

映画『十二単衣を着た悪魔』ネタバレあらすじと感想評価レビュー。弘徽殿女御は黒木瞳という宝塚女優から結婚・出産までトップレディだから描けた

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

内館牧子の小説「十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞」を映画化。黒木瞳監督の第2作目『十二単衣を着た悪魔』公開!

『源氏物語』の世界に迷い込んだ主人公が弘徽殿女御に出会い、翻弄されながらも自分を見出していく、映画『十二単衣を着た悪魔』。

就活で連敗し、自信をなくした雷が『源氏物語』の世界の中へタイムスリップ。千年前の世界で雷が出会ったのは悪女の代名詞“弘徽殿女御”「カワイイ女はバカでもなれる。しかし怖い女になるには能力がいる」。

言いたいことをはっきり言い、信念を貫こうとする弘徽殿女御に出会い、自身の価値観や生き方を見つめ直していきます。

成長していく雷の姿や、“女らしさ”にとらわれない弘徽殿女御の在り方は、世代をこえて共感を呼ぶエンターテイメントムービーです。

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映画『十二単衣を着た悪魔』の作品情報


(C)2019「十二単衣を着た悪魔」フィルムパートナー

【公開】
2020年(日本映画)

【監督】
黒木瞳

【脚本】
多和田久美

【原作】
内館牧子『十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞』

【主題歌】
OKAMOTO’S

【キャスト】
伊藤健太郎、三吉彩花、伊藤沙莉、田中偉登、沖門和玖、MIO、YAE、手塚真生、細田佳央太、LiLiCo、村井良大、兼近大樹、戸田菜穂、ラサール石井、伊勢谷友介、山村紅葉、笹野高史

【作品概要】
数々の名作を生み出してきた名脚本家・作家である内館牧子の長編小説『十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞』を、『嫌な女』(2016)で長編映画デビューした黒木瞳が映画化。主演を務めた伊藤健太郎は本作で初めて時代劇に出演。

弘徽殿女御役には『Daughters(ドーターズ)』(2020)、『ダンスウィズミー』(2019)の三吉彩花、その他細田佳央太、伊藤沙莉など若手俳優陣が勢揃い。

映画『十二単衣を着た悪魔』のあらすじとネタバレ


(C)2019「十二単衣を着た悪魔」フィルムパートナー

就職試験59連敗中のフリーターの主人公・雷(伊藤健太郎)は日雇いのバイトで「『源氏物語』と疾患展」の設営に参加し、『源氏物語』の登場人物紹介に興味をひかれていきます。

「デキた弟・二宮(光源氏)」「後塵を拝した長男・一宮」の関係性に自身の優秀な弟との関係性に通ずるものを感じていました。そして、悪女と称された一宮の母弘徽殿女御の姿にも引きつけられます。

そんな雷の様子を見たバイトリーダーが給料と共に、『源氏物語』の概要がかかれた冊子を手渡します。バイト後彼女とご飯を食べていた際に「雷といると成長できない」と言われ振られてしまいます。

家に帰ろうとするも、弟が京都大学に合格した祝いをしている中に帰っていく勇気もなく、家の周囲をあてもなくうろついていました。

そんな時、光に導かれるように吸い込まれ、雷に打たれた雷。目を開けるとそこは何と『源氏物語』の世界でした。現状が飲み込めない雷は、不審人物と思われ牢に入れられてしまいます。

冊子で読んだ知識を頼りに、夜も眠れぬ日々を過ごしている弘徽殿女御(三吉彩花)にバイト先の手土産でもらった頭痛薬を飲むように仕向けます。そして見事弘徽殿女御の病を治してしまいます。

弘徽殿女御に気に入られた雷は咄嗟の出まかせで陰陽師・伊藤雷鳴と名乗り、弘徽殿女御の御前に呼び出されます。平安時代、高貴な女性は顔を見せることはなく、御簾の向こうから話すのが当たり前でしたが、そんなことを知らない雷は直接話すなら顔を見て話したいと言います。

雷の発言に弘徽殿女御に仕える女房らは驚きますが、その言葉を聞いた弘徽殿女御は御簾をあげるよう女房らに命じます。雷の目の前に姿を表したのは凛とした気品のある女性でした。

「能書きはいらぬ。男は能力を形にして示せ!」歯切れの良い物言い、自分の子である一宮を思う母としての姿に、冊子に書かれていた“悪女”とは違う弘徽殿女御の姿に雷は驚き、触発されていきます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『十二単衣を着た悪魔』ネタバレ・結末の記載がございます。『十二単衣を着た悪魔』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2019「十二単衣を着た悪魔」フィルムパートナー

冊子の内容を覚え、予言として弘徽殿女御に助言することで、雷は宮中での自分の位置を確立していきます。

弘徽殿女御に協力し、一宮を次の帝にしようと画策する雷は「デキた弟」二宮(光源氏)と比べられ、影の薄い一宮だと思っていた一宮が実は心根が優しく母思いのしっかりした皇子だと知り、驚きます。

一宮が結婚しようとした葵上は光源氏の妻となるなど、一宮と弘徽殿女御の前には試練の連続。その度に雷も2人のために助言をします。雷の意見を聞き、自分の力で解決策を見つけ出そうし、自身の信念は負けない弘徽殿女御。

弘徽殿女御は強い女性であるだけでなく、雷にもよくしてくれ、独り身の雷のために結婚相手を紹介してくれます。そうして出会ったのが倫子(伊藤沙莉)でした。

倫子はあまり綺麗な女性ではありませんでしたが、それでも自分を好きでいようという強さに溢れた女性でした。

倫子と結婚し、幸せな日々を送る雷。月日が経ち、倫子は妊娠します。子供の名前は何にしようかと喜ぶ雷でしたが、流産の末、倫子は命を落としてしまいます。

私のことを大切にしたように自分のことも好きになってください、という言葉を残し、倫子は旅立ちました。雷は悲しみにくれ、宮中にも出仕出来ずにいました。

そんな雷の様子を弘徽殿女御は気にし、葬式の手筈を整え、落ち着くまでは出仕しなくても良いと伝えてくれます。

しかし、その頃宮中では、光源氏の母である桐壺更衣の死後、悲しみにくれていた帝が桐壺更衣に瓜二つの藤壺を妻に迎え、その藤壺も身篭っていたのです。

その子が男子であったら皇太子になっている一宮の立場が危うくなるかもしれないと心配します。

実は藤壺の子は帝の子ではなく、光源氏の子でした。そのことは当事者である帝、藤壺、光源氏、そして概要を知っている雷しか知り得ない事実でしたが、頭の良い弘徽殿女御はその秘密に気づいていました。

そのため、藤壺に男子が生まれたと聞いた弘徽殿女御は、本来正妻である弘徽殿女御がなるはずの皇后のくらいを藤壺に譲り、その代わり一宮を次の天皇にすることを約束させたのです。

子を思う弘徽殿女御だからこそ、自分が退くことで一宮を皇太子の座を奪われないように守ったのです。

自分の身の丈にあうことだけして、傷つかないようにするのは小物のすること、これからも自分の力で身の丈にあうことでなくても、つかもうと足掻き続け、次の若い世代がでてき始めたら潔く若いものに負けて退くのが良いと弘徽殿女御は力強く言います。

共に明日を見つめる弘徽殿女御と雷。弘徽殿女御と共に過ごした歳月は雷を大きく成長させました。

その夜、ホタルの光に導かれるように歩く雷は光に包み込まれ、気づくと家の近くに装束を着たままポツンと立っていました。あまりにも長い歳月を過ごしたというのに、現代では全く時間がすぎていませんでした。

突然千年前から戻ってきた雷は言葉使いも所作振る舞いも抜けきれず、家族はそんな雷に困惑しています。

ある雷雨の夜、再び千年前に戻りたいと外に飛び出す雷でしたが、千年前には戻れず、心配した弟が様子を見にきます。

そして初めて雷は今まで意地をはって勝手に僻んで卑屈になっていたこと、そのせいで弟に気を使わせていたことを謝りました。

千年前で過ごした時を経て成長した雷は弘徽殿女御のことを小説に書くことに。やっと自分のやりたいことを見出せた雷の表情は希望に満ち溢れています。

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映画『十二単衣を着た悪魔』感想と評価


(C)2019「十二単衣を着た悪魔」フィルムパートナー

『源氏物語』において主人公光源氏をはじめ、光源氏の妻となった葵上、その親である左大臣家など光源氏側の人間を描くことが多いなか、光源氏と対立していた右大臣家を描くという目新しさが本作にはあります。

更に、光源氏と対立する側であり、悪女として名高い弘徽殿女御を描き、弘徽殿女御は“悪女”であったのではなく、当時の平安の世には珍しい自立した強い精神の持ち主であり、キャリアウーマンのような女性であったという意外性を持たせています。

そんな弘徽殿女御に出会い触発されていく主人公雷は、就職活動をするも、連敗しています。プライドを捨てきれず、面接に落ちた理由を人のせいにしています。更にできる弟と比べてしまい、卑屈になっています。

どこかで言い訳を探し、どうせ自分なんて…という気持ちがどこかにある雷の姿は現代の若者、更にはいつかの自分と重なるところもあるかもしれません。誰しも自分の弱さは認めたくないものです。

しかし、弘徽殿女御は人のせいにしないどころか、強気で男に愛されない可哀想な女だと思うかもしれないが、言わせておけば良いとまで言ってしまう強さがあります。

そのような弘徽殿女御の強さに雷は自分自身を見つめ直し、立ち向かう勇気を持つのです。

更に印象的なのは、雷が結婚する倫子です。倫子は当時の世では醜い女性だと思われています。

初めてあった夜雷も戸惑いをみせます。そんな雷に対し、「醜いでしょう。いいのです。こうなることはわかっていました」と失礼な雷に対し許す姿勢をみせます。

雷の弱さも受け止める優しさを持ちながら、倫子は自分自身の醜いとされてきた容姿を受け入れ、自分を好きだと胸を張って言える強さがありました。

弟と比べ卑屈になり、どこか自分を好きになれない雷のことを心配し、雷に愛情を与え、雷にも自分を好きになってもらおうとするのです。

弘徽殿女御と倫子。2人の女性像は現代の人々の心にも響く女性像であると言えます。2人に出会い大きく成長した雷とともに観客も勇気を貰えることでしょう。

まとめ


(C)2019「十二単衣を着た悪魔」フィルムパートナー

本作『十二単衣を着た悪魔』は、『源氏物語』という古典的な題材を扱いながら、登場人物の描き方に新たな視点を取り入れ、現代を生きるの人々の共感を誘う映画となっています。

その背景には、黒木瞳監督のこの映画に対する強い思いがあらわれているからでしょう。

黒木監督は、潔く、自信の信念を貫き、母親としての強さも兼ね備えたトップレディ。

そんな弘徽殿女御像を打ち出した内館牧子の原作に惹かれ映画化を熱望したといいます。

自身も母であり、女優としてトップを走り続けた黒木瞳監督だからこそ雷の弱さ、ネガティブさに寄り添いつつも彼を鼓舞する“女らしさ”にとらわれない弘徽殿女御を描けたのでしょう。



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