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Entry 2021/11/23
Update

映画『JOINT』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。犯罪ドラマを表裏の狭間で葛藤する男の視野から現代日本の裏社会を描く

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

半端者の男の葛藤と、現在進行形の日本の裏社会を描いた犯罪ドラマ!

刑務所から出所し、表の世界で新たな人生を歩もうとする、半グレの石神武司。

しかし、裏の世界から抜け出すことは容易ではなく、さまざまな思惑に巻き込まれた石神の、苦悩と葛藤を描いた映画『JOINT』。

本作は裏と表の狭間で苦悩する、石神の葛藤と共に「名簿売買」「地面師」「特殊詐欺」など現代の裏社会をリアルに描いた作品でもあります。

ドキュメンタリータッチで制作され、独特の臨場感が印象的な本作で、小島央大監督は2021年度「新藤兼人賞」の銀賞に輝いています。

今回は、映画『JOINT』の魅力をご紹介します。

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映画『JOINT』の作品情報


(C)小島央大/映画JOINT製作委員会

【公開】
2021年公開(日本映画)

【エグゼクティブプロデューサー】
キム・チャンバ

【監督】
小島央大

【脚本】
HVMR

【キャスト】
山本一賢、キム・ジンチョル、キム・チャンバ、三井啓資、樋口想現、伊藤祐樹、櫻木綾、鐘ヶ江佳太、林田隆志、宇田川かをり、平山久能、二神光、伊藤慶徳、片岸佑太、南部映次、尚玄、渡辺万美

【作品概要】
2年の刑期を終え出所した、半グレの石神武司が、新たな人生を望みながらも、裏社会の思惑に巻き込まれる犯罪ドラマ。

主人公の石神武司役を、本作がデビュー作となる山本一賢が演じています。

監督は、東京大学建築学部卒業後に映像の世界に入り、本作が長編デビュー作となる、異色の経歴を持つ小島央大。

映画『JOINT』のあらすじとネタバレ


(C)小島央大/映画JOINT製作委員会
暴力団に属さない犯罪組織、通称「半グレ」の石神武司。

石神は刑務所で2年の刑期を終えて出所し、親友でカタギのヤスのサポートを受けながら、表の社会でやり直す為に東京へ戻ります。

出所したことを、関東最大の暴力団「大島会」の構成員、今村へ報告しに行った石神。

その際に、今村から「大島会」の構成員で石神の後輩でもある、広野の面倒を見るように伝えられます。

広野と再会した石神は、広野から相談され、もともと得意としていた「特殊詐欺用の名簿ビジネス」に再び手を染めます。

広告代理店から受け取った顧客情報と、韓国人の友人、ジュンギから貰った中古スマホの個人情報を合わせて、石神は精密な名簿を作ります。

石神は、自身の作り出した名簿を広野に使用させ「特殊詐欺用の名簿ビジネス」を成功させます。

大金を掴んだ石神は、このお金を使い、今度こそ表の社会でやり直す為に、投資家として、資金難に悩むベンチャー企業「トライトン」への投資を始めます。

「トライトン」は、石神の資金と名簿情報を元に、ビッグデータと紐づけた、新たな営業ツールを開発します。

さらに資金を獲得する目的で「トライトン」は開発した営業ツールを、大手企業に売り込もうとします。

石神も、大手企業のプレゼンに同席することになりました。

表の社会でやり直す為、裏社会と決別しようとした石神は、ジュンギとの名簿ビジネスを一方的に終わらせます。

石神との名簿ビジネスが、大事な資金源だったジュンギは、外国人犯罪組織「リュード」に近付きます。

「リュード」の幹部でジェイと名乗る男から、ジュンギは販売前のルーターに、個人情報を抜き出す為のウィルスを仕込むように依頼されます。

一方「大島会」は、暴対法の影響で、武闘派の構成員を全て破門にしていました。

「大島会」を破門にされた元構成員は、市川という男を中心に「壱川組」を作り、「大島会」と抗争を目論んでいました。

市川は「人を殺す為にヤクザになった」と言われる危険な男、荒木を「壱川組」に加えます。

表の社会で、新たな人生をやり直していた石神ですが、やがて裏社会の思惑に巻き込まれるようになります。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『JOINT』ネタバレ・結末の記載がございます。『JOINT』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)小島央大/映画JOINT製作委員会
「トライトン」の、大手企業へのプレゼンは、石神のお陰で成功しました。

ですが、前科者である石神の経歴が問題視され、石神は「トライトン」の事業から外れることになります。

「自分は、表の社会では生きられない」そんな現実を目の当たりにした石神。

さらに、広野が荒木に殺されるという、衝撃的な事件が起こります。

広野の敵討ちに動こうとしない「大島会」。

痺れを切らした石神は、今村を通して「大島会」に直談判に行きます。

しかし、面倒事を嫌う「大島会」からは「広野1人を殺されたぐらいで組は動かない」と伝えられ、石神が1人で荒木を連れて来るように命じられます。

石神はジュンギを通して「リュード」に接触します。

ジェイからは「大島会の会長と、話し合いの場を設ける」ことを条件に出されますが、石神は「リュード」の協力を得て、荒木の捕獲に成功します。

ですが、荒木を連行する車内で、荒木に挑発された石神は、荒木を撃ち殺し逃げ出します。

一方「リュード」のトップである張と、大島会の会長、大島との話し合いの場は無事にセッティングされます。

その場で、張は捕まえた市川を大島に差し出し、大島は市川に刃物を突き刺します。

姿を消していた石神ですが「リュード」の協力を得て、国外へ逃亡することになります。

空港に向かう石神は、美しい青空を見上げていました。

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映画『JOINT』感想と評価


(C)小島央大/映画JOINT製作委員会
ヤクザにはならず、半グレとして生きてきた石神武司が、表と裏の社会の狭間で葛藤する、犯罪ドラマ『JOINT』。

本作では「名簿売買」や「特殊詐欺」など、日本で起きている「現代の裏のビジネス」を描いている部分が非常に新鮮で、特にジュンギが「リュード」に依頼される、販売前のルーターにウィルスを仕込み、個人情報を盗み出すという手口は、決してフィクションの世界の話ではありません。

現実に問題となっており「ルーターの脆弱性」という言葉は、よくネットで目にしますね。

このように『JOINT』では、犯罪組織の「裏のビジネス」は、我々の身近に常に潜んでいるという現実を描き出しています。

また、本作に登場するヤクザ「大島会」は、関東最大の暴力団ではあるのですが、暴対法の影響により、昔ながらのシノギではなく、ビジネスで組を存続させようとしています。

「大島会」は、武闘派のヤクザを次々に破門にして、トラブルの火種を消していくのですが、この辺りは『孤狼の血 LEVEL2』(2021年)でも描かれた「現代のヤクザ像」とも言えますね。

ただ、そんな「現代のヤクザ像」に不満を持つ「大島会」を破門されたヤクザ達が、独自に作り出したのが「壱川組」で、この組には荒木と言う、危険な男も加担しています。

「壱川組」は「大島会」と抗争を起こそうとしますが、「大島会」は争いを極力避けようとします。

そこに現れるのが、外国人犯罪組織「リュード」です。

「大島会」「壱川組」「リュード」という、3つの組織の思惑に翻弄されるのが、本作の主人公である石神武司です。

「大島会」の構成員、今村から何度も誘いを受けながらも、ヤクザとしての生き方は選ばず、いわゆる半グレとして犯罪に手を染めてきた石神ですが、刑務所から出所したことをキッカケに、裏の世界から足を洗い、表の世界でやり直そうとします。

カタギとして生きる親友ヤスの手助けも借りながら、やり直しを図ろうとする石神。

ですが、石神は昔から得意としていた、特殊詐欺の名簿作りでしか、大金を稼ぐ方法を知りません。

出所して東京に戻った石神が、最初に始めるのは、やはり特殊詐欺の名簿作りでした。

そして、名簿作りで稼いだ資金をもとに、投資家として表の社会で生きようとします。

石神は裏の社会と決別する為に、後輩の広野や友人のジュンギと決別します。

しかし、前科者の石神を簡単に受け入れる程、表の社会は甘くはありませんでした。

結局、石神は裏の社会に戻ることになります。

この石神の行動を、多くの人が「中途半端」と感じるでしょうし、感情移入もできないかもしれません。

石神は「大島会」や「壱川組」のように、ヤクザとして生きることを決意した訳ではなく「リュード」のような、日本で生きる手段を模索する外国人を「自分には関係ない」と切り捨てます。

カタギの社会とも繋がりながら、そこに居場所を作り出せなかった石神は、表の住人でもなく、裏で生きるヤクザでもない、中途半端な人間なのです。

そもそも石神は、本当にカタギになりたかったのか?それすらもハッキリとしません。

半グレ組織は、よく「実態が掴めない」と言われますが、石神の存在はまさに半グレだと言えます。

人生において、存在意義が見出せない石神ですが、自分を慕う後輩の広野の為に、なんとか力になろうとするなど、男気に溢れる性格で、それが裏社会の抗争に巻き込まれる原因となります。

石神は、中途半端に見えるかもしれませんが、実は優しく不器用なだけで、自分の信念には真っ直ぐな男なのです。

そして、そんな石神を認めてくれるのは、結局、裏の社会の人間というのも皮肉な話です。

本作では、裏社会に翻弄される石神の苦悩が描かれていますが、組織の決定と個人的な感情の狭間で葛藤を抱くのは、社会の中で誰しも経験があるのではないでしょうか?

最後に石神は、日本からも出ていくことになります。

空港に向かう車内で空を見上げる眼差しは、全てのしがらみから解放された、清々しさを感じます。

映画『JOINT』は、どこまでも不器用で真っ直ぐな石神の生き様を通して「中途半端に、曖昧に生きていないか?」と、あらためて自分に問いかけてしまう、そんなキッカケを与えてくれる作品でした。

まとめ


(C)小島央大/映画JOINT製作委員会
『JOINT』は、ドキュメントタッチを意識して制作された作品で、脚本が完成しないまま撮影に入り、俳優のアドリブなどを重視して撮影を進めました。

ヤクザ独特の活舌にもこだわっており、その為、作中の台詞が聞き取りづらかったり、手持ちカメラで撮影された場面が、何が起きているか分からなかったりということもありますが、それが本作における、独特のリアリティを生み出しています。

また、本作では光と影を効果的に使用した場面が多く、特に印象的なのが、表の社会に居場所を無くした石神が、広野の敵討ちを決意する場面。

石神は自身の事務所で、広野が殺されたという電話を受けるのですが、石神の事務所には何も置かれておらず、電気も無く真っ暗で無機質な部屋です。

しかし、石神の事務所の窓からは、対照的にビルの光が差し込んでいます。

その光を見つめながら電話をする、石神の姿は影となっており、表情が読み取れないのですが、表の社会と壁で遮られ、裏の社会で生きるしかないという、複雑な心情を、この場面で表現しています。

そして、電話を終えた石神は、窓に背を向けて事務所を出るのですが、これは表の社会との完全な決別を意味しており、これまで中途半端だった石神が覚悟を決める、とにかくカッコいい場面となっています。

舞台挨拶の際に、小島央大監督が語っていましたが『JOINT』の制作スタッフは、作品への情熱から目が輝きすぎて、警察から職務質問を何度も受けたそうです。

キャストと制作スタッフのギラついた情熱は、間違いなく作品に反映されているので、独特の迫力と魅力を持った映画『JOINT』を、是非体験してみてはいかがでしょうか?

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