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『パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ』あらすじ感想と評価解説。サクセスストーリーと流麗な映像の組み合わせが生み出す“ほろ苦い人生”

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ』は2024年3月29日(金)より全国順次公開!

フランスのある有名パティシエが歩んだ人生物語を映像化した映画『パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ』。

スイーツの本場・フランスを舞台に、不遇な人生を歩んでいた少年がパティシエへの道を歩むべく奔走する姿を描きます。

スイーツの魅力がそのまま映像で伝えてくる華やかな映像と、不遇の人生を突き進む一人の男性が見せるタフな生きざまが交差するヒューマンドラマ。幅広いジャンルの映像を手掛ける新進監督と、同じく映像クリエイターとしても多くの注目を集める俳優によるタッグが、新たな人間模様の描き方を提唱します。

映画『パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ』の作品情報


(C)DACP-Kiss Films-Atelier de Production-France 2 Cinema

【日本公開】
2024年(フランス映画)

【原題】
A la belle etoile

【監督】
セバスチャン・テュラール

【キャスト】
リアド・ベライシュ、ルブナ・アビダル、フェニックス・ブロサール、エステバン、クリスティーヌ・シティ、パスカル・レジティミュス、ジャン=イブ・ベルトルート、パトリック・ダスマサオ、リカ・ミナモト、ジョージ・コラフェイスほか

【作品概要】
22歳でパティスリー世界選手権チャンピオンに輝いた天才パティシエ、ヤジッド・イシェムラエンの自伝書を原作としたドラマ。少年時代にスイーツと出会いその魅力に取りつかれた青年が、自らの作り出す極上のスィーツによる奇跡でさまざまな困難を乗り越える姿を描きます。

本作を手掛けたのは、これが長編初監督となるフランスのセバスチャン・テュラール。

主演は『シティーコップ 余命30日?!のヒーロー』に出演したリアド・ベライシュ。彼はYouTube、TikTokなどで多数のフォロワーを持つ映像クリエイターとしても活躍しています。

また劇中に登場するデザートはヤジッド本人が監修しており、ベライシュ自身もヤジッドより直にパティスリーの創作を伝授してもらい、本作に臨んだといいます。

映画『パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ』のあらすじ


(C)DACP-Kiss Films-Atelier de Production-France 2 Cinema

母親からの育児放棄をはじめ、過酷な少年時代を過ごしたヤジッド。

そんな彼が抱いていた数少ない楽しみは、里親の家で食べる手作りスイーツ。それがきっかけで、彼はいつしか自分も最高のパティシエになりたいと願うようになりました。

やがて児童養護施設で暮らし始めたヤジッドは、パリの高級レストランに見習いとして雇ってもらうチャンスを得ます。

彼の住む田舎より180キロも離れた本場・パリへ通い、時には野宿もしながら必死に学び続けるヤジッド。

生活は大変でしたが、有能なパティシエたちの教えを得て、厳しくも愛のある先輩や心を許せる仲間に囲まれ、充実した毎日を過ごしていきます。

ところがある日、一人の同僚の嫉妬が生み出した策略によって、彼は仕事を失ってしまいます……。

映画『パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ』の感想と評価


(C)DACP-Kiss Films-Atelier de Production-France 2 Cinema

フランス、色とりどりのスイーツ、そして華麗な腕を振るパティシエの世界。

タイトルからはそんな華やかなイメージが想像されるのではないでしょうか。

しかし本作が描いているのは、どちらかというとほろ苦い人生の厳しさ。もともと幼年期より恵まれない境遇にあった一人の男性が、パティシエへの道を自ら切り開いていくという、なんとなく泥臭さも感じられるような物語です。

その意味でこの物語は、スマートな美談だけを並べたサクセス・ストーリーではなく、夢をかなえるということの厳しさ、険しさを描いたリアルな人生物語であるとも見え、「スイーツ」の甘さとは対照的な辛さ、苦みが程よく感じられる作品であります。

そしてそのテーマともいえる男性ラジッドの人生像を映像でどのように描いているのかが、本作の最大の焦点といえるでしょう。


(C)DACP-Kiss Films-Atelier de Production-France 2 Cinema

本作を手掛けたセバスチャン・テュラールは数々の短編映画で高い評価を得てきた映像作家でありますが、もともとはSFXアニメーターとしてそのキャリアをスタート、一方では多数のミュージシャンのミュージックビデオ製作を手掛けるなど、映像作りの引き出しを多く持つクリエイター。

物語中でリアド・ベライシュ演じるヤジッドが見せるスイーツ作りのシーンは、実際の現場で見られる「精巧さ」よりもむしろ華麗さ、エンタテインメント性に注視したものとも見え、目が映像に引き込まれる印象を覚えます。

そんなインパクト十分のスイーツ作りシーンと、ヤシッドが抱える複雑な境遇、そして彼自身が遭遇するさまざまなアクシデントの絡め方も絶妙で、物語は単なる自叙伝の映画化という枠を超え、どこかその芯にある重要なテーマを考えさせられるような物語となっています。

ちなみに原題の「A la belle etoile」とはフランス語であり、「美しい星の下で」と訳されます。本作はヤジッド・イシェムラエンの自伝書「Un rêve d’enfant étoilé: Comment la pâtisserie lui a sauvé la vie et l’a éduqué」(星の少年の夢:菓子作りが彼を救った理由)をベースとして描かれた物語。

「星」というキーワードでこの原作と本作のタイトルは共通しているものの、本作のタイトルはどこかテーマの焦点をずらしている印象もあり、この点においては本作に込めた製作側の意図を感じることができるでしょう。

まとめ


(C)DACP-Kiss Films-Atelier de Production-France 2 Cinema

魅力的な俳優陣の中でもその存在感をひときわ光らせているのが、主演を務めたリアド・ベライシュ。

作中ではどちらかというとあまり自身の感情を出さない落ち着いたたたずまいを見せますが、展開の中にある「ヤジッドの行く手を阻む出来事」において、ふっと胸に秘めていた感情を爆発させ、物語に大きな起伏を作り上げています。

物語から見えるヤジッドの性格は、もちろんスイーツ作りへの強い情熱があふれる一方、意外にも「野心家」です。

何としてでも自身の夢をかなえようとする、どこかしたたかな思いも感じられ、少しテクニカルで現実から離れた印象にも見える映像とのバランス感覚を絶妙に組み上げているといえるでしょう。

映画『パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ』は2024年3月29日(金)より全国順次公開!

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