被災地で障害者が消えた!?
東日本大震災から10年。私たちは、その理由を知る。
障害のある人たちが地域で働く・活動する・生活することを応援する全国組織「きょうされん」が、結成40周年を記念して製作した映画『星に語りて~Starry Sky~』。
2011年に発生した東日本大震災を背景に、障害を持った人たちと支援者たちの活動を、実話をもとに描いたヒューマンドラマです。
日常が一瞬にして奪われた被災地では、誰もが深い悲しみを抱え、どうにか今を生きることで精一杯でした。
そんな中、被災地の障害者支援に乗り出した全国障害者ネットワークに、「障害者が消えた」という情報が入ってきます。多くの避難所を探しても見当たらない障害者たち。
いったいその理由は何だったのか。そこには、知られざる困難と真実が待ち受けていました。
映画『星に語りて~Starry Sky~』の作品情報
【公開】
2021年(日本映画)
【監督】
松本動
【キャスト】
要田禎子、螢雪次朗、今谷フトシ、植木紀世彦、枝光利雄、菅井玲、入江崇史、宮川浩明、生島ヒロシ、赤塚真人
【作品概要】
「きょうされん」結成40周年記念作品として、東日本大震災での障害者と支援者の活動を、実話をもとに映画化された『星に語りて~Starry Sky~』。
死者1万8千人を超える未曾有の大震災。しかしながら、障害のある人の死亡率が全住民の2倍だったという事実を知る人は決して多くありません。
当時を知る方々に取材し、山本おさむが脚本を担当。松本動監督は障害当時者をキャストに起用し、現実に迫った作品に作り上げました。
映画『星に語りて~Starry Sky~』のあらすじ
2011年3月11日。岩手県陸前高田市の高台にある共同作業所「あおぎり」では、コーヒーの香りが漂い、おやつの時間を迎えようとしていました。
午後2時46分。グラグラグラ、地震です。揺れは激しさを増し、とても立っていらなれない程です。ガシャーン、物が落ちる音。「コワイよ、コワイよ」。怯える障害者の声。
町には津波警報のサイレンが鳴り響きます。「ここは高台だから、大丈夫だからね。避難してくる人を迎える準備をしましょう」。所長は皆を安心させるように声をかけます。
「たかし君がいません!」おばあちゃんを心配し家に戻ってしまった、たかし君。ゴォーッ。地底深くから付き上がるような巨大な地響きと共に、あの黒い波が押し寄せてきました。
3月14日。福島第一原子力発電所事故により、避難を余儀なくされた南相馬市。共同作業所「クロスロードハウス」の代表たちは危険な状況が続く中、避難できず取り残されてしまった障害者たちの救済を決意します。
しかし誰もいなくなった町で、障害者たちの居場所を探すのは困難を極めます。それは個人情報保護法により、障害者の情報が開示されていないことも原因でした。
人々の暮らしを守るための法律が、時として仇となる現実。急を要する事態を前に、打開策を求め奔走します。
一方全国障害者ネットワークでは、被災地へ入り支援活動を始める準備をしていました。そんな矢先、「障害者が消えた」という情報が入ってきます。
多くの避難所を回っても、障害のある人の姿がほとんど見当たらないというのです。そこには、私たちが忘れがちな障害者の苦難がありました。
映画『星に語りて~Starry Sky~』の感想と評価
東日本大震災から10年が経過した2021年。それまでにも「震災を風化させない」という思いから多くの映画が製作・公開されてきました。
その中で、映画『星に語りて~Starry Sky~』は、当時のニュースではほとんど知らされることのなかった障害者の様子が描かれた貴重な作品です。
正直、震災当時は、日常の生活が一瞬で奪われ誰もが心も体もぎりぎりの中、障害を持った人たちを気にする余裕もなかったように思います。
しかし映画を通して、「被災地から障害者が消えた」という本当の意味を知った時、衝撃が走りました。
「人に迷惑をかけてしまうから」「目が見えず、知らない場所へ行けない」「サイレンの音が聞こえず、その場に取り残された」「家族に置いていかれた」。
被災した危険な区域にも関わらず、そこに留まるしかなかった障害を持った人たち。避難所に名前が残らないわけです。
普段の生活の中であれば気遣える事が、非常時には注意が及ばなくなる。これは障害者に対してのことだけではありません。
震災のような非常時には、それは仕方がないことかもしれませんが、この事実を知るかどうかで、心持は大きく変わるように思います。
この映画は、今後起こり得る災難の際、同じことを繰り返さないための教訓でもあります。
さらに、映画の後半では、被災地の支援活動が人と人を繋ぎ拡大していく様子が描かれています。その活動は、障害の有無に関係なく、高齢者や困っている人々へと支援の範囲は広がっていきます。
一人じゃない。気にしてくれる誰かがいる。そのことは、前を向く大きな力になりました。
そしてその先には、障害者が参加する町づくりが実施されていました。時に言い争いになることがあっても、困ったことを「困った」と言える場所があることは、本当に良いことだと思います。
震災を乗り越え、皆が笑顔になれる町にしたい。星になった人たちもそう願っているに違いありません。
また、映画で使用されている津波の映像は、実際のものです。目を覆いたくなるほどの光景に、10年経った今も胸が締め付けられ涙が溢れます。
忘れたくても忘れられないという被災者の方々もいるかもしれません。それでも、苦しくても忘れてはいけないことのように思います。
「真実を知ってほしい」という松本動監督の想いが映像を通しても伝わってきます。
まとめ
東日本大震災を背景に、障害を持った人たちと支援者たちの活動を描いた映画『星に語りて~Starry Sky~』を紹介しました。
あの混乱の中、障害を持った人たちと支援者はどのように生きたのか。この事実を知ることは、これからの社会にとても重要なことです。
災害や障害は、誰にでも起こり得ることです。「助けて」と言える世の中。「助けて」の声に応えられる世の中であってほしいものです。